名古屋市の堀川では平成19年4月から浄化のために、木曽川の犬山地点で取水した0.4m3/sの水を堀川へ試験的に導水する社会実験が行われています。
試験導水は平成22年3月で完了するので、その後も引き続き取水を継続するために、徳山ダムの水を木曽川連絡導水路を通じて犬山の上流まで導水し、その下流は現在と同じルートで堀川まで導水して欲しいと要望している人達がいます。
確かに、それで少しは堀川の水質がきれいになるかもしれませんが、上記に列記した数々の問題以外にまた、別の問題が発生します。
問題① 堀川に過大な流量の導水が行われると、堀川の河床に堆積したヘドロや貧酸素水塊(堀川の河床近くに停滞している酸素の少ない水)が伊勢湾へ押し出されて、今以上に赤潮や青潮の発生頻度が上がります。
問題② 徳山ダムから取水するためには環境用水としての水利権設定が必要になると思いますが、環境用水を望んでいるのは、堀川のある名古屋市だけではなく、愛知県内のほかの市町村や岐阜県でも同様だと思います。名古屋市のエゴイズムを押し通せば地域の連帯に支障が出ます。
そもそも、なぜ堀川がこんなに汚いのかというと、名古屋市の下水道システムが古いため、下水処理場の処理能力が低いことに加え、合流式という下水道方式を採用しているために、降雨時に大量のヘドロ(未処理水)が下水道処理場を通らずに直接堀川へ吐き出されるからなのです(下図参照)。
堀川から汚い水が流れ出す先の伊勢湾は汚水処理場ではありません。われわれの食卓に上がる海産物を生み出す命の海なのです。
その命の海に汚い下水道未処理水を流さないためには、まず、次のような対策を取るべきではないでしょうか。
対策① 現在の合理式下水道システムを可能な範囲で分流式下水道に改める。
対策② 堀川へ直接排出される未処理水の水質を改善するため、高度なスクリーンの設置。
対策③ 下水管内に堆積したヘドロを定期的にフラッシュして清掃する。
対策④ 下水道処理場の処理能力を向上させる。
対策⑤ 流出量を低減させるための雨水貯留施設の設置。
などです。
繰り返しますが、このような対策を取らないで、導水だけを行うということは、伊勢湾へわれわれの排泄物を撒き散らすことと同じなのです。
自分の周りのことだけを考えず、広い視野を持って、伊勢湾という貴重な財産を私達の子供達に引き渡せるように行動しようではありませんか。