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通達:法令名

 

労働契約法の「無期転換ルール」の定着について

平成27年8月7日地発0807第3号・基発0807第1号・職発0807第1号

(都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房地方課長・厚生労働省労働基準局長・厚生労働省職業安定局長通知)

 

労働契約法(平成19年法律第128号)第18条においては、同一の使用者との間で、期間の定めのある労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合には、有期雇用労働者(期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいう。以下同じ。)の申込みにより、期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み(以下「無期転換ルール」という。)が規定されているところである。

無期転換ルールについては、平成30年度以降、多くの有期契約労働者に同条第1項に基づき期間の定めのない労働契約への転換を申し込むことができる権利(以下「無期転換申込権」という。)が発生することから、無期転換ルールの定着に向けて、事業主及び労働者双方への周知や相談体制の整備等を行う必要がある。

更に、平成27年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」においては、企業における正社員転換・雇用管理改善の強化が盛り込まれたところであり、また、経済団体等から無期転換ルールへの事業主の認知度が低いとの声もあることから、労働局が一体となった取組を強力に行う必要がある。

ついては、下記に留意の上、無期転換ルールの定着に向けた周知啓発に遺漏なきを期されたい。

なお、取組にあたっては、非正規雇用労働者の正社員転換等に係る啓発運動や人材不足分野における雇用管理改善に向けた事業主に対する働きかけ中でも、無期転換ルールの定着に向け労働局幹部等による周知啓発に積極的に努めるものとすること。

 

第1 背景及び趣旨

平成25年4月から施行された無期転換ルールについては、無期転換申込権が発生する直前の雇止めについて懸念があることを踏まえ、平成26年2月14日付け労働政策審議会建議「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」(別紙1参照)において、「雇用の安定がもたらす労働者の意欲や能力の向上や、企業活動に必要な人材の確保に寄与することなどのメリットについて十分に理解が進むよう一層の周知を図ること」や「有期契約労働者やその雇用管理の担当者にも内容が行き届くよう、効果的な周知の方法を工夫すること」等が厚生労働行政に求められている。

また、平成26年10月28日付け専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案に対する参議院厚生労働委員会附帯決議(別紙2参照)においても政府は「無期転換ルールの本格的な適用開始に向けて、労働者及び事業主双方への周知、相談体制の整備等に万全を期すとともに、無期転換申込権発生を回避するための雇止めを防止するため、実効性ある対応策を講ずること」を求められているところである。

こうした状況を踏まえ、厚生労働行政としては、引き続き労働契約法の内容について周知を図るとともに、特に無期転換ルールについては、事業主や雇用管理担当者(以下、「事業主等」という。)、有期契約労働者に対し、円滑な無期転換の促進に向けた積極的かつ効果的な周知啓発を行うこととする。

なお、無期転換ルールを含め、労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)による改正後の労働契約法の趣旨及び内容については、「労働契約法の施行について」(平成24年8月10日付け基発0810第2号)により示したとおりであるので、念のため申し添える。

 

第2 周知啓発について

1 基本的な考え方

(1) 重点的対象について

無期転換ルールの認知度が比較的低いとの調査結果(別紙3参照)にある中小企業の事業主等、求人企業に対して周知啓発を行うほか、有期契約労働者や求職者に対しても、無期転換申込権の行使に関することを中心に無期転換ルールの内容の積極的な周知を行うこと。

(2) 労働局内の連携について

無期転換の推進は、非正規雇用労働者の雇用の安定を図る有効な政策手法であること。また、企業における無期転換ルールへの対応に向けた検討を通じて、正社員化や多様な正社員制度の普及が促進されることから、労働基準行政のみならず、職業安定行政にとっても重要な政策課題であるとの認識を労働局幹部はじめ職員が持ち、労働局一体となって取り組む必要があること。

なお、周知啓発にあたっては、このような点にも留意し、都道府県労働局内の関係部署の役割分担を明確化しておくなどにより、関係部署において連携の上、効率的・効果的に実施すること。

2 周知啓発の方法

(1) 労働局幹部による周知啓発

労使団体等の関係団体が主催する各種会合や、事業主等が出席する集団指導等のあらゆる機会をとらえて、労働局幹部自ら、無期転換ルールの積極的かつ効果的な周知啓発を行うこと。

(2) 広報活動

労使団体等の関係団体及び地方公共団体が発行する機関広報誌等への掲載依頼を行うなど、無期転換ルールの広報活動を積極的に実施すること。

(3) 労働局、労働基準監督署や公共職業安定所における周知啓発

別途本省から労働局、労働基準監督署、公共職業安定所に対し送付する予定のリーフレット(別添1)を活用し、中小企業の事業主等、求人企業、各種セミナー等の出席者、有期契約労働者や求職者などに対して、無期転換ルールの周知を行うこと。

併せて別添2の点検票を各事業主等に対して手交し、同点検票への記載を通じて、無期転換ルールへの理解を促すこと。

 

[別紙1]

平成26年2月14日 労働政策審議会建議

「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について(報告)」(抄)

2 改正労働契約法に基づく無期転換ルールの円滑な施行について

平成25年4月から施行された無期転換ルールについて、無期転換申込権が発生する直前の雇止めについて懸念があることを踏まえ、厚生労働行政において以下の取組を積極的に進めることが適当である。

① 無期転換ルールについて、雇用の安定がもたらす労働者の意欲や能力の向上や、企業活動に必要な人材の確保に寄与することなどのメリットについて十分に理解が進むよう一層の周知を図るとともに、労働契約法第19条に法定化された「雇止め法理」の内容や適用範囲等についてもあわせて周知を図ること。また、有期契約労働者やその雇用管理の担当者にも内容が行き届くよう、効果的な周知の方法を工夫すること。

② 有期雇用から無期雇用への転換が円滑に進むよう、無期転換の取組を行っている企業における制度化の取組等についての好事例や、無期転換を進める際の留意点等をまとめ、①の取組において活用すること。

③ 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)に規定する雇止めの予告や雇止めの理由の明示など、有期労働契約に関する労働基準関係法令の諸規定の遵守の徹底を図ること。

④ 非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、正規雇用又は無期転換、人材育成などの取組を行う事業主を支援する助成金の効果的な活用を積極的に進めること。

 

[別紙2]

平成26年10月28日 参議院厚生労働委員会

「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案に対する附帯決議」(抄)

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

六、無期転換ルールの本格的な適用開始に向けて、労働者及び事業主双方への周知、相談体制の整備等に万全を期すとともに、無期転換申込権発生を回避するための雇止めを防止するため、実効性ある対応策を講ずること。特に、六十歳未満から有期労働契約を反復更新しており、高年齢者雇用安定法における高年齢者雇用確保措置の対象外となる労働者については、引き続き無期転換ルールにより雇用の安定が図られることが重要であることに十分留意すること。

 

[別紙3]