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障害者活躍推進計画作成指針
制 定 令和元年十二月十七日厚生労働省告示第百九十八号
改 正 令和五年三月三十一日厚生労働省告示第百三十八号
障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第七条の二第一項の規定に基づき、障害者活躍推進計画作成指針を次のように定め、令和二年四月一日より適用することとしたので、同条第三項の規定に基づき、告示する。
障害者活躍推進計画作成指針
目次
第1 計画の意義・背景
第2 障害者雇用対策基本方針との関係
第3 計画の作成及び実施等に関する手続
第4 計画の内容に関する基本的な事項
第5 計画における取組の内容に関する具体的な事項
第1 計画の意義・背景
平成30年に、国の機関及び地方公共団体の機関(以下「公務部門」という。)の多くの機関において障害者雇用率制度の対象障害者の不適切な計上があり、法定雇用率を達成していない状況であったことが明らかとなったが、このような事態は今後あってはならない。民間の事業主に対して率先垂範する観点からも、公務部門においては法定雇用率の達成に留まらず、障害者雇用を継続的に進めることが重要である。
障害者雇用を進める上では、障害者の活躍の推進が必要である。障害者の活躍とは、障害者一人ひとりが、能力を有効に発揮できることであり、雇用・就業し又は同一の職場に長期に定着するだけでなく、全ての障害者が、その障害特性や個性に応じて能力を有効に発揮できることを目指すことが必要である。
さらに、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第104号)による障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)の改正により、令和5年4月から、公務部門も含めた全ての事業主の責務に、適当な雇用の場の提供、適正な雇用管理等に加え、職業能力の開発及び向上に関する措置が含まれることが明確化されるところであり、障害者の活躍の推進に関する取組をより一層進め、障害者の雇用の質の向上を図ることも重要である。
特に、公務部門における障害者の活躍は、我が国の政策決定過程(障害者雇用政策に限らない。)への障害者の参画拡大の観点からも重要である。ノーマライゼーション(障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、ともに生きる社会こそノーマルな社会であるという考え方)、インクルージョン(包容)、ダイバーシティ(多様性)、バリアフリー(物理的な障壁のみならず、社会的、制度的及び心理的な全ての障壁に対処するという考え方)、ユニバーサルデザイン(施設や製品等については新しいバリアが生じないよう誰にとっても利用しやすくデザインするという考え方)等の理念の浸透に繋がり、政策だけでなく、行政サービスの向上の観点からも重要である。
また、障害者の活躍を持続的に推進するため、労働、福祉、教育等に関する制度及び関係者等の連携も重要である。
これらも踏まえ、公務部門において、障害者の活躍の場の拡大のための取組を不断に実施する等、自律的なPDCAサイクルを確立できるよう、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第36号)による改正後の第7条の3第1項の規定に基づき、障害者活躍推進計画(以下「計画」という。)を作成することとされているものである。
第2 障害者雇用対策基本方針との関係
障害者雇用対策基本方針は、法第7条第1項の規定に基づく障害者の雇用の推進及びその職業の安定に関する施策の基本となるべき方針である。障害者活躍推進計画作成指針は、新法第7条の2第1項の規定に基づき、国及び地方公共団体が障害者である職員がその有する能力を有効に発揮して職業生活において活躍することの推進に関する取組を総合的かつ効果的に実施することができるよう、障害者雇用対策基本方針に基づき定める計画の作成に関する指針である。
第3 計画の作成及び実施等に関する手続
1 計画の作成
計画の作成に係る検討体制として、障害者である職員に対して、参画を求めることが必要である。また、アンケート等による障害者である職員の意見に加え、必要に応じて、障害者団体又は職員団体の意見の聴取・反映も重要である。
計画の作成においても、必要に応じて、都道府県労働局をはじめ、地域の就労支援機関等との連携、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のノウハウを活用することが重要である。
さらに、障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成27年厚生労働省告示第116号。以下「厚生労働省「障害者差別解消指針」」という。)、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成27年厚生労働省告示第117号。以下「厚生労働省「合理的配慮指針」」という。)及び職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針(平成30年12月27日付け職職―268・人企―1440人事院事務総局職員福祉局長及び人事院事務総局人材局長通知別添。以下「人事院「合理的配慮指針」」という。)を踏まえた採用の方法、採用後の労働環境等障害者雇用に係る実態を把握するとともに、課題を適切に設定することが必要である。
加えて、公務部門だけでなく、民間の事業主における先進的な事例も把握し、計画の作成等に活かすことも重要である。
2 計画の周知
法第7条の3第4項の規定に基づき、国及び地方公共団体の任命権者は、計画を作成し、又は変更したときは、遅滞なく、これを職員に周知させるための措置を講じなければならない。具体的には、目標の達成に向けて、機関全体で取り組むため、職員に分かりやすい形で計画を適時・適切に周知することが必要である。
3 計画の公表
法第7条の3第5項の規定に基づき、国及び地方公共団体の任命権者は、計画を作成し、又は変更したときは、遅滞なくこれを公表しなければならない。具体的には、ホームページへの掲載等により、計画を適時・適切に公表することが必要である。
4 実施状況の点検及び公表
計画に基づく取組の実施の状況(以下「実施状況」という。)の点検に当たっては、例えば、障害者雇用を推進するためのチーム(障害者雇用推進チーム)を設置し、定期的に実施状況をフォローアップする仕組みをあらかじめ明確化する等、実施状況を一元的に把握・点検できる体制・仕組みの整備が必要である。把握・点検の際には、計画作成時に想定していた状況からの変化があり、又はその変化に応じて計画に盛り込んでいない取組を柔軟に実施している場合には、それらも含めて分析することが必要である。
また、実施状況の点検結果を踏まえた対策の実施及び計画の見直しを行うことができるPDCAサイクルの確立が必要である。
法第7条の3第6項の規定に基づき、国及び地方公共団体の任命権者は、毎年少なくとも一回、実施状況を公表しなければならない。具体的には、各機関の内外が有効に参照することができるよう、前年度の実施状況や目標に対する実績等のできるだけ幅広い情報を、ホームページへの掲載等により公表することが必要である。加えて、ロールモデルとなる障害者の事例についても具体的に把握し、個人情報の保護に十分配慮した上で公表することも重要である。
第4 計画の内容に関する基本的な事項
1 計画期間
各機関の実情に応じて、概ね2年間から5年間とすることが望ましい。なお、計画期間内においても、毎年度の実施状況の点検、点検結果を踏まえた必要な対策の実施等は必要である。
2 障害者である職員の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施により達成しようとする目標
目標設定に当たっては、各機関の実情(障害者に関するものに限らない。)を踏まえて、課題を適切に設定することが必要であり、設定した課題に対応して、実効性の高い目標を設定することが必要である。なお、目標は、可能な限り定量的なものとする等、その達成状況を客観的に判断できるものとすることが望ましい。
目標の内容及び性質に応じて、計画期間の終了時点だけでなく、各年度等の目標を段階的又は継続的に設定することが望ましい。
具体的な目標としては、採用に関する目標(実雇用率等)の設定は必要である。
加えて、障害者である職員の定着率(常勤・非常勤別)等のデータを収集し、整理・分析した上で、その結果等を踏まえ、定着に関する目標(定着率等)を設定することが必要である。
また、満足度又はワーク・エンゲージメントに関するデータを収集し、原因、課題等を整理及び分析するとともに、その目標(満足の割合等)を設定することが望ましい。
3 実施しようとする障害者である職員の職業生活における活躍の推進に関する取組の内容及びその実施時期
障害者である職員の職業生活における活躍の推進に関する取組の内容に応じて実施時期を明らかにしながら、当該取組を計画的に推進することが必要である。また、当該取組の内容及び性質に応じて、各年度等における実施頻度、回数等を段階的又は継続的に設定することが望ましい。なお、目標の達成度評価の方法についてもあらかじめ明確化することが必要である。
加えて、厚生労働省「障害者差別解消指針」、厚生労働省「合理的配慮指針」及び人事院「合理的配慮指針」を踏まえた上で、障害特性に配慮した取組を積極的に進めることが必要である。
取組の実施に当たっても、必要に応じて、公共職業安定所等と連携するとともに、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のノウハウを活用することが重要であるほか、特に、定着に関する課題解決に向けた取組を進めるに当たっては、就労支援機関等を活用することも必要である。
第5 計画における取組の内容に関する具体的な事項
1 障害者の活躍を推進する体制整備
(1) 組織面
計画の推進体制は、計画の作成に係る検討体制・意見聴取の枠組みと同様に整備することが必要であり、責任体制の明確化(新法第78条第1項の規定に基づく障害者雇用推進者として人事担当責任者(国の行政機関の場合には官房長等)の選任)が必要である。
また、各機関の実情に応じて、障害者雇用推進チームの設置が重要であり、新法第79条第1項の規定に基づく障害者職業生活相談員の適切な選任が必要である。
人的サポート体制の充実(支援担当者の配置等)や、外部の関係機関(地域の就労支援機関等)との連携体制を構築することが重要である。その際、障害者雇用推進チーム、障害者職業生活相談員、支援担当者等(職場の同僚・上司、各部署の人事担当者を含む。)の役割分担等について、外部の関係機関を含めて整理・明確化することが重要である。
加えて、障害者が相談しやすい体制となるよう、障害者職業生活相談員だけでなく、各部署の人事担当者及び健康管理医を含め、内容に応じた多様な相談先を確保するとともに、それらの相談先を障害者に周知することが必要である。
(2) 人材面
障害者職業生活相談員だけでなく、その他支援者・同僚等に対しても、障害者を支援するための研修の実施が重要である。また、職場内における職場適応支援者の養成も重要である。加えて、マニュアル、ガイドブック等の周知も重要である。さらに、セミナー、講習会、「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」等への参加も重要である。
また、職場の同僚・上司に対し、障害に関する理解促進・啓発のための研修等の実施も重要である。
2 障害者の活躍の基本となる職務の選定・創出
職務整理表の作成・活用、職務創出のための組織内アンケートの実施その他の各機関の実情に適した方法を通じて、職務の選定(既存業務の切出し等)及び創出(複数の作業の組み合わせによる新規業務の創出等)を着実に行うことが必要である。
また、障害者一人ひとりの特性・能力等を把握し、可能な限り障害者本人の希望も踏まえた上で、本人に合った業務の割振り又は職場の配置を行う等、障害者と業務の適切なマッチングが重要である。
加えて、配置後においても、各個人の就労の状況を適切に把握し、障害者本人の職務遂行状況や習熟状況等に応じ、継続的に職務の選定・創出に取り組むとともに、多様な業務を経験できるような配置についても検討していくことが重要である。
3 障害者の活躍を推進するための環境整備・人事管理
(1) 職務環境
障害特性に配慮した作業施設・福利厚生施設等の整備(多目的トイレ、スロープ、エレベーター、休憩室等)が重要である。
また、障害特性に配慮した就労支援機器の導入(音声読み上げソフト、筆談支援機器等)が重要である。
加えて、作業マニュアルのカスタマイズ化やチェックリストの作成、作業手順の簡素化や見直しが重要である。
さらに、定期的な面談その他の適切な方法を通じて必要な配慮等を把握し、継続的に必要な措置を講じることが必要である。
(2) 募集・採用
職場実習(採用に向けた取組に限らない。)の積極的実施が重要である。
また、障害特性に配慮した募集・採用の実施(プレ雇用、面接における手話通訳者の配置等)が重要である。
加えて、多様な任用形態の確保に向けた取組(ステップアップの枠組み等)も重要である。
さらに、知的障害者、精神障害者及び重度障害者の積極的な採用に努め、障害特性に配慮した選考方法や職務の選定を工夫することが重要である。
以下のような不適切な取扱いを行わないことが必要である。
イ 特定の障害を排除し、又は特定の障害に限定する。
ロ 自力で通勤できることといった条件を設定する。
ハ 介助者なしで業務遂行が可能といった条件を設定する。
ニ 「就労支援機関に所属・登録しており、雇用期間中支援が受けられること」といった条件を設定する。
ホ 特定の就労支援機関からのみの受入れを実施する。
(3) 働き方
テレワーク勤務のための環境整備、フレックスタイム制の活用や、本人の希望に応じた短時間労働による就業の促進も重要である。短時間労働を活用するに当たっては、勤務時間を段階的に延長していくことが望ましい。
さらに、各種休暇の利用促進も重要である。
(4) キャリア形成
常勤職員の採用はもとより、意欲・能力に応じた非常勤から常勤への転換の促進も重要である。
また、任期付きの非常勤職員等について、各機関における勤務経験も生かし、任期の終了後においても引き続き公務内外で就労できるような職務選定や任期中のサポート等を実施する等の配慮を行うことが重要である。
加えて、本人の希望夜業無目標等も踏まえつつ、実務研修、向上研修等の教育訓練を実施することも重要である。
(5) その他の人事管理
定期的な面談の設定や人事担当者による声掛け等を通じた状況把握・体調配慮も重要である。また、人事評価に基づく業務目標の設定等に当たっては、業務実績やその能力等も踏まえることが重要である。
また、障害特性に配慮した職場介助、通勤への配慮等も重要である。
加えて、中途障害者(在職中に疾病・事故等により障害者となった者をいう。)について、円滑な職場復帰のために必要な職務選定、職場環境の整備等や通院への配慮、働き方、キャリア形成等の取組を行うことが重要である。
さらに、本人が希望する場合には、「就労パスポート」の活用等により、就労支援機関等と障害特性等についての情報を共有し、適切な支援や配慮を講じていくことが重要である。
4 その他
国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号。以下「障害者優先調達推進法」という。)に基づく障害者就労施設等への発注等を通じて、障害者の活躍の場の拡大を推進することが必要である。
また、障害者優先調達推進法第10条の規定及び同法第5条の規定に基づく障害者就労施設等からの物品等の調達の推進に関する基本方針の趣旨も踏まえつつ、民間事業主における障害者の活躍を促進するため、法定雇用率以上の対象障害者を雇用していること等を国及び地方公共団体の公共調達の競争参加資格に含めることが望ましい。
加えて、法第77条第1項の規定に基づく障害者の雇用の促進等に関する取組の実施状況が優良であること等の基準に該当する中小事業主の認定(もにす認定)制度が令和2年4月から開始され、認定が進む中で、中小事業主における障害者の活躍の推進に資するため、事業主の規模を踏まえ、地方公共団体の公共調達等において、認定された中小事業主の評価を加点することが重要である。
改正文(令和五年三月三一日厚生労働省告示第一三八号 抄)
<編注:前略>令和五年四月一日から適用することとしたので、同条第三項の規定に基づき告示する。