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生活困窮者自立支援法に基づく就労準備支援事業及び就労訓練事業において就労する者に対する労働基準法の適用について
平成27年3月26日基発0326第7号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)が平成27年4月1日から施行され、同法に基づく生活困窮者就労準備支援事業(以下「就労準備支援事業」という。)及び生活困窮者就労訓練事業(以下「就労訓練事業」という。)が全国的に実施される。また、生活保護受給者に関しては、生活保護法(昭和25年法律第144号)に基づく事業として、就労準備支援事業と同様の事業である被保護者就労準備支援事業が実施される。
就労準備支援事業(被保護者就労準備支援事業を含む。以下同じ。)及び就労訓練事業においては、事業の対象となる者が事業場において就労することが予定されているところ、これらの事業における就労が、一般事業場における就労とは異なった形態を取ることとなることから、これに対する労働基準法の適用等について疑義が生じる場面も考えられる。
このため、就労準備支援事業及び就労訓練事業を利用する生活困窮者等(以下「対象者」という。)に対する労働基準法の適用についての判断等は、下記によることとするので、その適切な実施について、遺憾なきを期されたい。
記
1 就労準備支援事業について
(1) 就労準備支援事業は、福祉事務所設置自治体を事業主体として(民間事業者に委託をすることが可能。)、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し、一定期間にわたり、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う事業である。就労準備支援事業においては、①適切な生活習慣の形成を促す日常生活自立に関する支援、②社会的能力の形成を促す社会生活自立に関する支援、③一般就労に向けた技法や知識の修得等を促す就労自立に関する支援が行われることとされている。
(2) 就労準備支援事業においては、模擬面接の実施や履歴書作成指導などのほか、同事業の委託を受けた民間事業者が運営する飲食店等での作業補助や、各地域における協力事業所での軽作業への従事を通じた就労体験が行われる場合がある。この場合、就労体験は、雇用契約を伴わないものとされているが、工賃、報奨金等の形で一定額の金銭を支払うことも可能とされている。
(3) 就労準備支援事業の利用開始に当たっては、個々の対象者について、その者が抱える課題や支援の目標、具体的な支援内容を記載した就労準備支援プログラムを作成することとされており、その中で、以下の事項についても留意事項として明記することとされている。
① 所定の作業日、作業時間に、作業に従事するか否かは、対象者の自由であること。また、所定の作業量について、所定の量を行うか否かについても、対象者の自由であること。
② 作業時間の延長や、作業日以外の日における作業指示が行われないこと。
③ 所定の作業時間内における受注量の増加等に応じた、能率を上げるための作業の強制が行われないこと。
④ 欠席・遅刻・早退に対する手当の減額制裁がないこと(実作業時間に応じた手当を支給する場合においては、作業しなかった時間分以上の減額をすることがないこと)。
⑤ 作業量の割当、作業時間の指定、作業の遂行に関する指揮命令違反に対する手当等の減額等の制裁がないこと。
(4) 就労準備支援事業における就労体験の開始時には、対象者と就労準備支援事業の実施者との間で、対象者本人の自発的意思に基づき、就労体験の内容や条件等を示した文書による確認書を取り交わすこととされ、書面上、非雇用である旨(雇用関係ではなく、作業日、作業時間、作業量等の自由があり、労働の対償としての賃金の支払のない就労体験に従事すること、就労支援プログラムの内容に基づく就労体験に従事することを含む。)の理解と合意があることを明確にすることとされている。
2 就労訓練事業について
(1) 就労訓練事業は、都道府県知事等の認定を受けた事業者が、雇用による就業を継続して行うことが困難な生活困窮者に対し、就労の機会を提供するとともに、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の便宜を供与する事業である。就労訓練事業における就労形態としては、雇用契約を締結せず、訓練として就労を体験する段階(以下「非雇用型」という。)と、雇用契約を締結した上で、支援付きの就労を行う段階(以下「雇用型」という。)の二つが想定されている。
就労訓練事業を雇用型として開始するか、非雇用型として開始するかについては、対象者の意向や対象者が行う業務の内容、同事業を行う者(以下「就労訓練事業所」という。)の受入に当たっての意向等を勘案して、生活困窮者自立支援法に基づく自立相談支援事業を行う者が判断し、自治体による支援決定を経て確定する。
(2) 就労訓練事業所は、就労訓練事業を利用する個々の対象者について、同事業における就労の実施内容、目標等を記載した就労支援プログラムを作成するとともに、対象者との面談等を経て定期的にプログラムの見直し・更新を行うこととされている。
就労支援プログラムには、就労訓練事業における就労を通じた短期的目標や、それに沿った就労支援の方針等を記載することとされているが、非雇用型の対象者については、以下の事項についても留意事項として明記することとされている。
① 所定の作業日、作業時間に、作業に従事するか否かは、対象者の自由であること。また、所定の作業量について、所定の量を行うか否かについても、対象者の自由であること。
② 作業時間の延長や、作業日以外の日における作業指示が行われないこと。
③ 所定の作業時間内における受注量の増加等に応じた、能率を上げるための作業の強制が行われないこと。
④ 欠席・遅刻・早退に対する手当の減額制裁がないこと(実作業時間に応じた手当を支給する場合においては、作業しなかった時間分以上の減額をすることがないこと)。
⑤ 作業量の割当、作業時間の指定、作業の遂行に関する指揮命令違反に対する手当等の減額等の制裁がないこと。
(3) 非雇用型の場合であっても、就労開始時に、対象者と就労訓練事業所との間で、対象者本人の自発的意思に基づき、就労内容や条件等を示した文書による確認書を取り交わすこととされ、書面上、非雇用である旨(雇用関係ではなく、労働の対償としての賃金の支払がない訓練に従事すること、就労支援プログラムの内容に基づく訓練に従事することを含む。)の理解と合意があることを明確にすることとされている。
(4) 非雇用型として就労を開始した場合でも、その後の能力の上達度合いや事業所及び対象者の合意に応じて、雇用契約を締結する場合もある(雇用型)。
3 対象者に対する労働基準法第9条の適用について
(1) 就労準備支援事業において就労体験を行う対象者については、①就労準備支援プログラムに記載された就労体験の内容が、その就労内容等においても上記1(3)の①から⑤に沿ったものとなっており、②雇用関係を前提としない就労体験であることについて、就労準備支援事業の実施者と対象者との間の合意が、文書による確認書や就労準備支援プログラムの内容等から明らかであって、③就労体験の実態としても就労準備支援プログラムに沿ったものである場合、当該就労体験を行う対象者は、原則として労働基準法第9条の労働者ではないものとして取り扱うこと。
(2) 就労訓練事業において、雇用型で就労する対象者については、原則として労働基準法第9条の「労働者」に該当するものであること。
(3) 就労訓練事業において、非雇用型で就労する対象者については、①就労支援プログラムに記載された訓練内容が、その就労内容等においても上記2(2)の①から⑤に沿ったものとなっており、②非雇用型の就労であることについて、就労訓練事業所と対象者との間の合意が、文書による確認書や就労支援プログラムの内容等から明らかであって、③就労実態としても就労支援プログラムに沿ったものである場合には、当該就労を行う対象者は、原則として労働基準法第9条の労働者ではないものとして取り扱うこと。