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通達:労働契約法について

 

労働契約法について

平成19年12月5日厚生労働省発基第1205001号

(都道府県労働局長あて厚生労働事務次官通知)

 

労働契約法(以下「法」という。)については、本年3月13日に第166回国会に提出され、審議が重ねられてきたところであるが、第168回国会において一部修正の上11月28日に成立し、本日平成19年法律第128号として公布されたところである。法は、公布の日から起算して3か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。

法の主たる内容は下記のとおりであるので、貴職におかれては、その趣旨について周知徹底に遺漏なきを期されたい。

 

第1 趣旨

就業形態の多様化、個別労働関係紛争の増加等に対応し、個別の労働者及び使用者の労働関係が良好なものとなるようにするため、労働契約の合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を明確にすることとしたものである。

 

第2 概要

1 法の目的

法は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とすることとしたこと。(第1条関係)

2 労働者及び使用者の定義

(1) 法において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいうものとしたこと。(第2条第1項関係)

(2) 法において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいうものとしたこと。(第2条第2項関係)

3 労働契約に関する原則等

(1) 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとしたこと。(第3条第1項関係)

(2) 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとしたこと。(第3条第2項関係)

(3) 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとしたこと。(第3条第3項関係)

(4) 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならないものとしたこと。(第3条第4項関係)

(5) 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならないものとしたこと。(第3条第5項関係)

(6) 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとしたこと。(第4条第1項関係)

(7) 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとしたこと。(第4条第2項関係)

(8) 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとしたこと。(第5条関係)

4 労働契約の成立及び変更

(1) 労働契約の成立

ア 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立するものとしたこと。(第6条関係)

イ 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとしたこと。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、(3)アに該当する場合を除き、この限りでないものとしたこと。(第7条関係)

(2) 労働契約の内容の変更

ア 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができるものとしたこと。(第8条関係)

イ 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないものとしたこと。ただし、ウの場合は、この限りでないものとしたこと。(第9条関係)

ウ 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとしたこと。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、(3)アに該当する場合を除き、この限りでないものとしたこと。(第10条関係)

エ 就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法第89条及び第90条の定めるところによるものとしたこと。(第11条関係)

(3) その他の労働契約及び就業規則に関する事項

ア 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とするものとしたこと。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準によるものとしたこと。(第12条関係)

イ 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、(1)イ、(2)ウ及び(3)アは、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しないものとしたこと。(第13条関係)

5 労働契約の継続及び終了

(1) 労働契約の継続

ア 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とするものとしたこと。(第14条関係)

イ 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とするものとしたこと。(第15条関係)

(2) 労働契約の終了

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするものとしたこと。(第16条関係)

6 期間の定めのある労働契約

(1) 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないものとしたこと。(第17条第1項関係)

(2) 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならないものとしたこと。(第17条第2項関係)

7 その他

船員に関する特例並びに国家公務員、地方公務員及び同居の親族の適用除外について所要の規定を設けるものとしたこと。(第18条及び第19条関係)

8 附則

(1) 施行期日

法は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとしたこと。(附則第1条関係)

(2) 関係法律の一部改正

労働基準法の関係規定についての改正を行うほか、関係法律の規定について所要の整備を行うものとしたこと。(附則第2条から第6条まで関係)