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通達:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法及び労働安全衛生法の施行について(新労基法第41条の2及び新安衛法第66条の8の4関係)

 

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法及び労働安全衛生法の施行について(新労基法第41条の2及び新安衛法第66条の8の4関係)〔労働基準法〕

平成31年3月25日基発0325第1号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

平成30年9月7日付け基発0907第1号「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について」及び平成30年9月7日付け基発0907第2号「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法の施行等について」において追って通知することとしていた、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。以下「整備法」という。)による改正後の労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「新労基法」という。)第41条の2及び改正後の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「新安衛法」という。)第66条の8の4、労働基準法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成31年厚生労働省令第29号)による改正後の労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号。以下「新労基則」という。)及び改正後の労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「新安衛則」という。)並びに労働基準法第41条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針(平成31年厚生労働省告示第88号。以下「指針」という。)の内容等は以下のとおりであるので、これらの施行に遺漏なきを期されたい。

 

第1 労働基準法関係

1 趣旨

高度プロフェッショナル制度は、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、新労基法第41条の2第1項の委員会(以下「労使委員会」という。)の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や、対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(労使委員会が休憩時間その他対象労働者が労働していない時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(以下「健康管理時間」という。)の状況に応じた健康及び福祉を確保するための措置(以下「健康・福祉確保措置」という。)等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度である。

2 労使委員会による決議の届出(新労基法第41条の2第1項本文及び新労基則第34条の2第1項関係)

高度プロフェッショナル制度を事業場に導入するに当たっては、労使委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により、下記4から13までの事項に関する決議(以下「決議」という。)をし、かつ、使用者が、様式第14号の2により、当該決議を所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。

なお、下記4から13までのいずれかの事項に関し、適正な決議がなされていない場合、高度プロフェッショナル制度の法律上の効果は生じないこと。また、下記6から8までの事項について決議した場合であっても、当該決議内容に基づく措置を講じていない場合は、高度プロフェッショナル制度の法律上の効果は生じないこと。

3 本人同意(新労基法第41条の2第1項本文及び新労基則第34条の2第2項関係)

高度プロフェッショナル制度を労働者に適用するに当たっては、使用者は、次に掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあっては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)により、当該対象労働者の同意を得なければならないものであること。

(1) 対象労働者が新労基法第41条の2第1項の同意(以下「本人同意」という。)をした場合には、同項の規定により、新労基法第4章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されないこととなる旨

 (2) 本人同意の対象となる期間

 (3) 上記(2)の期間中に支払われると見込まれる賃金の額

4 対象業務(新労基法第41条の2第1項第1号及び新労規則第34条の2第3項関係)

決議において、当該事業場における高度プロフェッショナル制度の対象業務を定めなければならないものであること。

高度プロフェッショナル制度の対象業務は、高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務であり、具体的には、次に掲げる業務(当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものを含む。)を受けて行うものを除く。)であること。

(1) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

(2) 資産運用(指図を含む。以下この(2)において同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務

(3) 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務

(4) 顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務

(5) 新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

5 対象労働者の範囲(新労基法第41条の2第1項第2号及び新労規則第34条の2第4項から第6項まで関係)

決議において、次のいずれにも該当する労働者であって、当該事業場における高度プロフェッショナル制度の対象業務に就かせようとするものの範囲を定めなければならないものであること。

 (1) 職務が明確に定められていること(新労基法第41条の2第1項第2号イ及び新労規則第34条の2第4項関係)

使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていること。

この「合意」の方法は、使用者が、次に掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあっては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)とすること。

  ① 業務の内容

  ② 責任の程度

  ③ 職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準

 (2) 年収要件(新労基法第41条の2第1項第2号ロ並びに新労規則第34条の2第5項及び第6項関係)

労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。

この「基準年間平均給与額」は、厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額の1月分から12月分までの各月分の合計額とすること。

また、「厚生労働省令で定める額」は、1,075万円とすること。

6 健康管理時間の把握(新労基法第41条の2第1項第3号並びに新労規則第34条の2第7項及び第8項関係)

決議において、健康管理時間を把握する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずることを定めなければならないものであること。

健康管理時間を把握する方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法とすること。ただし、事業場外において労働した場合であって、やむを得ない理由があるときは、自己申告によることができること。

7 休日の確保(新労基法第41条の2第1項第4号関係)

決議において、対象業務に従事する対象労働者に対し、1年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えることを定めなければならないものであること。

8 選択的措置(新労基法第41条の2第1項第5号及び新労規則第34条の2第9項から第13項まで関係)

決議において、対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずることを定めなければならないものであること。

(1) 労働者ごとに始業から24時間を経過するまでに11時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、新労基法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について4回以内とすること

(2) 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1箇月について100時間を超えない範囲内とすること又は3箇月について240時間を超えない範囲内とすること

(3) 1年に1回以上の継続した2週間(労働者が請求した場合においては、1年に2回以上の継続した1週間)(使用者が当該期間において、新労基法第39条の規定による有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること

(4) 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1箇月当たり80時間を超えた労働者又は申出があった労働者に健康診断(以下「臨時健康診断」という。)を実施すること

臨時健康診断は、新安衛則第44条第1項第1号から第3号まで、第5号及び第8号から第11号までに掲げる項目(同項第3号に掲げる項目にあっては、視力及び聴力の検査を除く。)並びに新安衛則第52条の4各号に掲げる事項の確認を含むものに限ること。

9 健康・福祉確保措置(新労基法第41条の2第1項第6号及び新労規則第34条の2第14項関係)

決議において、対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康・福祉確保措置であって、次に掲げる措置のうち当該決議で定めるものを使用者が講ずることを定めなければならないものであること。

(1) 上記8の(1)から(4)までのいずれかの措置であって、上記8の措置として講ずることとした措置以外のもの

(2) 健康管理時間が一定時間を超える対象労働者に対し、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいい、新安衛法第66条の8の4第1項の規定による面接指導を除く。)を行うこと

 (3) 対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること

 (4) 対象労働者の心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること

 (5) 対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること

 (6) 産業医等による助言若しくは指導を受け、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

10 同意の撤回に関する手続(新労基法第41条の2第1項第7号関係)

決議において、本人同意の撤回に関する手続を定めなければならないものであること。

11 苦情処理措置(新労基法第41条の2第1項第8号関係)

決議において、対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずることを定めなければならないものであること。

12 不利益取扱いの禁止(新労基法第41条の2第1項第9号関係)

決議において、使用者は、本人同意をしなかった対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことを定めなければならないものであること。

13 その他の決議事項(新労基法第41条の2第1項第10号及び新労規則第34条の2第15項関係)

決議において、上記4から12までの事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならないものであること。

 (1) 決議の有効期間の定め及び当該決議は再度決議をしない限り更新されない旨

 (2) 労使委員会の開催頻度及び開催時期

(3) 常時50人未満の労働者を使用する事業場である場合には、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師を選任すること。

(4) 使用者は、次の①から⑧までに掲げる事項に関する対象労働者ごとの記録及び⑨に掲げる事項に関する記録を(1)の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存すること。

   ① 本人同意及びその撤回

   ② 上記5(1)の合意に基づき定められた職務の内容

   ③ 上記5(2)の支払われると見込まれる賃金の額

   ④ 健康管理時間の状況

   ⑤ 上記7の措置の実施状況

   ⑥ 上記8の措置の実施状況

   ⑦ 上記9の措置の実施状況

   ⑧ 上記11の措置の実施状況

   ⑨ 上記(3)の医師の選任

14 報告(新労基法第41条の2第2項及び新労規則第34条の2の2関係)

決議の届出をした使用者は、当該決議が行われた日から起算して6箇月以内ごとに、様式第14号の3により、健康管理時間の状況及び上記7から9までの措置の実施状況について所轄労働基準監督署長に報告しなければならないものであること。

15 労使委員会の要件等(新労基法第41条の2第3項において準用する新労基法第38条の4第2項及び第5項並びに新労基則第34条の2の3において準用する新労基則第24条の2の4関係)

労使委員会の要件及び労使委員会において高度プロフェッショナル制度に係る決議以外に決議をすることができる事項については、企画業務型裁量労働制の労使委員会に準じるものであること。

16 指針(新労基法第41条の2第3項において準用する新労基法第38条の4第3項並びに新労基法第41条の2第4項及び第5項)

厚生労働大臣は、対象業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るために、労使委員会が決議する事項について指針を定め、これを公表するものであること。また、決議をする労使委員会の委員は、当該決議の内容が指針に適合したものとなるようにしなければならないものであること。さらに、行政官庁は、指針に関し、決議をする労使委員会の委員に対し、必要な助言及び指導を行うことができるものであること。

 

第2 労働安全衛生法関係

1 高度プロフェッショナル制度の対象労働者に対する医師による面接指導(新安衛法第66条の8の4及び新安衛則第52条の7の4関係)

事業者は、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について1月当たり100時間を超える対象労働者に対し、医師による面接指導を行わなければならないものであること。

また、当該対象労働者は、当該面接指導を受けなければならないものとするとともに、事業者は、当該面接指導の結果を記録し、これを5年間保存しておかなければならないものであること。さらに、事業者は、当該面接指導の結果に基づき、当該対象労働者の健康を保持するために必要な措置について医師の意見を聴かなければならないものとするとともに、その必要があると認めるときは、職務内容の変更、有給休暇(新労基法第39条の規定による年次有給休暇を除く。)の付与、健康管理時間が短縮されるための配慮等の措置を講じなければならないものであること。

加えて、新安衛法第66条の8第1項の規定による面接指導の実施方法等に係る規定は、当該対象労働者に対する面接指導について準用するとともに、読替えに係る規定により、当該面接指導は当該超えた時間の算定の期日後、遅滞なく、当該対象労働者に対して行わなければならないものであること。なお、「遅滞なく」とは、おおむね1月以内をいうものであること(以下同じ。)。

2 上記1に該当する者以外の対象労働者に対する必要な措置(新安衛法第66条の9及び新安衛則第52条の8関係)

上記1に該当する者以外の対象労働者から申出があった場合には、事業者は上記1の面接指導を行うよう努めなければならないものであること。

3 産業医の職務の追加及び産業医に対する健康管理等に必要な情報の提供(新安衛則第14条及び第14条の2関係)

新安衛則第14条第1項に規定する産業医の職務に、上記1の面接指導、上記2の必要な措置の実施及びこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関することを追加するものであること。

また、産業医を選任した事業者が産業医に対し提供しなければならない情報として、次に掲げる情報を追加するものであること。

(1) 上記1の面接指導実施後の措置又は講じようとする措置の内容に関する情報(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)

(2) 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該対象労働者に係る当該超えた時間に関する情報

なお、上記(1)及び(2)の事業者から産業医への情報提供は、以下の情報の区分に応じ、それぞれに規定する時期に行わなければならないものであること。

  ① (1)に掲げる情報

   面接指導の結果についての医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく提供すること。

  ② (2)に掲げる情報

当該超えた時間の算定を行った後、速やかに提供すること。なお、「速やかに」とは、おおむね2週間以内をいうものであること。

 

第3 指針関係

指針は、対象業務に従事する労働者の適正な労働条件を確保するため、労使委員会が決議する事項について具体的に明らかにする必要があると認められる事項を規定するとともに、高度プロフェッショナル制度の実施に関し、事業場の使用者及び労働者等並びに労使委員会の委員が留意すべき事項等を定めたものであり、決議をする委員は、当該決議の内容が指針に適合したものとなるようにしなければならないものであること。

指針のうち、「第1」は指針の趣旨、「第2」は本人同意に関する事項、「第3」は対象業務となり得る業務の例及び対象業務となり得ない業務の例等労使委員会が決議する新労基法第41条の2第1項各号に掲げる事項に関する事項、「第4」は労使委員会の要件等労使委員会に関する事項について、それぞれ定めたものであること。

指針の中で、新労基法第41条の2に規定する事項に関し「具体的に明らかにする事項」としてその解釈等を規定する部分に反して労使委員会の決議がなされた場合には、新労基法第41条の2に規定する事項についての適正な決議がなされていないこととなり、決議全体が無効となることから高度プロフェッショナル制度の法律上の効果は生じないこととなるものであること。