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障害者雇用対策基本方針
令和五年三月三十一日厚生労働省告示第百二十六号
障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第七条第一項の規定に基づき、障害者雇用対策基本方針を次のように策定したので、同条第四項の規定に基づき告示する。
障害者雇用対策基本方針
目次
はじめに
第1 障害者の就業の動向に関する事項
第2 職業リハビリテーションの措置の総合的かつ効果的な実施を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項
第3 事業主が行うべき雇用管理に関して指針となるべき事項
第4 障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項
はじめに
1 方針の目的
この基本方針は、前回方針の運営期間における状況を踏まえ、今後の障害者雇用対策の展開の在り方について、国の機関及び地方公共団体の機関(以下「公務部門」という。)を含め、事業主、労働組合、障害者その他国民一般に広く示すとともに、事業主が行うべき雇用管理に関する指針を示すことにより、障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図ることを目的とするものである。
2 方針のねらい
我が国における障害者施策については、障害者基本法(昭和45年法律第84号)、同法に基づく障害者基本計画等に沿って、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進がなされているところであり、その基本的な考え方は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することである。
このような考え方の下に、障害者の雇用施策については、同計画等を踏まえ、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)及び法に基づく「障害者雇用対策基本方針」(運営期間平成30年度から令和4年度まで)に基づき、職業を通じての社会参加を進めていけるよう、各般の施策を推進してきた。
平成25年の法改正では、雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置を規定し、平成27年3月には「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」及び「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」の策定等を行うことで、障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者の有する能力の有効な発揮を図ってきた。
その結果、この運営期間中においては、障害者の就労意欲の高まりに加え、CSR(企業の社会的責任)への関心の高まり等を背景として、積極的に障害者雇用に取り組む企業が増加する等により、障害者雇用は着実に進展してきた。
また、平成25年の法改正により法定雇用率の算定基礎に精神障害者が追加されたことや、雇用率の算定において身体障害者又は知的障害者である短時間労働者は1人をもって0.5人とみなされているところ、平成30年4月から、精神障害者である短時間労働者については、一定の要件を満たす場合には1人をもって1人とみなすこととされたこと等も背景に、近年、精神障害者の雇用者数は大幅に増加してきている。
一方で、令和元年(平成31年)の法改正においては、公務部門において、対象障害者の不適切な計上等が長年にわたって継続してきたことを真摯に重く受け止め、法定雇用率の達成に向けた取組と公務部門における障害者に対する合理的配慮の促進を含めた障害者の活躍の場の拡大に向けた取組を着実に進めていくため、障害者の雇用状況についての的確な把握等に関する措置を設けるとともに、障害者活躍推進計画の作成・公表をすることとされた。加えて、民間の中小事業主における障害者雇用の取組を進めるため、障害者の雇用の促進等に関する取組の実施状況が優良であること等の基準に該当する中小事業主(その雇用する労働者の数が常時300人以下である事業主)の認定制度(もにす認定制度)の創設等を行った。現時点で全ての国の機関で法定雇用率を達成するとともに、各機関において、障害者活躍推進計画に基づき雇用の質を確保・向上するための取組が進められているほか、もにす認定制度についても認定数が年々増加するなど、一定程度制度の定着が図られてきている。
また、障害者の就労意欲が高まるとともに、積極的に障害者雇用に取り組む民間企業が増加するなど障害者雇用は着実に進展している中で、今後、雇用の機会の確保を更に進めることに加え、障害特性や希望に応じて能力を有効に発揮できる就職を実現することや、雇用後においてもその能力等を発揮し活躍できるようにすることなど、雇用の質の向上に取り組んでいくことが重要である。一方、事業主による雇用の質の向上のための取組に対する支援の充実が求められること、就労系障害福祉サービスを利用する場合を含め就労支援を切れ目なく進めていくに当たっては雇用施策と福祉施策の連携強化を図る必要があること、これまで就業が想定されにくかった重度障害者や多様な障害者の就業ニーズの高まりへの対応が求められること等の課題が生じてきた。
こうした状況を踏まえ、令和4年第210回国会に、法、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「障害者総合支援法」という。)等の一部改正が盛り込まれた障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案を提出し、同法律案は同年12月に成立・公布された。
法に関する主な改正事項は、障害者総合支援法において創設される就労選択支援による支援を受けた者のうち一般就労を希望する者に対して、公共職業安定所において、その結果を参考に職業指導等を実施すること、特に短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者に対する就労機会の拡大のため、これらの者を実雇用率において算定できるようにすること、障害者雇用調整金等の支給方法を見直し、企業が実施する職場定着等の取組に対する助成措置を強化すること等であり、適正かつ円滑な施行に向けた取組を進める。なお、障害者総合支援法の改正事項として、就労選択支援の創設等のほか、市町村や障害福祉サービス事業者等の連携先として障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センターが明示的に規定されたことにも留意することとする。
また、令和5年3月には、令和5年度から令和9年度までの5年間を対象とする第5次障害者基本計画を策定し、働く意欲のある障害者がその適性に応じて能力を十分に発揮することができるよう、多様な就業の機会を確保するとともに、就労支援の担い手の育成等を図ることとした。
この計画においては、令和9年度に雇用率達成企業の割合を56.0%とすること、令和5年度から令和9年度までの累計で公共職業安定所を通じた障害者就職件数を62.2万件とすること等を目指すこととし、その目標の達成に努めることとする。
さらに、少なくとも5年に1度見直すこととされている法定雇用率について、令和5年度中は現行のまま据え置き、令和6年4月から、民間事業主については2.3%から2.7%に、公務部門については2.6%から3.0%(都道府県等の教育委員会については2.5%から2.9%)(ただし、令和8年6月までは民間事業主について2.5%、公務部門については2.8%(都道府県等の教育委員会については2.7%))に引き上げ、また、令和7年4月からは除外率を10ポイント引き下げることとしている。
これらを踏まえ、各事業主における障害者の職場・職域の拡大の取組への支援を適切に行っていくことに加え、障害者の雇用の質の向上のための支援を進めていくことが重要である。
加えて、障害者本人と企業双方に対して必要な支援ができる専門人材の育成・確保を行うとともに、適切な役割分担と連携の下、地域の支援機関の支援力の底上げを図っていくことにより、福祉と雇用の切れ目のない支援を実施していく。さらに、障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るためには、公務部門を含む事業主をはじめとする国民一般の障害者雇用への理解が不可欠であることを念頭に置きつつ、引き続き人権の擁護の観点を含めた障害特性等に関する正しい理解を促進することが重要である。
このほか、使用者による障害者虐待については、平成24年10月に施行された障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号。以下「障害者虐待防止法」という。)に基づき、その防止を図る。
また、令和4年9月に国連障害者権利委員会から示された総括所見等を踏まえ、雇用の分野における障害者の差別の禁止や合理的配慮の更なる推進を図ることなど、必要な措置を講ずる。
3 方針の運営期間
この方針の運営期間は、令和5年度から令和9年度までの5年間とする。
第1 障害者の就業の動向に関する事項
1 障害者人口の動向
(1) 身体障害者人口の動向
身体障害者数は、直近のデータによると、平成28年において、在宅の者428.7万人(平成28年厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」)、施設入所者7.3万人(平成30年厚生労働省「社会福祉施設等調査」等)となっている。
在宅の者について程度別の状況(平成28年)をみると、1級及び2級の重度身体障害者は204.3万人となっており、重度身体障害者は身体障害者総数の47.7%を占めている。
また、年齢別の状況(平成28年)をみると、65歳以上の者が311.2万人とその72.6%を占めており、一段と高齢化が進んでいる。
なお、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)に基づく身体障害者手帳所持者は、身体障害者手帳交付台帳登載数でみると、令和3年3月末現在で497.7万人(令和2年度厚生労働省「福祉行政報告例」)であり、平成30年3月末時点(510.8万人(平成29年度「福祉行政報告例」))と比べて減少している。
(2) 知的障害者人口の動向
知的障害者数は、直近のデータによると、平成28年において、在宅の者96.2万人(平成28年「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」)、施設入所者13.2万人(平成30年「社会福祉施設等調査」)となっている。
在宅の者について程度別の状況をみると、重度の者37.3万人、その他の者55.5万人となっている(平成28年「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」)。
なお、「療育手帳制度について」(昭和48年9月27日厚生省発児第156号)による療育手帳所持者は、療育手帳交付台帳登載数でみると、令和3年3月末現在で117.9万人(令和2年度「福祉行政報告例」)である。平成30年3月末時点(108.0万人(平成29年度「福祉行政報告例」))と比べて増加しており、理由として、以前に比べ知的障害に対する認知度が高くなっていることが考えられる。
(3) 精神障害者人口の動向
精神障害者数は令和2年において、在宅586.1万人、入院28.8万人(令和2年厚生労働省「患者調査」)となっている。このうちには、統合失調症、気分〔感情〕障害(そううつ病を含む。)、神経症性障害、てんかん等種々の精神疾患を有する者が含まれている。
また、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)に基づく精神障害者保健福祉手帳は、令和3年3月末現在で118.0万人に対して交付されており、その内訳を障害等級別にみると、1級(精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの)の者は12.8万人、2級(精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの)の者は69.4万人、3級(精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの)の者は35.8万人となっており(令和2年度厚生労働省「衛生行政報告例」)、平成30年3月末時点(それぞれ99.2万人、12.1万人、59.1万人、28.1万人(平成29年度「衛生行政報告例」))と比べて、増加している。
2 障害者の就業の動向
(1) 障害者の就業状況
直近のデータによると、平成28年において、身体障害者の就業者の割合は37.3%、知的障害者の就業者の割合は21.0%、精神障害者の就業者の割合は30.9%(平成28年「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」)となっている。
直近の傾向としては、令和4年6月1日時点において、民間における障害者の雇用者数は19年連続で過去最高を更新している(令和4年厚生労働省「障害者雇用状況報告」)。また、同月時点における就労系障害福祉サービスの利用者は44.8万人(国民健康保険団体連合会データ)であり、年々増加している。
(2) 障害者の雇用状況
43.5人以上の常用労働者を雇用している民間の事業主の令和4年6月1日時点における障害者の雇用状況を見ると、雇用障害者数は61.4万人、実雇用率は2.25%となっている。また、法定雇用率達成企業の割合は48.3%となっている。障害種別毎の雇用状況を見ると、身体障害者は35.8万人、知的障害者は14.6万人、精神障害者は11.0万人となっている。企業規模別の状況を見ると、43.5人以上100人未満規模の企業の実雇用率は1.84%、100人以上300人未満規模では2.08%、300人以上500人未満規模では2.11%、500人以上1,000人未満規模では2.26%、1,000人以上規模では2.48%となっている。規模の大きい企業で実雇用率が高く、規模の小さい企業の実雇用率が低い。
また、障害者の雇用義務のある企業の30.0%は、一人も障害者を雇用していない状況となっている。
なお、公務部門について、国の機関(立法・司法・行政機関)の同日時点における障害者の雇用状況を見ると、雇用障害者数は9,703.0人、実雇用率は2.85%となっている。障害種別毎の雇用状況を見ると、身体障害者は5,837.5人、知的障害者は292.5人、精神障害者は3,573.0人となっている。
地方公共団体の機関(教育委員会を含む。)の同日時点における障害者の雇用状況を見ると、雇用障害者数は61,445.5人、実雇用率は2.53%となっている。障害種別毎の雇用状況を見ると、身体障害者は48,418.0人、知的障害者は2,564.5人、精神障害者は10,463.0人となっている。
一方、公共職業安定所における障害者である有効求職者は35.9万人(令和3年度)であるが、そのうち身体障害者は11.3万人、知的障害者は5.5万人、精神障害者は16.3万人となっており、精神障害者の占める割合が年々増加している。また、身体障害者のうち重度身体障害者は4.5万人、知的障害者のうち重度知的障害者は1.1万人となっている。また、公共職業安定所における障害者の就職件数は9.6万件(令和3年度)であるが、そのうち身体障害者は2.1万件、知的障害者は2.0万件、精神障害者は4.6万件となっており、精神障害者の占める割合が年々増加している。また、身体障害者のうち重度身体障害者は0.7万件、知的障害者のうち重度知的障害者は0.3万件となっている。加えて、近年、手帳を所持していない発達障害や高次脳機能障害等のその他の障害者が増加し、これらの有効求職者数は2.8万人(令和3年度)となっている(令和3年度厚生労働省「障害者の職業紹介状況等」)。
さらに、障害者の解雇者については、令和3年度における公共職業安定所に届け出られた障害者解雇者数は1,656人である(令和3年度「障害者の職業紹介状況等」)。
第2 職業リハビリテーションの措置の総合的かつ効果的な実施を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項
精神障害者を中心に障害者の就労意欲が高まってきている中、就労を希望する障害者の障害種別については、発達障害、難病等に起因する障害、高次脳機能障害、若年性認知症、各種依存症等の多様化がみられる。これらに対応して、障害者や事業主の職業リハビリテーションに対する需要は多様化、複雑化しており、このような中で、福祉、教育、医療等の関係機関と連携しながら、障害の種別及び程度に応じた職業リハビリテーションの措置を総合的かつ効果的に実施し、障害者の職業的自立を進めていくことが重要となっている。今後は、こうした観点から、以下に重点を置いた施策の展開を図っていくものとする。また、こうした施策については、障害者及び事業主その他関係機関への周知を図るものとする。
1 障害の種類及び程度に応じたきめ細かな支援技法等の開発、推進
職業リハビリテーションの措置の総合的かつ効果的な実施を図るためには、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな支援技法等の開発を進めるとともに、職業指導、職業訓練、職業紹介、職場定着を含めた就職後の助言・指導等段階ごとにきめ細かく各種の支援を実施していくことが重要である。また、技術革新、企業形態の変化、高齢化等企業を取り巻く環境が変化する中で、障害者の職業生活における諸問題に適切に対応していく必要もある。このため、障害者職業総合センターにおいて、発達障害、難病等に起因する障害、高次脳機能障害、若年性認知症、各種依存症等障害の多様化への対応を含め、障害の種類及び程度に応じた職業リハビリテーションの技法等の開発に努めるとともに、広域障害者職業センターとも連携を図りつつ、地域障害者職業センターが中核となって関係行政機関、福祉、教育、医療等の関係機関、企業との密接な連携の下に職業リハビリテーションを推進する。
2 きめ細かな支援が必要な障害者に対する職業リハビリテーションの推進
発達障害、難病等に起因する障害、高次脳機能障害、若年性認知症、各種依存症等障害が多様化してきている中で、障害者を雇用に結びつけ、職場に定着させるためには、地域の福祉、教育、医療等の関係機関と連携しながら、個々の障害者の障害特性及び職場の状況を踏まえた専門的できめ細かな人的支援を行う必要がある。その際、こうしたきめ細かな支援が必要な障害者に対しては、アセスメントにより障害特性や職業上の課題を把握し、その自己理解を進めるための支援や、障害特性を踏まえた合理的配慮等を事業主に伝えるための支援を行うほか、職場実習やチャレンジ雇用等を通じて、実際の作業現場を活用した職業リハビリテーションを引き続き推進する。
また、公共職業安定所が中心となって地域で「障害者就労支援チーム」を編成し、就職に向けた準備段階から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」の一層の充実等、公共職業安定所のマッチング機能の強化を図るほか、障害者トライアル雇用事業や、障害者が就職を目指して実習を行っている現場や雇用されて働いている職場における職場適応援助者(ジョブコーチ)による専門的な支援を実施するものとし、就労系障害福祉サービスによる一般雇用への移行や職場定着のための取組とも連携しつつ、障害者の就職及び職場定着の促進を図る。
特に、特別支援学校、高等学校及び大学等による障害のある生徒・学生の企業への就労と定着の支援を進めるため、雇用、福祉等の関係機関において教育機関と十分に連携・協力し、個別の教育支援計画の作成・活用や在学中における職場実習の実施等を通じて、在学中から卒業後まで一貫したきめ細かな支援を行う。
さらに、公共職業安定所に精神障害、発達障害、難病等に起因する障害等の障害特性に対応した専門職員を配置し、必要に応じ強化を図るなど、きめ細かな就労支援体制の充実を図る。また、精神障害や発達障害のある者の雇用経験が少ないこと等により、その雇用に課題を抱えている事業主に対して、障害特性の理解促進や雇用管理に関する助言を行うなど、採用準備から採用後の職場定着までの支援等を行う。加えて、支援を希望する精神障害者保健福祉手帳等を所持していない者についても、個人の特性等に応じ活躍できるよう、公共職業安定所における専門的な就労支援を進めていくほか、その就労の困難性の判断の在り方について検討を進める。
3 職業能力開発の推進
障害者が職業に就くために必要な能力を習得する機会を確保するため、障害者職業能力開発校においては、職業訓練上特別な支援を要する障害者や、一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受講することが困難な障害者等に対して、障害特性や程度に配慮した職業訓練を実施する。特に、技術革新を踏まえた新たな業務に対応した職業訓練や、新規求職者の増加が著しい精神障害者や発達障害者等に対応した職業訓練の設定を促進する。また、より効果的な職業訓練を推進するため、障害を補うための職業訓練支援機器等の開発、整備、普及や専門家による支援を行うとともに、職業訓練手法の充実・向上に努める。
加えて、令和4年の法改正により、事業主の責務に、適当な雇用の場の提供、適正な雇用管理等に加え、職業能力の開発及び向上に関する措置が含まれることが明確化され、技術革新に伴う職務内容の多様化や中途障害者(在職中に疾病・事故等により障害者となった者をいう。)への支援のニーズが高まっていることから、事業主に対する雇用管理に係る助言・指導の場等を活用した周知・普及を進めつつ、在職する障害者の職業能力の向上を図るための在職者訓練を強化していく。また、事業所においても在職障害者に対する効果的な職業能力開発が行われるよう、関係機関との密接な連携の下、必要な周知・啓発を行うとともに、事業主や障害者に対する相談、援助等の支援を行う。
また、都道府県の設置する一般の公共職業能力開発施設においても、障害者に対する職業訓練技法等の普及を推進することにより、障害者に配慮した訓練科目の設置等を進める。
加えて、それぞれの地域において障害者に可能な限り多くの職業訓練機会を提供するため、民間の教育訓練機関や社会福祉法人、企業等、多様な職業能力開発資源を活用した委託訓練を幅広く実施する。特に、精神障害者や発達障害者に対する職業訓練機会を拡充するために、障害特性に配慮した訓練カリキュラムや指導技法等の普及を促進する。さらに、障害の多様化等が進んでいる特別支援学校等の生徒については、在学中から職業訓練機会の提供を行う。また、在宅等での訓練の受講機会の確保や職業訓練機会の乏しい地域における対応のため、インターネットを活用した職業訓練機会を充実していく。
あわせて、障害者の職業能力開発を効果的に行うため、地域における雇用、福祉、教育等の関係機関が連携の強化を図りながら職業訓練を実施するとともに、障害者の職業能力の開発・向上の重要性に対する事業主や国民の理解を高めるための啓発に努める。
4 実施体制の整備
障害者の職業的自立を進めるためには、障害者が生活している地域社会において、福祉、教育、医療等の関係機関との緊密な連携の下に、企業のニーズを踏まえつつ、きめ細かな職業リハビリテーションの措置を提供していくとともに、各支援機関が役割分担をしつつ個々の障害者のニーズに対応した長期的な支援を総合的に行うためのネットワークを地域ごとに構築することが重要である。このため、公共職業安定所、障害者職業センターを始めとする職業リハビリテーション実施機関において、より個別性の高い支援を必要とする障害者に対して専門的な相談・援助を行う等職業リハビリテーションの措置を充実するとともに、地域の支援機関に対する助言・援助を広く実施する。また、障害者が、雇用の分野と福祉の分野との間を円滑に移行できるようにするためにも、障害者の雇用を支援するネットワークの形成や障害者総合支援法に基づく都道府県や市町村の協議会(就労支援部会)等への公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等の参画等を進め、福祉、教育、医療等の関係機関との連携を強化する。
特に、地域レベルでは、雇用、福祉、教育、医療等の関係機関との連携を図りつつ就業面と生活面の双方の支援を一体的かつ総合的に提供する障害者就業・生活支援センターについて、地域のニーズなどを踏まえつつ、更なる計画的な設置を進める。加えて、就職後の職場定着も含めた支援ニーズや支援実績等に応じた就業支援担当者等の配置による支援体制の充実や障害者、企業双方のニーズに迅速に対応するためのコーディネート機能の強化、障害者就業・生活支援センター間のネットワーク形成の促進等による支援水準の向上を図る。さらに、同センターは地域における中核的な支援機能を担う機関として、他の支援機関に対するスーパーバイズ(個別の支援事例に対する専門的見地からの助言及びそれを通じた支援の質の向上に係る援助)や、困難事例への対応を更に進めるとともに、地域障害者職業センターとの連携を推進する。
また、職業リハビリテーションの措置の開発を推進するため、障害者職業総合センター等の機能の向上を図る。
さらに、地域の就労支援体制強化のため、地域障害者職業センターの機能強化を図るとともに、職場適応援助者(ジョブコーチ)の専門性の向上や量的な拡大を更に図っていく。
なお、公務部門においては、民間企業に率先して障害者雇用を進める立場として、障害者雇用に係る自律的な取組を一層促進するために、各府省等向けのセミナー等を開催するとともに、公共職業安定所等に配置する職場適応支援者による職場訪問に加え、各機関の職員に対する障害者の職場適応支援者の養成事業等を通じた支援を行う。また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のノウハウについて、各機関における活用を促進する。
5 専門的知識を有する人材の育成
精神障害者を中心とした障害者の就労意欲が高まっているとともに、発達障害、難病等に起因する障害、高次脳機能障害、若年性認知症、各種依存症等障害の多様化、障害者の高齢化が進展し、必要とされる障害者の職業リハビリテーションも多様化、複雑化している中で、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな職業リハビリテーションの措置を講ずるためには、様々な障害特性や措置に関する専門的知識を有する人材の育成が重要であり、こうした取組を更に進めていく必要がある。さらに、福祉と雇用の切れ目のない支援を可能とするために、障害者本人と企業の双方に対して必要な支援ができる専門人材の育成・確保が必要である。
このため、公共職業安定所職員、障害者職業カウンセラー、職場適応援助者(ジョブコーチ)、就業支援担当者等に対して必要な知識の付与、専門的技法の指導等を行い、職業リハビリテーションに従事する人材の養成と資質向上をより一層積極的かつ着実に推進する。特に精神障害者や視覚障害者、聴覚障害者などの特定の障害への対応を図る。また、職場適応援助者(ジョブコーチ)については、多様な支援ニーズや個々の課題に柔軟に対応でき、必要に応じ地域の関係機関による支援につなげることができるよう、階層的な研修体制を構築する。
また、これとあわせて、令和4年の法改正により、障害者職業総合センター及び地域障害者職業センターの業務に関係機関への研修の実施が含まれることが明確化されたことを踏まえ、障害者の就労支援に携わる雇用・福祉分野の人材が両分野に横断的に求められる知識等を習得できるよう、障害者職業総合センター及び地域障害者職業センターが協働して「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修」を新たに実施する。加えて、当該人材の更なるステップアップのための研修や、地域の関係機関に対して計画的・体系的な人材育成の提案等を行うこと等により、地域の就労支援を支える人材の育成と資質向上の強化を図る。
さらに、法に基づき企業が選任する障害者職業生活相談員等の資質の向上にも努め、産業医、精神保健福祉士、公認心理師等の専門家の活用を図る。
なお、これらの専門的知識を有する人材の育成に当たっては、障害者自身の有する経験や実際に障害者が雇用されている事業所において経験的に獲得された知識、技法等の活用を図る。
6 テレワークの推進
ICT等の活用により、通勤が困難な障害者、感覚過敏等により通常の職場での勤務が困難な障害者、地方在住の障害者等の雇用機会を確保し、これらの者が能力を発揮して働けるよう、好事例を周知するほか、企業が、テレワークを導入するに当たり適正な雇用管理や障害特性に応じた配慮等に加え、必要な環境整備ができるように支援を行うことにより、テレワークの推進を図る。
第3 事業主が行うべき雇用管理に関して指針となるべき事項
事業主は、法の規定に基づき、障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供を実施するとともに、関係行政機関や事業主団体の援助と協力の下に、以下の点に配慮しつつ適正な雇用管理及び職業能力の開発・向上に関する措置を行うことにより、障害者がその希望や障害特性に応じ、その能力や適性を十分発揮でき、障害のない人とともに生きがいを持って働けるような職場作りを進めることを通じて、雇用の質の向上が図られるよう努めるものとする。
さらに、公務部門においては、以下の点に配慮した適正な雇用管理に必要な取組を率先して行うこととした上で、法の規定に基づき、別に定める障害者活躍推進計画作成指針に即して各機関が作成する障害者活躍推進計画に基づき、障害者の活躍を推進するものとする。
1 基本的な留意事項
(1) 採用及び配置
障害者個々人の能力が十分発揮できるよう、障害の種類及び程度を勘案した職域を開発することにより積極的な採用を図る。また、採用試験を行う場合には、募集職種の内容や採用基準等を考慮しつつ、応募者の希望を踏まえた点字や拡大文字、音声の活用、手話通訳者等の確保、試験時間の延長や休憩の付与等、応募者の能力を適切に評価できるような配慮を行うよう努める。
さらに、採用後や復職後においても、合理的配慮の一環として、継続的な職務の選定、職域の開発、職場環境の改善等を図りつつ、障害者個々人の希望や適性と能力を考慮した配置を行うとともに、多様な職務を経験できるような配置を行うよう努める。
(2) 教育訓練の実施
障害者の活躍促進のために、障害特性や職務の遂行状況、その能力等を踏まえながら、必要に応じ教育訓練を実施するよう努める。その上で、障害者は職場環境や職務内容に慣れるまでより多くの日時を必要とする場合があることに配慮し、十分な教育訓練の期間を設ける。
さらに、技術革新等による職務内容の変化への対応や、加齢等の影響から様々な課題が生じた場合の対応など、障害者の雇用の継続が可能となるよう能力向上のための教育訓練の実施を図る。
これらの教育訓練の実施に当たっては、障害者職業能力開発校等関係機関で実施される在職者訓練等の活用も考慮する。
(3) 待遇
障害者個々人の能力の向上や職務遂行の状況を適切に把握し、必要な合理的配慮を行うとともに、適性や希望等も勘案した上で、その能力の正当な評価、多様な業務の経験、困難又は高度な業務に従事する機会の提供等、キャリア形成にも配慮した適正な待遇に努める。
なお、障害者である短時間労働者(令和6年4月からは特に短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者を含む。)についても実
用率の算定対象となっているが、こうした障害者である短時間労働者について実態把握に努める。さらに、障害者である短時間労働者が通常の所定労働時間働くこと等を希望する旨の申出があったときは、事業主は、当該障害者の有する能力に応じた適正な待遇を行うよう努めることとされており(法第80条)、社会保険料負担を免れる目的で、その雇用する障害者の勤務形態を一方的に短時間労働に変更することは、適正な待遇ではなく、本人の希望、能力等を踏まえた適正な待遇を行うよう努める。
(4) 安全・健康の確保
障害の種類及び程度に応じた安全管理を実施するとともに、職場内における安全を図るために、職場環境、業務内容等の随時点検を行う。また、非常時においても安全が確保されるよう施設等の整備や安全衛生教育の実施を行う。
さらに、法律上定められた健康診断の実施はもとより、障害特性に配慮した労働時間の管理等、障害の種類及び程度に応じた健康管理の実施を図る。
(5) 職場定着の推進
障害者の職業の安定を図るためには、雇入れの促進のみならず、雇用の継続が重要であることから、障害があるために生じる個々人の課題を把握するとともに、個々人の就労の状況を適切に把握し、必要に応じ公共職業安定所やその他の地域の支援機関と連携しつつ、適正な雇用管理を行うことにより、職場への定着を図る。
また、法に基づき企業が選任することとされている、障害者の雇用の促進及びその雇用の継続のための諸条件の整備を図る等の業務を行う障害者雇用推進者や、障害者の職業生活に関する相談及び指導を行う障害者職業生活相談員について、雇用する労働者の中からその業務に適した者を選任し、障害者就業・生活支援センターと連携しつつ、生活面も含めた相談支援を図る。これらに加え、社内での配置も含め職場適応援助者(ジョブコーチ)を活用することや障害者が働いている職場内において関係者によるチームを設置すること等により、障害者の職場定着の推進を図る。
(6) 障害及び障害者についての職場全体での理解の促進
障害者が職場に適応し、その有する能力を最大限に発揮することができるよう、職場内の意識啓発を通じ、事業主自身はもとより職場全体の、障害及び障害者についての理解や認識を深める。
特に精神障害及び発達障害について、各都道府県労働局が開催する「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」の出前講座を活用するなどにより職場内全体の理解の促進を図る。
(7) 障害者の人権の擁護、障害者差別禁止及び合理的配慮の提供
障害者虐待防止法に基づき、事業主は障害者虐待の防止等を図る。
また、障害者差別及び合理的配慮の提供について、企業内での相談体制を整備し、適切に対応するとともに、企業内で問題が生じ自主的な解決が困難な場合には、その問題解決及び再発防止のために、都道府県労働局長による紛争解決援助や障害者雇用調停会議による調停を活用する。
2 障害の種別に応じた配慮事項
(1) 身体障害者
身体障害者については、障害の種類及び程度が多岐にわたることを踏まえ、職場環境の改善を中心として以下の事項に配慮する。
なお、次のイからハまでに関して、身体障害者補助犬法(平成14年法律第49号)に基づき、令和6年4月から、常用労働者を37.5人(令和8年6月までは40人)以上雇用している事業主並びにその特例子会社及び関係会社は、その事業所に勤務する身体障害者が身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬をいう。)を使用することを拒んではならないこととされ、また、その他の事業主についても拒まないよう努めることとされており、同法に基づき適切に対応する。
イ 視覚障害者については、通勤や職場内における移動ができるだけ容易になるよう配慮する。
また、視覚障害者の約65%を重度障害者が占めることを踏まえ、個々の視覚障害者に応じた職務の設計、職域の開発を行うとともに、必要に応じて、照明や就労支援機器等施設・設備の整備や、援助者の配置等職場における援助体制の整備を図る。加えて、在職中に視力が低下した労働者が、できるだけ過去に経験した業務についての知識・ノウハウを生かすことができるような業務の選定を検討する。
さらに、実態として、あん摩・はり・きゅうといったいわゆる「あはき業」における就労に占める割合が大きい中で、ヘルスキーパー(企業内理療師)や特別養護老人ホーム、通所介護事業所、短期入所生活介護事業所等における機能訓練指導員としての雇用等、職域の拡大に努める。また、ICT等の技術革新の進展状況を踏まえるとともに、障害特性も生かした職域の更なる拡大にも努める。
ロ 聴覚・言語障害者については、個々の聴覚・言語障害者に応じて職務の設計を行うとともに、光、振動、文字等、視覚等による情報伝達の設備の整備や、手話のできる同僚等の育成を図ること等により職場内における情報の伝達や意思の疎通を容易にする手段の整備を図る。そのほか、会議、教育訓練等において情報が得られるよう、手話通訳者や要約筆記者の配置等職場における援助体制の整備を図る。
ハ 肢体不自由者については、通勤や職場内における移動ができるだけ容易になるよう配慮するとともに、職務内容、勤務条件等が過重なものとならないよう留意する。また、障害による影響を補完する設備等の整備を図る。
ニ 心臓機能障害者、腎臓機能障害者等のいわゆる内部障害者については、職務内容、勤務条件等が身体的に過重なものとならないよう配慮するとともに、必要に応じて、医療機関とも連携しつつ職場における健康管理のための体制の整備を図る。
ホ 重度身体障害者については、職務遂行能力に配慮した職務の設計を行うとともに、就労支援機器の導入等作業を容易にする設備・工具等の整備を図る。また、必要に応じて、援助者の配置等職場における援助体制を整備する。
さらに、勤務形態、勤務場所等にも配慮する。特に、令和6年4月から、特に短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く重度身体障害者について、実雇用率への算定が可能となっていることも踏まえ、当初は長時間の勤務が困難な重度身体障害者については、採用に当たり本人の適性や状況を見極めた上で職務内容や勤務時間を決定し、採用後は常用雇用に向けて、勤務時間を段階的に引き上げながら円滑に職場に定着できるよう配慮する。
ヘ 中途障害者(在職中に疾病・事故等により障害者となった者をいう。以下同じ。)については、必要に応じて休職期間、研修期間等を確保した上、円滑な職場復帰を図るため、全盲を含む視覚障害者に対するロービジョンケアの実施等、パソコンやOA機器等の技能習得を図るとともに、必要に応じて医療、福祉等の関係機関とも連携しつつ、地域障害者職業センター等を活用した雇用継続のための職業リハビリテーションの実施、援助者の配置等の条件整備を計画的に進める。
また、職場における就業上の困難性の把握及び支援が、その後の職業生活において重要であるため、職場において、産業医、医療機関等との連携体制を構築しながら、メンタルヘルス対策、健康診断等による障害の早期把握、必要な職業訓練、職務の再設計等の取組を行うことが重要である。
(2) 知的障害者
知的障害者については、複雑な作業内容や抽象的・婉曲な表現を理解することが困難な場合があること、言葉により意思表示をすることが困難な場合があること等と同時に、十分な訓練・指導を受けることにより、本人が有する能力を発揮して働くことができることを踏まえ、障害者本人への指導及び援助を中心として以下の事項に配慮する。
イ 作業工程の分解、適切な作業の抽出、再構築等による職域開発に加え、ICT等の活用により、新たな業務への配置や、より付加価値の高い業務の創出を図る。また、施設・設備の表示を平易なものに改善するとともに、作業設備の操作方法を容易にする。
ロ 必要事項の伝達に当たっては、分かりやすい言葉遣いや表現を用いるよう心がける。
ハ 日常的な相談の実施により心身の状態を把握するとともに、雇用の継続のためには家族等の生活支援に関わる者の協力が重要であることから、連絡体制を確立する。
ニ 重度知的障害者については、生活面での配慮も必要とされることを考慮しつつ、職場への適応や職務の遂行が円滑にできるよう、必要な指導及び援助を行う者を配置する。また、令和4年の法改正により、令和6年4月から、特に短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く重度知的障害者について、実雇用率への算定が可能となっていることも踏まえ、当初は長時間の勤務が困難な重度知的障害者については、採用に当たり本人の適性や状況を見極めた上で職務内容や勤務時間を決定し、採用後は常用雇用に向けて、勤務時間を段階的に引き上げながら円滑に職場に定着できるよう配慮する。
ホ 十分な指導と訓練を重ねることにより、本人が有する能力を発揮して働くことができることを考慮し、知的障害者の職業能力の向上に配慮する。
また、近年では、製造業のみならず、サービス業や卸売・小売業等、知的障害者が従事する業種が拡大していることを踏まえ、知的障害者の特性や能力に応じた就業が可能となるよう、職域の拡大を図る。
(3) 精神障害者
精神障害者については、臨機応変な判断や新しい環境への適応が苦手である、疲れやすい、緊張しやすい、精神症状の変動により作業効率に波がみられることがある等の特徴が指摘されていることに加え、障害の程度、職業能力等の個人差が大きいことを踏まえ、労働条件の配慮や障害者本人への相談・指導・援助を中心として以下の事項に配慮する。
イ 本人の状況を踏まえた根気強く分かりやすい指導を行うとともに、ある程度時間をかけて職務内容や配置を決定する。
ロ 職務の難度を段階的に引き上げる、短時間労働から始めて勤務時間を段階的に延長する、本人の状況に応じ職務内容を軽減する等必要に応じ勤務の弾力化を図る。特に、令和4年の法改正により、令和6年4月から、特に短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く精神障害者について、実雇用率への算定が可能となっていることも踏まえ、当初は長時間の勤務が困難な精神障害者については、採用に当たり本人の適性や状況を見極めた上で職務内容や勤務時間を決定し、採用後は常用雇用に向けて、本人の意向を踏まえつつ、勤務時間を段階的に引き上げながら円滑に職場に定着できるよう配慮する。
ハ 日常的に心身の状態を確認するとともに、職場での円満な人間関係が保てるよう配慮する。また、通院時間、服薬管理等の便宜を図る。
ニ 職場への適応、職務の遂行が円滑にできるよう、必要な指導及び援助を行う者を配置するとともに、必要に応じて職場適応援助者(ジョブコーチ)の活用も図る。
ホ 本人の希望を踏まえ、多様な業務の経験、教育訓練、困難又は高度な業務に従事する機会の提供等、能力開発やキャリア形成を図る。
ヘ 企業に採用された後に精神疾患を有するに至った者については、企業内の障害者職業生活相談員や産業医等による相談・指導・援助を実施し、支援に努めるとともに、休職に至った場合には、地域障害者職業センターによる職場復帰支援(リワーク支援)、産業保健総合支援センターや精神保健福祉センターによる支援等の活用により、医療・保健機関や職業リハビリテーション機関との連携を図りながら、円滑な職場復帰に努める。
(4) その他障害者
発達障害、難病等に起因する障害、高次脳機能障害、若年性認知症、各種依存症等により長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者については、個々の障害の状況を十分に把握し、必要に応じて障害に関する職場の同僚等の理解を促進するための措置を講ずるとともに、職場内の人間関係の維持や当該障害者に対して必要な援助・指導を行う者の配置、障害状況に応じた職務設計、勤務条件の配慮等を行う。その際、地域障害者職業センターにおいては、こうした個別性の高い専門的な支援を必要とする者に対して、障害特性等に配慮した適切な雇用管理に関する助言等を実施していることから、必要に応じ、同センターとの連携を図る。
第4 障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項
障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るに当たっては、今後とも社会全体の理解と協力を得るよう啓発に努め、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の理念を一層浸透させるとともに、この理念に沿って、障害者が可能な限り一般雇用に就くことができるようにすることが基本となる。この点を踏まえ、公的機関・民間企業に対して雇用率達成に向けた指導を行うことや、更なる積極的な障害者雇用を図るための取組を推進することに加え、障害者の雇用の質の向上のための取組を進める。また、精神障害者をはじめとして、個別性の高い支援が必要な者に重点を置きつつ、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を総合的に講ずることとする。
さらに、障害者の解雇者数は減少傾向にあるものの、引き続き障害者の雇用の維持、解雇の防止及び再就職対策に取り組むとともに、中小企業における雇用の促進、雇用の継続や職場定着を図るなど、以下に重点を置いた施策の展開を図っていくものとする。
1 障害者雇用率制度の達成指導の強化
国の機関においては現在法定雇用率を達成しているが、公的機関の中には法定雇用率を未達成の機関もあることから、全ての機関において、民間企業に率先して雇用率達成を図ることを目指し、その実雇用率等を公表すること等により、引き続き法定雇用率が達成されるよう、指導を強力に実施する。あわせて、各行政機関が作成する障害者活躍推進計画に基づく自律的な取組を推進する。民間企業については、障害者の雇用義務のある企業のうち、一人も障害者を雇用していない企業(以下「障害者雇用ゼロ企業」という。)が約3割となっている状況を踏まえ、達成指導を強力に実施する一方、企業の求人充足に向けた支援や企業に対する「チーム支援」を一層推進する。この際、雇用率の達成のみならず、雇用の質の向上に十分留意しつつ、令和4年の法改正により創設された雇入れ等のための雇用管理に関する援助の助成金の活用等を図るため、地域において障害者雇用にノウハウを有する相談支援事業者の確保等を通じて効果的な支援を実施する。その上で、雇用の状況が一定の基準を満たさない企業については、企業名の公表を実施する。
障害者雇用の更なる促進に当たっては、必要に応じて、特例子会社制度のほか、企業グループに係る算定特例といった制度の積極的な周知を図り、その活用も促す。特に、算定特例のうち、事業協同組合等算定特例については、これまで国家戦略特別区域内においてのみ特例の対象とされていた有限責任事業組合(LLP)が、令和4年の法改正により全国において特例の対象に追加されたため、制度の周知を進め、その活用を促す。また、事業協同組合等算定特例を活用している事業協同組合等及び事業主に対し、各事業主間等において、障害者雇用の取組に差が生じることなく、適切に障害者の雇用が促進されるよう、助言等の支援を積極的に実施していく。
また、除外率制度については、職場環境の整備等をさらに進めつつ、周知・啓発を行いながら、廃止に向けて平成16年度より段階的に縮小を進めることとされており、令和7年4月の10ポイントの引下げに向けた準備を着実に実施するとともに、引下げ後も、除外率が既に法の本則上廃止された経過措置であることを踏まえ、法定雇用率の設定とあわせ、除外率についても段階的に見直し、早期廃止に向けた取組を積極的に進めていく。また、同様に、公務部門についても、除外率設定機関の除外率の引下げに向けた準備を着実に進める。
さらに、除外率設定業種における障害者の雇用状況を把握するとともに、除外率設定業種における雇用事例の収集・提供、職域拡大を図るための措置等を推進することにより、除外率の縮小に対応した障害者の雇用促進につき、支援を行う。
2 精神障害者の雇用対策の推進
企業で雇用される精神障害者の数が増加する中で、精神障害者については、平成30年4月から法定雇用率の算定基礎に加えられ、同月から短時間労働者のカウントに関する特例措置が設けられている。令和5年4月以降も当該措置が延長されているほか、令和6年4月からは、特に短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く者が実雇用率算定の対象となっている。公共職業安定所における精神障害者の新規求職者は引き続き増加傾向にあり、他の障害者と比べても高い伸びとなっている。就労の意欲のある精神障害者は年々増加傾向にある中で、精神障害者の雇用は更なる進展が期待されるところであり、本計画期間中に企業で雇用される精神障害者数を更に増加させることを目指し、企業に対する支援や、精神障害者に対する更なる就労支援の充実を図る。
具体的には、本人の希望を踏まえつつ、週20時間未満での雇用を含む短時間での働き方や障害者短時間トライアル事業等の活用により、段階的に勤務時間を引き上げるとともに、症状の悪化等による一時不調等にも短時間での働き方等により雇用継続を図るなど、適切な雇用管理により職場への定着を推進する。また、福祉、教育、医療等の関係機関との緊密な連携の下に、障害者就業・生活支援センターによる就業面と生活面の一体的な支援、職場適応援助者(ジョブコーチ)や精神障害者雇用トータルサポーターによるきめ細かな人的支援の充実を含め、職業リハビリテーションの措置の的確な実施に努めることにより、雇用の促進及び継続を図る。さらに、職場環境への適応、適切な対人関係や労働習慣の形成等の観点から、就労移行支援事業等との連携を図るほか、令和4年の障害者総合支援法の改正により可能とされた一般就労中における就労系障害福祉サービスの一時的な利用についても、支援の必要性に応じて適切に利用されるよう関係機関との連携を図る。その際、精神障害者をはじめとする障害者が希望する場合には、企業や支援機関等において、支援対象者の障害特性等についての情報を共有し、適切な支援や配慮を講じていくための情報共有のツール(就労パスポート等)を活用し、雇用の促進及び職場定着の促進を図る。
さらに、精神障害者に関する好事例の収集・提供等により、積極的に啓発・広報を行い、事業主の理解の促進を図るとともに、職場の同僚や上司が精神障害について正しく理解し、企業内において温かく見守り支援する応援者を養成するための「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催する。加えて、企業が取り組むメンタルヘルス対策に対する支援として、採用後に精神疾患を有するに至った者に対する地域障害者職業センターにおける職場復帰支援(リワーク支援)を実施する。また、職場復帰(リワーク)に当たっても、本人の希望を踏まえつつ、週20時間未満での雇用を含む短時間での働き方や、就労系障害福祉サービスの一時的な利用等により、段階的に勤務時間を引き上げる等、適切な雇用管理の下、雇用継続を図る。
3 発達障害者、難病患者等に対する支援
発達障害者、難病患者、高次脳機能障害、若年性認知症、各種依存症を有する者等についても、地域障害者職業センター等による職業評価・職業準備支援等の実施、障害者就業・生活支援センターによる生活面も含めた支援、職場適応援助者(ジョブコーチ)や難病患者就職サポーター、発達障害者雇用トータルサポーターの活用等、それぞれの障害特性等に応じたきめ細かな職業リハビリテーションを実施する。その際、発達障害者支援センター、難病相談・支援センター、高次脳機能障害支援拠点機関等、地域の関係機関との連携を図る。
また、外見からは障害があることが分かりにくい、具体的な対応方法が分からない等の事業主の雇用管理上の不安があること、実際に就業することで職場適応上の課題が出現したこと等により、事業主が採用後に発達障害であることを把握等した場合における対応の困難性等を踏まえ、好事例の収集・提供、雇用管理手法の研究等により、事業主の理解の促進を図るとともに、適切な雇用管理が行われるよう支援を行う。さらに、難病患者の就労状況や就労困難性の最新の状況を把握するとともに、企業側の支援ノウハウや地域支援体制の整備状況について実態を把握するため、調査研究を推進する。
4 事業主に対する援助・指導の充実等
障害者雇用に関する好事例を積極的に周知するとともに、発達障害、難病等に起因する障害、高次脳機能障害、若年性認知症、各種依存症等障害が多様化してきていることも踏まえ、障害者の雇用管理に関する先進的な知識や情報の提供等により事業主の取組を促進する。
また、中小企業等における職場実習や、障害者雇用に関するノウハウを有する企業(もにす認定を受けた事業主等)、就労移行支援事業所、特別支援学校等を見学する機会等を活用し、障害者雇用ゼロ企業等の障害者雇用の経験のない事業主に対しても、障害者雇用に対する理解を深め、障害者雇用に取り組むきっかけ作りを行う。
さらに、令和6年4月からの法定雇用率の引上げ、令和7年4月の除外率の引下げを踏まえ、障害者雇用ゼロ企業へのアウトリーチによる提言型「チーム支援」の一層の強化、障害者雇用に知見を有する者による専門的な雇用管理に係る援助、障害者トライアル雇用事業や各種助成金の活用、就職面接会の充実、障害者雇用に関する課題へのコンサルティングの実施等に加え、令和6年4月に新設の、雇入れや雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助の支援に関する助成金も活用することにより、中小企業等に対する支援の充実を図る。
加えて、令和4年の法改正により、事業主の責務に、職業能力の開発及び向上に関する措置が含まれることが明確化されたことを踏まえ、事業主に対する助言等を行い、雇用の質の向上のための取組を促進する。
このほか、障害者の職業の安定を図るためには、雇入れの促進のみならず、雇用の継続が重要であることから、障害者や事業主に対する職場適応指導、きめ細かな相談・援助を行うとともに、職場適応援助者(ジョブコーチ)支援、障害者就業・生活支援センター事業、障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫などを促すための各種助成措置を充実すること等により、適正な雇用管理を促進する。
また、加齢等の影響から様々な課題が生じた場合であっても、障害者の希望に応じて働き続けることができる環境整備を進めるため、令和6年4月に新設の、加齢に伴い職場への適応が困難となった障害者への雇用継続に関する助成金を活用するとともに、障害者就業・生活支援センターにおいて、関係機関と連携し、相談支援を行う。
さらに、地域障害者職業センターにおいて、事業主が抱える障害者雇用に関する課題に対して、必要に応じて外部の専門家と連携し、提案型の専門的な相談支援を推進する。
加えて、障害者雇用納付金制度を適正に運営することにより、障害者雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整するとともに、障害者雇用調整金等の支給方法を見直し、雇用の質の向上のため、事業主による障害者の職場定着等の取組に対する助成金を充実すること等により障害者の雇用の促進及び継続を図る。
障害者雇用納付金の申告・納付及び障害者雇用調整金、報奨金、助成金等の支給申請手続については、事業主の利便性を向上させるため、電子申告申請及び電子納付の利用促進等に努める。
また、障害者雇用納付金については、未納付事業主に対する納付督励・督促の実施等も含め的確に対応し、確実に徴収する。
5 中小事業主の認定制度の普及・実施
個々の中小事業主における障害者雇用の進展に対する社会的な関心を喚起し、障害者雇用に対する経営者の理解を促進するとともに、先進的な取組を進めている事業主が社会的なメリットを受けることができるよう、もにす認定制度を令和2年度から開始したところであるが、その認定数は令和4年9月末時点で184社となっており、その制度や認定を受けた事業主の周知、申請勧奨等を進め、制度の一層の普及を進める。
6 障害者の雇用の維持、解雇の防止と再就職対策の強化等
公共職業安定所において、中途障害者を含む在職中の障害者の状況について、必要に応じ、適時のアセスメントの実施を通じて把握・確認を行う。これにより、離職に至ることを未然に防止するよう、中途障害者を含め障害者に対する相談や事業主に対する指導を実施するとともに、やむなく離職に至った場合には、再就職に向けた相談援助の実施等の雇用支援の強化を行う。また短時間での働き方等を行う障害者に対しては、アセスメントの結果も踏まえ、障害者の希望や能力に応じた労働時間の延長等に向けた支援を行う。
7 重度障害者の雇用・就労の確保
令和4年の法改正により、令和6年4月から、特に短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く重度障害者が実雇用率算定の対象となっていることを踏まえ、その雇用機会の確保につなげる。また、雇用施策と福祉施策が連携して、重度障害者の通勤、職場等における支援に取り組む事業主や地方公共団体に対する助成金制度等の周知や支援により、重度障害者の就労の促進を図る。
さらに、福祉施設等や特別支援学校等から一般雇用に就くために、特に支援が必要な場合については、適切なアセスメントを実施し、移行前の段階から障害者のキャリア形成に配慮した待遇がなされることも念頭に置いて、職場適応援助者(ジョブコーチ)の活用等福祉機関等との連携による雇用支援体制の整備に努めるとともに、職務の見直し、職域の拡大、施設・設備の改善の促進、障害者及び事業主に対する相談等の施策の充実を図る。
8 多様な雇用・就労形態の促進
短時間労働、在宅就労等の普及は障害者がその能力や特性に応じて働くための機会の増大につながるものであり、必要な支援、環境作りに取り組むこととする。特に、通勤が困難な障害者、感覚過敏等により通常の職場での勤務が困難な障害者、地方在住の障害者等に対し、テレワークを推進する。その際、テレワーク中の労働時間の管理等に当たっては、障害者が安心して働くことができるよう適切な雇用管理を行うとともに、障害特性に応じたコミュニケーションの工夫、支援機器の導入等の配慮を行う。また、自宅等で就業する障害者に対し、仕事の受発注や技能の向上に係る援助を行う在宅就業支援団体への登録を促進することにより、在宅就業障害者支援制度の更なる活用を図るとともに、在宅就業障害者の雇用への移行ニーズ等を把握し、適切な支援を行う。
9 適切な雇用管理の確保等
雇用の継続のためには、障害特性に配慮した雇用環境を整えることが重要であることから、令和4年の法改正により新設された助成金も含め、各種助成金も活用しながら、採用から配置、待遇、教育訓練等の様々な局面において、きめ細かな雇用管理が行われるよう、事業主の理解の促進を図る。また、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」の周知や好事例の提供等を行うほか、必要に応じて公共職業安定所による助言・指導等を行うことにより、障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者の有する能力の有効な発揮を図る。
加えて、中央障害者雇用情報センターにおいて、専門家による合理的な配慮を踏まえた雇用管理・就労支援機器の相談等に対応する。また、各都道府県労働局において、障害を理由とした差別、障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者の有する能力の有効な発揮に問題が生じている場合について、障害者雇用調停会議等による迅速な解決を図る。
10 関係機関との連携等
障害者基本計画に基づき、本人の意欲・能力に応じた一般雇用への移行を図るほか、特別支援学校等卒業生や精神障害者の雇用を促進するため、公共職業安定所を中心とした「チーム支援」を推進することや、地域障害者職業センターにおける地域の就労支援を担う人材の育成その他の関係機関に対する助言・援助等をより積極的に行うこと等により、福祉、教育、医療等の関係機関との間の連携・支援を強化する。
また、特に、知的障害者や精神障害者は、職場環境を始めとする環境の変化による影響を受けやすいこと、地域における社会生活面での配慮が不可欠であること等から、地域レベルにおいて、障害者就業・生活支援センターや地方公共団体、社会福祉法人、NPO等の民間部門との連携も図りつつ、生活全般に関わる支援を行うこととする。
このような点を踏まえ、障害者の職業生活に関わる社会環境を地域に根ざした形で、住宅、交通手段等も含め総合的に整備していくことが重要であり、これに対する援助措置の充実に努める。
11 障害者雇用に関する啓発、広報等
障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るためには、国民一人一人の障害者雇用や障害者の職業能力開発、技能の向上の重要性に対する理解や、障害者が一定の配慮・支援があれば就労や職場復帰が十分可能であることについての理解を高めることが不可欠であることから、事業主団体、労働組合、障害者団体の協力も得ながら、事業主、労働者、障害者本人及びその家族や福祉、教育、医療に携わる者等を含め広く国民一般を対象とした啓発、広報を推進する。
また、実際に多くの事業主が障害者の雇用に積極的に取り組んでいることから、これらの取組を好事例として収集し、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する障害者雇用リファレンスサービスの充実等を図り、これを活用した周知・広報等を行うとともに、障害者の雇用に積極的に取り組む事業主が社会的な評価を得られるような広報を推進することにより、障害者雇用の取組の一層の拡大を図る。
なお、平成25年4月に施行された国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号)に基づき、公契約について、競争に参加する者に必要な資格を定めるに当たって法定雇用率を満たしていること、障害者就労施設等から相当程度の物品等を調達していることに配慮する等、障害者の就労を促進するために必要な措置を講ずるよう努める。
12 研究開発等の推進
障害者雇用の実態把握のため、基礎的な調査研究や統計データの収集・整理を計画的に推進する。また、職業リハビリテーションの質的向上、職業リハビリテーションに関する知識及び技術の体系化、障害者の職域拡大及び職業生活の向上を図るため、障害の種類及び程度ごとの障害特性、職業能力の評価、職域の開発・拡大、雇用開発等の障害者雇用に係る専門的な研究を事業主団体等の協力も得て計画的に推進する。さらに、雇用の分野と福祉、教育、医療の分野との間の円滑な移行を確保する上での問題など、障害者の雇用に関する今後の課題に関する研究を積極的に推進することに加え、職業リハビリテーションの関係者や事業主にとって利用しやすいマニュアル、教材、ツール等を作成するとともに、障害特性に応じた効果的な活用及びその指導法の研究開発に努める。
また、発達障害や難病等に起因する障害を含めた障害・疾患等について就労状況や雇用管理に関する情報の収集、蓄積等に努めるとともに、手帳を所持しない者の就労困難性を把握するための研究を行い、特に難病患者については、企業側の支援ノウハウや地域支援体制の整備状況について、実態を把握するための調査研究を推進する。さらに、精神障害者の障害の等級や疾患と就業状況との関連についても、調査研究を進める。あわせて、これらの研究成果については、十分に施策に反映させるとともに関係者に積極的に提供するなど、その活用に努める。
13 国際的な取組への対応等
障害者権利条約やその総括所見等を踏まえ、雇用の分野における障害者の差別の禁止や合理的配慮の更なる推進を図ることなど、必要な措置を講ずるとともに、国際協力を推進する。