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通達:医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について

 

医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について

令和元年7月1日基監発0701第1号

改正 令和6年1月15日基監発0115第2号

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局監督課長通知)

 

令和元年7月1日付け基発0701第8号「医師、看護師等の宿日直基準について」(以下「医師等の宿日直許可基準通達」という。)及び令和元年7月1日付け基発0701第9号「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」(以下「医師の研鑽に係る労働時間通達」という。)が発出され、医師・看護師等(以下「医師等」という。)の宿日直基準の明確化及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方が示されたところである。

両通達は、平成31年3月28日に取りまとめられた「医師の働き方改革に関する検討会報告書」(以下「報告書」という。)を踏まえて、解釈の明確化を図ったものであり、これまでの労働基準法(昭和22年法律第49号)の取扱いを変更するものではないが、両通達の運用に当たって留意すべき事項を下記に示すので、その運用に当たっては遺憾なきを期されたい。

 

第1 医師等の宿日直許可基準通達の取扱いについて

1 趣旨

報告書において、「医師等の当直のうち、断続的な宿直として労働時間等の規制が適用されないものに係る労働基準監督署長の許可基準については、現状を踏まえて実効あるものとする必要がある。」との意見が示されたことを踏まえ、労働基準監督署長による医師等の宿日直の許可の基準を明確化の上、改めて示されたものである。

2 医師等の宿日直許可基準通達の運用における留意事項

医師等の宿日直許可基準通達については、昭和24年3月22日付け基発第352号「医師、看護婦等の宿直勤務について」の考え方を明確化したものであり、これによって従前の許可基準を変更するものではなく、対象となる職種についても、従前と変更はない。

具体的には、許可対象である「特殊の措置を必要としない軽度の、又は短時間の業務」について、近年の医療現場における実態を踏まえて具体的に例示したものが、医師等の宿日直許可基準通達の記の1(2)において示されたところである。なお、医師等の宿日直許可基準通達の記の1(2)に示されている例示における「看護職員」については、業務を行う主体を当該例示において掲げられている業務を行う職種に限っているものである。

第2 医師の研鑽に係る労働時間通達の取扱いについて

1 趣旨

医師の働き方改革に関する検討会においては、「医師の研鑽については、医学は高度に専門的であることに加え、日進月歩の技術革新がなされており、そのような中、個々の医師が行う研鑽が労働であるか否かについては、当該医師の経験、業務、当該医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえて、現場における判断としては、当該医師の上司がどの範囲を現在の業務上必須と考え指示を行うかによらざるを得ない。」とされている。

また、同検討会の報告書では、「医師については、自らの知識の習得や技能の向上を図る研鑽を行う時間が労働時間に該当するのかについて、判然としないという指摘がある。このため、医師の研鑽の労働時間の取扱いについての考え方と『労働に該当しない研鑽』を適切に取り扱うための手続を示すことにより、医療機関が医師の労働時間管理を適切に行えるように支援していくことが重要である」とされたところである。

このような同検討会における検討結果に基づき、医師の研鑽の実態を踏まえ、医師の研鑽に係る労働時間通達において、医師本人及び当該医師の労働時間管理を行う上司を含む使用者が、研鑽のうち労働時間に該当する範囲を明確に認識し得るよう、研鑽の労働時間該当性に関する基本的な考え方とともに、労働時間該当性を明確化するための手続等が示されたところである。

2 医師の研鑽に係る労働時間通達の運用における留意事項

ア 医師の研鑽に係る労働時間通達と「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の関係について

労働時間は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)において示されているとおり、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものである。この考え方は医師についても共通であり、医師の研鑽に係る労働時間通達においても、この考え方を変更するものではないこと。

イ 医師の研鑽と宿日直許可基準について

医師の研鑽に係る労働時間通達の記の2により、労働時間に該当しないと判断される研鑽については、当該研鑽が宿日直中に常態的に行われているものであったとしても、宿日直許可における不許可事由とはならず、又は許可を取り消す事由とはならないものである。

ウ 医師の研鑽に係る労働時間通達の記の3(1)の手続(以下「手続」という。)について

・上司は、業務との関連性を判断するに当たって、初期研修医、後期研修医、それ以降の医師といった職階の違い等の当該医師の経験、担当する外来業務や入院患者等に係る診療の状況、当該医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえ、現在の業務上必須かどうかを対象医師ごとに個別に判断するものであること。

・手続は、労働に該当しない研鑽を行おうとする医師が、当該研鑽の内容について月間の研鑽計画をあらかじめ作成し、上司の承認を得ておき、日々の管理は通常の残業申請と一体的に、当該計画に基づいた研鑽を行うために在院する旨を申請する形で行うことも考えられること。

・手続は、労働に該当しない研鑽を行おうとする医師が、当該研鑽のために在院する旨の申し出を、一旦事務職が担当者として受け入れて、上司の確認を得ることとすることも考えられること。

エ 諸経費の支弁と労働時間該当性について

医療機関は、福利厚生の一環として、学会等へ参加する際の旅費等諸経費を支弁することは、その費目にかかわらず可能であり、旅費等諸経費が支弁されていることは労働時間に該当するかどうかの判断に直接関係しないものであること。

オ 医師以外の職種も参加する研鑽

医師の研鑽に係る労働時間通達の記の2に掲げられる研鑽について、看護師等の医師以外の職種が参加するものであったとしても、当該研鑽が、労働時間に該当するかどうかの判断に直接関係しないものであること。

カ 大学の附属病院等に勤務する医師の研鑽について

大学の附属病院等に勤務し、教育・研究を本来業務に含む医師は、医師の研鑽に係る労働時間通達の記の2(1)アの「新しい治療法や新薬についての勉強」や記の2(2)アの「学会や外部の勉強会への参加・発表準備」、「論文執筆」をはじめ、同通達で「研鑽の具体的内容」として掲げられている行為等を、一般的に本来業務として行っている。

このため、当該医師に関しては、同通達中の「診療等その本来業務」及び「診療等の本来業務」の「等」に、本来業務として行う教育・研究が含まれるものであること。

この場合の労働時間の考え方として、当該医師が本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理として教育・研究を行う場合(例えば、大学の医学部等学生への講義、試験問題の作成・採点、学生等が行う論文の作成・発表に対する指導、大学の入学試験や国家試験に関する事務、これらに不可欠な準備・後処理など)については、所定労働時間内であるか所定労働時間外であるかにかかわらず、当然に労働時間となること。また、現に本来業務として行っている教育・研究と直接の関連性がある研鑽を、所定労働時間内において、使用者に指示された勤務場所(院内等)において行う場合については、当該研鑽に係る時間は、当然に労働時間となり、所定労働時間外に上司の明示・黙示の指示により行う場合については、一般的に労働時間に該当すること。

上記のとおり、当該医師は、同通達で「研鑽の具体的内容」として掲げられている行為等を本来業務として行っているため、研鑽と本来業務の明確な区分が困難な場合が多いことが考えられる。したがって、研鑽の実施に当たっては、本来業務との関連性について、同通達の記の3(1)の「医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続」として医師本人と上司の間で円滑なコミュニケーションを取り、双方の理解の一致のために十分な確認を行うことに特に留意する必要があること。