img1 img1 img1

◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー  

告示:中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善に係る措置に関する基本的な指針

 

中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善に係る措置に関する基本的な指針

制 定 平成十年十二月二十五日通商産業省・労働省告示第二号

最終改正 平成二十三年七月七日厚生労働省・経済産業省告示第二号

 

中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律(平成三年法律第五十七号)第三条第一項の規定に基づき、中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善に係る措置に関する基本的な指針を次のように改正し、平成十一年一月一日から適用することとしたので、同条第四項の規定に基づき公表する。

 

中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善に係る措置に関する基本的な指針

 

我が国の中小企業は、多様な消費者ニーズに対応した財及びサービスの提供を担っており、経済社会の活力の源泉として大きな役割を果たしている。また、中小企業は、地域に密着した企業であること、労働者一人一人に任されている仕事の範囲が広いこと、組織が柔軟であることから、労働者が個性と能力を発揮できる職場を数多く提供している。しかしながら、中小企業の状況をみると、大企業と比較し、賃金や福利厚生をはじめ、雇用管理面において依然として格差がみられ、労働力の確保を円滑に進めていくことは容易ではない。

さらに、我が国経済社会の活力を維持しつつ、雇用の安定を図っていくためには、新たな雇用の機会を創出していくことが重要であり、その主要な担い手として期待されるのが中小企業、とりわけ新たな事業の分野への進出や事業の開始(以下「新分野進出等」という。)に積極的に挑戦する中小企業である。しかしながら、これらの中小企業においても、資金面等の問題を中心に、雇用管理の改善を進めることが難しいのが実状であり、良好な雇用の機会を創出していくことは容易ではない。

以上にかんがみれば、中小企業の雇用管理の改善に係る措置を促進することは、中小企業における労働力の確保にとって不可欠な取組であることはもとより、中小企業の職場としての魅力をより向上させ、労働者にとって良好な雇用の機会を創出することに大いに資するものである。そして、こうした取組が進められることは、中小企業の振興と中小企業で働く労働者の職業の安定その他福祉の増進を図り、ゆとりと豊かさのある国民生活を実現していく上でも極めて重要である。

この基本指針は、以上のような考え方に立脚して、中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律(平成3年法律第57号)第3条に基づき、中小企業者が行う労働力の確保を図るための雇用管理の改善に係る措置及び良好な雇用の機会の創出に資する雇用管理の改善に係る措置に関し、中小企業における経営及び雇用の動向に関する事項、中小企業者が行う雇用管理の改善に係る措置の内容に関する事項、その他中小企業者が雇用管理の改善に係る措置を行うに当たって配慮すべき重要事項を定めるものである。

 

第1 中小企業における経営及び雇用の動向に関する事項

1 労働力需給の現状と今後の見通し

我が国の最近における労働力需給については、全体として企業収益が改善し、景気回復が続く中、有効求人倍率が1倍を超えるとともに、完全失業率が4.0%まで低下するなど、全体としては依然として厳しい雇用失業情勢が続いているものの、緩やかな改善傾向にある。

一方、労働力供給面においては、少子高齢化という人口構造の急激な変化の下、15歳から64歳までの生産年齢人口は平成8年から減少に転じ、総人口も平成17年から減少が始まった。こうした中で、今後の我が国経済社会を担う若年者については、平成17年において若年失業者は139万人、フリーターは201万人、ニートは64万人となるなど、厳しいものとなっている。また、いわゆる団塊の世代が、平成19年以降60歳に順次到達し、段階的に労働市場からの引退過程を迎えることにより、労働力人口減少が加速し、熟練した技能やノウハウが継承されることなく失われていく熟練技能等の継承問題が懸念されている。

このように、労働力供給が中長期的に減少していくと見込まれる中で、労働者の勤労意識をみると、近年の国民のゆとりと豊かさ指向の強まりを受けて、仕事よりも生活中心と考える者が多くなるといった変化がみられる。このため、心身の健康や生活に配慮した労働時間等の設定、良好な職場環境、充実した福利厚生等が重視される傾向にあり、これは若年層について特に顕著となっている。

2 中小企業の経営の動向及び労働力の確保の現状

中小企業の経営の動向については、民需主導による我が国経済の回復が長期間にわたって継続する中、中小企業の景況感にも総じて改善の動きが見られるが、依然として大企業と比べた際の格差が存在している。また、最近の景気回復を牽引する自動車、情報通信機器等の製造業や情報関連産業が集積している大都市圏の経済情勢の改善が進んでいる一方、公共事業の削減や国際競争の激化に伴う地場産業の衰退等により、景況感の回復の足取りが重い地域もみられる。

中小企業の労働力の確保の現状についてみると、景気の回復に伴い、全体として雇用の過剰感がほぼ解消されてきている中、若年者の雇用に対しては不足感が強い。熟練技能等の継承問題に関しても、危機意識を持つ要因として若年者の確保が難しいことを挙げる割合が高いのが、大企業と比較した中小企業の傾向である。一方、社会問題化している若年失業者、フリーター、ニートの中には就業意欲のある者も数多く含まれており、中小企業にとっては若年者確保の好機であるとも言える。

3 中小企業における雇用管理の現状及び労働力の確保の課題

中小企業における雇用管理の現状をみると、大企業と比較し、依然として格差が存在する。例えば、賃金水準については、いずれの労働者の年齢層においても、中小企業が大企業よりも低くなっている。また、特別休暇制度の導入率や法定外福利費の額についても、企業規模が小さくなるほど低くなる傾向がある。このような状況において中小企業が労働力の確保を円滑に進めていくのは容易ではない。

一方、自己実現や生活を重視する個人意識・価値観の変化を背景に、就業者は、賃金の多寡や福利厚生の水準のみならず、仕事の内容等も踏まえて勤務先を決定していることから、自社で働くことの魅力を労働市場に積極的に周知していくこと等の取組も、中小企業における労働力の確保にとって重要である。しかしながら、中小企業の場合は、知名度の低さや時間的・資金的余裕のなさから、情報の発信が容易な大企業と比較して、十分にアピールできているとは言えないのが実状である。

 

第2 中小企業者が行う雇用管理の改善に係る措置の内容に関する事項

労働者にとって魅力ある職場づくりを行い、労働力の確保を図るとともに、良好な雇用の機会の創出に資するためには、労働時間等の設定の改善、男女の雇用機会均等の確保及び職業生活と家庭生活との両立支援、職場環境の改善、福利厚生の充実、募集・採用の改善、教育訓練の充実等を中心とした雇用管理の改善に長期的かつ継続的に取り組んでいくことが重要である。このため、中小企業者は、それぞれが置かれている実情に照らし、次に掲げる雇用管理の改善の基本的な方向に沿って適切な目標を設定し、その目標に応じ、次に掲げる措置のうち適切なものを実施することが必要である。

なお、このような個別中小企業者の取組を成果あるものにするためには、

(1) 雇用管理の改善については同業種、同地域の企業との横並び意識があること

(2) 個別中小企業者は雇用管理の改善に必要なノウハウ及び資金負担能力が必ずしも十分でないこと

から、事業協同組合等の組織ぐるみで雇用管理の改善に取り組んでいくことが重要である。

具体的には、事業協同組合等はその構成中小企業者に対し、構成中小企業者の雇用管理の改善のための目標を達成するための助言、指導、情報提供その他の援助(研修会・見学会の開催、マニュアルの作成、好事例の提供、モデルプランの提示等)を行うことが効果的である。

また、特に高度人材を確保するためには、事業協同組合等の組織ぐるみの取組に加え、個別中小企業者がその独自性をいかした雇用管理の改善に関する取組を行っていくことが重要である。

加えて、新分野進出等に際しては、個別中小企業者において、中長期的な事業計画と要員計画を策定するとともに、それら計画に基づき良好な雇用の機会の創出に資するような雇用管理の改善に関する取組を行っていくことが重要である。

さらに、事業協同組合等又は個別中小企業者が、青少年の実践的な職業能力の開発及び向上を図り、職場に定着させるような雇用管理の改善に関する取組を計画的に行っていくことも重要である。

1 労働時間等の設定の改善

(1) 基本的方向

労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項について労働者の健康と生活に配慮するとともに多様な働き方に対応したものへと改善することは、魅力ある職場づくりの重要な要素であり、中小企業者にとって、長期的な発展にも不可欠なものである。労働時間等の設定の改善を推進するためには関係者一体となっての意識改革及び個々の労使の話し合いが十分に行われる体制の整備が必要である。

このような点を踏まえ、中小企業者は、所定労働時間の短縮、年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減等を図ることが必要である。

(2) 中小企業者が行う措置

上記の基本的方向に沿って、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 週休2日制の採用・拡充その他の年間休日の増加等所定労働時間の短縮

イ 残業時間の上限の引下げ、「ノー残業デー」・「ノー残業ウィーク」の導入・拡充、変形労働時間制、フレックスタイム制や裁量労働制の活用等による所定外労働の削減

ウ 連続休暇制度の採用・拡充、年次有給休暇の計画的付与制度の採用・拡充等による年次有給休暇の取得促進

エ 健康の保持、育児、介護、妊娠、出産、単身赴任、自発的な職業能力開発、地域活動をはじめとした、労働者各人について配慮すべき事情に応じた労働時間等の設定の改善

これらの労働時間等の設定の改善を一層円滑に進めるためには、言うまでもなく併せて以下の措置を講ずることにより生産性の向上を行い、体制の整備を行うことが重要である。

ア 事業全体又は一部の作業・業務方法や要員管理の見直し・改善、省力化のための設備又は技術の導入等による生産性の向上

イ 省力化のための技術開発

(3) 事業協同組合等が行う措置

中小企業は、個々に十分な経営資源を内部に有することができないことから、事業協同組合等が以下の措置に取り組むことが効果的である。

ア 省力化のための共同施設の設置又は整備

イ 省力化設備の構成中小企業者への共同リース

ウ 省力化のための共同技術開発

2 男女の雇用機会均等の確保及び職業生活と家庭生活との両立支援

(1) 基本的方向

労働者一人一人が、性により差別されることなく、かつ、育児や介護について家族としての役割を果たしながら、その能力を十分に発揮し、活き活きと働くことができるようにすることは、労働者のためだけではなく、中小企業の発展のためにも重要である。このため、雇用の各分野における男女の均等な機会と待遇の確保を図るとともに、育児や家族の介護を行う労働者が職業生活と家庭生活とを両立することができるような環境づくりを行うことが必要である。

(2) 中小企業者が行う措置

上記の基本的方向に沿って、中小企業は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 募集・採用、配置・昇進・教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇における男女の均等取扱いを徹底するための制度やその運用の見直し

イ 職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のための取組や妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理のための制度の整備

ウ 女性労働者の能力発揮を促進するための積極的取組

エ 育児休業制度、介護休業制度、子の看護休暇制度、育児や家族の介護のための時間外労働の制限の制度・深夜業の制限の制度・勤務時間の短縮等の措置、再雇用制度等労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援するための措置

(3) 事業協同組合等が行う措置

中小企業は、個々に十分な経営資源を内部に有することができないことから、事業協同組合等が以下の措置に取り組むことが効果的である。

ア 男女の均等取扱いに関する事業主の意識啓発や女性労働者の能力発揮促進のための積極的取組に関する情報提供の実施

イ 職業生活と家庭生活との両立を支援するための託児施設の共同設置・運営その他協同事業の実施

3 職場環境の改善

(1) 基本的方向

職場における安全と健康の確保及び快適な職場環境づくりは労働者の職業生活において最も基本的な事項の一つである。このため、中小企業者は、高温、騒音、振動、臭気、粉じん、汚れ及び不十分な照度の改善、危険な作業の改善、重量物の運搬等の作業負担を伴う作業の改善その他労働者が快適に働けるような職場の環境整備を図ることが必要である。この際、高年齢者の心身機能の特性及び女性の母性機能については、配慮を行うことが重要である。

(2) 中小企業者が行う措置

上記の基本的方向に沿って、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 設備のレイアウトの工夫

イ 作業負荷、作業手順、作業姿勢等の作業方法の改善

ウ 職場環境の改善の点でより性能の優れている設備の導入・拡充

エ 空調設備、遮音壁、防振装置、集塵装置等補助的な設備の導入・拡充

オ 作業負荷軽減のための設備又は技術の導入

カ 職場環境の改善に資する技術開発

また、特に、高度人材を確保するために、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 研究室の職場環境改善設備の導入

イ 研究室のレイアウトの工夫

(3) 事業協同組合等が行う措置

なお、以上のような措置を講じるに際しても、事業協同組合等が以下の措置に取り組むことが効果的である。

ア 職場環境改善のための共同施設の設置又は整備

イ 職場環境改善設備の構成中小企業者への共同リース

ウ 職場環境改善のための共同技術開発

4 福利厚生の充実

(1) 基本的方向

福利厚生は、労働者にとって、生活のゆとりの創造、健康の維持、豊かさの実感できる将来設計等を行うことを支援するものとして重要な役割を担うものであり、魅力ある職場づくりの上で重要な要素となっている。こうした点を踏まえ、中小企業者は、労働者の生活の安定と福祉の増進のため、福利厚生施設の設置又は整備、福利厚生制度の充実により、ハード・ソフト面の整備を図っていくことが必要である。

(2) 中小企業者が行う措置

上記の基本的方向に沿って、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 社宅・独身寮、食堂、保健施設、託児施設、研修施設、スポーツ施設、教養文化施設等の福利厚生施設の設置又は整備

イ スポーツ施設、保養所等の福利厚生施設の利用やスポーツ、教養等のクラブ活動に対する補助

ウ 人間ドックの費用補助等健康管理制度の充実

エ 企業内貯蓄制度、持家援助制度等の資産形成援助制度の充実

オ 退職金制度の整備

(3) 事業協同組合等が行う措置

上記の福利厚生施設については、個々で取り組むよりも不足する経営資源を相互に補完し合うことが重要であることから、共同福利厚生施設の設置又は整備を図ることが効果的である。

5 募集・採用の改善

(1) 基本的方向

募集活動は、新たな労働力確保のための直接的な手段であることから、適切な募集条件を設定して、職場の魅力を効果的にアピールし、的確に選考を行う等、募集・採用の改善を図ることが必要である。このことは、他の雇用管理の改善を行った場合において、最終的に必要な労働者の確保を達成するためには重要である。

(2) 中小企業者が行う措置

上記の基本的方向に沿って、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 中長期的な経営の見通しに立った要員算定に基づく採用計画の作成

イ 求職者ニーズの把握、的確な求人条件の設定等による効果的な募集活動の実施

ウ 応募者の適性・能力を的確に把握する等選考方法の改善

また、特に、高度人材を確保するために、中小企業者は、専門職を対象とした会社パンフレット等の作成・配付等の措置を講ずることが効果的である。

さらに、新分野進出等を行う中小企業者は、必要な労働者の人数や適性能力等について、事業計画に基づいた明確な要員計画を策定するとともに、その事業内容や職務内容について求職者に十分な周知・PRを図ることが重要である。

(3) 事業協同組合等が行う措置

個々の中小企業は、知名度が不足している、募集人数・職種が少ないといった側面があることから、求職者へのアピール度を高めるため、以下の措置に取り組むことが効果的である。

ア 事業協同組合等による構成中小企業者の委託を受けた募集の実施、共同会社説明会・選考会の実施、共同パンフレットの作成等共同募集の実施

イ 募集のための広報活動の実施

6 教育訓練の充実

(1) 基本的方向

教育訓練の充実は、労働者にとって知識、技能、技術の習得による自らの職業能力の向上を図る機会として重要であり、魅力ある職場の重要な要素となっている。こうした点を踏まえ、中小企業者は、教育訓練の計画的な実施、労働者の自己啓発への援助等、高度人材の育成に資する能力開発、新分野進出等に伴い必要となる技能及びこれに関する知識を有する労働者の育成に資する能力開発、青少年の育成に資する実践的な能力開発並びに労働者がその習得に相当の期間を要する熟練した技能及びこれに関する知識(以下「熟練技能等」という。)の効果的かつ効率的な習得に資する能力開発を行うことが重要である。

(2) 中小企業者が行う措置

上記の基本的方向に沿って、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 日常の業務を通じて必要な知識、技能又は技術を身につけさせる教育訓練(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)及び日常の業務から離れて講義を受ける等により必要な知識、技能又は技術を身につけさせる教育訓練(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)の計画的な実施

イ 資格習得のための通信教育の受講やセミナー・講習会への参加等の労働者の自己啓発への援助の実施

ウ 熟練技能等の習得のために、熟練技能等を有する労働者が指導する職業訓練の実施、熟練技能等に関する情報を体系的に管理し、その提供を行う等労働者が熟練技能等を効果的かつ効率的に習得することができるようにするための援助の実施

エ 高度人材を育成・確保するための次に掲げる措置

(i) 高付加価値化等を担える高度人材の育成(人材高度化)のための体系的・計画的な教育訓練の開発・実施

(ii) 人材高度化のための教育訓練を実施するための施設設備の整備

(iii) 公共職業能力開発施設や大学・大学院、専修学校・各種学校等における教育訓練のための有給教育訓練休暇制度の導入等人材高度化の援助

(iv) 研究交流のための出向等能力開発のための人材交流制度の導入

オ 新分野進出等に伴い良好な雇用の機会の創出に資する次に掲げる措置

(i) 新分野進出等に伴い必要となる技能及びこれに関する知識を有する労働者の育成のための体系的・計画的な教育訓練の開発・実施

(ii) 新分野進出等に伴い必要となる技能及びこれに関する知識を有する労働者の育成のための教育訓練を実施するための施設設備の整備

(iii) 公共職業能力開発施設や大学・大学院、専修学校・各種学校等における教育訓練のための有給教育訓練休暇制度の導入等新分野進出等に伴い必要となる技能及びこれに関する知識を有する労働者の育成のための援助

(iv) 研究交流のための出向等新分野進出等に伴い必要となる能力開発のための人材交流制度の導入

カ 青少年の実践的な能力開発に資する次に掲げる措置

(i) 実習併用職業訓練の実施

(ii) 事業協同組合等による集合研修への参加

(iii) 職業訓練と組み合わせた効果的なキャリア・コンサルティングの実施

なお、以上のような措置を講じるに際しても、個別の中小企業者のみではカリキュラムの策定等ノウハウの面で困難な場合もあることから、事業協同組合等により共同教育訓練の実施を進めることが効果的である。また、個別の中小企業者が実習併用職業訓練を実施する場合には、実習併用職業訓練に係るカリキュラムの策定、実習併用職業訓練により習得された技能及びこれに関する知識の評価の方法に関する相談及び援助を行うことが望ましい。

7 その他の雇用管理の改善

(1) 基本的方向

その他、上記の項目に加え、労働者にとって魅力ある職場づくりのため、中小企業者は、高度人材の配置、新分野進出等又は円滑な技能継承に伴い必要となる労働者に対しての雇用管理の改善、仕事のやりがいを高める職業生活の将来設計モデルの明確化及び職場の活性化を進めるとともに、高年齢者等の活用・能力発揮や青少年の職場定着を図ることが必要である。

(2) 中小企業者が行う措置

第一に、高度人材の配置を図ることは、職場を活性化させ、労働者にとって魅力ある職場づくりに資することから、中小企業者は、高度人材の委嘱等による配置の措置を講ずることが望ましい。

第二に、中小企業者が新分野進出等を行うに際しては、即戦力となる中途採用者を含めた多様な労働者の確保が重要となるが、良好な雇用の機会の創出という観点から、労働者のニーズに応じた雇用管理制度の構築を図ることが望ましい。

第三に、中小企業者が技能継承を円滑に進めるためには、その受け手となる若年労働者の確保が重要となるが、良好な雇用の機会の創出という観点から、これら次世代を担う若年労働者が将来にわたって生きがいを持って働けるようにするための雇用管理制度の構築を図ることが望ましい。

第四に、職業生活の将来設計モデルの明確化及び職場の活性化を図ることは、労働者にとってその職業意欲の向上に資することから、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 労働者に対する昇進・昇格、配置のモデルの提示等職業生活の将来設計モデルの明確化

イ 事業についての提案制度により労働者の参加意識を高める等仕事のやりがいの向上を図るための措置

このため、特に新分野進出等を行う中小企業者を始め創造性のある事業展開を行う中小企業者にあっては、従業員に対し事業の方針を明確に説明し、従業員の間で共有化することが重要である。

ウ 適性検査の活用、希望職場の自己申告制度の導入等配置の適正化のための措置

エ キャリア・コンサルティングの定期的な実施

第五に、今後の労働力需給の見通しにかんがみると、高年齢者及びパートタイム労働者の活用や能力発揮を促進するため、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)第9条の規定により義務付けられた高年齢者雇用確保措置に加え、可能な限り早い時期に65歳までの安定した雇用を図るための措置及び賃金・退職金制度を含めた人事管理制度の見直し等高年齢者の活用・能力の発揮のための措置

イ パートタイム労働者の適正な労働条件の確保、雇用管理改善のための措置

第六に、採用した青少年を職場に定着させることは、円滑な技能継承に不可欠であり、青少年の雇用の安定化にも寄与することから、中小企業者は、以下の措置を講ずることが望ましい。

ア 募集・採用段階において、業務内容に関する情報だけでなく、育成方針や教育訓練内容に関する情報についても伝えることに力を入れるなど、青少年の入社前後のギャップをできるだけ少なくするための措置

イ 若年労働者のメンタルヘルスに配慮した相談体制の整備

ウ キャリアパスの明示、目標管理制度、教育訓練等の若年労働者の成長を促進する取組

 

第3 その他中小企業者が雇用管理の改善に係る措置を行うに当たって配慮すべき重要事項

中小企業者は、以下の点に配慮しながら、雇用管理の改善に係る措置を行うことが効果的である。

1 国、地方公共団体の施策の活用

中小企業者は、雇用管理の改善に係る措置を行うに当たっては、その実施を円滑に進め、かつ、効果的に労働力の確保に結びつけるため、国、地方公共団体等の実施する施策・制度を積極的に活用することが効果的である。

具体的には、国、地方公共団体からの補助金、助成金、税制優遇措置、中小企業金融公庫、独立行政法人中小企業基盤整備機構等からの助成金及び融資、公共職業安定所からの援助、中小企業退職金共済制度、勤労者財産形成促進制度、中小企業大学校、公共職業能力開発施設などの活用が考えられる。

2 関連事業者の理解と協力

中小企業者が雇用管理の改善に係る措置を行うに当たっては、取引関係にある親企業等関連事業者の理解と協力が重要であり、関連事業者に対し、自らが取り組む雇用管理の改善の内容についての理解と協力を得るよう努めることが求められる。

関連事業者は、当該中小企業者の雇用管理の改善が双方にとって有益であることを十分理解し、協力すべきである。また、効果的に雇用管理の改善を推進するため、親企業と下請企業とが共同して実施することも考えられる。

3 関係労働者の理解と協力

中小企業者が雇用管理の改善に係る措置を行うに当たっては、関係労働者の理解と協力が重要であり、当該雇用管理の改善の内容について関係労働者に対し意見聴取、周知するなど、関係労働者の理解と協力を得るよう努めることが求められる。

 

改正文(平成一六年三月三日厚生労働省・経済産業省告示第一号 抄)

平成十六年三月一日から適用することとしたので、同条第四項の規定に基づき公表する。

 

改正文(平成一六年七月一日厚生労働省・経済産業省告示第三号 抄)

平成十六年七月一日から適用することとしたので、同条第四項の規定に基づき公表する。

 

改正文(平成一八年九月二〇日厚生労働省・経済産業省告示第三号 抄)

平成十八年十月一日から適用することとしたので、同条第四項の規定に基づき公表する。

 

改正文(平成二三年七月七日厚生労働省・経済産業省告示第二号 抄)

平成二十三年十月一日から適用することとしたので、同条第四項の規定に基づき公表する。