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告示:介護雇用管理改善等計画

 

介護雇用管理改善等計画

制 定 平成二十七年五月十三日厚生労働省告示第二百六十七号

最終改正 令和三年三月三十一日厚生労働省告示第百十七号

 

介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)第六条第五項において準用する同条第四項の規定に基づき、介護雇用管理改善等計画(平成十二年労働省告示第百六号)の全部を次のように改正する。

 

介護雇用管理改善等計画

 

第1 計画の基本的考え方

 1 計画策定の目的等

介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成4年法律第63号。以下「介護労働者法」という。)第6条は、厚生労働大臣が介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発及び向上等(以下「雇用管理改善等」という。)に関し重要な事項を定めた計画(以下「計画」という。)を策定する旨を規定しており、本計画は、同条に基づき、厚生労働省をはじめとした関係機関が介護労働者の雇用管理改善等を図るため、重点的に取り組むべき施策を掲げている。

我が国の急速な少子高齢化の進展とともに、介護関係業務に係る労働力需要は一層増大しており、介護を担う介護人材の確保が大きな課題となっている。そのような状況において、公益財団法人介護労働安定センター(以下「センター」という。)の介護労働実態調査の中で介護労働者の人手不足、賃金、身体的・精神的負担等に対する不安や不満に端的に示されるように、介護労働者が直面している状況は厳しい。介護労働者が誇りを持って生き生きとその能力を発揮して働くことができるよう、事業所においてICTや介護ロボット等の活用による業務効率化を図り労働者の負担を軽減することや処遇改善や働き方改革への対応、労働者のメンタルヘルス対策、ハラスメント防止対策の強化など更なる雇用管理の改善を実現すること、職員の能力開発・向上を図っていくことが課題となっている。また、将来を担う若年層を含め様々な層の方から魅力ある職業として評価・選択されるよう、介護の仕事への理解を深めていくことも重要である。

令和3年度介護報酬改定においては、新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代の全てが75歳以上となる令和7年に向けて、また、団塊世代のジュニアが65歳を迎える令和22年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援、重度化防止の取組の推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・維持可能性の確保」を図ることとしたところであり、厚生労働省を挙げて介護保険制度と効率化による介護現場の生産性の向上を図り、介護人材確保のための雇用管理の両面から一体的かつ横断的な取組を引き続き行っていく。

また、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針(令和3年厚生労働省告示第29号)では、都道府県は、介護保険事業支援計画において、令和7年度及び令和22年度に必要となる介護人材の需給状況を推計し、中長期的な視野をもって介護人材等の確保に向けた取組を盛り込むこととしている。

本計画はこのような状況の中、介護労働者の雇用管理改善等を総合的に進めることにより、介護労働者が生き生きとやりがいをもって働くことのできる魅力ある職場づくりを力強く支援し、ひいては、介護を要する高齢者等が必要とする介護サービスを十分に享受できるよう、介護労働者法に基づき、今後講じようとする施策に関する基本的事項を示すものである。

さらに、厚生労働省は、地域における介護の在り方、労働力の確保等に係る情報共有や話合いの場として、地域の介護事業関係者が一堂に会する各種会議や事業所訪問の機会等を利用しながら、様々な方法で、計画の周知を図っていく。

 2 計画の期間等

計画の期間は、令和3年度から令和8年度までとする。

計画に基づく取組が着実に実施されるよう、定期的に、計画の実施状況の確認、評価を行い、労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会に報告、公表する。

また、必要に応じ計画の見直しを検討する。

 

第2 介護労働者の雇用の動向

 1 介護職員数

厚生労働省『介護サービス施設・事業所調査』(以下「介護サービス施設・事業所調査」という。)によれば、平成12年度(介護保険制度の施行時)は55万人であった介護職員数は、その後年々増加し、令和元年度は211万人となっている。

介護サービス施設・事業所調査によれば、介護福祉士の従事者数は、令和元年10月現在で約93万人である一方、公益財団法人社会福祉振興・試験センター『各年度9月末の登録者数』によれば、介護福祉士の登録者数は令和元年9月末現在で約169万人である。さらに、介護サービス施設・事業所調査によれば、訪問介護員の従事者数は令和元年10月現在で約51万人である一方、厚生労働省老健局調べによれば、令和元年度までの訪問介護員養成研修、介護職員初任者研修の修了者総数は約448万人に上ることから、介護関係業務に従事していない多くの潜在的な介護福祉士等有資格者が存在していると考えられる。

 2 過不足状況

センター『令和元年度介護労働実態調査』の結果(以下「調査結果」という。)によれば、介護労働者全体の過不足状況について、「適当」と回答した事業所は34.4%、「大いに不足」、「不足」又は「やや不足」(以下「不足感あり」という。)と回答した事業所は65.3%であり、近年、その不足感は依然として高い状況となっている。また、介護労働者の過不足状況を職種別に見ると、介護職員の「不足感あり」は69.7%、訪問介護員の「不足感あり」は81.2%である。

 3 公共職業安定所における職業紹介状況

厚生労働省『職業安定業務統計』によれば、介護関係職種の有効求人倍率は、依然として高い水準で推移しており、令和元年度は4.23倍と高い水準にある。なお、同年度の全職種の有効求人倍率は、1.55倍である。

同年度の介護関係職種の有効求人倍率を都道府県別にみると、全ての都道府県で2.0倍を超えており、高いところで東京都が7.0倍、愛知県が6.0倍を超えている。

同年度の介護関係職種の新規求人数は約120.7万人、新規求職者数は約21.6万人であり、新規求人倍率は5.58倍である。

同年度の介護関係職種の就職件数は約11.9万件、就職率は55.2%である。

 4 就業形態等

調査結果によれば、就業形態について、介護職員は正規職員が60.2%、非正規職員が39.8%であり、訪問介護員は正規職員が30.0%、非正規職員が70.0%である。

年齢構成について、男女別にみると、男性は30歳から49歳までの割合が比較的高く、女性は40歳以上の割合が全体の約75%を占めている。職種別にみると、介護職員は30歳から59歳までの割合が比較的高く、訪問介護員は40歳以上の割合が全体の約8割を占めている。

男女比率について職種別にみると、介護職員、訪問介護員いずれも女性の比率が高い。

 5 賃金

厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査』によれば、介護職と産業計では、平均年齢、勤続年数、性別構成比等に違いがあり、単純な比較はできないが、一般労働者のきまって支給する現金給与額について、ホームヘルパーは約24万1千円、福祉施設介護員は約24万5千円であり、産業計の約33万8千円と比較して低く、また、他産業と比較して年齢別賃金も低い状況にある。勤続年数別賃金(一般労働者)については、社会保険・社会福祉・介護事業の年収を製造業の年収と比較すると、製造業より低い傾向がある。勤続年数(一般労働者)については、社会保険・社会福祉・介護事業の勤続年数は、産業計の勤続年数と比較して短い状況にある。

調査結果によれば、1年間に介護職員と訪問介護員2職種合計(以下「2職種合計」という。)の離職者のうち38.2%が1年未満で離職し、64.0%が3年未満で離職するという状況にあることが、介護職の勤続年数が産業計と比較して相対的に短く、平均でみた賃金が相対的に低くなっている要因の一つと考えられる。

また、福祉施設介護員の初任給は、高卒程度、短大・大卒程度ともに産業計と比較して低い傾向にある。

 6 採用・離職等の状況

調査結果によれば、介護労働者の採用形態の内訳は、新規学卒が5.4%、中途採用が79.1%である。

2職種合計の離職率は15.4%である。2職種合計の離職率は平成19年度は21.6%であったが、介護現場での事業主及び労働者の様々な取組もあり、平成20年度以降は20%を下回って推移し、おおむね改善傾向にある。また、前計画においては、「全産業の平均的な離職率との乖離をできる限り縮小する。」と目標を立てていたが、厚生労働省『令和元年雇用動向調査』によると、全産業平均の離職率は15.6%であり、達成している。

なお、平均の勤続年数は、介護職員が5.8年、訪問介護員が6.7年であり、経年比較すると若干ではあるが勤続年数は伸びている。

 7 仕事の満足度

調査結果によれば、「職業生活全体」について、「満足」又は「やや満足」とした回答が25.8%、「普通」とした回答が56.0%、「不満足」又は「やや不満足」とした回答が16.1%である。「満足」、「やや満足」又は「普通」の合計を平成27年度と比較すると2%改善している。また、「仕事の内容・やりがい」について「満足」又は「やや満足」とした回答が52.7%、「不満足」又は「やや不満足」とした回答が7.9%である一方、「賃金」について「満足」又は「やや満足」とした回答が22.0%、「不満足」又は「やや不満足」とした回答が38.7%である。

 8 仕事の悩み・不安・不満

調査結果によれば、介護労働者の悩み、不安、不満は、「人手が足りない」が最も多く55.7%で、次いで「仕事内容の割に賃金が低い」が39.8%、「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」が29.5%である。

また、直前の介護職場を辞めた理由は、「結婚・妊娠・出産・育児のため」、「職場の人間関係に問題があったため」、「自分の将来の見込みが立たなかったため」とする回答が多い。

 9 雇用管理責任者の選任状況

調査結果によれば、雇用管理責任者の選任状況は、「選任している」が40.8%である。また、雇用管理責任者の認知状況は、「どのようなことをする者かを含め、知っている」が41.5%と低い状況である。前計画においては、「雇用管理責任者として選任した事業所の全事業所に占める割合を50%以上とする。」と目標を立てていたが、未達成である。

一方で、離職率を雇用管理責任者の選任の有無に分けてみると、「選任している事業所」が14.8%、「選任していない事業所」が16.1%となっており、雇用管理責任者を選任している事業所の離職率の方が低い傾向にある。

また、調査結果によると、雇用管理責任者の有無別に介護事業所の取組をみると、雇用管理責任者を選任している事業所の方が、選任していない事業所より「非正規職員から正規職員への転換の機会を設けている」や「能力や仕事ぶりを評価し、賃金などの処遇に反映している」、「悩み、不満、不安などの相談窓口を設けている(メンタルヘルス対策を含む)」などの項目を実施していると回答している割合が高く積極的に雇用管理改善に取り組んでいることが窺える。

 

第3 計画の目標

介護労働者が意欲と誇りを持って生き生きとその能力を発揮して働くことができるようにするため、介護労働者の雇用管理等に関し、計画期間中に達成すべき項目と到達目標について、次のとおり定める。

 1 一層の職場定着を図る

調査結果によると、令和元年度の2職種合計の離職率は15.4%であり、厚生労働省『令和元年雇用動向調査』によると、全産業平均の離職率は15.6%である。引き続き、この水準を少なくとも維持しつつ、更なる改善を目指す。

 2 雇用管理責任者の選任を促す

雇用管理責任者を中心とした介護事業所における雇用管理改善等のため、事業所における適切な雇用管理に加え、介護分野の特徴を踏まえた介護労働者がやりがいを持てるような取組を通じ、介護労働者にとって魅力ある職場づくりを管理する者を雇用管理責任者として選任した事業所の全事業所に占める割合を50%以上とする。

また、雇用管理責任者講習を受講した者の中から雇用管理責任者として選任することが望ましいことから、雇用管理責任者講習受講者の所属する事業所のうち雇用管理責任者を選任していなかった事業所において、雇用管理責任者講習の受講を契機として雇用管理責任者を選任することとした事業所の割合を80%以上とする。

 

第4 介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項

 1 雇用管理の改善

雇用する介護労働者について雇用管理の改善を図るために必要な措置を講ずることにより、その福祉の増進に努めることは、介護労働者法に規定された事業主の責務である。雇用管理改善等に対する事業主自身の意識向上、そして自主的取組が何より重要である。

介護分野では人手不足が深刻な状況が続いており、そうした状況の下、介護事業所は様々な年齢層、パートタイムやフルタイム労働者、外国人労働者、有資格者、介護未経験者など様々な雇用形態や背景を持つ労働者の雇用管理を行い、施設を運営していくこととなる。業務の特徴として夜間介護への対応等介護労働者の労働時間が不規則になる、また身体介助により腰痛が発生しやすいことから、身体的負担・精神的負担が大きいほか、チームでの連携した活動が必要となる。さらに介護労働実態調査によると、介護労働者の離職理由として職場の人間関係、施設の考え方の違いなどを挙げる声が多く、また、介護労働者の悩み、不安、不満として多く挙げられるのは、人手不足、賃金等の待遇面が多い。

介護労働者にとって魅力ある職場づくりを実現するためには、労働時間、賃金、待遇、ハラスメント防止など各種労働関係法等の法令遵守や労働者の人材育成はもとより、介護分野の特徴を踏まえた労働者のための様々な対策が必要である。例えば、職場の人間関係の問題の改善や適切な人員配置、賃金制度の導入、各種助成金制度等を活用し労働者の負担軽減のための機器導入等を通じて、労働者のモチベーションの維持や身体的・精神的負担軽減を図っていくことが必要である。調査結果によると、上司以外に相談できる担当者や相談窓口がある事業所においては、ない事業所と比較して労働者の悩みや不満、不安等が少ない傾向にあるなど、労働者の悩みや不満、不安等を聞く機会を設け、その悩み等を取り除く取組を実施することは働きやすい職場としての魅力を高めることにつながっているといえる。

このため、魅力ある職場づくりを実現するために事業所においてこれらの取組を総括的に管理する雇用管理責任者を介護事業所ごとに選任することが望ましい。雇用管理責任者の役割としては、具体的には、魅力ある職場づくりのために、適切な雇用管理措置として、事業所の理念、方針の下、労働者と円滑にコミュニケーションを取り、労働者の適切な配置、賃金・評価等の処遇改善、人材育成を実施すること、また、介護分野の特徴を踏まえた対応として、労働者がモチベーション高く業務を遂行できる職場の体制の構築や、メンタルヘルス対策、労働者からの相談体制の整備、ICTや介護ロボット等の活用による業務効率化など、労働者の身体的・精神的負担を軽減するための取組を管理することなどが挙げられる。

厚生労働省や関係機関は、雇用管理責任者を中心とした介護事業所における魅力ある職場づくりの実現のため雇用管理改善等が図られるよう、相互に連携して次に掲げる様々な施策を講ずることにより、介護事業所における雇用管理責任者の選任を促し、取組を支援する。特にセンターは、介護労働者法第15条第1項の規定に基づき厚生労働大臣から指定法人としての指定を受け、介護労働者法第18条第1項の規定に基づき介護労働者に関する調査研究や介護労働者に対する教育訓練等、政府の業務を実施する役割を有しているため、様々な面から事業主を支援する。

  (1) 雇用管理責任者講習の実施

雇用管理の改善等の取組に係る役割を担う雇用管理責任者を各事業所にて選任し、雇用管理の改善に取り組むことは介護労働者にとって魅力ある環境づくりがなされるという観点から有効である。このため厚生労働省は、介護事業所における適切な雇用管理改善、労働者のメンタルヘルス対策などの介護分野の特徴を踏まえた対応など、介護事業所の魅力ある職場づくりのために必要な知識やノウハウの取得を促すための雇用管理責任者講習を実施する。

そのほか、介護事業所における雇用管理責任者の選任を一層促すために地方公共団体による集団指導の機会を活用するなど、関係機関と連携して施策を実施する。

  (2) 雇用管理責任者への継続的支援

介護事業所において、雇用管理責任者講習受講後や雇用管理責任者選任後も雇用管理や職場環境の改善に向けた取組が継続的に図られることが必要である。そのため、センターは、(3)の雇用管理の改善のための相談、援助の実施における事業所への訪問事業の中で、選任された雇用管理責任者、雇用管理責任者講習を受けた者及び事業者等に対して研修等の必要な支援、助言等を行うことにより、雇用管理責任者を中心とした事業所の雇用管理改善等への取組を継続的に支援することとする。

  (3) 雇用管理の改善のための相談、援助の実施

センターは、事業主が行う雇用管理の改善のための相談、援助を行う。

具体的には、長年の相談経験を積み介護労働の現場に精通するセンターの職員が、実際に各事業所へ訪問し、また、必要に応じてオンライン等を活用し、現場の実態を確認しながら、事業主からの多種多様な相談にきめ細かく対応するとともに、助成金や雇用管理制度全般に関する情報提供等の援助を行う。特に小規模事業所及び開設3年未満の事業所への相談訪問割合を全相談訪問件数の50%以上とし、相談訪問を行った事業所についての離職率を14%以下にすることを目標とする。

なお、複雑な相談事案に関しては社会保険労務士、中小企業診断士、弁護士等が、また、感染症対策、腰痛対策やメンタルヘルス管理等の健康確保の相談に関しては医師、臨床心理士、保健師、看護師、産業カウンセラー等が、さらに、生産性向上のためのICT等の活用の相談に関してはITコーディネーター等が無料で相談に対応する。

また、センターは、事業所訪問事業等の中で雇用管理改善の好事例を積極的に収集し、好事例集を作成してホームページで公開することとする。また、当該好事例集について、随時追加、更新を行うことで、その内容の一層の充実を図ることとする。相談対応の場面においても当該好事例集を活用するとともに、特に雇用管理の取組が進んでいる好事例をセンターの広報誌に掲載するなど、事業所の雇用管理改善に関する自主的な取組を促していく。

さらに、相談対応の際に、全国の雇用管理改善の好事例集の詳細な調査及び分析をして作成した「介護事業所の採用・定着に向けたポイント」や従業員の労働条件、研修制度や採用から退職に至るまでの雇用管理に関わる基本的かつ重要な項目を分かりやすくマニュアルにした「雇用管理改善のための業務推進マニュアル」を活用する。

また、地方公共団体を通じるなどにより介護事業所に対し、事業主が自らの職場における雇用管理上の課題を診断できる「自己チェックリスト」の活用を積極的に周知し、これに基づき相談援助につなげるように取り組むとともに、事業主がインターネットを利用して自ら雇用管理改善の取組について簡易にチェックすることができる「簡易診断システム」を運営する。

  (4) 雇用管理の改善を支援する助成金等の活用促進

厚生労働省及びセンターは、事業主が行う労働者の雇用管理の改善の促進に資する助成金等の各種制度の内容やセンターの事業等に関する情報について、地方公共団体の集団指導やセンターの事業所訪問の機会等も利用しながら、事業主や労働者に対して幅広く周知する。

  (5) 公共職業安定所とセンターとの連携強化

公共職業安定所は、事業主からの相談により把握したセンターの支援を望む事業所に関する情報や介護分野における最新の求職・求人動向に関する情報等についてセンターに提供し、事業所訪問をする際にセンターと同行する。これらの取組を通じ、公共職業安定所とセンターは、日常的な情報共有や業務上の協力を行うこと等により、両者の一層の連携強化を図る。

  (6) 外国人労働者に関する雇用管理の改善のための相談・援助等の実施

外国人を介護職員として採用する事業所が多くなってきており、これらの外国人労働者に対しての雇用管理改善を図っていくことが求められる。

厚生労働省は、事業主向けセミナーの開催や事業所訪問による相談支援等により、外国人を雇用する事業主が努めるべき雇用管理の内容等を盛り込んだ「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成19年厚生労働省告示第276号)」の周知を行い、事業主に対して適正な労働条件及び安全衛生の確保やその能力を有効に発揮しつつ就労できる環境の確保等について理解を促すとともに、当該指針に基づく必要な助言・指導を行うなど、外国人労働者の雇用管理改善に引き続き取り組むこととする。

また、経済連携協定又は交換公文に基づいて受け入れる外国人介護福祉士候補者については、介護福祉士の資格の取得に必要な知識及び技術の修得に向け、受入れ機関における十分な研修体制の構築を支援する。さらに、外国人介護福祉士候補者及び外国人介護福祉士については、それらの者と同様の業務に従事する日本人職員との均衡待遇を確保するなど、適正な雇用管理の確保を図る。

センターは、相談・援助等の支援で蓄積した外国人労働者の雇用管理ノウハウ、受入れ事業所の好事例等を活用し、外国人労働者の受入れを予定している事業所に対する支援を行うことで、外国人労働者への雇用管理改善に取り組む。

  (7) 法定労働条件の確保、働き方改革

小規模事業所や事業開始後間もない介護事業所においては、労働基準関係法令に関する理解が必ずしも十分ではない事業場が少なくないことなどから、賃金、労働時間等に係る法定労働条件が適正に確保されていない状況がみられるところである。厚生労働省は、労働基準関係法令の周知徹底、監督指導、集団指導等により、法定労働条件の確保・改善対策を推進する。具体的には、都道府県労働局等が地方公共団体主催の説明会を利用して労働基準関係法令に関する説明を行うなど、地方公共団体の介護担当部局と都道府県労働局等との連携を促進する。

なお、平成30年に働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)が成立し、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等が求められることとなった。厚生労働省はこれらの「働き方改革」の実現に向けて、各種助成金や無料相談窓口の設置などの支援を引き続き実施することとする。

  (8) 労働災害防止対策

介護現場においては、労働者の腰痛や転倒による労働災害の多発が問題となっているほか、介護労働者の高齢化が進んでいる。そのため、腰に負担の少ない介護介助方法の定着や、高年齢労働者の健康や体力に応じた業務の提供など、介護労働者が安心して安全に働ける職場づくりが必要である。厚生労働省は、腰痛予防のための作業管理、作業環境管理、健康管理、労働衛生教育等について周知啓発を行うほか、高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドラインに基づく取組の周知啓発を行う。

  (9) 介護ロボットの開発支援

介護現場の人手不足や介護労働者の高齢化が深刻化している状況において、介護労働者の身体的・精神的負担の軽減を促進することが求められている。

厚生労働省は、経済産業省と連携して、介護ロボットについて重点的に開発支援を行う分野を定め、実用化に向けた取組を進める。このうち介護労働者の身体的負担を軽減する介護ロボットでパワーアシストを行う移乗支援機器(装着型・非装着型)を介護ロボット導入支援の対象とするなど、介護ロボットの普及促進を図る。

  (10) ハラスメント防止対策

職場におけるハラスメントは、職場環境を悪化させ、労働者の離職や心身の健康問題の発生の要因となっており、事業主には、労働者にとって働きやすい職場環境を確保することが求められている。

職場におけるセクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)により、ハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講ずることが事業主に義務付けられているが、令和2年6月より事業主及び労働者の責務、ハラスメントについて事業主に相談したこと等を理由とした労働者に対する解雇その他不利益取扱いの禁止等が新たに盛り込まれ、ハラスメント防止対策が強化された。あわせて、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)により、事業主に、職場におけるパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講ずることが義務付けられた(中小事業主については、令和4年3月31日までは努力義務。)。職場におけるハラスメント防止のため、都道府県労働局において、労働者や事業主からの相談を受け付け、適切な雇用管理がなされるよう事業主への指導等を行う。

さらに、介護現場では、利用者やその家族等による介護労働者へのハラスメントが発生している実態があることから、対策マニュアルや地方公共団体等が研修を行うに当たって活用できる手引き、相談を受け付ける際の相談シートを作成するとともに、地域医療介護総合確保基金において当該研修や相談窓口の設置に係る費用に対して助成するなど、引き続きハラスメント対策を進めていく。

  (11) 仕事と家庭の両立支援

育児や家族の介護を行いながら仕事をする労働者が増加している。

次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づき、事業主は、一般事業主行動計画の策定・届出、公表、労働者への周知を行い、労働者の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や多様な労働条件の整備などに取り組むこととされている。

特に介護の職場は女性比率が高いという現状の中、厚生労働省は介護分野においても、労働者が出産や子育てに伴い不本意に離職することにならないよう、女性の働きやすい環境整備や安心して働き続けられる環境の整備、助成制度を通じた事業主への支援など労働者の仕事と家庭の両立支援により一層取り組む。

 2 職業能力の開発及び向上

介護労働者がその能力を発揮して働くことができ、かつ事業主がスキルの高い介護労働者を十分に確保できるようにしていくために、厚生労働省や関係機関は、次に掲げる様々な施策を講じることにより、事業主の行う雇用管理の改善のための取組を支援していくことと併せて、事業主が人材育成のための研修計画を策定する等の取組の支援や介護労働者の能力の開発及び向上を図る。

  (1) センター等による介護労働者の能力開発

介護人材の量的確保を進める一方、今後、高度化・複雑化する介護ニーズに対応するには、介護人材の質的確保・向上を併せて進めなければならない。そのため、専門性が高く、中核的な役割を果たすべき介護福祉士について、その資質及び社会的評価の向上の観点から、必要な環境整備等を進めることが必要である。

介護に携わる人材の専門性の確立、個々人のキャリア形成及び離転職者等の早期再就職の促進を図るため、効率的かつ効果的に介護労働者の能力開発及びその支援を行う必要がある。このため、センターは、介護労働者になろうとする、主に他産業の離職者を対象に必要な知識及び技能を習得させるため、実務者研修の内容に、再就職又は現場定着に資する現場実習・講習カリキュラム等を組み合わせた介護労働講習を行い、講習終了後3か月時点の就職率を継続的に85%以上とする。

また、厚生労働省は、民間教育訓練機関等を活用し、離転職者等の安定的な雇用の実現に向けて、介護分野における人材需要に対応した効果的な公的職業訓練を推進する。例えば、座学と企業等における実習を組み合わせた実践的な職業訓練や地方公共団体の福祉施策と連携した職業訓練を実施する。

  (2) 能力開発に関する相談援助

センターは、介護事業者又は介護労働者を対象に、キャリア形成に関する相談援助や研修計画の作成支援等、能力開発のための相談援助を行う。

また、厚生労働省は、介護労働者を含めた労働者が身近に、必要な時にキャリアコンサルティングを受けることができるよう、「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」のツールであるジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを推進する。

  (3) 能力開発を支援する助成金等の活用促進

厚生労働省は、介護労働者の能力開発を支援するため、あらゆる機会を捉え、次に掲げる雇用関係助成金等の活用促進を図る。

イ 事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費等の一部を助成する助成金

ロ 雇用保険を受給できない求職者に対する訓練受講の機会の確保や、一定の場合に訓練期間中に支給する給付金

  (4) 教育訓練講座の指定

厚生労働省は、介護福祉士の資格取得を目指す養成課程や介護支援専門員実務研修等を教育訓練給付制度の対象講座として指定し、介護労働者が主体的に能力開発に取り組むことを支援し、雇用の安定等を図る。なお、同講座を受講する介護労働者が自ら費用を負担して一定の教育訓練を受けた場合に、費用の一部を支給する。

 

第5 その他介護労働の人材確保や福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項

 1 人材確保

  (1) 公共職業安定所(人材確保対策コーナー)

介護分野等において有効求人倍率が高止まりしており、人材不足が深刻化している状況にある。

公共職業安定所は、求職者に対するきめ細かな職業相談、職業紹介等の就職支援、求人者に対する求人充足に向けた助言、指導等を行う。特に、主要な公共職業安定所に設置した「人材確保対策コーナー」においては、介護分野等の人材確保に特化した専門的な対応、特に就職面接会、職場見学会等を行い、マッチング機会の提供を行うとともに、事業所訪問等による求人条件見直し等、求人充足のための支援を行っていく。

そのほか、求職者が介護サービス又は事業所若しくは施設について比較し、検討した上で就職先を適切に選択するための一つの情報として、求人者の協力の下、詳細な情報(事業所の経営理念や入職後の標準的なキャリアパス、当該事業所の労働者の声等)を収集し、近隣の賃金水準等の最新情報とともに求職者に対し提供する。

  (2) 医療・介護・保育分野適合紹介事業者宣言

介護分野等については、人材確保が困難であることや、紹介された就職者が早期離職する等が指摘されている。

このため、厚生労働省は、職業安定法(昭和22年法律第141号)及び職業安定法に基づく指針を遵守する職業紹介事業者を見える化する取組として、「医療・介護・保育分野適合紹介事業者宣言」を行った事業者を「人材サービス総合サイト」において、順次公開していくことにより、当サイトを通じて、広く求職者、求人者に遵法意識が高い職業紹介事業者を周知することとする。

  (3) 福祉人材センターによる取組

介護人材の人材不足の解消に向け、都道府県福祉人材センターは、地域における広域的な介護人材確保のための中核的な役割を担うため、公共職業安定所との連携を強化しつつ、個々の求職者のニーズに応じた職場開拓やきめ細かな職場紹介、就職後のキャリアに関する相談支援等を適切に行うことができるよう、その機能の更なる充実を図る。

また、離職した介護福祉士の届出制度により、離職者情報を把握するとともに、求職に役立つ情報の提供等を行い、介護福祉士の再就業を促進する。

  (4) 介護職の魅力向上PR

介護に関するネガティブなイメージを払拭するため、若者をはじめ、新卒者などの様々な人材に対して介護職場の魅力を発信するため、都道府県福祉人材センター、地方公共団体、センター等による「介護の日」(11月11日)関連の行事の実施や、全国の公共職業安定所による「介護就職デイ」における就職面接会等の取組を行う。

特に、将来における人材の確保のためには、進路選択期・就職期である若年層から魅力ある職業として、評価・選択されるよう、公共職業安定所や福祉人材センターと各教育機関・養成施設等との連携を密にし、職業教育、インターンシップや合同就職説明会等を通じ、介護サービスの実態・仕事に対するやりがいや社会的意義、介護への理解を深めていく必要がある。

また、その他若手職員(経験年数概ね3年未満)が一堂に会し、介護施設・事業所を越えた職員同士のネットワークを構築するとともに、介護職の魅力を再認識するなどの取組を推進するとともに、関係団体との協働の下で、先進的な「介護」を知るための体験型イベントの開催や若年層、子育てを終えた層、アクティブシニア層などに対する個別アプローチなど、介護の仕事の魅力等に関する情報発信の取組等を進める。

  (5) 雇用と福祉の連携による離職者への介護分野への就職支援

介護分野における人材確保を支援するため、公共職業安定所、訓練機関及び福祉人材センターの連携強化による就職支援等を実施する。

  (6) センターと関係機関の連携

センターは、介護分野の人材確保・定着を促すため、都道府県労働局、地方公共団体及び関係団体と連携し、各種会議などのあらゆる機会を通じて、施策等に係る情報の交換や施策の周知等に取り組む。

  (7) シルバー人材センターの活用

シルバー人材センターが介護施設等から介護補助業務(清掃、調理、配膳、送迎等)を受託することは、介護労働者が介護業務に専念できる環境づくりに寄与することから、厚生労働省は、シルバー人材センターによる介護補助業務の取組を支援するとともに、労働関係法令に基づいた適正な就業機会の提供、安全就業の徹底などについても引き続き取り組む。

  (8) 介護サービス情報の公表

厚生労働省は、介護サービスの利用者等が介護サービス又は事業所若しくは施設について比較し、検討した上で適切に選択することができるよう、ホームページにおいて、全国の事業所の入・退職者数、介護労働者の資質向上に向けた取組(研修計画)等の状況を集約した「介護サービス情報公表システム」を公開し、その運営を行う。

 2 地域医療介護総合確保基金の活用による参入促進、労働環境の改善

都道府県は、消費税増収分を活用した基金(地域医療介護総合確保基金)を活用し、地域の実情に応じた総合的・計画的な介護人材確保対策を推進するため、「参入促進」、「労働環境等の改善」、「資質の向上」などの取組を推進するとともに、人材不足に関連した課題等が急務な介護事業所に対する業務改善、ICTや介護ロボット等の導入等の支援を行うなど介護現場での生産性の向上を図り、介護労働者等の労働環境の改善に取り組むとともに、多様な人材の確保・育成を通して介護人材の裾野を広げる。

 3 処遇の改善

介護職員の処遇を含む労働条件については、本来、労使間において自律的に決定すべきものであるが、他方、介護人材の安定的確保及び資質の向上を図るためには、給与水準の向上を含めた処遇改善が確実かつ継続的に講じられることが必要である。

介護人材の確保のため、資質向上や雇用管理改善の取組を通じて介護職員の社会的・経済的評価が高まっていくという好循環を生み出して安定的な処遇改善につなげていくことが重要であり、平成29年度介護報酬改定においては、消費税増収分を活用して、経験や技能に応じて昇給する仕組みを構築し、月額1万円相当の処遇改善を行うため、臨時に報酬改定を実施した。令和元年10月からは、満年度で公費1,000億円を投じ、リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指し、経験・技能のある職員に重点化を図りつつ、更なる処遇改善を実施している。介護職員処遇改善加算等について、上位区分の算定や取得促進を進めることで、介護職員の処遇改善を着実に実施していく。

 4 労働実態把握

センターは、雇用管理改善等の基礎資料を得るため、介護労働者の雇用実態や労働環境をきめ細かに調査及び分析をした介護労働実態調査を毎年継続的に実施する。

 5 健康の保持・増進

介護労働者の健康の保持・増進を図るため、健康確保対策を推進する。

  (1) メンタルヘルス対策

メンタルヘルス対策については、各都道府県に設置された産業保健総合支援センター及びその地域窓口において、総合的な相談対応、事業者における対策の導入や拡充に関する専門家による事業所訪問、管理監督者向けの研修を行う。

  (2) 感染症対策

令和3年度介護報酬改定においては、全ての介護サービス事業者に対して、感染症の発生及びまん延等に関する取組の徹底を求めることとしたところであり、引き続き、新型コロナウイルス感染症をはじめとした感染症への対応力の強化、介護労働者の安全・安心できる体制の構築等に取り組んでいく。

 

改正文(平成二九年六月三〇日厚生労働省告示第二三二号 抄)

平成三十年一月一日から適用する。

 

改正文(令和三年三月三一日厚生労働省告示第一一七号 抄)

 令和三年四月一日から適用する。