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高年齢者等職業安定対策基本方針
制 定 令和二年十月三十日厚生労働省告示第三百五十号
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)第六条第一項の規定に基づき、高年齢者等職業安定対策基本方針を次のように定め、令和三年四月一日から適用することとしたので、同条第四項の規定に基づき告示する。なお、高年齢者等職業安定対策基本方針(平成二十四年厚生労働省告示第五百五十九号)は、令和三年三月三十一日限り廃止する。
高年齢者等職業安定対策基本方針
目次
第1 高年齢者の就業の動向に関する事項
第2 高年齢者の就業の機会の増大の目標に関する事項
第3 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項
第4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
はじめに
1 方針のねらい
少子高齢化が急速に進行し人口が減少する我が国においては、経済社会の活力を維持するため、全ての年代の人々がその特性・強みを活かし、経済社会の担い手として活躍できるよう環境整備を進めることが必要である。
特に、人生100年時代を迎える中、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図っていくことが重要である。
働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者の活躍の場を整備するため、令和2年第201回通常国会において、70歳までの就業機会の確保を事業主の努力義務とすること等を内容とする高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。以下「法」という。)の改正(以下「令和2年改正」という。)が行われた。この基本方針は、令和2年改正の趣旨等を踏まえ、高年齢者の雇用・就業についての目標及び施策の基本的考え方を、労使を始め国民に広く示すとともに、事業主が行うべき諸条件の整備等に関する指針を示すこと等により、高年齢者の雇用の安定の確保、再就職の促進及び多様な就業機会の確保を図るものである。
また、70歳までの就業機会の確保に関する施策を推進するに当たっては、65歳までの雇用機会が確保されていることが前提である。このため、令和2年改正による改正前の法による65歳までの希望者全員の雇用確保措置(令和6年度年度末に労使協定による継続雇用制度の対象者基準を適用できる経過措置は終了)の導入に向けた取組を引き続き行うことが必要である。
2 方針の対象期間
この基本方針の対象期間は、令和3年度から令和7年度までの5年間とする。ただし、この基本方針の内容は令和2年改正を前提とするものであることから、高年齢者の雇用等の状況や、労働力の需給調整に関する制度、雇用保険制度、年金制度、公務員に係る再任用制度等関連諸制度の動向に照らして、必要な場合は改正を行うものとする。
第1 高年齢者の就業の動向に関する事項
1 人口及び労働力人口の高齢化
我が国の人口は、世界でも例を見ない急速な少子高齢化が進行しており、平成27年(2015年)から令和22年(2040年)までの25年間においては、15~59歳の者が約1,693万人減少するのに対し、60歳以上の高年齢者が約477万人増加し、2.4人に1人が60歳以上の高年齢者となるものと見込まれる。
また、60歳以上の労働力人口は令和元年で約1,450万人であり、令和18年(2036年)から令和21年(2039年)にかけていわゆる団塊2世(昭和46年(1971年)から昭和49年(1974年)までに生まれた世代)が65歳に達する等人口ピラミッドの変化が起きることから、平成29年(2017年)と労働力率が同じ水準であるとすれば、平成29年(2017年)から令和22年(2040年)までの23年間においては、60~69歳の労働力人口は24万人減少し、70歳以上の労働力人口は26万人増加すると見込まれる(総務省統計局「国勢調査」(平成27年)、「労働力調査」(令和元年)及び国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年)の出生中位(死亡中位)推計、独立行政法人労働政策研究・研修機構「労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計―」(2019))。
2 高年齢者の雇用・就業の状況
高年齢者の雇用失業情勢を見ると、令和元年における完全失業率は、年齢計及び60~64歳層ともに2.4%となっており、これを男女別に見ると、男性については年齢計及び60~64歳層ともに2.5%であるのに対し、女性については年齢計が2.2%、60~64歳層では1.7%となっている。
なお、65~69歳層の完全失業率は2.3%であり、男女別に見ると、男性は3.1%、女性は1.1%となっている(総務省統計局「労働力調査」)。
60~64歳層の就業率は、平成24年に57.7%、令和元年に70.3%となっている。これを男女別に見ると、男性は、平成24年に71.3%、令和元年に82.3%となっている。また、女性は、平成24年に44.5%、令和元年に58.6%となっており、近年高まっている(総務省統計局「労働力調査」)。また、常用労働者が31人以上の企業における60~64歳層の常用労働者数は、平成24年の約196万人から、令和元年の約215万人に増加している(厚生労働省「高年齢者雇用状況報告」)。
65~69歳層の就業率は、平成24年に37.1%、令和元年に48.4%となっている。これを男女別に見ると、男性は、平成24年に46.9%、令和元年に58.9%、女性は、平成24年に27.8%、令和元年に38.6%となっており、近年高まっている(総務省統計局「労働力調査」)。
60~69歳の高年齢者の勤務形態を見ると、令和元年時点で、男性の雇用者に占めるフルタイム勤務以外の者の割合は、60~64歳層で22.5%、65~69歳層で52.9%となっている。また、女性の雇用者に占めるフルタイム勤務以外の者の割合は、60~64歳層で62.9%、65~69歳層で69.8%となっており、年齢層が高くなるほど高まっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査」(令和元年))。
なお、60~69歳の高年齢者の仕事の内容を見ると、「会社、団体などに雇われて仕事をしていた」と答えた者の割合は、男性は、60~64歳層で70.7%、65~69歳層で58.1%、女性は、60~64歳層で73.0%、65~69歳層で56.9%となっており、「商店、工場、農家などの自家営業(自営業主の場合をいいます)や自由業であった」と答えた者の割合は、男性は、60~64歳層で11.1%、65~69歳層で15.6%、女性は、60~64歳層で8.2%、65~69歳層で12.3%となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査」(令和元年))。
3 高年齢者に係る雇用制度の状況
(1) 定年制及び継続雇用制度の動向
令和元年6月1日現在、常用労働者が31人以上の企業のうち99.8%が65歳までの令和2年改正前の法第9条第1項の規定に基づく高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入又は定年の定めの廃止をいう。以下この第1において同じ。)を実施済みである。そのうち、定年の定めの廃止の措置を講じた企業の割合は2.7%、定年の引上げの措置を講じた企業の割合は19.4%、継続雇用制度の導入の措置を講じた企業の割合は77.9%となっている。継続雇用制度を導入した企業のうち、希望者全員を対象とする制度を導入した企業の割合は73.0%、制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた企業の割合は27.0%となっている。
また、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は78.8%となっている(厚生労働省「高年齢者雇用状況報告」(令和元年))。60代前半の継続雇用者の雇用形態については、60~64歳層で正社員の者が26.4%、パート・アルバイトの者が34.6%、嘱託の者が18.2%、契約社員の者が13.6%、65~69歳層で正社員の者が14.6%、パート・アルバイトの者が49.0%、嘱託の者が11.1%、契約社員の者が15.6%となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査」(令和元年))。
また、高年齢者雇用確保措置を講じている企業で、勤務延長制度の雇用契約期間について1年とする企業の割合が51.8%、1年を超える期間とする企業の割合は9.2%、半年以上1年未満とする企業の割合は2.8%、半年未満とする企業の割合は1.7%、期間を定めない企業が34.5%となっている。また、再雇用制度の雇用契約期間について1年とする企業の割合が74.7%、1年を超える期間とする企業の割合は8.2%、半年以上1年未満とする企業の割合は4.2%、半年未満とする企業の割合は1.8%、期間を定めない企業が11.1%となっている(厚生労働省「就労条件総合調査」(平成29年))。
(2) 賃金の状況
イ 賃金決定の要素
過去3年間に賃金制度の改定を行った企業(35.5%)では、その改定内容(複数回答)として、「職務・職種などの仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」(21.3%)、「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」(18.5%)、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」(16.1%)を多く挙げている(厚生労働省「就労条件総合調査」(平成29年))。
ロ 転職者の賃金
転職時の賃金変動の状況をみると、減少となっている者の割合は、一般に年齢が高いほど高くなる傾向にあり、10%以上の減少となっている者の割合は45~49歳で23.2%、50~54歳で20.1%、55~59歳で37.6%、60~64歳で65.1%となっている。ただし、65歳以上では47.8%となっており、その割合は減少している(厚生労働省「雇用動向調査」(令和元年(上半期)))。
ハ 継続雇用時の賃金
60歳以降もそれまでに在籍した企業に継続して雇用されるフルタイムの労働者の60歳直前の賃金を100とした場合の61歳の時点の賃金水準の指数については、企業内で平均的な賃金水準の者が78.7となっている。(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高齢者の雇用に関する調査(企業調査)」(令和元年))。
ニ 継続雇用時の賃金水準決定の要素
60代前半の継続雇用者の賃金水準決定の際に考慮している点(複数回答)をみると、「60歳到達時の賃金水準」(48.0%)、「個人の知識、技能、技術」(47.8%)、「担当する職務の市場賃金・相場」(20.5%)、「業界他社の状況」(18.4%)、「自社所在地域の最低賃金」(14.1%)となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高齢者の雇用に関する調査(企業調査)」(令和元年))。
4 高年齢者の労働災害の状況
労働災害の発生状況を休業4日以上の死傷者数でみると、60歳以上の労働者の割合は、平成24年(2012年)の21.0%から、令和元年(2019年)の26.8%に増加している(厚生労働省「労働者死傷病報告」)。
5 高年齢者の就業意欲
60歳以上の男女の就業意欲についてみると、現在就労している60歳以上の者のうち、70歳くらいまで仕事をしたい者の割合が21.9%、75歳くらいまで仕事をしたい者の割合が11.4%、80歳くらいまで仕事をしたい者の割合が4.4%、働けるうちはいつまでも仕事をしたい者の割合が42.0%となっている(内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成26年))。
第2 高年齢者の就業の機会の増大の目標に関する事項
高年齢者の職業の安定その他の福祉の増進を図るとともに、少子高齢化が進む中で経済社会の活力を維持するためには、年齢にかかわりなく働ける企業の普及を図り、高年齢者の雇用の場の拡大に努めること等により、高年齢者の就業の機会を確保し、生涯現役社会を実現することが必要である。
また、平成25年度から公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳へ引き上げられていることから、雇用と年金の確実な接続を図ることが重要である。このため、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第78号)による改正後の法に基づき、希望者全員の65歳までの高年齢者雇用確保措置が全ての企業において講じられるよう取り組む。
加えて、人生100年時代を迎え、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者の活躍の場を整備することも重要である。このため、令和2年改正後の法に基づき、70歳までの高年齢者就業確保措置が適切に企業において講じられるよう取り組む。
なお、高年齢者の雇用対策については、その知識、経験等を活かした安定した雇用の確保が基本となるが、それが困難な場合にあっては、在職中からの再就職支援等により、円滑に企業間の労働移動を行うことができるよう、また、有期契約労働者を含め離職する労働者に対しては、その早期再就職が可能となるよう再就職促進対策の強化を図る。
また、高齢期には、個々の労働者の意欲、体力等個人差が拡大し、その雇用・就業ニーズも雇用就業形態、労働時間等において多様化することから、このような多様なニーズに対応した雇用・就業機会の確保を図る。これらの施策により、成長戦略実行計画(令和元年6月21日閣議決定)で示された2025年までの目標である65~69歳の就業率を51.6%以上とすることを目指す。
第3 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項
1 事業主が行うべき諸条件の整備に関する指針
事業主は、高年齢者が年齢にかかわりなく、その意欲及び能力に応じて働き続けることができる社会の実現に向けて企業が果たすべき役割を自覚しつつ、労働者の年齢構成の高齢化や年金制度の状況等も踏まえ、労使間で十分な協議を行いつつ、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用機会の確保等のために次の(1)から(7)までの諸条件の整備に努めるものとする。
(1) 募集・採用に係る年齢制限の禁止
労働者の募集・採用に当たっては、労働者の一人ひとりに、より均等な働く機会が与えられるよう、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)において、募集・採用における年齢制限が禁止されているが、高年齢者の雇用の促進を目的として、60歳以上の高年齢者を募集・採用することは認められている。
なお、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和41年労働省令第23号)第1条の3第1項各号に該当する場合であって、上限年齢を設定するときには、法第20条第1項の規定に基づき、求職者に対してその理由を明示する。
(2) 職業能力の開発及び向上
高年齢者の有する知識、経験等を活用できる効果的な職業能力開発を推進するため、必要な職業訓練を実施する。その際には、公共職業能力開発施設・民間教育訓練機関において実施される職業訓練も積極的に活用する。
(3) 作業施設の改善
作業補助具の導入を含めた機械設備の改善、作業の平易化等作業方法の改善、照明その他の作業環境の改善並びに福利厚生施設の導入及び改善を通じ、身体的機能の低下等に配慮することにより、体力等が低下した高年齢者が職場から排除されることを防ぎ、その職業能力を十分発揮できるように努める。
その際には、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)が有する高年齢者のための作業施設の改善等に関する情報等の積極的な活用を図る。
(4) 高年齢者の職域の拡大
企業における労働者の年齢構成の高齢化に対応した職務の再設計を行うこと等により、身体的機能の低下等の影響が少なく、高年齢者の知識、経験、能力等が十分に活用できる職域の拡大に努める。
また、合理的な理由がないにもかかわらず、年齢のみによって高年齢者を職場から排除することのないようにする。
(5) 高年齢者の知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
高年齢者について、その意欲及び能力に応じた雇用機会を確保するため、職業能力を評価する仕組みや資格制度、専門職制度等の整備を行うことにより、その知識、経験等を活用することのできる配置、処遇を推進する。
(6) 勤務時間制度の弾力化
高齢期における就業希望の多様化や体力の個人差に対応するため、短時間勤務、隔日勤務、フレックスタイム制等を活用した勤務時間制度の弾力化を図る。
(7) 事業主の共同の取組の推進
高年齢者の雇用機会の開発を効率的に進めるため、同一産業や同一地域の事業主が、高年齢者の雇用に関する様々な経験を共有しつつ、労働者の職業能力開発の支援、職業能力を評価する仕組みの整備、雇用管理の改善等についての共同の取組を推進する。
2 再就職の援助等に関する指針
事業主は、解雇等により離職することとなっている高年齢者が再就職を希望するときは、当該高年齢者が可能な限り早期に再就職することができるよう、当該高年齢者の在職中の求職活動や職業能力開発について、主体的な意思に基づき次の(1)から(4)までの事項に留意して積極的に支援すること等により、再就職の援助に努めるものとする。
(1) 再就職の援助等に関する措置の内容
再就職の援助等の対象となる高年齢者(以下「離職予定高年齢者」という。)に対しては、その有する職業能力や当該離職予定高年齢者から聴取した再就職に関する希望等を踏まえ、例えば、次のイからホまでの援助を必要に応じて行うよう努める。
イ 教育訓練の受講、資格試験の受験等求職活動のための休暇の付与
ロ イの休暇日についての賃金の支給、教育訓練等の実費相当額の支給等在職中の求職活動に対する経済的な支援
ハ 求人の開拓、求人情報の収集・提供、関連企業等への再就職のあっせん
ニ 再就職に資する教育訓練、カウンセリング等の実施、受講等のあっせん
ホ 事業主間で連携した再就職の支援体制の整備
(2) 求職活動支援書の作成等
離職予定高年齢者については、求職活動支援書の交付希望の有無を確認し、当該離職予定高年齢者が希望するときは、その能力、希望等に十分配慮して、求職活動支援書を速やかに作成・交付する。交付が義務付けられていない定年退職者等の離職予定高年齢者についても、当該離職予定高年齢者が希望するときは、求職活動支援書を作成・交付するよう努める。
求職活動支援書を作成するときは、あらかじめ再就職援助に係る基本的事項について、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と十分な協議を行うとともに、求職活動支援書の交付希望者本人から再就職及び在職中の求職活動に関する希望を十分聴取する。
なお、求職活動支援書を作成する際には、当該交付希望者が有する豊富な職業キャリアを記載することができるジョブ・カード(職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第15条の4第1項に規定する職務経歴等記録書をいう。)の様式を積極的に活用する。
(3) 公共職業安定所等による支援の積極的な活用等
求職活動支援書の作成その他の再就職援助等の措置を講ずるに当たっては、必要に応じ、公共職業安定所等に対し、情報提供その他の助言・援助を求めるとともに、公共職業安定所が在職中の求職者に対して実施する職業相談や、地域における関係機関との連携の下で事業主団体等が行う再就職援助のための事業を積極的に活用する。
また、公共職業安定所の求めに応じ、離職予定高年齢者の再就職支援に資する情報の提供を行う等、公共職業安定所との連携及び協力に努める。
(4) 助成制度の有効な活用
求職活動支援書の作成・交付を行うことにより、離職予定高年齢者の再就職援助を行う事業主等に対する雇用保険制度に基づく助成制度の有効な活用を図る。
3 職業生活の設計の援助に関する指針
事業主は、その雇用する労働者が、様々な変化に対応しつつキャリア形成を行い、高齢期に至るまで職業生活の充実を図ることができるよう、次の(1)及び(2)の事項の実施を通じて、その高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう努めるものとする。
この場合において、労働者が就業生活の早い段階から将来の職業生活を考えることができるよう、情報の提供等に努める。
(1) 職業生活の設計に必要な情報の提供、相談等
職業生活の設計に関し必要な情報の提供を行うとともに、職業能力開発等に関するきめ細かな相談を行い、労働者自身の主体的な判断及び選択によるキャリア設計を含めた職業生活の設計が可能となるよう配慮する。
また、労働者が職業生活の設計のために企業の外部における講習の受講その他の活動を行う場合に、勤務時間等について必要な配慮を行う。
(2) 職業生活設計を踏まえたキャリア形成の支援
労働者の職業生活設計の内容を必要に応じ把握しつつ、職業能力開発に対する援助を行う等により、当該労働者の希望や適性に応じたキャリア形成の支援を行う。
第4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
1 高年齢者雇用確保措置等(法第9条第1項に規定する高年齢者雇用確保措置及び法第10条の2第4項に規定する高年齢者就業確保措置をいう。以下同じ。)の円滑な実施を図るための施策の基本となるべき事項
国は、高年齢者雇用確保措置等が各企業の労使間での十分な協議の下に適切かつ有効に実施されるよう、次の(1)から(5)までの事項に重点をおいて施策を展開する。
(1) 高年齢者雇用確保措置等の実施及び運用に関する指針の周知徹底
65歳未満定年の定めのある企業において、65歳までの高年齢者雇用確保措置の速やかな実施、希望者全員の65歳までの安定した雇用の確保に関する自主的かつ計画的な取組が促進されるよう、法第9条第3項の規定に基づく高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24年厚生労働省告示第560号)の内容について、その周知徹底を図る。
また70歳未満定年の定めのある企業又は70歳未満を上限年齢とする継続雇用制度を導入している企業において、70歳までの高年齢者就業確保措置の実施に向けた自主的かつ計画的な取組が促進されるよう、法第10条の2第4項の規定に基づく高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針(令和2年厚生労働省告示第351号)の内容について、その周知徹底を図る。
(2) 高年齢者雇用確保措置等に係る指導等
都道府県労働局及び公共職業安定所においては、全ての企業において高年齢者雇用確保措置が講じられるよう、周知の徹底や企業の実情に応じた指導等に積極的に取り組む。
その際、特に、企業の労使間で合意され、実施又は計画されている高年齢者雇用確保措置に関する好事例その他の情報の収集及びその効果的な提供に努める。
また、高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書を発出し、勧告に従わない場合には企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、公共職業安定所での求人の不受理・紹介保留、助成金の不支給等の措置を講じる。
高年齢者就業確保措置は、令和2年改正により新たに設けられた努力義務であり、また、高年齢者雇用確保措置とは異なる創業支援等措置を新たな選択肢として規定していることから、まずは、制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発及び指導を行うとともに、企業の労使間で合意され、実施又は計画されている高年齢者就業確保措置に関する好事例その他の情報の収集及びその効果的な提供に努める。また、雇用時における業務と、内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせるなど、令和2年改正の趣旨に反する措置を講ずる事業主に対しては、措置の改善等のための指導等を行う。
(3) 継続雇用される高年齢者の待遇の確保
継続雇用により定年後も働く高年齢者について、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)に基づき、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が図られるよう、事業主への支援や指導を適切に行う。
また、高年齢者のモチベーションや納得性に配慮した、能力及び成果を重視する評価・報酬体系の構築を進める事業主等に対する助成や相談・援助等を適切に行う。
さらに、雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)により、令和7年度から新たに60歳となる高年齢労働者への高年齢雇用継続給付が縮小されることについて、事業主を含めた周知を十分な時間的余裕をもって行う。高年齢雇用継続給付の見直しに当たって、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を推進する等の観点から、高年齢労働者の処遇の改善に向けて先行して取り組む事業主に対する支援策とともに、同給付の給付率の縮小後の激変緩和措置についても併せて講じていくことについて、検討を進める。
(4) 高年齢者雇用アドバイザーとの密接な連携
企業が高年齢者雇用確保措置等のいずれかを講ずるに当たり高年齢者の職業能力の開発及び向上、作業施設の改善、職務の再設計や賃金・人事処遇制度の見直し等を行う場合において、機構に配置されている高年齢者雇用アドバイザーが専門的・技術的支援を有効に行うことができるよう、公共職業安定所は、適切な役割分担の下で、機構と密接な連携を図る。
(5) 助成制度の有効な活用等
高年齢者の雇用の機会の増大に資する措置や高年齢者就業確保措置を講ずる事業主等に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、必要に応じて、当該助成制度について必要な見直しを行う。
2 高年齢者の再就職の促進のための施策の基本となるべき事項
(1) 再就職の援助等に関する指針の周知徹底
企業において、離職予定高年齢者に対する在職中の求職活動の援助等に関する自主的な取組が促進されるよう、第3の2の内容について、その周知徹底を図る。
(2) 公共職業安定所による求職活動支援書に係る助言・指導
離職予定高年齢者については、法により事業主に義務付けられている高年齢者雇用状況等報告や多数離職届、事業主からの雇用調整の実施に関する相談や本人からの再就職に関する相談等を通じてその把握に努め、また、離職予定高年齢者が希望した場合には求職活動支援書の交付が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。
さらに、求職活動支援書の交付が義務付けられていない定年退職等の離職予定者についても、求職活動支援書の自主的な作成・交付及びこれに基づく計画的な求職者支援を実施するよう事業主に対して啓発を行う。
なお、離職予定高年齢者の的確な把握に資するため各事業所における定年制の状況や解雇等の実施に係る事前把握の強化を図るほか、法において高年齢者雇用状況等報告や多数離職届の提出が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。
(3) 助成制度の有効な活用等
在職中の求職活動を支援する事業主に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、高年齢者の円滑な労働移動の支援を図る。また、高年齢者の雇用等の実情を踏まえた当該助成制度の必要な見直しに努める。
(4) 公共職業安定所による再就職支援
公共職業安定所において、求職活動支援書の提示を受けたときは、その記載内容を十分参酌しつつ、可能な限り早期に再就職することができるよう、職務経歴書の作成支援等、的確な職業指導・職業紹介及び個別求人開拓を実施する。
また、全国の主要な公共職業安定所に「生涯現役支援窓口」を設置し、特に65歳以上の高年齢求職者に対して職業生活の再設計に係る支援や支援チームによる就労支援を重点的に実施する。
加えて、在職中に再就職先が決定せず失業するに至った高年齢者については、その原因の的確な把握に努めつつ、必要に応じて職業生活の再設計に係る支援や担当者制による就労支援を行う等、効果的かつ効率的な職業指導・職業紹介を実施し、早期の再就職の促進に努める。
特に、有期契約労働者であった離職者については、離職・転職が繰り返されるおそれがあることから、公共職業安定所におけるマッチング支援、担当者制によるきめ細かな支援等の活用により、早期の再就職の促進に努める。
さらに、事業主に対して、機構と連携し、求職活動支援書の作成等に必要な情報提供等を行う。
(5) 募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する指導、啓発等
高年齢者の早期再就職を図るため、積極的な求人開拓を行う。また、高年齢者に対する求人の増加を図り、年齢に係る労働力需給のミスマッチを緩和するため、募集・採用に係る年齢制限の禁止について、民間の職業紹介事業者の協力も得つつ、指導・啓発を行うとともに、労働者の募集・採用に当たって上限年齢を設定する事業主がその理由を求職者に提示しないときや当該理由の内容に関し必要があると認めるときには、事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告を行う。
3 その他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
(1) 生涯現役社会の実現に向けた取組
生涯現役社会の実現を目指すため、高齢期を見据えた職業能力開発や健康管理について、労働者自身の意識の改善と取組や企業の取組への支援を行うほか、多様な就業ニーズに対応した雇用・就業機会の確保等の環境整備を図る。
また、生涯現役社会の実現に向けて、国民各層の意見を幅広く聴きながら、当該社会の在り方やそのための条件整備について検討するなど、社会的な気運の醸成を図る。
このため、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、機構その他の関係団体と密接な連携を図りつつ、各企業の実情に応じて、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止等によって、年齢にかかわりなく雇用機会が確保されるよう周知するなど必要な支援に積極的に取り組む。
また、機構その他の関係団体においては、年齢にかかわりなく働ける企業の普及及び促進を図るため、都道府県労働局等との連携を図りつつ、事業主のほか国民各層への啓発などの必要な取組を進める。
(2) 高齢期の職業生活設計の援助
労働者が、早い段階から自らのキャリア設計を含めた職業生活の設計を行い、高齢期において、多様な働き方の中から自らの希望と能力に応じた働き方を選択し、実現できるようにすることが重要である。このため、公共職業安定所等が行う高齢期における職業生活の設計や再就職のためのキャリアの棚卸しに係る相談・援助等の利用を勧奨するとともに、事業主がその雇用する労働者に対して、高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう、第3の3の趣旨の周知徹底等により啓発及び指導に努める。
また、個々の労働者がそのキャリア設計に沿った職業能力開発を推進できるよう、相談援助体制の整備に努める。
(3) 各企業における多様な職業能力開発の機会の確保
労働者が高齢期においても急激な経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応できるよう、教育訓練の実施、教育訓練休暇の付与等を行う事業主に対して必要な援助を行い、各企業における労働者の希望、適性等を考慮した職業能力開発の機会を確保する。
(4) 職業能力の適正な評価等の促進
高年齢者の職業能力が適正に評価され、当該評価に基づく適正な処遇が行われることを促進するため、各企業における職業能力を評価する仕組みの整備に関し、必要な情報の収集、整理及び提供に努める。また、技能検定制度等労働者の職業能力の公正な評価に資する制度の整備を図る。
(5) 教育訓練給付制度の周知徹底及び有効な活用
高年齢者の主体的な職業能力開発を支援するため、雇用保険制度に基づく教育訓練給付制度の周知徹底及びその有効な活用を図る。
(6) 労働時間対策の推進
高年齢者の雇用機会の確保、高年齢者にも働きやすい職場環境の実現等に配慮しつつ、所定外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進及びフレックスタイム制等の普及促進を重点に労働時間対策を推進する。
(7) 高年齢者の安全衛生対策
高年齢者の労働災害防止対策、高年齢者が働きやすい快適な職場づくり及び高年齢者の健康確保対策を推進する。
また、高年齢労働者の労働災害を防止するため「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の周知徹底を図るとともに、創業支援等措置による就業についても、同ガイドラインを参考とするよう周知・広報する。
(8) 多様な形態による雇用・就業機会の確保
定年退職後等に、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する高年齢者に対しては、地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター事業の活用を推進する。
雇用保険法等の一部を改正する法律(平成28年法律第17号)による法の改正(以下「平成28年改正」という。)により、シルバー人材センターにおける業務について、都道府県知事が市町村ごとに指定する業種等においては、高年齢者に労働者派遣事業又は職業紹介事業を行う場合に限り、労働時間が週40時間までの就業の機会を提供すること等ができるよう、業務範囲を拡大したところであり、当該平成28年改正に基づいた対応を引き続き行う。
(9) 高年齢者の起業等に対する支援
高年齢者の能力の有効な発揮を幅広く推進する観点から、高年齢者が起業等により自ら就業機会を創出する場合に対して必要な支援を行う。
(10) 地域における高年齢者の雇用・就業支援
事業主団体と公共職業安定所の協力の下、企業及び高年齢者のニーズに合ったきめ細かな技能講習や面接会等を一体的に実施することにより、高年齢者の雇用・就業を支援する。
また、平成28年改正により創設された生涯現役促進地域連携事業により、高年齢者の雇用・就業促進に向けた地域の取組みを支援する。
(11) 雇用管理の改善の研究等
高年齢者の就業機会の着実な増大、高年齢者の雇用の安定等を図り、また、生涯現役社会の実現に向けた環境整備を進めるため、必要な調査研究を行うとともに、企業において取り組まれている高年齢者の活用に向けた積極的な取組事例を収集及び体系化し、各企業における活用を促進する。また、高年齢者雇用状況等報告等に基づき、高年齢者の雇用等の状況等の毎年度定期的な把握及び分析に努め、その結果を公表する。さらに、国際的に高年齢者の雇用に係る情報交換等を推進するとともに、年齢差別禁止等、高年齢者の雇用促進の観点について、さらに検討を深める。