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「職場のパワーハラスメント対策の推進について」の一部改正について
平成26年4月3日地発0403第1号・基発0403第2号
(都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房地方課長・厚生労働省労働基準局長通知)
職場のパワーハラスメント対策については、平成24年9月10日付け地発0910第5号、基発0910第3号「職場のパワーハラスメント対策の推進について」(以下「通達」という。)に基づき、その推進に取り組んでいるところであるが、総合労働相談コーナーへの相談件数が増加を続ける等、社会問題として顕在化しているとともに、精神障害の労災補償状況においても、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」ことによる支給決定件数が増加している状況にある。一方、約半数の企業がパワーハラスメントの予防・解決のための取組を行っておらず、特に100名未満の企業においては、8割以上は何ら取組が行われていないことが明らかとなっている。
こうした状況を踏まえ、本省においては、周知・啓発のための事業や労使の取組を支援するための事業を実施しているところであるが、今般、通達の一部を別添の新旧対照表<編注:略>のとおり改正し、職場のパワーハラスメント対策をより一層推進することとしたので、貴職におかれても、その推進に取り組まれたい。
(別添)<編注:略>
○職場のパワーハラスメント対策の推進について
平成24年9月10日地発0910第5号・基発0910第3号
(都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房地方課長・厚生労働省労働基準局長通知)
改正 平成26年 4月 3日・地発0403第1号・基発0403第2号
職場のいじめ・嫌がらせ、いわゆるパワーハラスメント(以下「職場のパワーハラスメント」という。)問題については、近年、総合労働相談コーナーへの相談件数が増加を続ける等、社会問題として顕在化しているとともに、精神障害の労災補償状況においても、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」ことによる支給決定件数が増加している状況にある。一方、約半数の企業がパワーハラスメントの予防・解決のための取組を行っておらず、特に100人未満の企業においては、8割以上で何ら取組が行われていないことが明らかとなっている。
職場のパワーハラスメントは、労働者の尊厳や人格を傷つける許されない行為であるとともに、職場環境を悪化させるものである。こうした問題を放置すれば、労働者は仕事への意欲や自信を失い、時には心身の健康や命すら危険にさらされる場合があるため、職場のパワーハラスメントはなくしていかなければならない。
平成23年7月に厚生労働副大臣の下に各界の有識者の参集を求めて開催した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」では、平成24年3月15日に、企業及び労働組合等の組織と組織で働く労働者に対し、この問題に取り組むことを求める「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」(以下「提言」という。別添1参照。)を取りまとめた。
厚生労働省としては、この提言を踏まえ、職場のパワーハラスメント対策を推進することとしたので、貴職におかれても、下記に留意の上、その推進に取り組まれたい。
記
第1 職場のパワーハラスメント対策を進めるに当たっての基本的な考え方
1 対策を進める必要性について
職場のパワーハラスメントは、労働者の尊厳や人格を傷つける許されない行為であるとともに、この問題を放置すると、労働者のメンタルヘルスの不調を引き起こす可能性がある。また、使用者が、パワーハラスメントが行われていることを認識することが可能であったにもかかわらずこれを認識して防止する措置をとらなかったために、労働者の心身の健康が侵害された場合には、労働契約に伴う使用者の安全配慮義務に違反することもある。さらに、職場のパワーハラスメントが使用者と労働者の間での個別労働関係紛争に発展する可能性もある。
近年、総合労働相談コーナーへの職場のいじめ・嫌がらせについての相談が増加を続けるなど、職場のパワーハラスメントは社会問題として顕在化しており、適切な労働条件の確保や労働者の心の健康の保持増進等良好な職場環境の維持改善を図る観点から、また、個別労働紛争を未然に防止する観点から、職場のパワーハラスメント対策の推進は、労働行政にとって重要な課題となっている。
2 行政の取組について
職場のパワーハラスメントについては、企業が労働組合や労働者と協力しながら、自らこの問題をなくしていくための対策に取り組むことが望ましい。しかしながら、企業がこの問題の重要性に気付いていない場合や、気付いていたとしても、業務上の指導との線引きが難しいなどの理由から、取組が難しいと考える場合、取り組む場合も業務上の指導を行うことに及び腰となってしまうなど問題への対応に困難を感じている場合もあり、当事者の自主的な努力だけでは取組が進展しないおそれがある。
このため、行政が、使用者団体及び労働者団体(以下「労使団体」という。)とも協力しながら、企業や労働組合がこの問題の重要性を認識し、予防・解決に向けて取り組むことを支援するために、この問題の現状や課題、取組例などについての周知啓発を行うことが必要である。
これらの点について、提言では、以下のとおり取組の必要性、予防・解決すべき行為、取組の在り方を示していることから、職場のパワーハラスメント対策を進めるに当たっては、当面の間、この提言の内容を踏まえた周知啓発を行い、職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた労使の自主的な取組を助長し、促進することとする。
(1) 取組の必要性について
① 暴力、暴言、脅迫や仲間外しなどのいじめ行為に悩む職場が増えていること、
② 業務上の注意や指導なども、適正な範囲を超えると相手を傷つけてしまう場合があること
③ 職場のパワーハラスメントは許されない行為であること
④ 放置すれば働く人の意欲を低下させ、時には命すら危険にさらす場合があること
について示しており、職場のパワーハラスメントはなくしていかなければならないとしている。
(2) 職場のパワーハラスメントの概念について
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいうこととしている。また、職場のパワーハラスメントに該当する典型的な行為類型とともに、その中でも判断が難しい類型や判断のための取組について示している。
(3) 職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組について
職場のパワーハラスメントを予防・解決するために、企業や労働組合は、平成24年1月30日に取りまとめられた「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」(以下「ワーキング・グループ報告」という。)が示した取組例を参考に取り組んでいくとともに、組織の取組が形だけのものにならないよう、労働者にも、それぞれの立場からの取組を求めている。また、国や労使団体には、提言及びワーキング・グループ報告を周知し、広く対策が行われるよう支援することを求めている。
第2 周知啓発に当たっての基本的な考え方
職場のパワーハラスメントをなくしていくためには、企業が予防・解決に取り組むとともに、企業の取組が形だけのものにならないよう、労働組合や労働者がそれぞれの立場から問題に取り組むことが必要である。
また、こうした取組の推進に当たっては、企業が率先して「職場のパワーハラスメントはなくすべきものである」という方針を明確に打ち出すことが求められる。さらに、企業の方針を明確化するために、企業のトップマネジメントが問題に取り組む重要性を理解し、自ら対策に取り組むことが不可欠である。提言においても、企業のトップマネジメントに対して、職場のパワーハラスメントは企業の活力を削ぐものであることを意識し、こうした問題が生じない企業文化を育てていくため、自らが範を示しながら、その姿勢を明確に示すなどの取組を行うことを求めている。
このため、この問題に取り組む社会的気運を醸成するとともに、広く対策が行われるよう、提言の内容を踏まえ、労使団体等の関係団体並びに企業のトップマネジメントを重点的対象として、積極的かつ効果的な周知啓発を行うこととする。
第3 周知啓発のための対応
1 本省での対応
(1) 労使団体への周知依頼
全国規模の労使団体等の関係団体に対して、傘下の企業及び労働組合等の組織に対する提言の内容の周知を依頼する。
(2) 周知広報の実施
提言の趣旨等について記者発表を行うとともに、厚生労働関係広報誌及び厚生労働省HPへ掲載する。
(3) ポスター等の作成
提言の内容を分かりやすくまとめたポスター、リーフレット、パンフレット及び職場のパワーハラスメント対策ハンドブック(以下「周知用資料」という。)を作成する。
(4) ポータルサイト「あかるい職場応援団」の運営
ポータルサイト「あかるい職場応援団」(以下「ポータルサイト」という。)に、企業等の取組例の紹介や裁判例の解説、職場環境のチェックリスト等を掲載することにより、職場のパワーハラスメント対策について周知広報を図る。(URL:http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/)。
(5) パワーハラスメント対策支援セミナーの開催
職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた具体的な取組を促すため、参加者が実務に活かすことができる内容のセミナーを開催する。
(6) 地方公共団体との協力関係の確立
独自にパワーハラスメント対策を推進している地方公共団体(都道府県)の取組状況をポータルサイトにおいて紹介するとともに、各都道府県に対しても国の取組内容に係る情報を提供するなど、パワーハラスメント対策についての国と地方公共団体との間の協力関係を確立する。
2 各都道府県労働局における労働基準行政としての対応
(1) 基本的な考え方
以下に示すところにより、提言の積極的かつ効果的な周知啓発を行うこと。
ア 本省から都道府県労働局(以下「局」という。)監督課及び各労働基準監督署に送付する周知用資料やポータルサイトを活用して積極的に周知啓発を図ること。
イ 周知啓発に当たっては、局内関係部署の役割分担を明確化しておくなどにより、効率的・効果的に実施すること。
(2) 周知啓発の方法
周知啓発は、周知用資料やポータルサイトを活用しつつ、以下の方法等によること。
ア 広報活動
広報活動を積極的に実施すること。具体的には、以下のような取組が考えられること。
(ア) 労使団体等の関係団体及び地方公共団体が発行する機関広報誌(紙)等への掲載依頼
(イ) 関係団体に対する依頼内容の記者発表
(ウ) 局HPへの掲載(本省HPとのリンクを含む。)
イ 労使団体等への周知依頼
地域を代表する労使団体等の関係団体に対して、傘下の企業及び労働組合等の組織に対する提言の内容の周知を依頼すること。
ウ 各種の指導等の機会の活用
(ア) 集団指導等において実施すべき事項
事業場のトップや人事労務管理担当者など、職場のパワーハラスメント対策を担うと考えられる者が出席する集団指導等の機会に周知用資料を配布するほか、ポータルサイトを周知すること等により、提言の内容の周知啓発を図ること。その際、事業場内での周知も併せて依頼すること。
また、全国安全週間準備月間、全国労働衛生週間準備月間等の機会も利用して周知を図ること。さらに、メンタルヘルス対策を推進する関係労使団体に対しては、周知用資料の備え置きについて協力を依頼する等、積極的な連携を図ること。
(イ) 監督指導、個別指導等の際に実施すべき事項
また、メンタルヘルス不調の未然防止の観点から、監督指導やメンタルヘルス対策に係る個別指導等に際し、周知用資料やポータルサイト等を活用して、職場のパワーハラスメントの予防・解決に関する周知を図ること。
特に、監督指導や個別指導等の対象事業場について、パワーハラスメントが行われているなどの情報が寄せられている場合には、監督指導又は個別指導とあわせて、職場のパワーハラスメント対策の必要性について十分に説明すること。
エ 各種会合等の機会の活用
労使団体等の関係団体の各種会合等の機会に周知用資料を配布するほか、ポータルサイトを周知すること等により、提言の内容の周知啓発を図ること。また、こうした各種会合等で提言の内容を説明する機会が得られた場合は、本省から各局に送付した説明会資料等(以下「説明会資料等」という。)も活用しつつ説明を行うこと。
なお、こうした各種会合等への講師派遣依頼がなされた場合には、積極的に協力すること。説明会資料等の内容に疑義がある場合は、本省労働基準局労働条件政策課賃金時間室に相談すること。
オ その他説明会等の実施
管内の実情に応じて関係団体等と協力するなどにより説明会等を実施する場合には、事業場のトップに出席を求めること。
カ 相談時等の対応
リーフレット等を窓口の見やすい場所に備え置き、相談内容に応じてこれを配付し、可能な範囲で説明を行うなど、懇切・丁寧な対応に努めるとともに、必要に応じ、総合労働相談コーナーやポータルサイトを紹介するほか、当該サイトに掲載されている相談機関の紹介を行うこと。
キ パワーハラスメント対策支援セミナーへの協力
本省で開催するパワーハラスメント対策支援セミナーについては、例えば、局HPにおける開催情報の掲示など周知、参加勧奨に協力するほか、必要な支援を行う等、積極的に協力すること。なお、パワーハラスメント対策に係る知識を深める観点から、局署職員を同セミナーに派遣しても差し支えないこと。
ク 地方公共団体との協力関係の確立
上記1(6)に記載したとおり、本省において、各都道府県との間でパワーハラスメント対策に係る相互の情報交換等を行うこととしており、各都道府県労働局においても別途指示に基づいて地方公共団体との協力関係の確立に努めること。
3 各都道府県労働局における個別労働関係紛争の未然防止の観点からの対応
(1) 相談時等の対応
総合労働相談員が必要に応じて提言の内容を相談者等に説明できるよう、総合労働相談コーナーにリーフレット等を備えるとともに、個別労働関係紛争について事業主等に対する説明会等を企画実施する場合には、これらを配布する等により、提言の内容の周知啓発を図ること。
(2) 総合労働相談員に対する研修
必要に応じて提言の内容を相談者等に説明できるよう、すべての総合労働相談員に対して十分な研修を実施すること。
(3) 関係者への情報提供
あっせんを行う際に参考とすることができるよう、紛争調整委員に対して提言の内容を情報提供すること。また、都道府県の個別労働紛争担当部局(労政主管部局及び個別労働紛争解決制度を運用している労働委員会事務局)に対しても、周知用資料を活用して、情報提供を行うこと。