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労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について
令和3年2月22日労災発0222第1号
(都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)通知)
令和3年度における労災補償業務の運営に当たっては、特に下記に示したところに留意の上、実効ある行政の展開に遺憾なきを期されたい。
記
第1 労災補償行政を巡る状況への対応
新たな感染症である新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数は4,000件以上に上り、今後も相当数の労災請求が想定されることから、引き続き、迅速かつ公正に対応するとともに、労働者から積極的に労災請求がなされるよう、事業場等に対する請求勧奨に係る要請について徹底していくことが肝要である。
また、過労死等や石綿関連疾患など職業性疾病を巡る国民の関心は高く、過労死等に係る労災請求件数は2,900件以上に上るほか、石綿関連疾患に係る労災請求件数も1,200件以上に上るなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にあり、これらの労災請求事案に引き続き適切に対応していく必要がある。
さらに、毎月勤労統計に係る追加給付事案や令和2年9月に施行された改正労災保険法に基づく複数事業労働者への保険給付について適切に対応していく必要がある。
一方、現下の定員事情や行政経費に係る予算事情など、労災補償行政を取り巻く環境は厳しさを増しているところである。
このような状況の中で、労災補償行政に対する国民の期待に応え、労災請求事案に適切に対応するためには、厚生労働本省、都道府県労働局(以下「局」という。)及び労働基準監督署(以下「署」という。)が、より一層連携して効率的な業務運営に取り組み、また、的確な事務処理の実施に必要な体制確保と人材育成を行うことが重要となっている。
このため、令和3年度においては、特に次の事項に留意し、労災補償行政を推進することとする。
① 新型コロナウイルス感染症への迅速・的確な対応
② 過労死等事案などの的確な労災認定
③ 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底
④ 業務実施体制の確保及び人材育成
第2 新型コロナウイルス感染症への対応
1 迅速・的確な労災認定
新型コロナウイルス感染症(以下、本項目において「本感染症」という。)については、令和2年4月28日付け基補発0428第1号(令和2年12月1日改正)「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」(以下「1号通達」という。)により、医療従事者等については業務外で感染したことが明らかな場合を除き原則として労災保険給付の対象とし、それ以外の労働者については、当分の間、調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、労災保険給付の対象とすることとした。
このため、1号通達に基づき、本感染症に係る労災請求があった場合には、引き続き、本省への報告及び必要な本省協議を漏れなく行うこと。また、速やかに調査に着手するとともに、集団感染事案等の調査の効率化による処理の迅速化を図るなど、業務により感染した労働者が迅速かつ公正に労災保険給付を受けられるよう的確に対応すること。
2 請求勧奨の実施
業務により本感染症にり患した場合であっても、労災保険給付の対象となることや制度の不知等により、請求を行っていない労働者がいることが考えられるほか、事業主においても、様々な理由で、新型コロナウイルスに感染したと思われる労働者への労災請求に関する説明や手続き等の支援がなされていない場合があることも考えられることから、きめ細かな対応を図る必要がある。
このため、本感染症における労災補償の取扱い等については、厚生労働省ホームページに「新型コロナウイルスに関するQ&A」を掲載するとともに、各種労使団体に対して、請求勧奨に係る要請等を行っているところである。
局署においては、令和2年5月19日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「集団感染が発生した医療機関等における労働者の感染が疑われる事案を把握した場合の労災請求勧奨等の対応について」、令和2年8月7日付け基安労発0807第1号・基補発0807第1号「新型コロナウイルス感染症に係る集団感染が発生した事業場に対する感染拡大防止の要請等について」、令和2年11月20日付け基補発1120第1号「新型コロナウイルス感染症に係る当面の対応について」等に基づき、引き続き、事業場等に対する請求勧奨の取組みに係る要請を行うこと。特に、集団感染が発生した事業場等を把握した場合については、適切な時期に請求勧奨に係る要請を確実に行うこと。
第3 過労死等事案に係る的確な労災認定
1 労働時間の的確な把握
労働時間は、脳・心臓疾患における業務の過重性や精神障害における業務による心理的負荷の強度の評価に係る重要な要因であるので、その的確な把握・特定は、適正な労災認定に当たり必要不可欠なものである。
このため、労災認定のための労働時間は、労働基準法第32条で定める労働時間と同義であり、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであることに留意の上、当該労働者の労働時間については、使用者の指揮命令下にあることが認められる時間を的確に把握すること。
その際、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、上司・同僚等事業場関係者からの聴取等を踏まえて事実関係を整理・確認し、始業・終業時刻及び休憩時間を詳細に特定した上で、当該労働者が実際に労働していると合理的に認められる時間を的確に把握すること。
また、労働時間の把握に当たっては、例えば、移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当することに十分留意するほか、別途配付予定の「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」(仮称)を参考に労働時間を適切に把握すること。
なお、個々の事案における労働時間の特定に当たっては、平成30年3月30日付け基監発0330第6号、基補発0330第5号(令和3年1月5日改正)「過労死等事案に係る監督担当部署と労災担当部署間の連携について」(以下「連携通達」という。)に基づき、関係者の聴取等の必要な調査を行い、監督部署と協議を行った上で、労災部署において適切に労働時間を特定すること。
2 過労死等事案に係る関係部署との連携
過労死等事案については、その発生を防止するための対策が労働基準行政における重要な課題となっていることを踏まえ、局署においては、引き続き労災部署と監督・安全衛生部署との緊密な連携を図るとともに、本省とも情報の共有を図る必要がある。
このため、連携通達及び平成29年3月31日付け基監発0331第1号・基補発0331第6号・基勤発0331第1号・基安労発0331第1号「『過労死等ゼロ』緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進に当たっての具体的手法について」等を踏まえ、署管理者は、労災部署において把握した情報や労災請求・決定に関する情報が監督・安全衛生部署に共有されるよう、監督・安全衛生部署と密接な連携を図ること。
また、局管理者は、過労死等事案に係る調査の進捗及び労災部署と監督・安全衛生部署における情報共有等の状況について的確に把握し、労災部署と監督・安全衛生部署における情報共有や協議が的確になされるよう署管理者に対し必要な指示を行うとともに、社会的に注目を集める可能性の高い事案については、本省への所要の報告を確実に行うこと。
3 過労死等の認定基準の見直しについて
心理的負荷による精神障害の認定基準(以下「精神障害の認定基準」という。)については、パワーハラスメント防止対策の法制化等を踏まえ、心理的負荷評価表へのパワーハラスメントの追加等を行ったことから、改正後の認定基準に基づき適切に対応すること。
また、脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準については、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行っているところである。その検討結果を踏まえ、認定基準の改正を行う予定であり、その改正に伴う事務処理等については、別途通知する予定であるので、適切に対応すること。
4 労災認定基準の適切な運用
(1) 脳・心臓疾患
ア 対象疾病以外の疾病
業務による過重負荷に関連して、脳・心臓疾患の認定基準に掲げる対象疾病以外の疾病が発症したとして労災請求された事案については、専門医等に対し、対象疾病に該当するか否か等の医学意見を徴した上で、対象疾病に該当しない場合は、本省に相談すること。
イ 業務の過重性の評価
過重負荷の評価に当たっては、脳・心臓疾患を発症した労働者と同程度の年齢、経験等を有する健康な状態にある者のほか、基礎疾患を有していても日常業務を支障なく遂行できる同僚又は同種労働者にとっても、特に過重な業務であったか否かという観点からの検討を行うこと。
ウ 労働時間以外の負荷要因の評価
業務の過重性の評価に当たり、不規則な勤務等の労働時間以外の負荷要因についても的確に調査を行った上で、医学的にみて身体的、精神的負荷が特に過重と認められるものがある場合には、これを含めて、客観的かつ総合的な判断を適切に行うこと。
(2) 精神障害
ア 専門家意見の収集
精神障害の認定基準においては、認定要件を満たすか否かについて、主治医意見により判断すべき事案、専門医意見により判断すべき事案及び専門部会意見により判断すべき事案を示しているところであり、局においては、署に対して当該認定基準に基づく医学意見の収集方法について、適切な指導を行うこと。
イ パワーハラスメントに係る心理的負荷の評価
精神障害事案については、上司、同僚等からの聴取等の調査を尽くした上で、業務による出来事の事実認定を行うことが重要である。
このため、特に、請求人がパワーハラスメントを主張する事案については、関係者が相反する主張をする場合があることから、当事者の事業場内における役割、指揮命令系統等を把握した上で、可能な限り第三者から聴取を行う等により、業務上必要性がない又は業務の目的を逸脱した言動等の有無につき、確認を行った上で、心理的負荷の評価を適切に行うこと。
第4 石綿関連疾患に係る的確な労災認定
1 的確な労災認定に向けた調査上の留意点
(1) 石綿関連疾患に係る医学意見の的確な徴取
石綿関連疾患においては、認定基準に定められた疾病に該当するか否か、胸膜プラーク等の所見が認められるか否か等の医学的所見は、労災認定の重要な要件であることから、その判断に当たっては、主治医の意見だけでなく、地方労災医員等の意見を徴すること。
また、主治医と地方労災医員等の見解が異なる場合等については、令和2年3月27日付け基補発0327第2号「石綿確定診断等事業について」に基づき、速やかに、石綿確定診断委員会に対して確定診断の依頼を行うこと。
なお、良性石綿胸水の事案については、全数確定診断の依頼が必要であることから、良性石綿胸水以外の傷病名により請求がなされた事案で良性石綿胸水の発症が疑われる場合を含め、地方労災医員等の意見を徴することなく、速やかに、石綿確定診断委員会に対して確定診断の依頼を行うこと。
(2) 本省協議等
上記(1)によってもなお確定診断に至らなかった事案、死亡原因などの医学的判断に疑義が生じた事案や石綿ばく露作業への従事期間が認定基準に定められた一定の年数に満たない事案等については、必ず本省に協議又は相談すること。
また、傷病年月日については、現実に療養が必要となった日であり、主治医から石綿関連疾患の診断がなされる前から自覚症状を訴え、別の医療機関で治療している場合には、主治医や地方労災医員等に対して、当該疾患の症状の経過等を確認し判断すること。
(3) 石綿ばく露作業の的確な把握
石綿ばく露作業従事歴は、労災認定を行う上で重要な調査事項であるとともに、その的確な把握は、迅速な認定にも資するものである。このため、石綿ばく露作業の調査に当たっては、平成17年7月27日付け基労補発第0727001号「石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について」及び平成24年9月20日付け基労補発0920第1号「石綿による疾病の業務上外の認定のための調査実施要領について」に基づき、被災労働者の雇用の事実を確認し、石綿ばく露作業の有無及び従事期間について、事業場関係者等から聴取する等により、可能な限り詳細に把握すること。
また、調査実施要領の別添の調査票に係る作業歴情報については、石綿ばく露作業の有無にかかわらず、全ての職歴を記載した上で、調査で把握した石綿ばく露状況等を記載すること。
なお、石綿ばく露作業に最後に従事した事業場が公表の対象となることを踏まえ、最終石綿ばく露事業場の確認は慎重に行うこととし、最終ばく露事業場であるか否かの判断、石綿ばく露作業の有無及び従事期間等に疑義が生じたものについては、必ず本省に協議又は相談すること。
2 石綿関連疾患に関する労災補償制度等の周知
(1) 石綿労災認定等事業場の公表
石綿労災認定等事業場の公表は、国民に対し石綿による健康被害の救済に必要な情報を十分かつ速やかに提供するという、「石綿による健康被害の救済に関する法律」(以下「救済法」という。)に基づき、毎年実施しているものであり、正確な情報の公表が重要である。
このため、日頃から、公表データ管理用のシステムへの入力を確実に行うことはもとより、公表に当たっては、別途指示するところにより、引き続き、複数名での確認体制を整備した上で、局管理者においても適正な作業を指示する等とともに、誤入力や入力漏れがないよう、確認・点検を徹底すること。
なお、その際、石綿関連疾患にり患して労災保険により療養している者の死亡に係る遺族補償給付の支給決定を行った場合には、該当する保険給付の種別ごとに請求・決定年月日を入力するとともに、死亡年月日も漏れなく入力するなど、局において、日頃からデータの適切な入力・管理を徹底すること。
また、公表対象事業場に対しては、業務上外の調査又は支給決定後に、救済法に基づく公表の趣旨について丁寧に説明し、公表の理解が得られるよう努めること。
(2) 労災保険指定医療機関等への周知
石綿関連疾患については、がん診療連携拠点病院をはじめとした労災保険指定医療機関等に対して、労災補償制度等に関するパンフレットや石綿ばく露歴などのチェック表(以下「周知用資料」という。)を配布し、医療機関を通じた制度の周知を行うことが重要であるので、引き続き、周知の徹底を図ること。
また、特に、新規の労災保険指定医療機関に対しては周知用資料等を活用することにより、制度周知を確実に行うとともに、石綿労災認定等事業場に対しては、引き続き、退職労働者等への労災補償制度の周知を実施するよう依頼すること。
第5 その他の職業性疾病事案に係る的確な労災認定
1 電離放射線障害事案に係る調査上の留意点
認定基準において本省にりん伺することとされている事案については、認定基準別添の調査実施要領に基づき調査することとされているところであるが、特に、医療従事者に係る電離放射線障害の調査に当たっては、当該労働者のすべての業務経歴における作業内容や放射線業務従事の有無、被ばく線量及び、安全防護の状況等が具体的に分かるよう、可能な限り把握すること。
2 その他の職業性疾病事案に係る関係部署との連携
職業がんや有害性が明らかでない化学物質による新しい疾病等の労災認定に当たっては、原因物質の特定、当該物質のばく露状況等を詳細に把握する必要があることから、より一層効率的かつ的確な調査を行うため、監督・安全衛生部署と情報共有するなど緊密な連携を図ること。
また、新しい疾病に関する請求事案については、本省報告を確実に行うこと。
第6 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理の徹底
労災保険制度は、被災労働者及びその遺族に対し、必要な保険給付を行うことにより、迅速かつ公正な保護を図ることを目的としている(労働者災害補償保険法第1条)。この目的を実現するため、遵守すべき事務処理手順を定め全国斉一的な運用を行っているところであるが、特に、次の事項に留意すること。
1 基本的な事務処理の徹底
労災保険給付の事務処理については、労災保険給付事務取扱手引(以下「給付事務手引」という。)や平成30年5月21日付け基発0521第2号「今後の労災保険給付等の適正な事務処理に当たって留意すべき事項について」により指示しているところであるが、今後とも適正な給付のための調査を徹底すること。
特に、法令、通達に基づいた調査、判断等の基本的な事務処理について、管理者から職員に十分な指導を行うなど、改めてその徹底を図ること。
また、調査に当たっては、保険給付の決定のために真に必要な調査を行うことを基本とし、決定に不要な資料の収集を行わないこと、必要な資料の不足が生じないようにすることなど過不足のないよう調査を行うこと。
さらに、関係資料を収集する際、被災労働者やそのご遺族等から同意書等を徴する場合は、機微な個人情報を収集することに特に留意の上、保険給付に当たり、明らかに不必要な資料に係る同意書等を徴することがないよう徹底すること。
2 迅速処理に向けた的確な進行管理及び適正な事務処理の徹底
長期未決事案については、署長管理事案、局管理事案による管理など、長期未決事案の発生防止のために取り組んでいるところであるが、平成30年10月9日付け基発1009第2号「今後の保険給付の迅速処理に当たって留意すべき事項について」に基づき的確な進行管理を行うこと。
特に、複雑困難事案にあっては、定期的に開催している事案検討会等を通じて、初動調査の早期着手、各調査項目についての期限を付した具体的な指示など、今後の処理方針等についての具体的な指導を行うこと。
3 請求人等への懇切・丁寧な対応
被災労働者及びそのご遺族の請求人等に対する丁寧で分かりやすい説明の実施については、平成23年3月25日付け基労発0325第2号「今後における労災保険の窓口業務等の改善の取組について」(以下「窓口改善通達」という。)により指示しているところであるが、引き続き、これを徹底するとともに、相談等の段階で、調査が困難であることや業務上外の見込み等について言及することは厳に慎むこと。
特に、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求については、感染経路が不明な場合であっても労災保険給付の対象となること等、本感染症に係る労災補償の取扱いに基づき、適切な窓口対応を徹底すること。
また、事務処理に長期間を要している事案については、請求人に対し、定期的に処理状況の説明を行うこと。
4 報道機関に対する的確な対応
過労死等事案など労災認定された個別の事案について社会的関心が高まっていることを背景に、局署において報道機関等から取材を受ける機会が増えていることから、その対応に当たっては、被災労働者及びそのご遺族等の個人情報保護の観点に十分留意すること。
なお、社会的関心が高いと考えられる事案に係る取材等を受けた場合は、速やかに本省へ報告すること。
5 不正受給防止に対する的確な対応
労災保険に係る不正受給事件は、社会に与える影響が大きく、労災保険制度に対する不信を招来し、制度の適正な運営を大きく阻害することにもなりかねないものである。
このため、不正受給を防止するための事務処理等については、給付事務手引により指示しているところであり、特に投書等により不正受給の疑いが生じた事案については、署は時機を逸することなく必要な調査を実施する等適切な対応を行うとともに、本省への速やかな報告を徹底すること。
また、特別加入者に係る不正受給防止対策については、平成29年12月7日付け基補発1207第1号「労災保険の特別加入者に係る不正受給防止対策の徹底について」に基づく調査や事務処理を徹底すること。
なお、不正受給者に対して支給した保険給付については、労働者災害補償保険法第12条の3第1項に基づき費用徴収を行うこととなるため、保険給付支払日から時効が進行することに留意し、債権発生通知書による局への報告や不正受給者に対する納入告知の実施等、必要な事務処理を速やかに実施すること。
6 労災かくしの排除に係る対策の一層の推進
全国健康保険協会(協会けんぽ)の各都道府県支部から健康保険法の保険給付について不支給(返還)決定を受けた者の情報を得た場合において、被災労働者に対して、労災請求の勧奨を行うとともに、①労災かくしが疑われる場合、②新規の休業補償給付支給請求書の受付に際し、労働者死傷病報告の提出年月日の記載がない場合には、速やかに監督・安全衛生部署に対して情報の提供を行うこと。
また、平成3年12月5日付け基発第687号「いわゆる労災かくしの排除について」に基づき、労災保険のメリット制の適用を受けている有期事業の事業場にあっては、メリット収支率の再計算及び返還金の回収等が生じる場合があることから、労災かくしが判明した場合には、徴収主務課室に対し、速やかに、給付見込額や支払予定時期などの必要な情報を提供すること。
7 労働者性の判断
労働者性の判断のうち、一般的に問題になることが多い法人の役員、請負制の大工、委託契約の外務員等判断が困難な事案については、適宜、監督部署に協議しつつ必要な調査を行い、的確に労働者性を判断すること。
8 給付基礎日額の算定
給付基礎日額の算定に当たっては、これまでも指示しているとおり、割増賃金の算定基礎に算入すべき手当が含まれているかどうかについて、就業規則等により確認することに加え、事業場に対して手当の算定根拠について必要な確認を行うこと。
また、被災労働者の勤務実態等を踏まえ、適用される労働時間制度について疑義が生じる場合には、適宜、監督部署に協議しつつ必要な調査を行い、的確に給付基礎日額を算定すること。
9 テレワーク中に負傷等した場合の労災補償の取扱い
テレワークを導入する事業場等が増加していることに伴い、今後、労働者がテレワーク中に負傷したこと等による労災請求の増加が想定されることから、適切に対応していく必要がある。
このため、労働者がテレワーク中に負傷等した場合については、平成30年2月22日付け基発0222第1号・雇均発0222第1号「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの策定について」等に基づき、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じた災害は、労災補償の対象となること、
また、その際、私的行為等業務以外が原因であるものについては労災補償の対象とはならないといった基本的な考え方を踏まえ、適切に対応すること。
なお、労働者がテレワーク中に負傷等した場合の保険給付については、厚生労働省ホームページに掲載のパンフレット「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」において明記しているので、事業場等への説明に当たっては、適宜、活用すること。
10 障害(補償)等年金を受ける者の再発に係る取扱い
障害(補償)等年金を受ける者が再発した場合の事務処理の留意点については、平成27年12月22日付け基補発1222第1号「障害(補償)年金を受ける者が再発により傷病(補償)年金又は休業(補償)給付を受給する場合の事務処理上の留意点について」により指示しているところであるが、いまだ適切さを欠く状況がみられる。障害(補償)等年金を受ける者が再発した場合、障害の状態によっては、再発により療養する期間について、傷病(補償)等年金の支給要件を満たす可能性があることから、改めて、当該通達に基づき適切に事務処理を行うこと。
また、再発が多いと考えられるせき髄損傷に係る相談対応に当たっては、リーフレット「せき髄損傷に併発した疾病の取扱いについて」を使用することなどにより、懇切・丁寧な説明に努めること。
11 第三者行為災害に係る事務処理
(1) 第三者行為災害に係る事務処理の留意点
求償事案については、当該債権について消滅時効の期限が到来する前に納入告知を行うことを従前より指示してきたところであり、引き続きその事務処理の徹底を図ること。特に、令和2年4月1日施行の民法改正を反映した時効の管理については、「第三者行為災害事務取扱手引(令和2年4月)」により適切に実施すること。
また、労災保険給付を第二当事者となる自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済(以下「自賠責保険等」という。)より先行して受給した第一当事者が、その後、自賠責保険等より労災保険の給付事由と同一の事由に基づく損害賠償金を受領したことを把握した場合には、自賠責保険等にその内訳(慰謝料及び逸失利益)やその金額の計算根拠等について照会し、自賠責保険等により支払われた損害賠償金と労災保険給付に重複して支払われた逸失利益が存在していないか確認する必要がある。なお、慰謝料分については、労災保険給付と重複するものではないことに留意すること。
併せて、第一当事者が労災保険と自賠責保険等に対して同一損害による重複請求を行った場合で、何らかの事情により労災保険と自賠責保険等から同一損害に係る保険給付が二重に行われる事案については、平成9年2月24日付け労働基準局補償課長事務連絡「求償調整事務を行う際の留意事項について」で通知しているとおり、損害の重複てん補が生じる原因を作った側が回収を行うとしていることから、自賠責保険等との連携を密にした調査を行い、労災保険が自賠責保険等より先行して給付を行った場合は、保険会社等に回収責任があると認められる事情を明確に指摘した上で求償を行うこと。
なお、第一当事者が人身傷害補償保険に請求を行っている場合についても、平成16年3月17日付け基発第0317001号「第三者行為災害の事務処理における人身傷害補償保険の取扱いについて」で通知しているとおり、適切に事務処理を行うこと。
(2) 外部委託について
納入督励及び債権回収に係る外部委託事業については、令和3年度においても弁護士又は弁護士法人を受託者として実施する予定であり、事務処理に係る留意点等については別途通知するので、より一層積極的に活用すること。
また、第三者行為災害事案に係る支給調整等事務については、令和元年8月28日付け基補発0828第2号「第三者行為災害支給調整等事業に係る外部委託について」により通知したところであり、令和3年度においても継続して事業を実施するので、効果的かつ効率的な事務処理のため、積極的に活用すること。
12 特別加入制度の周知・広報等
近年、働き方の多様化に伴い、特別加入制度についての社会的な関心が高まってきているところ、本省において、関係省庁、関係団体へのリーフレットの送付や、厚生労働省ホームページ上の特別加入制度関係の紹介ページを掲載等により、特別加入制度の積極的な周知・広報を実施しているところである。各局においても、様々な機会を捉え、積極的に周知広報に努めるとともに、労災保険制度の照会等が行われた場合は、適切に対応すること。
また、労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第11号)が、令和3年1月26日付けで公布され、令和3年4月1日付けで施行されることとなり、第二種特別加入の対象範囲の拡大等を行うこととしているが、これに係る事務処理等については、別途、年度内に通知する。
13 定期報告の取扱い
令和元年度より、日本年金機構への情報照会の本格運用が開始され、マイナンバーによる情報連携により併給調整に必要な情報を取得できることとなったことから、令和2年度から障害(補償)年金及び傷病(補償)年金の受給権者からの定期報告を一部廃止しているので、令和2年3月31日付基保発0331第1号「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行等に伴う傷病(補償)年金及び障害(補償)年金の定期報告の一部省略等にかかる年金事務の取扱いについて」に基づき、廃止対象者について、各種リストによる受給条件の変動状況等の確認を引き続き実施すること。
また、遺族(補償)年金の一部の受給権者(受給資格者が受給権者1名のみの場合)の定期報告については廃止することとしており、具体的な事務処理については別途通知する予定である。
なお、新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言の発令に伴い、令和2年度の定期報告の提出期限を令和3年3月31日に延期したところであるが、4月以降の対応については別途通知する予定である。
14 労災診療費に係る事務処理の留意点
(1) 労災診療費の的確な審査の実施等
労災診療費については、労災診療費算定マニュアル(令和2年6月版)及び平成21年2月20日付け基労補発第0220003号「労災診療費に係る重点審査について」等に基づいて審査を実施しているところであるが、ここ数年の会計検査院による決算検査報告において、「労災保険指定医療機関等が労災診療費を誤って算定して請求していたのに、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことなどが認められる。」として、不当事項として指摘を受けている。
このため、局においては、的確な審査体制の構築を行うとともに、労災保険指定医療機関等に対して、関係団体と連携し、特に算定誤りの多い項目や新設項目を中心にあらゆる機会を活用して算定基準の周知を行うこと。また、誤請求の多い医療機関に対して個別指導を行うなど再発防止に取り組むこと。
併せて、平成25年4月8日付け基労発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報提供の労災診療費審査業務への活用等について」及び平成25年4月8日付け基労補発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報の労災診療費審査業務への活用等における留意事項について」に基づき、提供を受けた情報について積極的に活用すること。
また、労災保険柔道整復師算定基準及び労災保険あん摩マッサージ指圧師・はり師きゅう師施術料金算定基準についても、診療費と同様、関係団体等を通じた算定基準の周知を行い、それぞれの施術料金算定基準等に基づく的確な審査を実施すること。
(2) 労災レセプトオンライン化の普及促進
令和2年6月12日付け労災発0612第1号「労災レセプト電算処理システムの普及促進に向けた取組について」に基づき、令和2年6月から令和5年3月末までの間を新たな普及促進強化期間(第3期)として、令和2年度は労災指定医療機関等への個別訪問、説明会を原則としてオンライン(テレビ会議)により実施してきたところである。
令和3年度においても、引き続きオンラインによる取組を行う予定であるが、局においては、地区医師会等の関係団体等との会合、新規労災指定時の説明会等でのパンフレットの配付等、あらゆる対外業務活動の場を活用して利用勧奨を実施すること。
15 社会復帰支援に向けた適切な症状把握等
令和2年11月10日に内閣に報告された令和元度会計検査院決算検査報告において、「特別加入者である中小事業主から提出を受けた請求書の内容の調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことが原因の不適正な支給が認められた。」として、不当事項として指摘を受けたところである。
ついては、傷病労働者(特別加入者を含む。)から提出された請求書の内容を適正に審査した上で支給決定を行うことは当然のことであり、特に療養を1年以上にわたって継続している傷病労働者については、症状及び療養の経過を適切に把握し、療養期間が必要以上の長期にわたることのないよう、昭和59年8月3日付け基発第391号「適正給付管理の実施について」に基づき、事務処理を適切に実施すること。
なお、令和2年11月18日付け基補発1118第1号「適正給付管理の実施に係る事務処理上の留意点について」において、調査対象者及び医療機関への周知や地方労災医員等の活用について指示しているので、改めて内容を確認の上、事務処理を適正に行うこと。
16 行政争訟に当たっての的確な対応
(1) 行政事件訴訟の的確な追行
令和2年度における訴訟追行状況をみると、職場での客観的事実の把握とそれに伴う適切な補充調査・証拠収集の実施、意見依頼事項を精査した上での医学意見書の収集等が十分に行われなかったため、的確な主張ができずに敗訴した事例が認められた。
このため、訴訟追行に当たっては、平成22年8月4日付け事務連絡(最終改正令和2年3月16日)「労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について」に基づく的確な訟務の追行の徹底を図ることとし、新件協議結果等に基づく指示を踏まえ、国側の主張を補強するため、関係者からの補充調査及び医学意見書の依頼等を確実に実施することにより、客観的な証拠に基づき、裁判所を説得し得る主張・立証を的確に行うこと。
(2) 審査請求事案の公正・迅速な処理審査
新規審査請求事案及び請求受理後6か月以上経過した長期未決事案が増加傾向にあることなどから、局管理者は、「労災保険審査請求事務取扱手引」第3部のⅢ「局管理者における取組み」に基づき、毎月、事案ごとに処理状況を把握した上で、処理が遅延している場合には、その原因を明確にした上で遅延を解消するために必要な助言・指導や組織的支援を行い、適切な進行管理のもと迅速処理に努めること。
また、労働者災害補償保険審査官は、的確に争点整理を行った上で審理に必要な資料の収集等を確実に実施することにより、公正・迅速な審査決定を行うこと。
(3) 不服申立て及び訴訟における取消事案の情報共有
局管理者は、訴訟等において取消となった事案に関して、原処分と判断が異なった争点(労働時間数の認定手法、給付基礎日額の特定に係る判例など)等について、各種会議や職員研修において、署管理者をはじめとする職員に対して説明し、情報共有を図ること。
17 地方監察の的確な実施等
地方監察は、関係法令、通達等に基づく事務処理の実態を的確に把握し、迅速・適正かつ効率的な事務の運営とその水準の維持・向上を図るととともに、公正妥当な基準に基づき客観的に検査、評価することにより行政の斉一性を確保することを目的としている。その上で、地方労災補償監察官及び労災年金監察官は、地方労災補償監察官監察指針を踏まえた計画的かつ効果的な監察を実施すること。
特に、是正改善を要する事項については、単に指摘するのみならず当該問題の生じた背景、原因を的確にとらえた対応策を検討のうえ具体的な指示・助言を行い、確実に是正改善させるとともに、適正な事務処理の継続が確保されているかを確認すること。
また、地方監察結果と併せ、令和2年度中央監察結果と自局の取組状況を検証し、改善すべき事務処理等について、翌年度の業務実施計画、監察計画等に反映させるとともに、会議等のあらゆる機会を通じてすべての労災担当職員に周知・徹底し、適正な事務処理を定着させること。
18 個人情報等の厳正な管理
(1) 特定個人情報の適切な取扱いの徹底
労災年金たる保険給付に関する事務における特定個人情報等の取扱いについては、令和2年9月1日付け基発0901第2号「労災保険給付個人番号利用事務処理手引の改定について」において指示しているところである。
個人番号利用事務において、①事務取扱者に対する定期的な研修として、新たに事務取扱担当者になる者及び直近の研修受講日から2年を経過した者に対して実施すること、②事務取扱担当者名簿を年度ごとに作成すること、③人事異動・休職等に伴うユーザー情報の登録・変更等を適切に行うこと、④管理者による特定個人情報ファイルのアクセス記録の確認を毎月1回定期的に行うことについて、徹底すること。
(2) 個人情報の漏えい防止
個人情報の漏えい防止については、平成28年3月28日付け地発0328第5号「都道府県労働局における保有個人情報漏えい防止及び発生時の対応について」により指示されているところであるが、令和2年度においても、多くの情報漏えい事案が生じており、いずれの事案も、基本的事務処理が徹底されていないことによるものであったことから、改めて基本的事務処理を確認し、個人情報の管理を徹底すること。
(3) 石綿関連文書の保存
石綿関連文書の保存については、平成27年12月18日付け地発1218第4号・基総発1218第1号「石綿関連文書の保存について」に基づく保存がなされるよう、引き続き管理を徹底すること。
19 複数事業労働者への労災保険給付
複数事業労働者が安心して働くことができるような環境を整備するため、複数就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や、給付の対象範囲の拡充等を内容とする改正労災保険法が令和2年9月1日から施行されているところであり、その施行に関する具体的な事務処理については、令和2年8月21日付け基発0821第1号「雇用保険法等の一部を改正する法律等の施行について(労働者災害補償保険法関係部分)」等の関係通達に基づき適切に処理すること。
また、複数事業労働者の複数業務要因災害に係る労災認定については、脳・心臓疾患の認定基準及び精神障害の認定基準を改正したところであり、これらに基づき適切に対応すること。
20 押印を求める手続きの見直し
規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)において、行政手続における書面規制・押印、対面規制の抜本的な見直しが求められており、原則として全ての見直し対象手続について、恒久的な制度的対応として、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行うことが求められたため、所要の改正を行ったところである。
局署においては、令和3年1月7日付け基管発0107第1号、基補発0107第1号、基保発0107第1号「労災保険における請求書等に係る押印等の見直しの留意点について」に基づき、請求人等の押印又は署名(以下「押印等」という。)がない場合であっても、記名等があれば、受付することとして差し支えないものとし、今後は、押印等がないことのみをもって不備返戻を行わないこと。また、請求人等の記名等について、全て同一の筆跡と思われる場合や全て情報通信機器を使用した印字である場合等、記名等の信ぴょう性につき疑義が生じた場合については、必要に応じて、請求人等への電話照会等により、確認を行うこと。
第7 外国人労働者への懇切丁寧な対応
1 外国人労働者に対する労災保険制度の周知及び請求勧奨の取組
(1) 外国人労働者に対する周知等
外国人労働者については、我が国の労災保険制度について知識が十分でない場合も多い上、労働災害に遭われ亡くなった労働者のご遺族にあっては、母国にあって我が国の労災保険制度を不知であることから、機会をとらえて母国語等による周知等を行い、制度不知による請求漏れのないよう、きめ細かな対応を図る必要がある。
外国人労働者に対する労災保険制度については、「(日本で働く外国人向け)労災保険請求のためのガイドブック」(14言語※)等を活用した労災保険制度の説明を行うことに加え、平成31年3月26日付け基監発0326第1号・基安安発0326第3号・基安労発0326第1号・基安化発0326第1号・基補発0326第1号「外国人労働者が被災者である労働災害に関する労災保険制度の周知等の対応について」に基づき、監督・安全衛生部署において外国人労働者が被災者である労働者死傷病報告を受理した場合は、当該報告の写しが労災部署に提供されるので、事業主に労災保険制度の説明を行い、請求勧奨するとともに、外国人労働者に対する周知を依頼すること。
※日本語、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ペルシャ語、ネパール語、ミャンマー語、韓国語、タイ語、インドネシア語、カンボジア語、ベトナム語
(2) 外国人技能実習生に対する周知等
外国人技能実習生に対する労災保険制度の周知については、監督・安全衛生部署からの情報に加えて、平成29年10月27日付け基補発1027第2号「今後の技能実習生の死亡災害に関する労災保険給付の請求勧奨等について」に基づき、外国人技能実習機構等から死亡災害の情報提供を受けた際には、実習実施者に対して外国人労働者のご遺族に労災保険制度の周知を依頼するなど、引き続き請求勧奨に努めること。
なお、外国人技能実習生に対する労災保険給付の状況を把握する必要があることから、平成28年3月31日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「外国人労働者に対する労災補償状況の把握に係る自由区分コードの登録について」に基づき、自由区分コードの入力を徹底すること。
(3) 特定技能外国人に対する周知等
特定技能外国人に対する労災保険制度の周知については、平成31年3月15日付け基監発0315第3号・基安安発0315第1号・基安労発0315第4号・基安化発0315第3号・基徴収発0315第1号・基補発0315第2号「特定技能外国人の労働条件等の確保に当たって留意すべき事項について」に基づき、法務省出入国在留管理局から死亡災害の情報提供を受けた際には、事業主に対して外国人労働者のご遺族に労災保険制度の周知を依頼するなど、請求勧奨に努めること。
なお、特定技能外国人に対する労災保険給付の状況を把握する必要があることから、令和元年5月30日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「特定技能外国人に対する労災補償状況の把握に係る自由区分コードの登録について」に基づき、自由区分コードの入力を徹底すること。
2 外国人労働者からの相談対応
外国人労働者、外国人労働者を使用する使用者等からの窓口相談に対しては、「外国人労働者相談コーナー」が設置されている局監督課又は署においては、労災請求等に関する相談も受け付けることとしているので、これを活用すること。「外国人労働者相談コーナー」が未設置の局署にあっては、外国人労働者等の電話相談に対応する「外国人労働者向け相談ダイヤル」を活用し、的確に対応すること。「外国人労働者相談コーナー」及び「外国人労働者向け相談ダイヤル」の対応言語は13言語、局署の閉庁後や休日の電話相談に対応する「労働条件相談ほっとライン」(委託事業:平日17時~22時、土日・祝日9時~21時)の対応言語は14言語としているため、適切に案内を行うこと。
※対応言語:日本語(労働条件相談ほっとラインのみ)、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、韓国語、タイ語、インドネシア語、カンボジア語、モンゴル語
第8 毎月勤労統計等に係る追加給付対応
毎月勤労統計及び賃金構造基本統計調査に係る追加給付事案への対応については、適宜情報提供等行っているが、引き続き公表資料等の各種情報に留意の上、被災労働者等からの電話相談、窓口相談に懇切・丁寧に対応すること。
また、局署で処理が必要となる追加給付に係る事務処理について、毎月勤労統計に係る対応は平成31年3月15日付け基管発0315第1号・基補発0315第3号・基保発0315第1号「労災保険の追加給付等について」等において、賃金構造基本統計に係る対応は令和2年11月26日付け基保発1126第1号「労災保険給付に係る「令和元年賃金構造基本統計調査」の数値の一部訂正に伴う当面の機械処理について」において、それぞれ指示しているところであるが、今後も必要に応じて通知するので、適切に対応すること。
第9 労災補償業務の実施体制の確保と人材育成
(1) 業務実施体制の確保
厳しい定員事情や行政経費に係る予算事情など、行政を取り巻く環境が依然として厳しい中、労災補償業務の迅速かつ公正な事務処理を行うためには、局署一体となって実施体制を確保する必要がある。
そのため、本省においては、コールセンターをはじめとする外部委託等を引き続き確実に実施していくこととしているが、局署においては、再任用職員や非常勤職員を有効に配置し、職員と連携して事務処理を進めるよう体制を整えること。
特に、当面の労災補償の業務運営に当たっては、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求や精神障害に係る労災請求の状況に対応する必要があることなどから、各局の行政需要に応じた応援体制を構築するなど、迅速・的確な対応をするための業務実施体制の確保を図ること。
(2) 人材育成
将来にわたって、労災補償業務の迅速かつ公正な事務処理を実施していくには、職員の人材育成及び資質の向上を図ることが不可欠である。そのため、今年度から始まった「労災補償行政職員初級研修」や専門研修をはじめとした本省研修を受講するとともに、局内研修や再任用職員を活用した研修により業務に必要な知識を確実に付与すること。特に、経験年数の少ない職員に対しては、OJTなどの研修に加え、その後、研修効果を確認しスキル向上させるためにフォローアップ研修などを積極的に行うこと。
なお、本省においては、局から支援の要望があった場合、要望内容に応じ、非常勤職員を含めた職員の能力向上のための研修の実施や、事務処理の習熟に効果的な資料やノウハウの提供等必要な支援を引き続き行うこととしている。