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建設雇用改善計画(第十次)
制 定 令和三年三月三十一日厚生労働省告示第百二十八号
改 正 令和六年一月三十日厚生労働省告示第二十五号
建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和五十一年法律第三十三号)第三条第一項の規定に基づき、建設雇用改善計画を次のように策定したので、告示する。
建設雇用改善計画(第十次)
Ⅰ 計画の基本的考え方
1 計画の背景と課題
(1) 経済・雇用情勢等の状況
我が国経済は、新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和2年1月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。以下同じ。)の感染拡大防止のため、国内の社会経済活動の抑制を余儀なくされ、主要貿易相手国における経済活動停止に伴い輸出が大幅に減少するなど経済的な波及経路を広げながら、甚大な影響を受けた。
雇用情勢については、2020年(令和2年)4月から6月までを見ると、新型コロナウイルス感染症の影響により有効求人倍率は大きく低下し、その後も弱い動きとなっているなかで、雇用者数等の動きに底堅さもみられる。
他方、人口が減少し、諸外国が経験したことのないような急激な少子高齢化が進んでおり、我が国の経済社会は大きな転換期を迎えている。人口減少や少子高齢化が、労働力の大幅な減少など様々な影響を与え、経済成長に向けた阻害要因となるおそれがあると指摘されている。
また、中国経済の減速や世界的な情報関連財需要の一服等の影響を受け、2018年(平成30年)後半以降輸出が低下し、企業の生産活動の一部に弱さが続いており、米中通商問題をはじめとした海外経済の動きや不確実性には引き続き注意が必要な状況である。
このような経済状況の下、建設経済の現状を見ると、東日本大震災からの復興需要、国土強靱化の推進、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の施設整備等により建設投資は近年増加傾向で推移してきたが、2020年度(令和2年度)の建設投資見通しは減少に転じた。
さらに、建設労働者の現状を見ると、技術者や技能労働者等、建設関連職種の有効求人倍率は新型コロナウイルス感染症の感染拡大以降も他産業と比較して高い状況となっている。また、建設業の労働力の年齢構成を見ると、他産業に比べて高年齢層(55歳以上)の割合が高い一方、若年層(15~29歳)の割合が低く、また、他産業に比べて新規学校卒業就職者の入職が少なく、定着が悪い状況は深刻化している。
(2) 建設産業における役割と課題
こうした中、建設産業は、社会資本の整備の担い手であると同時に、地域経済・雇用を支え、災害時には、最前線で地域社会の安全・安心の確保を担う地域の守り手として、国民生活や社会経済を支える大きな役割を担う。そのためには、建設産業の持続的な発展が不可欠であるが、今後、熟練技能を有する多くの高年齢層の労働者のリタイアが見込まれる中で、このまま若年者等の入職が進まなければ将来的に技能労働者の不足が深刻化する懸念があり、若年労働者等の確保・育成及び技能継承が極めて重要な課題となっている。
特に、若年労働者の確保・育成の観点からは、建設業で働く若年労働者がライフステージに
応じた生活設計ができるよう、他産業と比較して遜色ない就労環境を確保することが重要であり、建設業の新3K(給与が良い・休暇が取れる・希望がもてる)を実現するため、建設事業主が長時間労働の改善等の働き方改革に積極的に取り組むとともに、賃金の向上等の体系的な処遇改善をはじめとした職場の雇用管理改善や職業能力開発に主体的かつ積極的に取り組むことが肝要である。社会が大きな変化に直面する中で、新しい未来に向けた新たな経済社会の姿を実現するためにも、建設事業主が雇用管理改善等に取り組むための更なる施策を展開し、建設労働者にとって「魅力ある職場づくり」を推進していく必要がある。
また、従来より我が国の建設産業においては、受注生産、個別生産、屋外生産、移動生産、総合生産といった建設生産の特性があるほか、重層下請構造、中小零細企業の割合が高い等といった特徴がある。加えて、これまでの長期にわたる建設投資の減少による競争の激化に伴うダンピング受注やその就労形態への影響等が指摘されている。これらを背景として、不明確な雇用関係、労働災害の多発、労働条件の改善や労働福祉の立ち後れ、適切な職業能力開発の機会の不足等の問題が存在しており、これらの問題への適切な対応については、国土交通省をはじめとする関係省庁と連携を図り、今後も万全を期していく必要がある。
他方、人口減少や少子高齢化による労働力の大幅な減少等による建設産業の持続的な発展への悪影響を軽減させるためには、労働の質を高めることや良質な雇用機会を確保することが必要であるが、そのためには、個々の労働者が生涯を通じて能力開発を行い、その能力を高めることと併せて、そうして労働者が高めた能力を最大限発揮できる環境を整備することが重要な課題となっている。また、将来的に建設産業を活性化していくためには、労働の質を高めて、国際競争力を強化していく視点も重要である。
(3) 施策の最重点事項
以上を踏まえ、建設雇用改善計画(第十次)においては、「若者が展望をもって働ける魅力ある職場づくりの推進」を課題とし、次の事項を最重点事項として、Ⅲの施策を推進していくこととする。
ア 若年者等の建設業への入職・定着促進による担い手の確保・育成
若年者の建設業への入職及び定着の促進を図るとともに、女性や高年齢者が活躍できる就労環境の整備等を図り、担い手の確保・育成に取り組むこと。
イ 魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備
建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定を図りつつ、建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51年法律第33号。以下「建設雇用改善法」という。)等に基づき、建設労働者の雇用の一層の近代化を進め、建設労働者にとって魅力ある労働環境づくりを図ること。
ウ 職業能力開発の促進、技能継承
建設労働を取り巻く環境の変化も踏まえ、事業主等が行う職業能力開発の支援や公的職業訓練を推進し、建設労働者の職業能力の開発や向上を促進するとともに、技能の継承を図ること。
2 計画の期間
この計画の期間は、2021年度(令和3年度)から2025年度(令和7年度)までとする。ただし、今後の建設業や建設業に係る施策の動向等を踏まえ、必要な場合は計画の改正を行うものとする。
Ⅱ 建設雇用等の動向
1 建設経済の動向
(1) 2020年度(令和2年度)の建設投資は、名目では前年度比3.4%減の63兆1,600億円となる見通しである。このうち、政府投資は前年度比3.1%増の25兆6,200億円となる見通しであるが、民間投資は、民間住宅建築投資を中心に前年度比7.3%減の37兆5,400億円となる見通しである。また、実質(2011年度(平成23年度)基準)では同3.8%減の55兆1,342億円となる見通しであり、ピークの1990年度(平成2年度)から38.3%の減少と見込まれている。
建設投資の動向を見ると、名目では、1984年度(昭和59年度)以降、主に民間投資の増加により前年度比プラスで推移し、1992年度(平成4年度)には約84兆円に達した。その後、主に民間投資の減少により1994年度(平成6年度)及び1995年度(平成7年度)は80兆円を下回り、1996年度(平成8年度)に民間住宅投資の増加により一時的に80兆円台となってから減少傾向に転じ、2007年度(平成19年度)には40兆円台まで減少したが、2015年度(平成27年度)は持ち直し、50兆円台を回復した。それ以降増加傾向にあったが、2020年度(令和2年度)は、政府投資は増加となったが民間投資は減少し、全体で6年ぶりの減少となる見通しである。国内総生産(名目)に占める建設投資(名目)の割合も、1986年(昭和61年)以降では1990年度(平成2年度)の18.0%をピークに低下しており、2010年度(平成22年度)は8.4%まで低下したが、その後は景気の回復や東日本大震災からの復興等による需要もあり、回復傾向にある。2020年度(令和2年度)は9.7%となる見通しである。
(2) また、建設業許可業者数は、2019年度(令和元年度)末現在で472,473業者となっており、建設業許可業者数が最も多かった1999年度(平成11年度)末時点と比較すると21.4%の減少となっている。
(3) 今後も、人口減少、少子高齢化等の労働力供給の制約がある中、防災・減災、国土強靱化の推進等による建設需要が見込まれるが、新型コロナウイルス感染症の影響により先行きが不透明となる中、建設投資の減少による価格・工期の競争激化が懸念されるところである。
2 建設労働者の動向
(1) 建設業の就業者数は、1990年度(平成2年度)以降の建設投資(実質)の減少の中でも増加を続けていたが、1997年(平成9年)の685万人(全産業に占める割合は10.4%)をピークに減少に転じ、2010年(平成22年)には498万人となり、その後は同水準で推移している。2019年(令和元年)には499万人(全産業に占める割合は7.4%)となり、ピークの1997年(平成9年)と比較して27.2%の減少となっている。
また、建設業の技能労働者の就業者数は、1997年(平成9年)の455万人をピークに減少しており、2010年(平成22年)には331万人となった。その後、2014年(平成26年)には341万人まで持ち直したが、2019年(令和元年)には324万人となっている。
(2) 建設業の雇用者数も同様の傾向を示しており、1997年(平成9年)の563万人(全産業に占める割合は10.4%)をピークに減少していたが、2010年(平成22年)の405万人(全産業に占める割合は7.4%)以降横ばいとなり、2019年(令和元年)には409万人となっている(全産業に占める割合は6.8%)。
(3) 建設業における雇用者のうち、日雇労働者(雇用契約期間が1か月未満の者)の占める割合は、2019年(令和元年)で0.2%となっており、全産業と同程度の割合となっている。
(4) 建設業の雇用者を事業所規模別に見ると、30人未満規模の小規模零細事業所に雇用されている者の割合は2019年(令和元年)で59.9%(全産業では26.1%)となっており、小規模零細事
業所に雇用されている者の割合が高い状態である。また、建設業の企業従業者規模をみると、職別工事業(設備工事業を除く)の87.0%が1~9人の事業所であり、特に大工工事業では82.4%、板金・金物工事業では77.8%、左官工事業では77.2%が1~4人の小規模零細事業所となっている。
(5) 若年者の入離職の状況については、新規学校卒業就職者に占める建設業就職者の割合は、1996年(平成8年)の8.4%をピークに下降傾向を示し、2009年(平成21年)には4.0%、実数においても1996年(平成8年)の半分以下の2万9千人となった。その後増加に転じ、2019年(令和元年)にはそれぞれ5.2%、4万人となっている。しかしながら、全産業における就業者の7.4%を建設業における就業者が占めていることから、新規学校卒業就職者の建設業への入職は少ないということができる。
建設業に入職した新規高等学校卒業者の入職3年後の離職率については、1985年(昭和60年)以降では、1992年(平成4年)3月卒業者の39.4%を底に、1996年(平成8年)には50%を超え、2003年(平成15年)3月卒業者では57.4%と高い水準となった。その後は低下傾向となり、2008年(平成20年)3月卒業者については43.4%となったあと再び上昇し、2017(平成29年)年3月卒業者については45.8%となっている。全産業と比較しても、1992年(平成4年)3月卒業者については同水準であったものが、2017年(平成29年)3月卒業者については全産業より6.3ポイント高い状況にある。
(6) 建設業の就業者に占める若年層(15~29歳)の割合は、1988年(昭和63年)の14.8%を底に上昇を続け、1997年(平成9年)には22.0%となった。その後下降に転じ、2013年(平成25年)には10.2%まで下がったが、2019年(令和元年)には11.6%と回復傾向となっている。ただし、全産業の16.6%に比べると低くなっている。
建設労働者の高齢化の状況については、建設業に(7)おける就業者に占める高年齢層(55歳以上)の割合は、1978年(昭和53年)以降上昇傾向にあり、2019年(令和元年)には35.3%となった。全産業の30.5%に比べ高齢化が進展している。
また、2019年(令和元年)における建設労働者の平均年齢は45.1歳であり、全産業の43.1歳、製造業の42.7歳と比べるとやや高くなっている。建設業の中でも職種別に見ると、2019年(令和元年)では左官が46.5歳、土工が48.3歳、型枠大工が45.0歳、大工が42.8歳、とび工が41.6歳、鉄筋工が43.8歳など、職種によって平均年齢のばらつきが見られる。
女性の就労状況については、建設業における就業者に(8)占める女性の割合は、1985年(昭和60年)以降では1991年(平成3年)の16.7%をピークに低下し、2010年(平成22年)から2012年(平成24年)までの13.9%を底に回復傾向となり、2019年(令和元年)には16.8%まで増加している。しかしながら、2020年(令和2年)の全産業44.5%及び製造業30.0%に比べるとかなり低くなっている。
また、建設業における技能労働者に占める女性の割合は2019年(令和元年)には3.4%となっている。
(7) 建設分野における外国人材の受入れ状況については、2019年(令和元年)で9.3万人となっており、2011年(平成23年)の1.3万人から7倍以上増加となっている。在留資格別では、技能実習生は6.5万人、外国人建設就労者(特定活動)は5千人、特定技能外国人は1,319人となっている。
3 建設労働者の需給動向
(1) 全体の有効求人倍率は、リーマン・ショック後の2009年(平成21年)の0.47倍から2019年(令和元年)には1.60倍へ回復しており、建設業関連職種の職業別で見ると、建築・土木・測量技術者は0.83倍から5.86倍、建設躯体工事以外の建設の職業は0.64倍から5.02倍、電気工事の職業が0.90倍から3.54倍、土木の職業が0.61倍から5.21倍と高い有効求人倍率を示しているほか、建設躯体工事の職業については、リーマン・ショック後の景気が悪化した時期においても1.74倍、2019年(令和元年)では10.89倍と、特に高い有効求人倍率を示している。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大以降における全体の有効求人倍率は、2020年(令和2年)で1.18倍になったが、建設関連職種は、建築・土木・測量技術者が5.18倍、建設躯体工事の職業が8.93倍、建設躯体工事以外の建設の職業が4.19倍と、依然として高い水準である。
(2) 建設労働者の過不足状況については、全体的には2009年(平成21年)から2011年(平成23年)前半までは過剰であったが、2011年(平成23年)後半以降は不足とする企業が多くなっている。部門別に見ると、2011年(平成23年)後半以降は、ほぼ全ての部門で不足の状況となっているが、専門・技術や技能工の部門で特に不足感が高くなっている。
4 建設労働者の労働条件等の動向
(1) 労働時間の状況を見ると、1997年(平成9年)4月1日からの週40時間労働制の全面適用を経て、建設業における事業所規模5人以上の事業所の1人当たりの年間総実労働時間は、1998年(平成10年)に2,009時間となって以降上昇に転じ、2019年(令和元年)は2,018時間となり、全産業の1,669時間と比べるとかなり長時間労働となっている。
(2) 週休制の導入状況を見ると、建設業において完全週休2日制を導入している企業の割合は、企業規模30人以上の企業に対する調査で、2019年(令和元年)では27.0%と、2001年(平成13年)の23.6%と比較すると普及は進んでいるものの、全産業の44.3%に比して普及が遅れており、土日連続全休制による現場閉所の割合が低いものと考えられる。
また、年次有給休暇の状況については、建設業における2019年(令和元年)の付与日数は17.8日で全産業の18.0日と同程度であったものの、取得日数は7.7日、取得率は43.3%と全産業の取得日数9.4日、取得率52.4%を下回っている。
(3) 建設業における賃金水準については、企業規模10人以上の事業所の生産労働者(男性)の年間の給与額を試算すると、2019年(令和元年)で約462万円であり、2004年(平成16年)の約401万円からほぼ横ばいとなっていたが、2013年(平成25年)以降は上昇傾向にある。2019年(令和元年)には、企業規模10人以上の事業所の全従業員で約550万円、企業規模5人以上9人以下の事業所の全従業員で約400万円と試算される。
なお、企業規模10人以上の事業所における2019年(令和元年)の年間の給与額を試算すると、製造業の生産労働者(男性)で約479万円、全産業の全従業員で約501万円と試算される。企業規模10人以上の事業所における2019年(令和元年)の新規学卒者の初任給は、建設業は20万200円となっており、全産業の19万6,300円、製造業の18万5,600円よりも高くなっている。また、2015年(平成27年)の建設業における新規学卒者の初任給19万2,400円から4.1%の増加となっている。
(4) 労働災害の状況を見ると、建設業における休業4日以上の死傷災害は1978年(昭和53年)以降減少を続けている。死亡災害は1985年(昭和60年)から年間1,000人前後で横ばいで推移していたが、1997年(平成9年)以降は減少に転じ、2019年(令和元年)には269人となった。また、全産業に占める割合は、死傷者数で12.1%、死亡者数で31.8%であり、建設業における労働災害は他の業種と比べて重篤な災害となる傾向を示している。
(5) 建設業における雇用保険の適用事業所数は、2019年度(令和元年度)で412,515事業所となっており、全産業における構成比は18.1%で最も多くなっている。また、2015年度(平成27年度)の適用事業所数342,965事業所から20.3%の増加となっている。
5 職業能力開発の動向
(1) 建設業におけるOFF-JT(業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修))の実施状況を見ると、正社員に対して「OFF-JTを実施した」と回答した建設業の事業所は、2019年度(令和元年度)には84.9%となっており、全産業の実施率の76.0%、製造業の実施率の75.7%より高い状況である。
また、建設業における計画的なOJT(日常の業務に就きながら行われる教育訓練)の実施状況を見ると、正社員に対して「計画的なOJTを実施した」と回答した事業所は、2019年度(令和元年度)には61.3%となっており、全産業の実施率の66.2%、製造業の実施率の65.4%より低い状況である。
(2) 建設業における人材育成に関する問題点の状況を見ると、人材育成に「問題がある」と回答した建設業の事業所は、2019年度(令和元年度)には70.4%となっており、全産業の76.5%、製造業の80.3%より低い状況である。問題点の内訳については、複数回答で「指導する人材が不足している」及び「人材を育成しても辞めてしまう」が54.6%で最も多く、「人材育成を行う時間がない」が44.4%で続いている。
(3) 2019年度(令和元年度)における技能検定受検申請者数のうち建設関連は106,811人(合格者数64,395人)となっており、2017年度(平成29年度)の79,914人(合格者数49,805人)から33.7%の増加となっている。また、等級別の受検申請者数の内訳を見ると、技能実習生を対象とした等級(随時2級、随時3級及び基礎級)の受検申請者数は58,068人(技能実習生への受検が義務化された2017年度(平成29年度)の26,435人から119.7%の増加)、それ以外の等級は48,743人(2017年度(平成29年度)の53,479人から8.9%の減少)となっている。
6 新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、経済・景気は急速に悪化・低迷し、建設業においては新型コロナウイルス感染症について新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条第1項に規定する新型インフルエンザ等緊急事態宣言(以下「緊急事態宣言」という。)がされた2020年(令和2年)4月には一部の工事現場で一時中止等の措置が取られたが、5月中旬以降は建設現場で「三つの密」を避ける対策を講じた上でほぼ全ての工事現場で工事が再開されており(国土交通省直轄工事では、同年7月28日時点で全ての工事・業務が再開)、新型コロナウイルス感染症による建設業の事業継続への影響は他産業に比べて限定的だった。職種別新規求人数については、他産業が対前年同月比マイナスとなる中、2020年(令和2年)6月の対前年同月比は2.6%増)、同年12月は6.5%増となった。
また、2021年(令和3年)1月に、11都府県を対象とした緊急事態宣言がされたが施工中の工事等における感染拡大防止措置や「建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」等の周知徹底を図っていくこととしている(2021年(令和3年)1月時点)。
一方、建設市場に影響を与える企業の設備投資は、9年ぶりにマイナスに転じるとの金融機関の分析もあり、また、建設業は不況の影響が他産業よりも遅れて生じる傾向にあることから、先行きが不透明であることは事実であり、今後、価格や工期で受注競争が激化することが懸念される。
Ⅲ 雇用の改善等を図るために講じようとする施策に関する基本的事項
建設労働者の雇用改善を進めるに当たっては、今後、技能労働者の高齢化の進行等を背景に、技能労働者が不足するおそれがあることから、若年者等を技能労働者として確保・育成していくことが必要である。
また、建設産業に関しては、依然として雇用関係が不明確、他産業と比べて長時間労働、技能労働者が低賃金であるなど労働条件の改善や労働福祉が立ち後れており、また、職業能力開発が十分に行われていないなどの問題があることから、これらの改善を図っていくことが必要である。
このため、建設労働者の職業生活の安定にも十分に配慮した上で、前述の建設雇用等の動向を踏まえ、若年労働者等の確保・育成、建設労働者の雇用改善、労働福祉の増進、職業能力の開発及び向上など雇用の改善を一層促進することにより、建設労働者にとって魅力ある職場とするため、次の施策を積極的に推進する。
1 若年者等の建設業への入職・定着促進による担い手の確保・育成
(1) 若年労働者の確保・育成
技能労働者については、高齢化が他産業に比べて進展しており、入職者は減少傾向にある。今後、熟練技能を有する高年齢層の労働者が大量に離職するとともに、このまま若年者等の入職が進まなければ、将来的に技能労働者が不足する懸念があり、若年労働者の確保・育成が極めて重要な課題となっている。
ア 建設労働に対する理解の促進、建設業の魅力の発信
(ア)若年労働者の確保の観点から、建設業が社会的に評価され、イメージアップにつながるよう、建設業が社会資本の維持、災害対策等に多大な役割を果たしており、地域に不可欠な産業であることなど、国民一般の建設労働に対する正しい理解を促進するための取組を推進する事業主、事業主団体等に対して支援を行うなど、建設業に対する理解の促進に向けて、官民一体となって取り組む。
(イ) 若年者に建設業の役割やその魅力を伝え、建設業で働くことに対する意識や関心を高めるため、小学校、中学校、高等学校等の教育機関や関係行政機関等と連携し、現場見学会、職場体験、インターンシップ、実践的な技術研修等のキャリア教育や、進路指導、職業指導等に取り組む。
イ 建設キャリアアップシステム等の推進による担い手の確保・育成
(ア) 国土交通省と業界団体が推進する「建設キャリアアップシステム」(以下「CCUS」という。)は、建設技能者の就業履歴や保有資格を業界横断的に蓄積し、適正な評価につなげる仕組みであり、「業界共通の制度インフラ」として定着させるため、官民一体となって、その普及・活用を強力に推進する。
(イ) 特に、CCUSへの加入のメリットを更に拡大するため、「建設技能者の能力評価制度」(以下「能力評価制度」という。)の活用を促進するとともに、能力評価制度による建設技能者のレベル毎の賃金目安の公表及び同賃金目安に応じた賃金支払の実現に向けた具体的施策について、官民一体となって早期に検討・実現を図る。
加えて、「専門工事企業の施工能力等の見える化制度」(以下「見える化評価制度」という。)については、制度の早期開始に向けて、業界毎の評価基準の策定を行うなど、CCUSのメリットの拡大について、官民一体となって取り組む。
(ウ) また、例えば、CCUSと労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)上の各種資格者情報のマイナポータルを通じた連携、資格者証携行義務の一本化に向けた検討など、関係行政機関の連携の下、CCUSの利便性を更に向上させるための取組を推進する。
ウ 若年労働者とのコミュニケーションスキルの向上
建設現場における技能労働者の年代ギャップによるコミュニケーション不足や技能指導方法等の違いが若年労働者にとって、職場環境への適応や技能のノウハウの習得がうまくいかない一因となっていることから、若年労働者と円滑なコミュニケーションをとることができるよう、そのスキル向上について、事業主に対して支援を行うとともに、若年労働者を育成する職場風土の醸成を行う事業主、事業主団体等に対して支援を行う。
エ 教育訓練の充実、キャリアパスの提示
建設業で働く若年労働者がライフステージに応じた職業生活設計を行うためには、処遇改善をはじめとした雇用管理改善や、技能労働者のキャリア形成に資する適切な資格の取得、それに向けた教育訓練と、取得した技能に見合った処遇等とを関連づけた望ましいキャリアパスを提示することが必要であることから、教育訓練の充実やキャリアパスの提示を行う事業主、事業主団体等に対して支援を行う。
(2) 女性労働者の活躍・定着の促進
建設産業においては、他産業と比較して、女性労働者の活躍・定着が進んでいないことから、建設業で働く全ての女性が働き続けられること、女性が建設業への入職を選択できることに資する就労環境整備が課題であり、また、各種制度を活用するための理解促進が重要である。
ア 就労環境の整備
(ア) ワーク・ライフ・バランスの観点から、就労環境整備や女性労働者のキャリアアップ、継続勤務を促進するとともに、作業方法や安全対策の配慮など女性労働者の活躍の促進について検討する事業主団体等や、男女別のトイレや更衣室の整備等により職場環境の改善を行う事業主に対して支援を行う。
(イ) 働きながら安心して子どもを産み育てることができる就労環境の整備を推進するため、育児を積極的に行う男性(イクメン)を応援し、男性の育児休業及び短時間勤務の取得を促進する。
(ウ) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)について一層の周知・指導等を行うことにより、男女の均等な雇用機会を確保するとともに、職場におけるセクシュアルハラスメント防止等のための雇用管理上の措置義務を徹底させることなどを通じて、建設職場への受入体制の整備を促進する。
(エ) 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いについては、女性労働者の尊厳を傷つけ、継続就業を妨げるものであることから、事業主に対する積極的な報告徴収、指導等を行う。
イ 女性の入職促進
女性の力は現場に多様な価値観や創意工夫をもたらし、建設産業全体の活力につながると考えられることから、企業における女性の活躍状況等の情報提供、作業方法の改善、作業装備の軽装化による女性の職域拡大などの女性労働者の活躍を推進するための取組の支援等を通じて、建設産業における女性の入職を促進する。
ウ 女性の活躍推進
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)では、常時雇用する労働者の数が301人以上(2022年(令和4年)4月からは101人以上)の事業主に対して、女性の活躍に関する状況把握・課題分析に基づいた行動計画の策定、情報公表を義務付けており、同法の周知・啓発、着実な施行を通じて、建設産業における女性の活躍を推進する。
(3) 高年齢労働者の活躍の促進
建設産業においては、技能労働者の高齢化が進む中で、高年齢労働者の活用や、高度熟練技能の継承が重要な課題となっている。
ア 高年齢者雇用安定法の周知
(ア) 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)における定年の引上げ、継続雇用制度導入等の措置の義務付けについて一層の周知・指導を徹底する。
(イ) 同法の改正(令和2年改正)により、2021年(令和3年)4月から、65歳までの高年齢者雇用確保措置に係る義務に加え、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置が努力義務化されるとともに、労働契約によらない措置である創業支援等措置が創設されたことを踏まえ、高年齢者就業確保措置が適正に運用されるよう周知を徹底及び助言指導等を行う。
イ 雇用管理に関する支援
(ア) 高年齢労働者の特性や健康、体力等に対応した就労環境の整備及び高年齢労働者が有する高度な熟練技能の継承を図るため、高年齢労働者の特性に配慮した作業方法の見直し、適正な配置、柔軟な勤務形態、安全衛生対策、職業能力開発など、高年齢労働者の活用について検討する事業主に対して支援を行う。
(イ) 高年齢労働者の健康、体力や多様な就労ニーズを的確に把握しつつ、適切な雇用管理が行われるよう、事業主に対する啓発・指導を行う。
(4) ハローワークにおける支援
若年者等の担い手の確保のためには、ハローワークにおけるマッチング支援等が重要である。ア建設躯体工事の職業をはじめとした建設関連職種の有効求人倍率が高水準で推移していることから、未充足求人のフォローアップや求職者への建設関連職種に関する求人の情報提供、就職面接会の開催等により若年者等の求職者のマッチング支援を行う。
イ 特に、建設業を含めた雇用吸収力の高い分野へのマッチング支援を行うハローワークの「人材確保対策コーナー」において、求人者に対する求人充足に向けた助言・指導、求職者に対する担当者制によるきめ細かな職業相談・職業紹介、業界団体との連携による事業所見学会、就職面接会等を実施する。
2 魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備
(1) 安定就労の確保
建設産業においては、依然として重層下請構造が存在し、雇用関係や労働条件が不明確であるなどの問題が課題となっており、一括下請負の禁止についての法令遵守の指導の徹底など、累次重層下請構造の改善に向けた取組を引き続き推進する。
また、建設投資の減少による競争の激化に伴い、事業主が労務関係諸経費の削減を意図して、これまで雇用関係にあった労働者を対象に個人請負労働者として請負契約を結ぶことにより、いわゆる偽装的な一人親方が生じているという課題もある。
さらに、形式的には請負であっても実態として労働者派遣となっているいわゆる偽装請負も課題となっている。
ア 雇用関係の明確化
(ア) 建設労働者の雇入れの主体及び雇用契約の内容等を明確にするよう、雇入通知書の交付等による労働条件の明示について、ハローワーク、労働基準監督署等の関係機関との連携を密にし、適切に指導及び監督並びに周知を行う。
(イ) 日雇労働者等の建設労働者に対する雇入通知書の交付等の徹底を図るため、元請事業主による下請事業主に対する指導及び援助を促進する。
イ いわゆる一人親方の適正化
(ア) いわゆる一人親方については、現状把握を行った上で、形式的に個人事業主であっても実態が雇用労働者である場合には、労働関係法令の適用があることについて、引き続き周知・啓発を行い、関係機関との連携を図りながら現状把握に基づいた効果的な対応を図る。
(イ) 国土交通省が設置した「建設業の一人親方問題に関する検討会」が取りまとめる改善方策等を踏まえ、必要な対応を行う。
ウ 業務請負等の適正化
(ア) 建設業務の実施に当たり労働者募集及び請負が適正に行われるよう、建設雇用改善法、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)等の遵守に向け、適切に指導及び監督を行う。
(イ) 形式的には請負であっても実態として労働者派遣となっているいわゆる偽装請負の状態がある場合には、労働者派遣法第4条第1項第2号違反となるものであり、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)に係る周知を図るとともに、厳正に指導及び監督を行う。
エ 不安定な雇用形態の労働者に対する対応
臨時・日雇労働者、出稼労働者といった不安定な雇用形態の労働者の雇用の安定を図るため、季節労働者の通年雇用化、都道府県労働局及びハローワークを通じた就労支援を行い安定就労の確保等を推進する。
(2) 働き方改革の推進
建設産業においては、他産業と比較して、年間の総実労働時間が長く、また、完全週休2日制の導入企業割合や、年次有給休暇の年間取得日数は低く、こうした労働条件の改善は喫緊の課題となっている。
加えて、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)による改正後の労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「改正労働基準法」という。)に基づく罰則付き時間外労働の上限規制について、建設業においても2024年度(令和6年度)から適用されることを踏まえ、長時間労働の改善が課題となっている。
このため、官民一体となって、働き方改革を強力に推進することが重要である。
ア 働き方改革の基本的取組
(ア) 建設業の働き方改革に向けては、民間も含めた発注者の理解と協力が必要であり、「工期に関する基準」(令和2年7月20日中央建設業審議会決定)などに関し、その趣旨も含め、業界全般への理解・浸透を図ることに努め、不断の改善に取り組む。
(イ) 働き方改革の推進は、後述の長時間労働の改善、完全週休2日制の普及等の環境整備につながるほか、働き方改革を通じ、建設業が魅力的な産業として将来にわたって担い手を確保していくとの考えの下、官民一体となって取り組む。
(ウ) 働き方改革の推進に当たり、適切な賃金水準を維持するため、事業主は、業務効率化の推進や業務分担による労働時間の再配分などを行うことにより生産性向上に取り組む。
イ 長時間労働の改善
(ア) 長時間労働の実態の改善については、労働者の心身の健康の保持はもとより、ワーク・ライフ・バランスの推進や若年者等の入職及び定着の促進の観点も併せ、技術者や技能労働者の職種の違いからくる就労実態に留意しながら、労使が具体的な目標設定の下に自主的に取り組むべき事項として重点的な指導を行う。
(イ) 特に、脳・心臓疾患の発症との関連性が強い長時間にわたる過重労働が発生しないよう、事業主は労働者の労働時間の適正な把握及び管理の在り方についての必要な改善に取り組む。
(ウ) 罰則付き時間外労働の上限規制の適用を見据えて、各都道府県に設置する働き方改革推進支援センターの個別相談等を活用し、当該規制の適用以前から、長時間労働が改善されるよう取り組む。
(エ) 2019年(平成31年)4月から導入が努力義務となった勤務間インターバル制度については、長時間労働の抑制のみならず、労働者の健康確保、労働災害の防止にも資するものであるため、本制度の導入に向けた取組を推進する。
(オ) 長時間労働の改善を実現するため、建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第30号)による改正後の建設業法(昭和24年法律第100号。以下「改正建設業法」という。)及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号。以下「改正入契法」という。)並びに公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第35号)による改正後の公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成17年法律第18号。以下「改正品確法」という。)のいわゆる新・担い手3法の一つである改正建設業法に規定された「著しく短い工期による請負契約の締結の禁止」を踏まえ、長時間労働を前提とするような受発注者間及び元請負人-下請負人間の請負契約の締結が行われないことを強力に進めるために、官民一体となって取り組む。
ウ 完全週休2日制の普及、休暇の取得促進
(ア) 建設産業においては、天候や納期の問題から完全週休2日制の普及が遅れているところであり、その普及が重要である。このため、完全週休2日制の実施を確保する効果的な手段として、土日連続全休制による現場閉所に向けた労使の取組や、段階的な方法としての4週8休制の導入に向けた労使の取組を促進するとともに、年次有給休暇の取得については、改正労働基準法に基づく年5日の年次有給休暇の確実な取得の周知・履行確保、計画的付与制度の活用等による取得率の向上を図る。
(イ) 土日連続全休制による現場閉所(4週8閉所)を実現するために不可欠な適正工期の確保については、改正建設業法に規定された「著しく短い工期による請負契約の締結の禁止」を踏まえ、土日連続全休制の4週8閉所を前提とした工期の設定が徹底されることを強力に進めるために、官民一体となって取り組む。
(3) 賃金の改善
建設産業においては、若年者が入職・定着しない要因の一つとして、低い賃金水準があり、働き方改革の推進とともに、若年労働者等の担い手確保・育成のためにも、賃金水準の改善が課題となっている。
このことから、CCUS、能力評価制度及び見える化評価制度を推進することにより、技能者の賃金水準の改善に取り組む。
(4) 労働・社会保険、建設業退職金共済制度の加入促進
建設産業においては、これまで実施した諸施策により、労働保険、社会保険の加入率は増加傾向にある。企業単位では、改正建設業法により社会保険への加入が建設業許可・更新時の要件とされたところである。一方、企業別の加入率に比して、労働者別の加入率は低く、労働者単位での社会保険の加入促進が課題となっている。
また、建設業退職金共済制度については、適正な運営の確保、いわゆる一人親方を含めた一層の加入促進が課題となっている。
ア 労働保険の適用促進
労働保険の適用促進については、関係行政機関や労働保険事務組合と連携し、未手続事業の確実な把握、文書及び個別訪問による手続指導等により未手続事業の解消に取り組むとともに、労災保険制度におけるいわゆる一人親方等の特別加入制度の周知を徹底する。
イ 社会保険の適用促進
(ア) 社会保険の適用促進については、関係機関と連携し、未適用事業所の確実な把握、文書及び個別訪問による加入指導等により未適用事業所の解消に取り組む。
(イ) 労働者単位での社会保険の加入促進に当たっては、令和2年9月に改訂された「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」(平成24年7月4日付け国土建第136号・国土建整第73号国土交通省土地・建設産業局建設業課長及び建設市場整備課長連名通知)に基づき、CCUSに登録された真正性の高い情報を活用し、作業員名簿を基に労働者一人ひとりの加入状況を確認することの周知を徹底する。
ウ 建設業退職金共済制度の加入促進
(ア) 建設業における退職金制度の整備を図るため、建設業退職金共済制度について、適正な運営の確保に向けて共済証紙が適切に貼り付けられるよう事業主の理解を進めるとともに、関係機関等の協力を得ながら、加入促進対策の効果的実施により、建設業退職金共済制度への加入を一層促進する。
(イ) いわゆる一人親方についても建設業退職金共済制度への加入について周知・啓発を図る。
(ウ) 令和3年4月より本格実施される建設業退職金共済制度の電子申請方式による掛金納付についての普及を推進する。その際、令和2年3月に国土交通省と建設業関係団体が連携してとりまとめ、公表した「建設キャリアアップシステム普及・活用に向けた官民施策パッケージ」の趣旨等も踏まえ、CCUSと連携するなどして、建設業退職金共済制度の一層の加入促進及び適正履行の確保を図る。
(5) 労働災害の防止
建設産業における労働災害については、休業4日以上の死傷災害、死亡災害とも減少傾向にはあるものの、死亡災害件数は他産業に比して多く、また、労働災害が重篤になる傾向も多い。このため、労働災害防止計画等を踏まえ、総合的な労働災害防止対策を推進することが重要である。
ア 墜落・転落災害の防止
(ア) 高所作業時における墜落防止用保護具について、原則としてフルハーネス型とするとともに、墜落時の落下距離に応じた適切な保護具の使用の徹底を図る。
(イ) 平成27年5月に改正された「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」(平成24年2月9日付け基安発0209第2号)に基づき、「より安全な措置」等の一層の普及を図る。
イ 健康確保対策の推進
長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対し、事業主による健康管理等に係る措置(医師による面接指導、健康診断結果に基づく事後措置等)の実施を推進するほか、ストレスチェックの実施により、労働者のメンタルヘルス対策に取り組む。
ウ 熱中症の予防
熱中症予防対策の理解を深めるために、建設業等における先進的な取組の紹介や労働者等向けの教育ツールの提供を行う。
エ 石綿による健康障害の防止
石綿が用いられている建築物の解体工事が増加する中、石綿による労働者の健康障害を防止するため、費用や工期等の面での発注者の配慮を求めつつ、石綿使用の有無に関する事前調査の実施、事前調査結果に基づく適切な作業の実施と記録の作成などの石綿ばく露防止対策の徹底を図る。
オ 高年齢労働者、外国人労働者の労働災害の防止
(ア) 高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境の実現に向け、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)(令和2年3月16日付け基安発0316第1号厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)に基づく取組を推進する。
(イ) 技能実習生、特定技能外国人など外国人労働者の増加が見込まれる中、外国人労働者を雇用する事業場に対し、安全衛生教育の実施、労働災害防止に関する標識・掲示の設置、健康管理の実施等の徹底を図る。
カ 建設工事従事者の安全及び衛生の確保
「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画」(平成29年6月9日閣議決定)に基づき、同計画の取組施策を着実かつ計画的に実施する。また、同計画に基づきいわゆる一人親方等の安全衛生に関する知識習得等を支援する。
3 職業能力開発の促進、技能継承
(1) 事業主等の行う職業能力開発の促進
労働者に対して事業主が必要な教育訓練を行うことは、各々の事業主の責務であるとともに、労働者の職業生活を通じた職業の安定及び地位の向上を図る観点からも重要である。今後、中長期的に見ても、新技術への対応、作業内容の変化などに対応するためには、全ての労働者に対する不断のスキル向上の取組が重要となる。
また、今後、若年労働者をはじめとした技能労働者の確保、次代を担う労働者への技能継承、生産性向上にも資する多能工化の推進など、様々な観点から、一層その重要性は高まっている。
特に、中小事業主では個別に教育訓練等を行いにくい状況にあり、業界が行う教育訓練等の取組の支援が重要となっている。
ア 認定職業訓練をはじめとする在職者訓練の実施
(ア) 建設労働者の育成・確保に重要な役割を果たしている認定職業訓練について、引き続き支援を行うとともに、短期的な教育訓練である技能実習に対しても引き続き支援を行う。また、広域的な教育訓練を支援する観点から、富士教育訓練センター等で実施する教育訓練を引き続き支援する。
(イ) 事業所内教育訓練の実施体制の整備が困難な中小事業主等の自主的な教育訓練を促すため、地域の職業能力開発のための総合的センターとして公共職業能力開発施設等を活用し、職業訓練指導員の派遣、施設使用の便宜の提供等を行う。
(ウ) 様々な労働者が集団として作業を進めている建設現場の実態に即した実践的な技能の向上などを図る観点から、建設現場における業務を通じた教育訓練の活用を図ることとし、公共職業訓練を活用し、地域や業界の人材ニーズ等に基づき、建設労働者に係る職業訓練を実施する。ニーズに対応した即戦力になるように実践(エ)的な知識と能力を有する技能労働者の育成を行うため、事業主が雇用する労働者にOJTとOFF-JTを組み合わせた雇用型訓練を実施する場合、訓練に要した費用の一部を助成する。あわせて、建設機械等の運転技能に加えパソコンスキルや企業実習を組み合わせた総合的な技能を習得する訓練を公共職業訓練で実施するとともに、求職者支援訓練における同様の取組も推進する。
イ 技能労働者のキャリア形成に向けた支援
(ア) 一人ひとりの労働者の希望、適性や能力を踏まえた職業能力開発の実施を支援し、若年労働者等を確保する観点から、建設業における技能労働者のキャリア形成に向けた適切な資格の取得、それに向けての教育訓練と、取得した技能に見合った処遇等とを関連づけた望ましいキャリアパスについて検討し、建設業を目指す若年者等に提示する取組を実施する事業主団体等に対して支援を行う。あわせて、技能労働者のキャリアパスの見える化のための処遇改善を行う事業主に対する支援を行う。
(イ) 労働者の職業能力が企業内のみならず、広く社会一般において適正に評価されるよう、技能検定制度や職業能力評価の仕組みの活用等を図ることにより、職業能力の見える化を推進する。
ウ 情報技術を活用した能力開発
設計、事務、管理部門はもとより、建設現場部門においても、工程や品質管理等多様な場面で情報技術の活用が進むこと、また、職業能力開発を効率的に行う観点から情報技術の活用が有効な場合があると考えられることから、情報技術の活用能力を高めるとともに、情報技術を活用した職業能力開発を推進する。
エ 生産性向上、多能工化に資する職業訓練の実施
他産業に比べて労働生産性が低くなっていることを改善するため、生産性を向上させ、労働時間の短縮や賃金等の処遇の改善につなげる一方策として、一人の技能労働者が受け持つ仕事を増やす、多能工化にも資する職業訓練を推進する。
(2) 労働者の自発的な職業能力開発の促進
建設労働者に対する職業能力開発は、各々の事業主が責任をもって行う必要があるが、建設労働を取り巻く環境が変化する中で、一人ひとりの労働者が自己の技術・技能をより一層向上させるためには、労働者が自発的に職業能力開発を行うことも重要である。また、労働者の就労意識や就労形態の多様化が進む中で、一人ひとりに対応した適正なキャリア形成の必要性が高まっている。
ア キャリアコンサルティング機会の確保
キャリア形成・リスキリング支援センター及びキャリア形成・リスキリング相談コーナーの整備などを通じ、生涯を通じたキャリア・プランニング及び職業能力証明のツールであるジョブ・カード(職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第15条の4第1項に規定する職務経歴等記録書をいう。)を活用しながら、建設労働者を含めた労働者が身近に、必要な時にキャリアコンサルティングを受けることができる機会の確保のための支援を推進する。
イ 自律的・主体的な学びの支援
労働者の自発的な学び直しを支援するため、教育訓練給付制度の活用を推進する。
(3) 建設業を担う人材に対する職業訓練の実施
建設業に在職する労働者に対する能力開発のほか、担い手確保・育成の観点からは、将来、建設業を担う人材に対する職業訓練を継続的に実施することも重要である。
このため、離職者に対する公的職業訓練や、訓練の実施と就職支援をパッケージで業界団体に委託する事業等を実施する。
(4) 熟練技能の維持・継承及び活用
建設業における技能労働者については、高齢化が進む一方、入職者は減少しており、今後、熟練技能を有する高年齢層の労働者が大量に離職するとともに、このまま若年者等の入職が進まなければ、将来的に技能労働者が不足する懸念があり、これまで建設業を支えてきた熟練技能の維持・継承及び活用が困難になりつつある状況にある。
また、若年者を中心とした技能離れが建設産業の将来に深刻な影響を及ぼすことが危惧されるため、技能の重要性、必要性を国民一人ひとりに理解してもらい、技能尊重気運の醸成、建設産業の活動の基礎となる技能者の育成を図ることが重要である。
ア 技能継承の促進
(ア) 基幹技能者の確保・育成・活用、技能検定制度の着実な実施、特に若年者に対する積極的な受検勧奨を推進する。
(イ) ものづくりマイスター制度を通じた若年技能者への技能伝承、地域における技能振興の取組を推進するとともに、若年者ものづくり競技大会の開催を通じた若者のものづくり分野への積極的な誘導を推進する。
(ウ) 技能五輪全国大会、技能グランプリなど各種技能競技大会の実施や、技能五輪国際大会への選手派遣支援、技能者に対する各種表彰により、技能の魅力や重要性の啓発、技能の一層の向上を推進する。
(エ) 児童・生徒やその親に対しては、技能やものづくりの関心を深めるため、公共職業能力開発施設、業界団体、教育機関等関係機関との連携により、多くの人が気軽に参加できる技能体験イベントなど、技能やものづくりの魅力に触れる機会を作る。
イ 若年者に対する技能指導
高年齢者が若年者へ建設技能を指導する方法に関する訓練を行う事業主、事業主団体等に対して支援を行う。
(5) デジタル人材の育成
社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速化するとみられる中、こうした変革の推進に必要なデジタル人材の確保は、様々な現場における生産性の向上につなげていくためにも、幅広い業種で重要となっている。
建設産業においても、今後、デジタル技術の活用により、生産性の向上や働き方改革を加速化させることが必要であり、そのためのデジタル人材の育成が中長期的な課題となっている。このことから、建設現場におけるデジタル技術の活用に対応できる人材を育成するため、ニーズを踏まえて、第4次産業革命に関連する技術の習得に向けた公的職業訓練プログラムの開発・実施を推進する。
4 雇用改善推進体制の整備
(1) 雇用改善を図るための諸条件の整備
建設業における雇用改善を図るためには、重層下請構造、代金支払い等に関する慣行等の建設業における諸慣行や、近年の競争の激化に伴うダンピング受注など、建設業における生産の仕組みに関わる事項について建設業行政等をはじめとする関係行政機関による指導等を引き続き行うとともに、関係事業主等においても、当該事項について理解を深め、適切な対応を行う必要がある。
このため、従前より取り組んでいるダンピング対策の強化や施工時期等の平準化の取組を推進することに加え、CCUS等の普及促進やいわゆる新・担い手3法の浸透が課題となっている。
ア 従前の取組の推進
(ア) 法令で規定された安全対策の実施や労働保険及び社会保険への適正な加入など労働関係法令等の遵守に不可欠な経費をはじめとする労務関係諸経費の確保、適切な工期の設定等について、引き続き、国土交通省をはじめとする関係行政機関による指導等により、公共工事の発注者及び民間事業者において建設労働者への適切な対応を行うことにより、雇用改善を推進する。
(イ) 予定価格の適切な設定、ダンピング対策の強化、施工時期等の平準化、発注体制が十分でない市町村等の発注者に対する支援、生産現場における多能工の活用など、建設労働者への適正な賃金支払、労働時間の短縮等の労働条件の改善に資する公共工事の発注を推進するための方策や、公正な受注環境の確保について、各発注者が相互に緊密な連携を図りながら推進する。あわせて、これらの取組については、民間事業者にも浸透するよう、官民一体となって取り組む。
イ CCUS等の普及促進
(ア) CCUS、能力評価制度及び見える化評価制度による雇用改善を実現するため、各制度が業界全体に浸透すべく普及促進を図る。
(イ) CCUSについては、事業者、技能者によるCCUSへの登録に加え、就業履歴を蓄積していくことが重要であることから、これらについて官民一体となって取り組む。
(ウ) CCUSの普及促進のためには、業界において好事例や様々なノウハウを共有することも有用と考えられるため、普及促進につながる事業主、事業主団体等の効果的な取組について、積極的に発信していく。
ウ いわゆる新・担い手3法の業界全体への浸透
働き方改革、生産性向上、処遇改善を一体で進め、担い手を確保し持続可能な産業とするため、改正建設業法、改正品確法及び改正入契法のいわゆる新・担い手3法について、民間を含めた発注者の理解と協力を得て業界全体はもとより、広く社会全般に浸透するような取組を推進する。
(2) 事業主等における雇用管理体制の整備
建設業における雇用改善を図るためには、事業主及び事業主団体が行う雇用改善の取組の推進が重要である。
ア 事業主における雇用管理体制の充実
建設労働者の募集、雇入れ、技能の向上、職業生活上の環境整備等に関する下請事業主に対する指導等の元請事業主の役割が適切に果たされるようにするとともに、雇用管理研修の内容改善、自主的な研修の実施やコンサルティング等による雇用管理改善を支援すること等により、事業主における雇用管理体制を充実させる。
イ 事業主団体における効果的な雇用改善等の推進
専門工事業者団体など事業主団体が行う自主的な雇用改善の取組の推進について引き続き啓発・指導を行うとともに、専門工事業者団体など事業主団体の取組についての支援を引き続き推進し、雇用改善、若年労働者の確保等を図る。
(3) 建設関係助成金の活用
建設業における雇用改善を図るためには、人材確保等支援助成金、人材開発支援助成金等の建設関係助成金により、事業主、事業主団体等の雇用改善関係の取組に対する支援を行うことが重要である。
ア ニーズ等を踏まえた制度の見直し、周知徹底
(ア) 助成金制度について、事業主等におけるニーズ、効果を踏まえながら、継続的な施策評価に基づき、見直しを行い、効率的かつ効果的な運用を図る。
(イ) 助成金の積極的な活用のため、引き続き、助成制度の周知徹底を図る。
イ CCUS普及促進に向けた効果的な活用
建設業における雇用改善に極めて有用なCCUSについては、CCUSの普及促進が重要であることに鑑み、事業主、事業主団体のニーズ等を踏まえ、CCUSの普及促進に資する建設関係助成金の見直しを検討し、効果的な活用を図る。
5 建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の運営
(1) 事業の適正な運営の確保
建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業(以下「就業機会確保事業等」という。)については、制度の趣旨に沿った適正かつ効果的な事業運営を確保することが重要である。
ア 建設業務労働者就業機会確保事業については、当該事業が建設労働者の雇用の安定のための労働力需給調整機能を持つことを踏まえ、一時的に労働力の余剰が生じる建設事業主のみが送出可能であって、送出就業に従事させることを目的として労働者を雇用することや、建設業務労働者就業機会確保事業を主たる業務内容とする部署を設けることなど趣旨に反する事業運営を行うことはできないことについて、指導等を行う。
イ 中間搾取の防止等を図るため、建設雇用改善法第12条第1項に定める実施計画の認定並びに就業機会確保事業等の許可に際しては、申請内容の確認及び審査を厳格に行う。
ウ 実施計画の認定に当たっては、労働政策審議会の意見を踏まえて行う。
エ 実施計画を作成し、その実施に責任を有する事業主団体の役割が重要であることから、事業主団体において、次の措置が講じられるよう、事業主団体に対して指導を行う。
(ア) 構成事業主、労働者、受入事業主の元請等関係者に対する制度の趣旨、内容等についての周知・啓発並びに送出事業主及び受入事業主に対する適正な事業運営に関する指導監督及び相談援助を行う。
(イ) 労働者の雇用の安定を重視して、適正な職業紹介を行うほか、送出事業主及び受入事業主の組合せを検討する。
(ウ) 送出労働者について、送出事業主に対し、労働保険及び社会保険に適正に加入するよう促す。
(エ) 求人者及び求職者並びに送出事業主、受入事業主、送出労働者等からの苦情について、適切な処理を図る。
オ 就業機会確保事業等の実施状況を把握し、適切に指導監督を行うとともに、送出労働者等からの申告に適切に対応する。
(2) 事業の活用促進
就業機会確保事業等については、事業主団体等に対し、制度の趣旨等を説明した上で、事業の活用を検討する事業主団体が適正に活用できるようにすることが重要である。
ア 事業主、事業主団体、労働者等に対して、制度の趣旨、送出事業主及び受入事業主に課される使用責任の内容、送出労働者等からの申告制度等について周知・啓発を図る。
イ 制度の活用が進まない隘路等について、事業主団体等を通じて実態を把握し、事業の適正な活用促進を図ることを趣旨として、必要な見直しを検討する。
6 外国人労働者への対応
(1) 外国人労働者の雇用管理の改善
外国人労働者については、日本人労働者の場合と同様、雇用管理の改善が重要であり、適正な労働条件、安全衛生の確保等を図るためには、外国人を雇用する事業主が、外国人労働者の雇用管理改善等に関して講ずべき措置を適切に実施することが重要である。
ア ハローワーク等において、事業主に対し、外国人雇用状況届出制度や外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成19年厚生労働省告示第276号)の周知など、雇用管理改善に向けた助言・指導を実施し、外国人労働者の職場定着を支援する。
イ 労働基準監督署等において、労働基準関係法令の遵守に向けた相談・指導を行い、外国人労働者の適正な労働条件、安全衛生の確保を図る。
(2) 技能実習生の適正な受入れ
建設分野においては、これまでも多数の技能実習生を受け入れているが、技能実習生の適正な受入れのための取組が重要である。
技能実習生については、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号)及び技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針(平成29年法務省、厚生労働省告示第1号)に基づき、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るため、技能実習生を受け入れる事業主(実習実施者)が、同法のほか、労働関係法令等を遵守し、技能実習を行わせる環境の整備に努めるよう、周知、指導を徹底する。
(3) 特定技能外国人の適正な受入れ
将来的な担い手不足が懸念される中、働き方改革等による生産性向上や国内人材の確保を引き続き強力に推進するとともに、真に必要な分野に着目し、従前の専門的・技術的分野における外国人材に加え、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく方針の下、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(平成30年法律第102号)により出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)が改正され、新たな在留資格である特定技能が創設された(平成31年4月施行)。
建設分野においても特定技能の対象分野とされており、生産性向上や国内人材の確保のための取組を引き続き推進しつつ、特定技能外国人の適正な受入れのための取組が重要である。このため、国土交通省では適正な就労環境を確保するための建設分野特有の措置として、受入企業が策定する計画の認定、審査を行う仕組みを設けている。具体的には、受入企業に対し、同一技能・同一賃金や技能習熟に応じた昇給、建設業許可、CCUSへの登録等を認定基準として求めるほか、就労開始後においても巡回指導行い、就労環境の確認を行うこととしており、これら取組の徹底を図る。
7 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた対応
建設産業においては、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大による経済活動の停滞の影響として、民間市場の縮小などによる受注競争が激化する懸念が考えられる。今後、価格や工期で受注競争が激化するような事態が続けば、働き方改革の推進や生産性の向上といった取組にも影響を及ぼし、ひいては建設労働者の雇用改善の推進に多大な影響を及ぼす可能性がある。このため、本計画の期間内における新型コロナウイルス感染症の影響には十分注視し、改正建設業法に規定された「著しく短い工期による請負契約の締結の禁止」や中央建設業審議会が示す「工期に関する基準」などが遵守されるよう、官民一体となって取り組む。
附 則(令和六年一月三〇日厚生労働省告示第二五号)
この告示は、令和六年四月一日から適用する。