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告示:外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針

 

外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針

制 定 平成十九年八月三日厚生労働省告示第二百七十六号

最終改正 令和元年九月十九日厚生労働省告示第百二十号

 

雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)第九条の規定に基づき、外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針を次のように定め、平成十九年十月一日から適用することとしたので、同条の規定に基づき告示する。

 

外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針

 

第一 趣旨

この指針は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第七条に定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、事業主が講ずべき必要な措置について定めたものである。

 

第二 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して必要な措置を講ずるに当たっての基本的考え方

外国人が我が国で安心して就労し、企業や地域社会の一員として活躍するためには、事業主による関係法令の遵守や適切な待遇の確保、日本人との相互理解等を通じた魅力ある職場環境の整備、職業生活上、日常生活上又は社会生活上の適切な支援等が重要となる。

また、労働者の国籍にかかわらず、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)、労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号。以下「短時間・有期雇用労働法」という。)、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号。以下「男女雇用機会均等法」という。)、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)等の労働関係法令及び社会保険関係法令は適用されるものであり、事業主は、外国人労働者についても、これらを遵守するとともに、その在留資格の範囲内で、適正な労働条件及び安全衛生の確保や、雇用保険、労働者災害補償保険、健康保険及び厚生年金保険(以下「労働・社会保険」という。)の適用、人事管理の運用の透明性及び公正性の確保や生活支援等を通じ、その有する能力を有効に発揮しつつ就労できる環境が確保されるよう、この指針で定める事項について、適切な措置を講ずるべきである。

 

第三 外国人労働者の定義

この指針において「外国人」とは、日本国籍を有しない者をいい、特別永住者並びに在留資格が「外交」及び「公用」の者を除くものとする。また、「外国人労働者」とは、外国人の労働者をいうものとする。

なお、「外国人労働者」には、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号)第二条第一項に規定する技能実習生(以下「技能実習生」という。)も含まれるものである。

 

第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置

一 外国人労働者の募集及び採用の適正化

1 募集

イ 募集を行う際の労働条件の明示

事業主は、労働者を募集するに当たっては、募集に応じて労働者になろうとする外国人に対し、当該外国人が従事すべき業務の内容、労働契約の期間、就業の場所、労働時間や休日、賃金、労働・社会保険の適用に関する事項等(ロにおいて「明示事項」という。)について、その内容を明らかにした書面の交付により、明示すること。ただし、当該外国人が希望する場合においては、ファクシミリを利用してする送信又は電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいい、以下「電子メール等」という。)の送信の方法(当該外国人が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)により明示することも可能であることに留意すること。その際、母国語その他の当該外国人が使用する言語又は平易な日本語(以下「母国語等」という。)を用いる等、当該外国人が理解できる方法により明示するよう努めること。特に、募集に応じて労働者になろうとする外国人が国外に居住している場合にあっては、入国後に、募集条件に係る相互の理解の齟齬そご等から労使間のトラブル等が生じることのないよう、事業主による渡航又は帰国に要する旅費その他の費用の負担の有無や負担割合、住居の確保等の募集条件の詳細について、あらかじめ明確にするよう努めること。

ロ 職業紹介事業者等の利用

事業主は、外国人労働者のあっせんを受ける場合には、職業安定法等の定めるところにより、無料の職業紹介事業を行う地方公共団体又は職業紹介事業の許可を受けている者若しくは届出を行っている者(以下このロにおいて「職業紹介事業者等」という。)から受け、外国人労働者と違約金若しくは保証金の徴収等に係る契約を結ぶ等同法に違反する者又は労働者派遣法に違反する者からは受けないこと。また、国外に居住する外国人労働者のあっせんを受ける場合には、外国人労働者と違約金又は保証金の徴収等に係る契約を結ぶ者を取次機関として利用する職業紹介事業者等からあっせんを受けないこと。特に、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)別表第一の二の表の特定技能(以下「特定技能」という。)の在留資格を取得しようとする者のあっせんを受ける事業主においては、同法第十九条の十八第一項に規定する特定技能所属機関(以下「特定技能所属機関」という。)の基準として、当該職業紹介事業者等からあっせんを受けてはならないこととされていることに留意すること。

また、事業主は、求人の申込みに当たり、職業紹介事業者等に対し、明示事項について、その内容を明らかにした書面の交付又は当該職業紹介事業者等が希望する場合におけるファクシミリを利用してする送信若しくは電子メール等の送信の方法(当該職業紹介事業者等が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)により明示すること。

なお、職業紹介事業者等が職業紹介を行うに当たり、国籍を理由とした差別的取扱いをすることは、職業安定法上禁止されているところであるが、事業主においても、職業紹介事業者等に対し求人の申込みを行うに当たり、国籍による条件を付すなど差別的取扱いをしないよう十分留意すること。

ハ 労働条件の変更等の明示

事業主は、募集に応じて労働者になろうとする外国人と労働契約を締結しようとする場合であって、募集するに当たって当該外国人に対して明示した事項を変更、特定等する場合は、明示した事項と変更内容等とを対照することができる書面を交付する等、適切な方法により明示すること。その際、母国語等を用いる等、当該外国人が変更内容等を理解できる方法により明示するよう努めること。

2 採用

事業主は、外国人労働者を採用するに当たっては、第五に定める方法等を通じ、あらかじめ、当該外国人が、採用後に従事すべき業務について、在留資格上、従事することが認められる者であることを確認することとし、従事することが認められない者については、採用してはならないこと。

事業主は、外国人労働者について、在留資格の範囲内で、外国人労働者がその有する能力を有効に発揮できるよう、公平な採用選考に努めること。特に、永住者、定住者等その身分に基づき在留する外国人に関しては、その活動内容に制限がないことに留意すること。

二 適正な労働条件の確保

1 均等待遇

事業主は、労働者の国籍を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならないこと。

2 労働条件の明示

イ 書面の交付等

事業主は、外国人労働者との労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等主要な労働条件について、その内容を明らかにした書面を交付すること。ただし、当該外国人労働者が希望する場合においては、ファクシミリを利用してする送信又は電子メール等の送信の方法(当該外国人労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)により明示することも可能であることに留意すること。その際、モデル労働条件通知書やモデル就業規則を活用する、母国語等を用いて説明する等、当該外国人労働者が理解できる方法により明示するよう努めること。

ロ 賃金に関する説明

事業主は、賃金について明示する際には、賃金の決定、計算及び支払の方法等はもとより、これに関連する事項として税金、雇用保険及び社会保険の保険料、労使協定に基づく賃金の一部控除の取扱いについても、母国語等を用いる等、外国人労働者が理解できるよう説明し、当該外国人労働者に実際に支給する額が明らかとなるよう努めること。

3 賃金の支払い

事業主は、外国人労働者に対し、最低賃金法等の定めるところにより最低賃金額以上の賃金を支払うことはもとより、基本給、割増賃金等の賃金について、法令で別段の定めがある場合又は労使協定が締結されている場合を除き、全額を支払うこと。また、労使協定に基づき食費、居住費等を賃金から控除する場合等については、その額について、実費を勘案し、不当な額とならないようにすること。

また、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならず、労働契約に付随することなく、外国人労働者の希望する貯蓄金をその委託を受けて管理する場合であっても、労使協定の締結及び届出等が必要であることに留意すること。

4 適正な労働時間等の管理

事業主は、法定労働時間及び時間外・休日労働の上限規制の遵守、週休日の確保をはじめ適正な労働時間管理を行うとともに、時間外・休日労働の削減に努めること。また、労働時間の状況の把握に当たっては、タイムカードによる記録等の客観的な方法その他の適切な方法によるものとすること。

あわせて、事業主は、労働基準法等の定めるところにより、年次有給休暇を与えること。労働者ごとにその時季を定めることにより年次有給休暇を与える際には、その時季について外国人労働者の意見を聴くとともに、聴取した意見を尊重するよう努めること。

5 労働基準法等の周知

事業主は、労働基準法等の定めるところにより、その内容、就業規則、労使協定等について周知すること。その際には、分かりやすい説明書や行政機関が作成している多言語対応の広報資料等を用いる、母国語等を用いて説明する等、外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めること。

6 労働者名簿等の調製

事業主は、労働基準法等の定めるところにより労働者名簿、賃金台帳及び年次有給休暇管理簿を調製すること。その際には、外国人労働者について、家族の住所その他の緊急時における連絡先を把握しておくよう努めること。

7 金品の返還等

事業主は、外国人労働者の旅券、在留カード等を保管しないようにすること。また、外国人労働者が退職する際には、労働基準法の定めるところにより当該外国人労働者の権利に属する金品を返還すること。また、返還の請求から七日以内に外国人労働者が出国する場合には、出国前に返還すること。

8 寄宿舎

事業の附属寄宿舎に外国人労働者を寄宿させる事業主は、労働基準法等の定めるところにより、寄宿舎について換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講ずること。

9 雇用形態又は就業形態に関わらない公正な待遇の確保

イ 不合理な待遇の禁止

事業主は、短時間・有期雇用労働法及び労働者派遣法の定めるところにより、短時間・有期雇用労働者又は派遣労働者である外国人労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者(派遣労働者である外国人労働者にあっては、派遣先に雇用される通常の労働者。以下このイ及びロにおいて同じ。)の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者又は派遣労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないこと。

ロ 差別的取扱いの禁止

事業主は、短時間・有期雇用労働法及び労働者派遣法の定めるところにより、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者又は派遣労働者である外国人労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情(派遣労働者である外国人労働者にあっては、当該労働者派遣契約及び当該派遣先における慣行その他の事情)からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間(派遣労働者である外国人労働者にあっては、当該派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間)において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、短時間・有期雇用労働者又は派遣労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならないこと。

ハ 労使協定による派遣労働者の待遇の確保

労働者派遣の形態で外国人労働者を就業させる事業主は、イ及びロ(労働者派遣法に係るものに限る。)にかかわらず、労働者派遣法等の定めるところにより、派遣労働者である外国人労働者の待遇(労働者派遣法第四十条第二項の教育訓練及び同条第三項の福利厚生施設を除く。)について労使協定により一定の事項を定めたときは、当該労使協定による待遇を確保すること。

ニ 待遇に関する説明

事業主は、短時間・有期雇用労働者又は派遣労働者である外国人労働者から求めがあったときは、通常の労働者(派遣労働者である外国人労働者にあっては、労働者派遣法第二十六条第八項に規定する比較対象労働者)との間の待遇の相違の内容及び理由等について説明すること。その際、母国語等を用いる等、当該外国人労働者が理解できる方法により説明するよう努めること。

三 安全衛生の確保

1 安全衛生教育の実施

事業主は、労働安全衛生法等の定めるところにより外国人労働者に対し安全衛生教育を実施するに当たっては、母国語等を用いる、視聴覚教材を用いる等、当該外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うこと。特に、外国人労働者に使用させる機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱方法等が確実に理解されるよう留意すること。

2 労働災害防止のための日本語教育等の実施

事業主は、外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができるようにするため、必要な日本語及び基本的な合図等を習得させるよう努めること。

3 労働災害防止に関する標識、掲示等

事業主は、事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示等について、図解等の方法を用いる等、外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うよう努めること。

4 健康診断の実施等

事業主は、労働安全衛生法等の定めるところにより外国人労働者に対して健康診断、面接指導及び心理的な負担の程度を把握するための検査を実施すること。実施に当たっては、これらの目的・内容を、母国語等を用いる等、当該外国人労働者が理解できる方法により説明するよう努めること。また、外国人労働者に対しこれらの結果に基づく事後措置を実施するときは、その結果並びに事後措置の必要性及び内容を当該外国人労働者が理解できる方法により説明するよう努めること。

5 健康指導及び健康相談の実施

事業主は、産業医、衛生管理者等を活用して外国人労働者に対して健康指導及び健康相談を行うよう努めること。

6 母性保護等に関する措置の実施

事業主は、女性である外国人労働者に対し、労働基準法、男女雇用機会均等法等の定めるところにより、産前及び産後休業、妊娠中の外国人労働者が請求した際の軽易な業務への転換、妊産婦である外国人労働者が請求した場合の時間外労働等の制限、妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置等、必要な措置を講ずること。

7 労働安全衛生法等の周知

事業主は、労働安全衛生法等の定めるところにより、その内容について周知すること。その際には、分かりやすい説明書を用いる、母国語等を用いて説明する等、外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めること。

四 労働・社会保険の適用等

1 制度の周知及び必要な手続の履行等

事業主は、外国人労働者に対し、労働・社会保険に係る法令の内容及び保険給付に係る請求手続等について、雇入れ時に行政機関が作成している多言語対応の広報資料等を活用する、母国語等を用いて説明する等、外国人労働者が理解できる方法により周知に努めること。また、労働・社会保険に係る法令の定めるところに従い、被保険者に該当する外国人労働者に係る適用手続等必要な手続をとること。

さらに、健康保険及び厚生年金保険の適用となる事業所の事業主は、外国人労働者が離職したときは、遅滞なく被保険者証を回収するとともに、国民健康保険又は国民年金の適用の手続が必要になる場合にあっては、その旨を教示するよう努めること。

健康保険及び厚生年金保険の適用とならない事業所の事業主は、外国人労働者及びその家族が適切に国民健康保険及び国民年金の適用の手続が行えるよう、母国語等での手続の説明や市区町村等の相談窓口の案内、必要に応じた同行等の必要な援助を行うよう努めること。

なお、個人経営で農業を営み、常時五人未満の労働者を使用している事業所等、労働保険の適用が任意の事業所においては、事業主は外国人労働者を含む労働者の希望等に応じ、労働保険の加入の申請を行うこと。

2 保険給付の請求等についての援助

イ 雇用保険

事業主は、外国人労働者が離職する場合には、外国人労働者本人への雇用保険被保険者離職票の交付等、必要な手続を行うとともに、失業等給付の受給に係る公共職業安定所の窓口の教示その他必要な援助を行うよう努めること。

ロ 労働者災害補償保険

事業主は、外国人労働者に係る労働災害等が発生した場合には、労働者災害補償保険の給付の請求その他の手続に関し、外国人労働者やその家族等からの相談に応ずること。加えて、外国人労働者やその家族等が自ら手続を行うことが困難な場合等には、その手続を行うことができるよう必要な援助を行うよう努めること。

ハ 健康保険

事業主は、外国人労働者が病気、負傷等(労働災害によるものを除く。)のため就業することができない場合には、健康保険において傷病手当金が支給され得ることについて、当該外国人労働者に教示するよう努めること。

ニ 公的年金

事業主は、外国人労働者が国民年金又は厚生年金保険(以下このニにおいて「公的年金」という。)の被保険者期間中に初診日のある傷病によって障害等級に該当する程度の障害の状態になったときは、障害年金が支給され得ることについて、当該外国人労働者に教示するよう努めること。また、公的年金の被保険者期間が一定期間以上の外国人労働者が帰国する場合、帰国後、被保険者期間等に応じた脱退一時金の支給を請求し得る旨帰国前に説明するとともに、年金事務所等の関係機関の窓口を教示するよう努めること。なお、説明の際には、次に掲げる事項を踏まえつつ、請求を検討すべきであることを教示するよう努めること。

(1) 脱退一時金を受給した場合、その支給を受けた者は、その額の計算の基礎となった被保険者であった期間は、被保険者でなかったものとみなされるため、受給資格期間が十年であることを踏まえた将来的な老齢年金の受給の可能性に留意すべきであること。

(2) 公的年金を受給することができる年齢に達した際に社会保障協定(被保険者期間の通算規定を有するものに限る。)の相手国の年金制度に加入していた期間がある外国人労働者は、当該期間と公的年金の被保険者期間等を通算することにより、公的年金を受け取ることができる場合があること。

五 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等

1 適切な人事管理

事業主は、その雇用する外国人労働者が円滑に職場に適応できるよう、社内規程その他文書の多言語化等、職場における円滑なコミュニケーションの前提となる環境の整備に努めること。また、当該職場での評価や待遇に納得しつつ就労することができるよう、職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化、評価・賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明性・公正性の確保等、多様な人材が適切な待遇の下で能力発揮しやすい環境の整備に努めること。その際、公共職業安定所の行う雇用管理に係る助言・指導を踏まえ、適切に対応すること。

2 生活支援

事業主は、外国人労働者の日本社会への対応の円滑化を図るため、外国人労働者に対して日本語教育及び日本の生活習慣、文化、風習、雇用慣行等について理解を深めるための支援を行うとともに、外国人労働者が地域社会における行事や活動に参加する機会を設けるように努めること。また、事業主は、居住地周辺の行政機関、医療機関、金融機関等に関する各種情報の提供や同行等、外国人労働者が、居住地域において安心して日常生活又は社会生活を営むために必要な支援を行うよう努めること。

3 苦情・相談体制の整備

事業主は、外国人労働者の苦情や相談を受け付ける窓口の設置等、体制を整備し、日本における生活上又は職業上の苦情・相談等に対応するよう努めるとともに、必要に応じ、地方公共団体が情報提供及び相談を行う一元的な窓口等、行政機関の設ける相談窓口についても教示するよう努めること。

4 教育訓練の実施等

事業主は、外国人労働者が、在留資格の範囲内でその能力を有効に発揮しつつ就労することが可能となるよう、教育訓練の実施その他必要な措置を講ずるように努めるとともに、母国語での導入研修の実施等働きやすい職場環境の整備に努めること。

5 福利厚生施設

事業主は、外国人労働者について適切な宿泊の施設を確保するように努めるとともに、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、外国人労働者にも十分な機会が保障されるように努めること。

6 帰国及び在留資格の変更等の援助

イ 事業主は、その雇用する外国人労働者の在留期間が満了し、在留資格の更新がなされない場合には、当該外国人労働者の雇用関係を終了し、帰国のための諸手続の相談その他必要な援助を行うよう努めること。

また、その雇用する外国人労働者が帰国する際、病気等やむを得ない理由により帰国に要する旅費を支弁できない場合には、当該旅費を負担するよう努めること。特に、特定技能の在留資格をもって在留する者については、出入国管理及び難民認定法第二条の五第一項に規定する特定技能雇用契約(以下「特定技能雇用契約」という。)の基準として、当該外国人労働者が特定技能雇用契約の終了後の帰国に要する旅費を負担することができないときは、当該旅費を負担するとともに、契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとされていることに留意すること。また、技能実習生については、帰国事由が自己都合による場合も含め、監理団体(企業単独型技能実習の場合は事業主)が帰国に要する旅費を負担するとともに、契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとされていることに留意すること。

ロ 事業主は、外国人労働者が在留資格を変更しようとするとき又は在留期間の更新を受けようとするときは、その手続を行うに当たっての勤務時間の配慮その他必要な援助を行うように努めること。

ハ 事業主は、外国人労働者が一時帰国を希望する場合には、休暇の取得への配慮その他必要な援助を行うよう努めること。特に、特定技能の在留資格をもって在留する者については、特定技能雇用契約の基準として、当該外国人労働者が一時帰国を希望した場合には、必要な休暇を取得させることとされていることに留意すること。

7 外国人労働者と共に就労する上で必要な配慮

事業主は、外国人労働者を受け入れるに当たっては、日本人労働者と外国人労働者とが、文化、慣習等の多様性を理解しつつ共に就労できるよう努めること。

六 解雇等の予防及び再就職の援助

1 解雇

事業主は、事業規模の縮小等を理由として解雇を行う場合であっても、労働契約法において、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされていること及び期間の定めのある労働契約(2において「有期労働契約」という。)については、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないとされていることに留意し、外国人労働者に対して安易な解雇を行わないようにすること。

2 雇止め

事業主は、有期労働契約の更新を拒絶すること(以下「雇止め」という。)は、労働契約法において、労働者が有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合等であって、当該雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないときは、認められないこととされていることに留意し、外国人労働者に対して、安易な雇止めを行わないようにすること。

3 再就職の援助

事業主は、外国人労働者が解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他事業主の都合により離職する場合において、当該外国人労働者が再就職を希望するときは、関連企業等へのあっせん、教育訓練等の実施・受講あっせん、求人情報の提供等当該外国人労働者の在留資格に応じた再就職が可能となるよう、必要な援助を行うよう努めること。その際、公共職業安定所と密接に連携するとともに、公共職業安定所の行う再就職援助に係る助言・指導を踏まえ、適切に対応すること。

4 解雇制限

事業主は、外国人労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間等、労働基準法の定めるところにより解雇が禁止されている期間があることに留意すること。

5 妊娠、出産等を理由とした解雇の禁止等

事業主は、女性である外国人労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならないこと。また、妊娠、出産等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。

七 労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

1 労働者派遣

労働者派遣の形態で外国人労働者を就業させる事業主にあっては、当該外国人労働者が従事する業務の内容、就業の場所、当該外国人労働者を直接指揮命令する者に関する事項等、当該外国人労働者の派遣就業の具体的内容を当該外国人労働者に明示する、派遣先に対し派遣する外国人労働者の氏名、雇用保険及び社会保険の加入の有無を通知する等、労働者派遣法等の定めるところに従い、適正な事業運営を行うこと。また、派遣先は、労働者派遣事業の許可を受けていない者からは外国人労働者に係る労働者派遣を受けないこと。

2 請負

請負を行う事業主にあっては、請負契約の名目で実質的に労働者供給事業又は労働者派遣事業を行うことのないよう、職業安定法及び労働者派遣法を遵守すること。具体的には、自ら雇用する外国人労働者の就業場所が注文主である他の事業主の事業所内である場合には、当該注文主が当該外国人労働者の使用者であるとの誤解を招くことがないよう、当該事業所内で業務の処理の進行管理を行うこと。また、その就業場所において適切に雇用管理がなされるよう、当該事業所内で、第六で選任する雇用労務責任者等に人事管理、生活支援等の職務を行わせること。

さらに、請負を行う事業主は、外国人労働者の希望により、労働契約の期間をできる限り長期のものとし、労働契約の期間中に業務に従事させることができない期間が生じた場合にも教育訓練を実施する等により労働契約を継続する等、安定的な雇用の確保に努めること。

 

第五 外国人労働者の雇用状況の届出

事業主は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第二十八条第一項の規定に基づき、新たに外国人労働者を雇い入れた場合又はその雇用する外国人労働者が離職した場合には、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等の一に掲げる事項について、二に掲げる方法により確認し、三に掲げる方法及び期限に従って、当該事項を当該事業主の事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に届け出ること。なお、確認に当たっての留意事項は、四のとおりとすること。

一 確認し、届け出るべき事項

イ 雇用保険被保険者資格を有する外国人労働者について

氏名、在留資格(資格外活動の許可を受けて就労する者を雇い入れる場合にあっては当該許可の有無、特定技能の在留資格をもって在留する者を雇い入れる場合又は特定技能の在留資格をもって在留する者が離職した場合にあっては法務大臣が当該外国人について指定する特定産業分野(出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に規定する特定産業分野をいう。二のハにおいて同じ。)、特定活動の在留資格をもって在留する者を雇い入れる場合又は特定活動の在留資格をもって在留する者が離職した場合にあっては法務大臣が当該外国人について特に指定する活動を含む。ロにおいて同じ。)、在留期間、生年月日、性別、国籍の属する国又は同法第二条第五号ロに規定する地域(以下「国籍・地域」という。)のほか、職種、賃金、住所等の雇用保険被保険者資格取得届又は雇用保険被保険者資格喪失届に記載すべき当該外国人の雇用状況等に関する事項(同法第十九条の三に規定する中長期在留者(以下このイ及びロにおいて「中長期在留者」という。)を雇い入れる場合又は中長期在留者が離職した場合にあっては、これらに加えて、同法第十九条の四第一項第五号の在留カードの番号(ロにおいて「在留カードの番号」という。))

ロ 雇用保険被保険者資格を有さない外国人労働者について

氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別及び国籍・地域(中長期在留者を雇い入れる場合又は中長期在留者が離職した場合にあっては、これらに加えて、在留カードの番号)

二 確認の方法

イ ロからニまでに該当する者以外の外国人労働者について

当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者にあっては、旅券又は在留資格証明書)の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法

ロ 資格外活動の許可を受けて就労する者について

当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者にあっては、旅券又は在留資格証明書(当該外国人労働者が資格外活動の許可を受けている旨が記載されていない場合には、資格外活動許可書又は就労資格証明書を含む。))の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法

ハ 特定技能の在留資格をもって在留する者について

当該外国人労働者の在留カード及び特定産業分野を記載した指定書の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法

ニ 特定活動の在留資格をもって在留する者について

当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者にあっては、旅券又は在留資格証明書)及び法務大臣が当該外国人について特に指定する活動を記載した指定書の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法

三 届出の方法・期限

イ 雇用保険被保険者資格を有する外国人労働者について

雇入れに係る届出にあっては雇い入れた日の属する月の翌月十日までに、雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第六条第一項の届出と併せて、必要事項を届け出ることとし、離職に係る届出にあっては離職した日の翌日から起算して十日以内に、同令第七条第一項の届出と併せて、必要事項を届け出ること。

ロ 雇用保険被保険者資格を有さない外国人労働者について

雇入れに係る届出、離職に係る届出ともに、雇入れ又は離職した日の属する月の翌月の末日までに、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和四十一年労働省令第二十三号)様式第三号(以下「様式第三号」という。)に必要事項を記載の上、届け出ること。

四 確認に当たっての留意事項

事業主は、雇い入れようとする者について、通常の注意力をもって当該者が外国人であると判断できる場合に、当該者に係る一の事項を確認すること。ここで通常の注意力をもって当該者が外国人であると判断できる場合とは、特別な調査等を伴うものではなく、氏名や言語などから、当該者が外国人であることが一般的に明らかである場合をいうこと。このため、例えば、通称として日本名を用いており、かつ、日本語の堪能な者など、通常の注意力をもっては、当該者が外国人であると判断できない場合にまで、確認を求めるものではないこと。なお、一に掲げる事項以外の事項の確認・届出は必要のないものであり、外国人労働者のプライバシーの保護の観点からも、この点に十分留意すること。

 

第六 外国人労働者の雇用労務責任者の選任

事業主は、外国人労働者を常時十人以上雇用するときは、この指針の第四に定める事項等を管理させるため、人事課長等を雇用労務責任者(外国人労働者の雇用管理に関する責任者をいう。)として選任すること。

 

第七 外国人労働者の在留資格に応じて講ずべき必要な措置

一 特定技能の在留資格をもって在留する者に関する事項

特定技能の在留資格をもって在留する者については、第四から第六までに掲げるところによるものとするほか、事業主は、出入国管理及び難民認定法の規定に基づく特定技能雇用契約の基準及び特定技能所属機関の基準に留意するとともに、同法第二条の五第六項に規定する一号特定技能外国人支援(以下この一において「一号特定技能外国人支援」という。)及び必要な届出等を適切に実施すること。また、一号特定技能外国人支援には、社会保険その他外国人労働者が行わなければならない各種行政手続についての情報提供や相談窓口の案内、必要に応じた相談窓口への同行等の支援、生活のための日本語習得の支援、医療機関に関する情報の提供、苦情・相談への対応、外国人労働者と日本人との交流の促進に係る支援が含まれることに留意すること。

二 技能実習生に関する事項

技能実習生については、外国人労働者に含まれるものであることから、第四から第六までに掲げるところによるものとするほか、事業主は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針(平成二十九年/法務省/厚生労働省/告示第一号)に規定する技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るための施策に関する事項等の内容に留意し、技能実習生に対し実効ある技能等の修得が図られるように取り組むこと。

三 留学生に関する事項

留学生については、事業主は、新規学卒者等を採用する際、留学生であることを理由として、その対象から除外することのないようにするとともに、企業の活性化・国際化を図るためには、異なる教育、文化等を背景とした発想が期待できる留学生の採用も効果的であることに留意すること。あわせて、採用する際には、当該留学生が在留資格の変更の許可を受ける必要があることに留意するとともに、審査に要する期間を考慮して採用活動を行うよう努めること。また、留学生を採用するに際しては、インターンシップ・職場体験の機会を提供することが効果的であるが、その実施に当たっては、企業等に対する理解の促進や職業意識の形成支援等の趣旨を損なわないようにすること。

留学生をアルバイト等で雇用する場合には、資格外活動許可が必要であり、資格外活動は原則として週二十八時間以内に制限されていることに留意すること。

四 その他

その他の在留資格については、第四から第六までに掲げるところによるものとするほか、事業主は、出入国管理及び難民認定法等の定めるところにより、外国人労働者の在留資格に応じて講ずべき必要な措置を適切に実施すること。

 

第八 職業安定機関、労働基準監督機関その他関係行政機関の援助と協力

事業主は、職業安定機関、労働基準監督機関その他関係行政機関の必要な援助と協力を得て、この指針に定められた事項を実施すること。

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改正文(平成二一年一二月二八日厚生労働省告示第五〇五号 抄)

平成二十二年一月一日から適用することとしたので、雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)第九条の規定に基づき告示する。

 

改正文(平成二四年六月二九日厚生労働省告示第四一六号 抄)

 平成二十四年七月九日から適用する。

 

改正文(平成二四年九月二七日厚生労働省告示第五一八号 抄)

 平成二十四年十月一日から適用する。

 

改正文(平成二八年八月一九日厚生労働省告示第三二一号 抄)

 平成二十八年八月二十日から適用する。

 

改正文(平成二九年一〇月一〇日厚生労働省告示第三二五号 抄)

 平成二十九年十一月一日から適用する。

 

附 則(平成三〇年七月六日厚生労働省告示第二六一号 抄)

(適用期日)

1 この告示は、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成三十年法律第七十一号)附則第一条第一号に掲げる規定の施行の日から適用する。

(施行の日=平成三〇年七月六日)

 

附 則(平成三一年三月二九日厚生労働省告示第一〇六号)

(適用期日)

1 この告示は、平成三十一年四月一日から適用する。ただし、第二条の規定は、平成三十二年四月一日から適用する。

(経過措置)

2 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成三十年法律第七十一号)附則第三条第一項に規定する中小事業主については、平成三十三年三月三十一日までの間、第二条による改正後の外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針第四の二の9の規定中短時間・有期雇用労働者に係る規定は、適用しない。

 

改正文(令和元年九月一九日厚生労働省告示第一二〇号 抄)

 令和二年三月一日から適用する。