◆ 失われた30年と新自由主義経済政策の実態
2001年4月に誕生した小泉内閣は、竹中平蔵経済財政担当大臣とのコンビで、それまでの日本的経営を否定して、アメリカ流の新自由主義経済政策を一気に推し進めました。
大企業は、この政策の下で徹底した「リストラ」を行い、賃金の抑制、非正規雇用の拡大、下請け中小企業の整理、発注単価切り下げ、発展途上国への生産の拠点の移転等を行ってきました。その結果、企業収益は急速に回復しましたが、国内産業は空洞化し、労働者・国民生活はいっそう悪化し、国内の経済は、需要不足による長期不況に陥ることとなりました。
日本の超・長期不況は1991年末から始まり今日まで続いています。この間の1999年までと2000年以後、つまり、20世紀と21世紀では違いがある事が分かります。新自由主義経済の弊害が色濃く出たのは21世紀に入ってからと言うのがグラフより見て取ることができます。
◆ 21世紀に入り強まった新自由主義経済の弊害
21世紀に入ってからの20年間、GDPは事実上ゼロ成長であり、政府は、公共投資の拡大を中心に様々な景気対策を実施しましたが、あまり効果はなく、国の借金である国債発行残高が88.54%も増えて、1,369兆円に達しました。
大企業は、売り上げが伸びなくても利益を拡大できる体制を確立し、生産の低迷が続いたにも係わらず経常利益を75.25%も増やしています。
その一方、労働者の生活および家計を見ると、労働生産性が上昇しているにもかかわらず、賃金が実質12.50%も低下した。雇用は、非正規雇用者が61.18%も増加し、正規雇用者は2.51%減少しています。
◆ 日本経済再生に必要な賃上げ額
長期的に見れば、GDP(国内総生産)の動向を決めるのは消費支出であり、その大きさを決めるのは賃金です。賃金が上がれば、国内需要増→国内生産増→付加価値増→国内需要増→国内生産増という好循環が生まれ、経済は成長するが、賃金が下がれば、国内需要減→国内生産減→付加価値減→国内需要減→国内生産減という“悪魔の循環”に陥ってしまい、経済は縮小してしまいます。日本経済の超長期不況の原因が、賃金が上がらなかったことにあるのは一目瞭然です。
全労連は、2022春闘で2万5,000円の賃上げ要求を掲げています。この額は、予想される物価上昇と社会保障の切り捨てに対応した生活防衛の最小限の要求です。新自由主義からの転換というなら、まず、新自由主義的経済運営がもたらした長期不況前のピークである1997年度の水準まで賃金を戻すことであり、16.7%、5万3,265円の賃上げがどうしても必要です。
(愛知地本執行委員長 煤本國治)