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職業紹介事業・労働者派遣事業分野に係る事業分野別指針
制 定 平成三十一年三月十四日厚生労働省告示第六十四号
最終改正 令和二年九月三十日厚生労働省告示第三百三十二号
中小企業等経営強化法(平成十一年法律第十八号)第十二条第一項の規定に基づき、職業紹介事業・労働者派遣事業分野に係る事業分野別指針を次のように定めたので、同条第五項の規定に基づき公表する。
職業紹介事業・労働者派遣事業分野に係る事業分野別指針
第1 現状認識
1 市場規模の動向
我が国における職業紹介事業の手数料収入総額は、平成28年度職業紹介事業報告の集計結果によると、約3876億円である。平成19年度に約2771億円まで増加した後、平成21年度にかけて約1861億円まで減少したものの、平成22年度からは再び増加し、市場規模は拡大傾向を示し現在に至っている。
また、労働者派遣事業の売上高総額は、平成28年度労働者派遣事業報告の集計結果によると、約6兆5798億円である。平成20年度に約7兆7892億円まで増加した後、平成25年度にかけて約5兆1042億円まで減少したものの、平成26年度からは再び増加し、市場規模は拡大傾向を示し現在に至っている。
2 事業所数等の動向
職業紹介事業の事業所数は、平成28年度職業紹介事業報告の集計結果によると、2万406事業所と、対前年度比4.9%の増となっており、平成24年度以降、増加傾向で推移している。また、新規求職申込件数は、約1322万件と対前年度比1.6%の減となっており、平成26年度の約1583万人をピークに減少傾向で推移している。
労働者派遣事業の事業所数は、平成28年度労働者派遣事業報告の集計結果によると、7万754事業所であり、対前年度比9.2%の減となっている。これは、平成27年に労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)が改正され、特定労働者派遣事業が3年間の経過措置の後廃止されることとなったため、その事業所数が対前年度比で18.4%減少した影響によるものである。また、平成29年6月1日時点での労働者派遣事業報告の集計結果によると同日時点における派遣労働者数は約156万人(うち無期雇用派遣労働者は約40万人、有期雇用派遣労働者は約116万人)となっている。これまでの推移を見てみると、労働者派遣法の施行以来、年々増加しており、平成20年の約202万人がピークであったが、以降は平成26年まで減少し、平成27年より再び増加傾向で現在まで推移している。
3 職業紹介事業・労働者派遣事業における課題
(1) 人材の確保及び質の向上に関する課題
景気回復基調が続いていることに伴い、平成29年度の有効求人倍率が1.54倍となるなど、人手不足が顕著となっている。このことは、平成28年に公表した「民間人材ビジネス実態把握調査(職業紹介事業者)」及び「民間人材ビジネス実態把握調査(派遣元事業者)」において、職業紹介事業者及び派遣元事業主(以下「事業者」という。)が抱える経営上の課題について、それぞれ「十分な求職者が確保できていない」及び「十分な求職者の確保」と回答した割合が最も大きくなっていることからもうかがわれる。
今後、労働力人口が減少する中で、一人一人がその能力を有効に発揮するためには、労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整を図る事業者の果たすべき役割が、ますます重要なものとなってくる。そのため、求職者及び派遣労働者と、事業所において職業紹介及び労働者派遣の管理に従事する職員(以下「人材サービス従事者」という。)の双方を確保及び育成する必要があり、それが事業者の経営力向上に直結することになる。
特に、労働者派遣事業においては、平成27年に労働者派遣法が改正され、派遣労働者の雇用の安定を図るための雇用安定措置の実施、派遣労働者に対するキャリアアップ措置の実施等が派遣元事業主に求められている。このため必要な労働者派遣ニーズに応えることと併せ、こうした取組の推進により、派遣労働者の意欲の向上、キャリアアップ等を図る必要がある。
(2) ICTの活用に関する課題
経営力の強化を図るためには、ICTの活用による業務効率化及びサービスの質の向上による労働生産性の向上が重要な課題となっている。特に中小企業においては、ICTの活用が十分ではない状況が見られるため、ICTの活用を進めることにより、新たな付加価値の創造や労働生産性の向上に資する取組を図る必要がある。
第2 経営力向上の実施方法に関する事項
1 経営力向上計画の計画期間
職業紹介事業・労働者派遣事業分野に係る経営力向上計画(中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)第17条第1項に規定する経営力向上計画をいう。以下同じ。)を作成するに当たっては、計画期間は3年間、4年間又は5年間とする。
2 要件
(1) 現に有する経営資源を利用する場合
労働生産性の向上を支援に当たっての判断基準とする。
具体的には、計画期間終了時までの労働生産性の伸び率の目標が、計画期間が3年間の場合は1%以上、4年間の場合は1.5%以上、5年間の場合は2%以上であることを求める。
注)労働生産性とは、営業利益、人件費及び減価償却費の合計を、労働投入量(労働者数又は労働者数に一人当たり年間就業時間を乗じたものをいう。)で除したものとする。なお、派遣元事業主の労働生産性の算定においては、労働者にその雇用する派遣労働者を含むものとする。
(2) 他の事業者から取得した又は提供された経営資源を利用する場合
イ 支援対象
経営力向上のための支援は中小企業者等の事業承継の促進を図るものであるから、中小企業者等が事業承継等(中小企業等経営強化法第2条第11項第9号に掲げるものを除く。)を行う場合にあっては、事業の継続が困難である他の事業者の事業を承継するもののうち、事業の経営の承継を伴う取組を支援対象とする。
ロ 経営指標
労働生産性の向上を支援に当たっての判断基準とする。
具体的には、計画期間終了時までの労働生産性の伸び率の目標が、計画期間が3年間の場合は1%以上、4年間の場合は1.5%以上、5年間の場合は2%以上であることを求める。
第3 経営力向上の内容に関する事項
経営力向上計画の作成に当たって、経営資源に関し、1(1)から(3)まで、2(1)及び(2)、3(1)及び(2)並びに4(1)から(4)までに掲げる事項のうち1以上を実施することとしなければならない。
1 人材の確保及び育成に関する事項
(1) 求職者及び派遣労働者の確保
女性、高齢者等の多様な人材を対象とした職場見学会、セミナー等を開催し、労働市場への参加を促すことによって求職者及び派遣労働者の確保を図る。
(2) 求職者及び派遣労働者の育成
求職者に対しては、効果的な求職活動や就職後の職場定着に資するための知識・技能の習得を行う研修を実施する。
また、派遣労働者に対しては、段階的かつ体系的な教育訓練を行うことによってキャリアアップを図るとともに、キャリアパスを示すための評価体制を構築する。
(3) 人材サービス従事者の育成及び定着
職業紹介をはじめとする人材サービスの実施に資するキャリアコンサルタント等の資格を取得することを支援すること等により、求職者及び派遣労働者に対して提供するキャリアコンサルティング等の質の向上を図る。
また、職場環境の整備、待遇の改善、休暇取得の柔軟性の向上、残業時間の削減等の自社における働き方改革を進め、人材サービス従事者の満足度を向上させ、人材の定着を図る。
2 経営管理に関する事項
(1) 経営全体のマネジメント
PDCAサイクルの徹底、業務マニュアルの作成、優良事業者の認定の取得等を通じた業務の実施方法の標準化を図る。
(2) 自主管理指標の活用
中小企業等の経営強化に関する基本方針(平成17年総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省告示第2号。以下「基本方針」という。)第5の3の二のヘに規定するローカルベンチマークの指標や求職者、派遣労働者、求人者及び派遣先の満足度その他の業態の特性を踏まえた指標を活用し、自社の経営管理を行う。
3 営業活動に関する事項
(1) 顧客分析による新たなサービスの提供
自社の営業基盤の地域におけるマーケティング若しくは市場動向や求人者及び求職者の潜在的需要に関する情報の収集及び分析を行い、又はSNS等の新たな技術を活用して、顧客ニーズの変化に対応した新たなサービスの提供に取り組む。
(2) 経営資源の組合せ
サービスの質及び生産性の向上を図るため、現に有する経営資源及び他の事業者から取得した又は提供された経営資源を有効に組み合わせて一体的に活用する。
4 ICT導入及び省エネルギーの推進に関する事項
(1) ICT導入による新規顧客の獲得
営業力の強化により新規の求人者及び派遣先を獲得するため、営業支援システム、顧客管理システム等の情報システムについて、業務用ソフトウェア、クラウドサービス等の標準的なシステムを導入する。なお、不正なアクセス等による情報漏えい対策等を講じるよう留意する。
(2) ICT導入によるバックヤード業務の効率化
管理部門の業務効率化を推進するため、財務、会計、人事、給与管理等のバックヤード業務に、業務用ソフトウェア、クラウドサービス等の標準的なシステムを導入する。なお、不正なアクセス等による情報漏えい対策等を講じるよう留意する。
(3) ICTを活用するための人材の確保
急速に高度化・多様化するICTに対応するため、専門知識を有するICT人材の育成又は外部専門家の活用を行う。
(4) 省エネルギーの推進によるコストの低減
事業に用いる照明、空調等の設備・機器について、エネルギー使用量の見える化、適切な管理の実施又は省エネルギー性能の高い設備・機器の導入若しくは更新により、コストの低減に取り組む。
第4 経営力向上の促進に当たって配慮すべき事項
1 雇用への配慮
国は、人員削減を目的とした取組を計画認定の対象としない等、雇用の安定に配慮するものとする。組織再編行為が従業員等に与える影響が大きいことに鑑み、事業承継等を行う場合にあっては、特に配慮するものとする。
2 計画進捗状況についての調査
国は、経営力向上計画の進捗状況を調査し、把握する。また、経営力向上計画の進捗状況を事業者自ら定期的に把握・評価することを推奨し、事業者の行った自己評価の実施状況を把握する。
3 外部専門家の活用
国は、経営力向上計画の認定、計画進捗状況の調査及び指導・助言に際しては、その事業内容及び経営目標が適切か否かを判断するに当たって、必要に応じて認定事業分野別経営力向上推進機関、認定経営革新等支援機関その他の専門家の知見を活用する。
4 中小企業者等の規模に応じた計画認定
国は、中小企業者等による幅広い取組を促すため、中小企業者等の規模に応じて柔軟に経営力向上計画の認定を行うものとする。
第5 事業分野別経営力向上推進業務に関する事項
中小企業等経営強化法第39条第1項に規定する事業分野別経営力向上推進業務に関する事項については、基本方針第5の4から6までに定めるところによる。
改正文(令和元年七月一二日厚生労働省告示第六三号 抄)
中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律の施行の日(令和元年七月十六日)から適用することとしたので、同条第五項の規定に基づき公表する。
改正文(令和二年九月三〇日厚生労働省告示第三三二号 抄)
令和二年十月一日から適用することとしたので、同条第五項の規定に基づき告示する。