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通達:社会復帰促進等事業としてのアフターケア実施要領の制定について

 

社会復帰促進等事業としてのアフターケア実施要領の制定について

平成19年4月23日基発第0423002号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

最終改正 令和6年3月25日付け基発0325第3号

 

労働福祉事業としてのアフターケアについては、平成元年3月20日付け基発第127号「労働福祉事業としてのアフターケア実施要領の制定について」、昭和43年3月16日付け基発第145号「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に係るアフターケアの実施要綱について」及び昭和43年6月5日付け基発第354号「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に係るアフターケアに要する費用の算定及び投薬方針について」(以下「127号通達等」という。)により実施しているところであるが、今般、別添のとおり「社会復帰促進等事業としてのアフターケア実施要領」を制定し、平成19年7月1日から実施(別紙「傷病別アフターケア実施要綱」第1から第20までに定める「4 健康管理手帳の有効期間」については、平成19年10月1日から実施)することとしたので、下記に留意の上、アフターケア実施医療機関等及び対象者に周知するとともに事務処理に遺漏なきを期されたい。

 

第1 制定の趣旨

平成17年12月12日に取りまとめられた労災医療専門家会議の「胸腹部臓器の障害に係るアフターケアについての検討報告書」においては、「既存のアフターケアの要綱についても、現在の医療技術を考慮した見直しを行うことが望まれる」との提言がなされたところである。このことを踏まえ、アフターケアの目的に沿った措置内容等について最新の医療水準に見合うものとすべく、新たに労災医療専門家会議を開催し、今後のアフターケア制度を運用していく上で基本となる考え方についての整理も含め検討を依頼した結果、平成19年3月に「アフターケアに関する検討報告書」が取りまとめられたので、この検討結果に基づき、アフターケアの措置内容等の見直しを行うものである。

 

第2 見直しの要点

1 対象傷病について

(1) 頭頸部外傷症候群等の整理

頭頸部外傷症候群等に係るアフターケア実施要綱については、頭頸部外傷症候群、頸肩腕症候群、腰痛、一酸化炭素中毒症(炭鉱災害によるものを除く。)、外傷による脳の器質的損傷及び減圧症の6傷病がまとめられているが、これを整理するため、本実施要綱から一酸化炭素中毒症(炭鉱災害によるものを除く。)、外傷による脳の器質的損傷及び減圧症を分離する。

(2) 「頸肩腕症候群」の名称変更

「頸肩腕症候群」については、平成9年2月3日付け基発第65号「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準について」により、その定義が変更されていることを踏まえ、名称を「頸肩腕障害」に変更する。

(3) 脳の器質性障害に係るアフターケアの新設

頭頸部外傷症候群等に係るアフターケア実施要綱から分離した一酸化炭素中毒症(炭鉱災害によるものを除く。)、外傷による脳の器質的損傷及び減圧症を有機溶剤中毒等に係るアフターケア及び脳血管疾患に係るアフターケアと統合し、傷病別アフターケア実施要綱の中に脳の器質性障害に係るアフターケアを新設する。

(4) 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に係るアフターケア実施要綱の統合等

ア 昭和43年3月16日付け基発第145号「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に係るアフターケアの実施要綱について」及び昭和43年6月5日付け基発第354号「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に係るアフターケアに要する費用の算定及び投薬方針について」を本実施要領に統合する。

イ 「一酸化炭素中毒症」の名称については、医学上適切な名称となるよう「一酸化炭素中毒」に改める。

2 対象者について

熱傷に係るアフターケアについて、後遺障害の程度が「女性の外ぼうに醜状を残すもの」(障害等級第12級)に該当する者を対象者としていることとの均衡から、「男性の外ぼうに醜状を残すもの」(障害等級第14級)に該当する者も対象者に追加する。

3 措置範囲について

理学療法、注射、精神療法・カウンセリング等及び保健のための薬剤の支給の事項については、アフターケア制度上、治療と区別するため、実施要領上、保健のための処置にまとめる。

4 保健指導について

呼吸機能障害に係るアフターケアの対象者に対する保健指導として、喫煙者に対する禁煙の指導を明記する。

5 保健のための処置について

(1) 睫毛抜去の処置の追加

睫毛乱生(逆さまつげ)が生じた場合には、痛みの発生や角膜上皮剥離、角膜潰瘍をつくることがあることにかんがみ、「睫毛抜去」の処置を白内障等の眼疾患に係るアフターケアに追加する。

(2) 白内障等の眼疾患に対する外用薬の支給

眼疾患に対する外用薬については、点眼剤のほか眼軟膏も必要と認められることから、白内障等の眼疾患に係るアフターケア項中の「点眼剤」を「外用薬」に改める。

(3) 末梢神経障害治療薬の追加

せき髄損傷、脳の器質性障害(四肢麻痺等が出現した者に限る。)及び外傷による末梢神経損傷に係るアフターケアに「末梢神経障害治療薬」を追加する。

(4) 排尿障害改善薬及び頻尿治療薬の追加

せき髄損傷尿路系障害及び脳の器質性障害(四肢麻痺等が出現した者に限る。)に係るアフターケアに、「排尿障害改善薬及び頻尿治療薬」を追加する。

(5) 鎮暈薬の追加

「鎮暈薬」については、感覚器官用薬に分類されるが、内耳の血流量を改善し、めまいを抑える薬であることから、頭頸部外傷症候群等及び脳の器質性障害に係るアフターケアで支給する「循環改善薬」に含める。

(6) 呼吸機能障害に対する貼付薬の追加

気道攣縮に対し日常臨床として用いられている「呼吸器用貼付薬」を呼吸機能障害に係るアフターケアに追加する。

(7) 併用薬の取扱いに係る見直し

ア 「抗潰瘍薬」については、鎮痛薬に対する併用薬として通常に支給されるものであることから、「健胃消化薬」に「抗潰瘍薬」を含むことを明記する。

イ 「抗てんかん薬」に対する「肝臓用薬」については、医学的に併用することが必要と認められる薬剤の例として明記していたが、当該薬剤が肝障害を予防する医学的根拠がなく、併用薬として支給することが適切でないため、この例を認められる併用薬から削除する。

(8) 脳の器質性障害に係るアフターケアとしての精神療法及びカウンセリングの実施

脳の器質性障害について、精神の後遺症状に対する増悪を防ぐための「精神療法及びカウンセリング」が必要であることにかんがみ、当該処置を脳の器質性障害に係るアフターケアに追加する。

(9) 精神科作業療法及び精神科デイ・ケアの削除

「精神療法・カウンセリング等」の「等」に該当するものとして取り扱っている「精神科作業療法及び精神科デイ・ケア」については、社会生活機能の回復を目的とするものであり、アフターケアとして実施することは不適当であるから、削除する。また、これに伴い「精神療法・カウンセリング等」の名称を「精神療法及びカウンセリング」と改める。

(10) 精神薬の名称の整理

各傷病のアフターケアごとに異なっている精神薬の名称については、全て「向精神薬」に統一する。また「睡眠薬」については、向精神薬に含まれるため、精神、障害に係るアフターケアの項から「睡眠薬」の項目を削除する。

(11) 特定薬剤治療管理料の対象の追加

診療報酬の算定方法(平成18年厚生労働省告示第92号)別表第1医科診療報酬点数表(以下「健保点数表」という。)において「特定薬剤治療管理料」の対象として認められている「向精神薬」を継続投与する場合であって、当該薬剤の血中濃度を測定し、その測定結果に基づき当該薬剤の投与量を精密に管理した場合には、健保点数表により「特定薬剤治療管理料」を算定できるものとする。

(12) 重症痙性麻痺治療薬髄腔内持続注入用埋込型ポンプに再充填する鎮痙薬の追加

せき髄損傷及び脳の器質性障害(四肢麻痺等が出現した者に限る。)に係るアフターケア項中の「筋弛緩薬」について、「重症痙性麻痺治療薬髄腔内持続注入用埋込型ポンプに再充填する鎮痙薬」を追加する。

6 検査について

(1) 血液一般・生化学検査の名称変更

「血液一般・生化学検査」については、健保点数表の末梢血液一般・生化学的検査と同様であるため、その名称を「末梢血液一般・生化学的検査」に変更する。

(2) コンピュータ断層撮影検査の明確化

大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折並びに脳の器質性障害に係るアフターケア項中のコンピュータ断層撮影検査については、検査内容を明確にするため、「CT、MRI等」と表記する。

(3) 腎機能検査の項目削除

せき髄損傷に係るアフターケア項中の「腎機能検査」については、「末梢血液一般・生化学的検査」に包括することから、検査項目から削除する。

(4) 尿培養検査の追加

せき髄損傷、尿路系腫瘍及び脳の器質性障害(四肢麻痺等が出現した者に限る。)については、神経因性膀胱がある場合には残尿があり、上部尿路感染を起こす危険があることから、これら傷病に係るアフターケア項中の「尿検査」に「尿培養検査」を含むことを明記する。

(5) 残尿測定検査の追加

せき髄損傷及び脳の器質性障害(四肢麻痺等が出現した者に限る。)に係るアフターケア項中の「膀胱機能検査」については、超音波を用いた「残尿測定検査」を実施することが多いことにかんがみ、「膀胱機能検査」に「残尿測定検査」を含むことを明記する。

(6) CRP検査の追加

「CRP検査」は、せき髄損傷、尿路系障害、人工関節・人工骨頭置換、慢性化膿性骨髄炎及び循環器障害(人工弁又は人工血管に置換した者に限る。)については、個別に感染を繰り返しやすいリスクを持った状態において、指標として用いることは適切であることから、これら傷病に係るアフターケアに当該検査を加える。

7 実施期間の継続について

(1) 実施期間の継続に係る健康管理手帳の有効期間の見直し

アフターケアの実施期間は、原則として当該期間におけるアフターケアの実施をもって、それ以降のアフターケアの継続を必要としない期間であることから、実施期間が治ゆ後2年又は3年と定められているアフターケアの更新に係る健康管理手帳(以下「手帳」という。)の有効期間については、1年とする。また、せき髄損傷等実施期間に限度がないアフターケアの更新に係る手帳の有効期間については、3年を5年に改める。

(2) 実施期間の継続に係る主治医の意見等の確認

実施期間の継続については、その要件を「医学的に更に継続する必要のある者」としていることにかんがみ、「主治医の意見等」によることを明確にするとともに、「アフターケア実施期間の更新に関する診断書」(様式第3号別紙)を提出させるものとする。

8 算定方法について

アフターケア委託費の請求に係る算定方法について、当該請求の審査事務の効率化を図るため、複数の通達等によって示している取扱いを整理し、本実施要領にまとめる。

9 施行期日

本通達は平成19年7月1日から施行することとし、127号通達等は平成19年6月30日をもって廃止する。

 

(別添)

社会復帰促進等事業としてのアフターケア実施要領

1 目的

業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害により、せき髄損傷等の傷病にり患した者にあっては、症状固定後においても後遺症状に動揺をきたす場合が見られること、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることにかんがみ、必要に応じてアフターケアとして予防その他の保健上の措置を講じ、当該労働者の労働能力を維持し、円滑な社会生活を営ませるものとする。

2 対象傷病

アフターケアの対象傷病は、次のものとする。

① せき髄損傷

② 頭頸部外傷症候群等(頭頸部外傷症候群、頸肩腕障害、腰痛)

③ 尿路系障害

④ 慢性肝炎

⑤ 白内障等の眼疾患

⑥ 振動障害

⑦ 大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折

⑧ 人工関節・人工骨頭置換

⑨ 慢性化膿性骨髄炎

⑩ 虚血性心疾患等

⑪ 尿路系腫瘍

⑫ 脳の器質性障害

⑬ 外傷による末梢神経損傷

⑭ 熱傷

⑮ サリン中毒

⑯ 精神障害

⑰ 循環器障害

⑱ 呼吸機能障害

⑲ 消化器障害

⑳ 炭鉱災害による一酸化炭素中毒

3 対象者

(1) 対象者

アフターケアの対象者(以下「対象者」という。)は、別紙の「傷病別アフターケア実施要綱」(以下「傷病別実施要綱」という。)に定めるところによる。

なお、傷病別実施要綱に定める労働者災害補償保険法による障害補償給付、複数事業労働者障害給付又は障害給付(以下「障害(補償)等給付」という。)を受けることが見込まれる者とは、障害(補償)等給付の請求から支給決定までにかなりの期間を要すると見込まれる場合であって、主治医等の診断書、エックス線写真等により、アフターケアの支給要件を満たす障害等級に該当することが明らかであると認められる者をいう。

(2) 制度の周知

事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄署長」という。)は、アフターケアの対象傷病(以下「対象傷病」という。)の療養者に対し、療養中及び障害(補償)等給付の支給決定等の際に、アフターケア制度の周知を行うものとする。

4 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次の事項について傷病別実施要綱に定めるところによる。

① 診察

② 保健指導

③ 保健のための処置

④ 検査

5 実施医療機関等

(1) アフターケアは、労災病院、医療リハビリテーションセンター、総合せき損センター、労働者災害補償保険法施行規則(8(3)において「労災則」という。)第11条の規定により指定された病院若しくは診療所又は薬局(以下「実施医療機関等」という。)において行うものとする。

(2) アフターケアを受けようとする者は、その都度、実施医療機関等に後記6に定める手帳(様式第1号。ただし、炭鉱災害による一酸化炭素中毒に係るアフターケアについては、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則様式第4号とする。)を提出するものとし、アフターケアの実施に関する記録の記入を受けるものとする。

6 手帳の交付等

(1) 新規交付

① 手帳の交付を受けようとする者は、「アフターケア手帳交付申請書」(様式第2号)を、所轄署長の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄局長」という。)に提出しなければならない。

② 手帳の交付の申請は、治ゆ日より起算して傷病別実施要綱に定める各対象傷病に係る手帳の新規交付の有効期間内に行わなければならない。

ただし、傷病別実施要綱において、診察の実施期間に限度が定められていない対象傷病にあっては、申請期間を経過した後であっても、後遺症状に動揺をきたす場合等によりアフターケアを希望する場合には、随時申請を行うことができる。

③ 所轄局長は、上記①の申請に基づき、対象者と認められる者に対して、手帳を交付するものとする。

(2) 有効期間

手帳の有効期間は、傷病別実施要綱に定めるところによる。

(3) 更新

① 手帳の有効期間が満了した後にも、継続してアフターケアを受けることを希望する者は、手帳の有効期間が満了する日の1か月前までに「アフターケア手帳更新・再交付申請書」(様式第3号)により、所轄局長あてに手帳の更新を申請するものとする。

ただし、傷病別実施要綱の「第2頭頸部外傷症候群等に係るアフターケア」に掲げる傷病については、継続することはできないものとする。

② 傷病別実施要綱において、診察の実施期間に限度が定められている傷病については、上記①の申請書に「アフターケア実施期間の更新に関する診断書」(様式第3号別紙)を添付するものとする。

③ 所轄局長は、上記①の申請については、主治医の意見等に基づき、なお医学的にアフターケアを継続して行う必要があると認められる場合には、手帳の更新を行うものとする。

なお、傷病別実施要綱において、診察の実施期間に限度が定められていない傷病については、手帳の更新の必要性を判断するに当たり、主治医の意見等を必要としないこと。

(4) 再交付

① 手帳を紛失若しくは汚損し又は手帳のアフターケア記録欄に余白がなくなったときは、「アフターケア手帳更新・再交付申請書」(様式第3号)により、所轄局長あてに手帳の再交付を申請するものとする。

② 所轄局長は、上記①の申請については、申請の理由を確認し、手帳を再交付するものとする。

なお、再交付された手帳の有効期間は、紛失若しくは汚損し又は余白がなくなった手帳の有効期間が満了する日までとする。

(5) 交付方法

① 所轄局長は、上記(1)新規交付又は(3)更新に係る申請を受理したときは、その内容を検討の上、新規交付、更新又は不交付の決定(以下、「交付決定等」という。)を行い、「アフターケア手帳の(新規)交付・更新申請に係る交付・不交付決定通知書」(様式第4号)により申請者に通知するとともに、新規交付、更新決定をしたものに対して手帳を交付する。

また、交付決定等については、処分性が認められるため、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)、行政不服審査法(平成26年法律第68号)、行政手続法(平成5年法律第88号)の適用がある。

したがって、所轄局長は、次のとおり事務を行うこととする。

ア 手帳の交付決定等は、行政不服審査法第1条に規定する処分であるものとして、審査請求の対象として取り扱うこと。

イ 手帳の交付決定等に関する審査は、当該決定をした所轄局長の上級庁である厚生労働大臣が行うこと。
なお、再審査請求は行うことができないものであること。

ウ 交付決定等を行う際は、その相手方に対し、「アフターケア手帳の(新規)交付・更新申請に係る交付・不交付決定通知書」(様式第4号)をもって、行政不服審査法に基づく審査請求及び行政事件訴訟法に基づく取消訴訟の提起ができる旨の教示を行うこと。その際は、不服申立て手続の有無に関係なく、訴訟の提起が可能であることに留意すること。

エ 手帳の交付の申請に対し、不交付の決定を行う場合には、「アフターケア手帳の(新規)交付・更新申請に係る交付・不交付決定通知書」(様式第4号)に当該決定の理由を付記するか、又は、理由を明記した別紙を添付して通知すること。

② 再交付の場合は、「アフターケア手帳の再交付について」(様式第4号の2)を添えて手帳を送付すること。

③ 手帳の交付を郵送で行う場合は、配達証明で発送し、到達を確認した資料を保存すること。

(6) 有効期間満了時等の取扱い

手帳の交付を受けた者は、手帳の有効期間が満了した場合、汚損等により再交付を受けた場合又は傷病の再発等により手帳が不要となった場合でも、交付を受けた手帳の返納は要しないものとする。ただし、所轄局長から返還を求められた場合を除く。

7 アフターケア委託費の請求

(1) 実施医療機関等は、アフターケアに要した費用(以下「アフターケア委託費」という。)を請求するときは、後記8により算定した毎月分の費用の額を「アフターケア委託費請求書」(様式第5号)又は「アフターケア委託費請求書(薬局用)」(様式第6号)(以下「請求書」という。)に記載の上、当該実施医療機関等の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出するものとする。

(2) 上記(1)の請求をする際には、「アフターケア委託費請求内訳書」(様式第5号の2、様式第5号の3)又は「アフターケア委託費請求内訳書(薬局用)」(様式第6号の2)(以下「レセプト」という。)を1回の診察等又は1回の処方に係る調剤ごとに1枚作成し、請求書に添付するものとする。

8 費用の算定方法

アフターケアに要する費用の額の算定方法は、労災診療費算定基準(昭和51年1月13日付け基発第72号)に準拠することとするが、次の項目に留意すること。

なお、労災診療費算定基準及び診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第1医科診療報酬点数表(以下「健保点数表」という。)及び別表第3調剤報酬点数表(以下「調剤点数表」という。)が改定されたときは、改定後の額とすること。

(1) 診察

① 労災診療費算定基準に定める「初診料」又は「再診料」の額若しくは健保点数表に定める「外来診療料」の点数に労災診療費算定基準に定める単価(以下「労災診療単価」という。)を乗じて得た額とする。

② 治ゆ後、療養を行っていた医療機関において引き続きアフターケアを受ける場合、アフターケアにおける最初の診察については、労災診療費算定基準に定める「再診料」又は健保点数表に定める「外来診療料」を算定する。

③ 労災診療費算定基準に定める「初診時ブラッシング料」及び「再診時療養指導管理料」並びに健保点数表に定める「外来管理加算」は、アフターケアにおいては認められないものである。

(2) 保健指導

① 健保点数表に定める「特定疾患療養管理料」の点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

② 月2回の算定を限度とする。

③ 許可病床数が200床以上の病院においては、算定できないものである。

④ 同一医療機関において、2以上の診療科にわたりアフターケアを受けている場合には、主な対象傷病に係るアフターケアに対してのみ算定する。

(3) 保健のための処置

① 処置(保健のための薬剤の支給を含む。)については、次に定めるところによるほか、健保点数表に定める点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

(ア) 労災則第11条の規定により指定された薬局における薬剤の支給については、調剤点数表により算定した額とする。

(イ) 傷病別実施要綱における「精神療法及びカウンセリング」については、健保点数表に定める「通院精神療法」又は「通院集団精神療法」の点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

なお、当該処置を実施した場合は、保健指導の費用は重ねて算定できない。

(ウ) 傷病別実施要綱における「重症痙性麻痺治療薬髄腔内持続注入用埋込型ポンプに再充填する鎮痙薬」の支給については、当該薬剤の費用と併せて健保点数表に定める「重症痙性麻痺治療薬髄腔内持続注入用埋込型ポンプ薬剤再充填」の点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

② 処置(保健のための薬剤の支給を除く。)に伴い、保健のために必要な材料(以下「処置材料」という。)を支給した場合には、医療機関の購入単価を10円で除して得た点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

③ 処置材料は、担当医から直接処方され、授与されたものに限られるものである。よって、たとえ担当医の指示によるものであっても、薬局等から市販のガーゼ、カテーテルなどを対象者が自ら購入するものは、支給の対象とならないものである。

④ 自宅等で使用するためのカテーテルなどの支給に係る費用については、カテーテルなどの材料に係る費用のみを算定できるものであり、健保点数表に定める「在宅自己導尿指導管理料」は算定できないものである。

⑤ 医療機関は、処置材料を算定する場合には、レセプトの処置料の欄に記載するものとする。

なお、自宅等で交換のために使用する滅菌ガーゼの費用の算定に際しては、褥瘡の詳細、ガーゼの枚数及びサイズ等をレセプトの裏面に記載するものとする。

⑥ 傷病別実施要綱に定める薬剤の支給について、鎮痛薬に対する健胃消化薬(抗潰瘍薬を含む。)等医学的に併用することが必要と認められる薬剤を支給する場合には、その費用の算定ができるものである。

⑦ 抗てんかん薬、不整脈用剤(抗不整脈薬)及び健保点数表において特定薬剤治療管理料の対象として認められている向精神薬を継続投与する場合であって、当該薬剤の血中濃度を測定し、その測定結果に基づき当該薬剤の投与量を精密に管理した場合には、健保点数表に定める「特定薬剤治療管理料」の点数に労災診療単価を乗じて得た額により、その費用の算定ができるものである。

なお、同一の者について1月以内に当該薬剤の血中濃度の測定及び投与量の管理を2回以上行った場合においては、「特定薬剤治療管理料」は1回とし、第1回の測定及び投与量の管理を行ったときに算定する。

⑧ 医療機関は、傷病別実施要綱において「医学的に特に必要と認められる場合に限り実施」するものと定められた処置(保健のための薬剤の支給を含む。)を実施した場合には、レセプトの摘要欄に「特に必要と認められる」理由を具体的に記載するものとする。

(4) 検査

① 検査については、次に定めるところによるほか、健保点数表に定める点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

(ア) 振動障害に係るアフターケアにおける「末梢循環機能検査」、「末梢神経機能検査(神経伝導速度検査を除く。)」及び「末梢運動機能検査」については、昭和56年9月2日付け補償課長事務連絡第40号「労災診療(振動障害)における検査料等の取扱いについて」に定める点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

(イ) 虚血性心疾患等に係るアフターケアにおける「ペースメーカ等の定期チェック」については、健保点数表に定める「心臓ペースメーカー指導管理料」の点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

なお、当該定期チェックを実施した場合は、保健指導の費用を重ねて算定することはできないものである。

(ウ) 炭鉱災害による一酸化炭素中毒に係るアフターケアにおける「検査(健康診断)」については、次に掲げる点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

なお、尿中の蛋白、糖及びウロビリノーゲンの検査並びに赤血球沈降速度及び白血球数の検査については、費用の算定はできないものである。

① 全身状態の検査

② 自覚症状の検査

③ 精神及び神経症状の一般的検査

335点

上記以外の検査

健保点数表による所定の点数

② 検査を行うに当たって使用される薬剤については、健保点数表に定める点数に労災診療単価を乗じて得た額とする。

③ 医療機関は、傷病別実施要綱において「医学的に特に必要と認められる場合に限り実施」するものと定められた検査を実施した場合には、レセプトの摘要欄に「特に必要と認められる」理由を具体的に記載するものとする。

9 本省協議

複数業務要因災害と認定した者から、傷病別実施要綱に定めのない傷病に係る手帳の交付申請があった場合は、関係資料を添えて当局補償課に協議すること。

10 施行期日

(1) 平成19年4月23日付け基発第0423002号により制定された本実施要領は、平成19年7月1日から施行するものとする(同日以降に実施されるアフターケアから適用する。)。ただし、傷病別実施要綱第1から第20までに定める「4健康管理手帳の有効期間」(注:「4手帳の有効期間」)については、平成19年10月1日から施行するものとし(同日以降に「健康管理手帳更新・再交付申請書」(注:「アフターケア手帳更新・再交付申請書」)を受け付けたものから適用する。)、それまでの間における健康管理手帳(注:アフターケア手帳)の有効期間の取扱いについては、従前の平成元年3月20日付け基発第127号「労働福祉事業としてのアフターケア実施要領の制定について」及び昭和43年3月16日付け基発第145号「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に係るアフターケアの実施要綱について」の例によるものとする。

(2) 令和6年3月25日付け基発0325第3号による改正後の本実施要領は、令和6年4月1日から施行するものとする。ただし、「外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」及び「熱傷に係るアフターケア」の手帳の新規交付については、令和6年4月1日以降に決定する事案から適用するものとする。

 

別紙

傷病別アフターケア実施要綱

第1 せき髄損傷に係るアフターケア

1 趣旨

せき髄損傷者にあっては、症状固定後においても尿路障害、褥瘡等の予防その他の医学的措置等を必要とすることがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

(1) アフターケアは、業務災害又は通勤災害によるせき髄損傷者であって、労働者災害補償保険法による障害等級(以下「障害等級」という。)第3級以上の障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

(2) 事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長は、医学的に特に必要があると認めるときは、業務災害又は通勤災害によるせき髄損傷者であって、障害等級第4級以下の障害補償給付又は障害給付を受けている者についてもアフターケアを行うことができるものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げるそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア 褥瘡処置

(ア) 褥瘡が生じている者に対し、その症状に応じて行うものとする。ただし、療養補償給付又は療養給付の対象となる褥瘡については、アフターケアの対象とならない。したがって、症状が若干の通院又は投薬で回復する程度の褥瘡を対象とするものとする。

(イ) 医師が必要と認めた場合には、自宅等で交換のために使用する滅菌ガーゼ及び絆創膏を支給できるものとする。

イ 尿路処置(導尿、膀胱洗浄、留置カテーテル設置・交換を含む。)

医師が必要と認めた場合には、自宅等で使用するためのカテーテル、カテーテル用消毒液(洗浄剤及び潤滑剤を含む。)及び滅菌ガーゼを支給できるものとする。

ウ 薬剤の支給

① 抗菌薬(抗生物質、外用薬を含む。)

尿路感染者、尿路感染のおそれのある者及び褥瘡のある者を対象とする。

② 褥瘡処置用・尿路処置用外用薬

③ 排尿障害改善薬及び頻尿治療薬

④ 筋弛緩薬(鎮痙薬を含む。)

重症痙性麻痺治療薬髄腔内持続注入用埋込型ポンプに再充填する鎮痙薬を含むものとする。

⑤ 自律神経薬

⑥ 末梢神経障害治療薬

⑦ 向精神薬

⑧ 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

⑨ 整腸薬、下剤及び浣腸薬

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 尿検査(尿培養検査を含む。)

診察の都度、必要に応じて実施

② CRP検査

1年に2回程度

③ 末梢血液一般・生化学的検査

④ 膀胱機能検査(残尿測定検査を含む。)

残尿測定検査は、超音波によるものを含む。

⑤ 腎臓、膀胱及び尿道のエックス線検査

1年に1回程度

⑥ 損傷せき椎及び麻痺域関節のエックス線、CT、MRI検査

医学的に特に必要と認められる場合に限り、1年に1回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年間とする。

第2 頭頸部外傷症候群等に係るアフターケア

1 趣旨

頭頸部外傷症候群等の傷病者であって、症状固定後においても神経に障害を残す者にあっては、季節、天候、社会環境等の変化に伴って症状に動揺をおこすことがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

(1) アフターケアは、業務災害又は通勤災害により次の①~③に掲げる傷病にり患した者であって、障害等級第9級以上の障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

なお、頸肩腕障害とは、上肢等に過度の負担のかかる業務によって、後頭部、頸部、肩甲帯、上肢、前腕、手及び指に発生した運動器の障害をいうものである。

① 頭頸部外傷症候群

② 頸肩腕障害

③ 腰痛

(2) 事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長は、医学的に特に必要があると認めるときは、業務災害又は通勤災害により上記(1)に掲げる傷病にり患した者であって、障害等級第10級以下の障害補償給付又は障害給付を受けている者についてもアフターケアを行うことができるものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

症状固定後2年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次の薬剤を支給することができるものとする。

① 神経系機能賦活薬

② 向精神薬

頭頸部外傷症候群に限るものとする。

③ 筋弛緩薬

④ 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

⑤ 循環改善薬(鎮暈薬、血管拡張薬及び昇圧薬を含む。)

血液の循環の改善を必要とするものに対して必要に応じて支給する。

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をその範囲内で行うことができるものとする。

エックス線検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をその範囲内で行うことができるものとする。

各傷病について必要と認められる部位について、1年に1回程度

4 手帳の有効期間

交付日から起算して2年間とする。

なお、更新による再交付はできない。

第3 尿路系障害に係るアフターケア

1 趣旨

尿道断裂や骨盤骨折等により、尿道狭さくの障害を残す者及び尿路変向術を受けた者にあっては、症状固定後においても尿流が妨げられることにより腎機能障害や尿路感染症を発症するおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害により、尿道狭さくの障害を残す者又は尿路変向術を受けた者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、1~3か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げるそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア 尿道ブジー(誘導ブジーを含む。)

(ア) シャリエ式尿道ブジー第20番が辛うじて通り、時々拡張術を行う必要があるものの回数は、1~4か月に1回程度とする。

(イ) シャリエ式尿道ブジー第16番程度又は第19番程度により拡張術を要するものの回数は、目標番数(通常は20番)に達するまでの3~6か月は週1回程度とし、目標番数に達した後は、1~4か月に1回(尿道の状態の確認のための尿道ブジー)とする。

(ウ) シャリエ式尿道ブジー第15番程度以下のブジーにより拡張術を要するものの回数は、上記(イ)と同様とする。

(エ) 糸状ブジーが辛うじて通るものは、再発として取り扱われるものである。

イ 尿路処置(導尿、膀胱洗浄、留置カテーテル設置・交換を含む。)

医師が必要と認めた場合には、自宅等で使用するためのカテーテル、カテーテル用消毒液(洗浄剤及び潤滑剤を含む。)及び滅菌ガーゼを支給できるものとする。

ウ 薬剤の支給

①~⑤の薬剤については、尿道ブジー及び尿路処置の実施の都度、必要に応じて1週間分程度支給できるものとする。

① 止血薬

② 抗菌薬(抗生物質を含む。)

③ 自律神経薬

④ 鎮痛・消炎薬

⑤ 尿路処置用外用薬

⑥ 排尿障害改善薬及び頻尿治療薬

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 尿検査(尿培養検査を含む。)

1~3か月に1回程度

② 末梢血液一般・生化学的検査

③ CRP検査

1年に2回程度

④ エックス線検査

⑤ 腹部超音波検査

1年に1回程度

⑥ CT検査

代用膀胱を造設した者に対し、1年に1回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第4 慢性肝炎に係るアフターケア

1 趣旨

慢性肝炎にり患した者で、症状固定後においてもウイルスの持続感染が認められる者にあっては、肝炎の再燃又は肝病変の進行をきたすおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害によりウイルス肝炎にり患した者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、B型肝炎ウイルス感染者のうちHBe抗原陽性者及びC型肝炎ウイルス感染者については1か月に1回程度、B型肝炎ウイルス感染者のうちHBe抗原陰性者については6か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に必要のある者については、さらに継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般検査

6か月に1回程度

② 生化学的検査

(ア) HBe抗原陽性者及びC型肝炎ウイルス感染者は、1か月に1回程度

(イ) HBe抗原陰性者は、6か月に1回程度

③ 腹部超音波検査

6か月に1回程度

④ B型肝炎ウイルス感染マーカー

⑤ HCV抗体

⑥ HCV―RNA同定(定性)検査

⑦ AFP(α―フェトプロテイン)

⑧ PIVKA―Ⅱ

⑨ プロトロンビン時間検査

⑩ CT検査

医学的に特に必要と認められる場合に限る。

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第5 白内障等の眼疾患に係るアフターケア

1 趣旨

白内障等の眼疾患にり患した者にあっては、症状固定後においても視機能に動揺をきたすおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

(1) アフターケアは、業務災害又は通勤災害による白内障、緑内障、網膜剥離、角膜疾患、眼瞼内反等の眼疾患の傷病者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

(2) 事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長は、医学的に特に必要があると認めるときは、業務災害又は通勤災害による眼疾患の傷病者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付又は障害給付を受けていない者(症状固定した者に限る。)についてもアフターケアを行うことができるものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後2年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げるそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア 睫毛抜去

眼瞼内反による睫毛乱生のために必要な者に対して行うものとする。

イ 薬剤の支給

① 外用薬

② 眼圧降下薬

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 矯正視力検査

② 屈折検査

③ 細隙燈顕微鏡検査

④ 前房隅角検査

⑤ 精密眼圧測定

⑥ 精密眼底検査

⑦ 量的視野検査

診察の都度、必要に応じて実施

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して2年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第6 振動障害に係るアフターケア

1 趣旨

振動障害にり患した者にあっては、症状固定後においても季節の変化等に伴い、後遺症状に動揺をきたす場合が見られることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害による振動障害の傷病者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後2年を限度として、1か月に2回ないし4回程度(寒冷期においては、医師の意見を踏まえその必要とする回数)必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。特に身体局所に対する振動刺激を避けるよう努めさせるとともに、防寒・保温、適度の運動の実施、喫煙の禁止等日常生活上の配慮について指導するものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げるそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア 理学療法

診察の結果、医師の意見を踏まえ、必要と認められる場合には理学療法を行うことができるものとする。

イ 注射

診察の結果、医師が特に必要と認めた場合には、一時的な消炎・鎮痛のための注射を行うことができるものとする。

ウ 薬剤の支給

① ニコチン酸薬

② 循環ホルモン薬

③ ビタミンB1、B2、B6、B12、E剤

④ Ca拮抗薬

⑤ 交感神経α―受容体抑制薬

⑥ 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

③ 末梢循環機能検査

 (i) 常温下皮膚温・爪圧迫検査

 (ii) 冷水負荷皮膚温・爪圧迫検査

④ 末梢神経機能検査

 (i) 常温下痛覚・振動覚検査

 (ii) 冷水負荷痛覚・振動覚検査

 (iii) 神経伝導速度検査(ただし、遅発性尺骨神経麻痺の場合にのみ行う。)

⑤ 末梢運動機能検査

握力の検査

1年に1回程度

⑥ 手関節及び肘関節のエックス線検査

放射線による身体的影響を考慮して必要と認められる者に限り、2年に1回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して2年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第7 大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折に係るアフターケア

1 趣旨

大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折の傷病者にあっては、症状固定後においても大腿骨骨頭壊死の発症をきたすおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

(1) アフターケアは、業務災害又は通勤災害による大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折の傷病者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

(2) 事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長は、医学的に特に必要があると認めるときは、業務災害又は通勤災害による大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折の傷病者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付又は障害給付を受けていない者(症状固定した者に限る。)についてもアフターケアを行うことができるものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、3~6か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)を支給することができるものとする。

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② エックス線検査

3~6か月に1回程度

③ シンチグラム、CT、MRI等検査

医学的に特に必要と認められる場合に限る。

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第8 人工関節・人工骨頭置換に係るアフターケア

1 趣旨

人工関節及び人工骨頭を置換した者にあっては、症状固定後においても人工関節及び人工骨頭の耐久性やルースニング(機械的又は感染)により症状発現するおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害により、人工関節及び人工骨頭を置換した者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められるものに対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、3~6か月に1回程度必要に応じて行うものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)を支給することができるものとする。

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② エックス線検査

3~6か月に1回程度

③ CRP検査

1年に2回程度

④ シンチグラム検査

医学的に特に必要と認められる場合に限る。

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年間とする。

第9 慢性化膿性骨髄炎に係るアフターケア

1 趣旨

骨折等により化膿性骨髄炎を併発し、引き続き慢性化膿性骨髄炎に移行した者にあっては、症状固定後においても骨髄炎が再燃するおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害による骨折等により化膿性骨髄炎を併発し、引き続き慢性化膿性骨髄炎に移行した者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、1~3か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次の薬剤を支給することができるものとする。

① 抗菌薬(抗生物質、外用薬を含む。)

② 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

1~3か月に1回程度

② 細菌検査

診察の都度、必要に応じて実施

③ CRP検査

1年に2回程度

④ エックス線検査

3~6か月に1回程度

⑤ シンチグラム、CT、MRI等検査

医学的に特に必要と認められる場合に限る。

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第10 虚血性心疾患等に係るアフターケア

1 趣旨

虚血性心疾患にり患した者及びペースメーカ又は除細動器(以下「ペースメーカ等」という。)を植え込んだ者にあっては、症状固定後においても、狭心症、不整脈あるいは心機能障害が残存することが多く、また、植え込んだペースメーカ等については、身体条件の変化や機器の不具合等により不適正な機器の作動が生じるおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

(1) 虚血性心疾患にり患した者

ア アフターケアは、業務災害又は複数業務要因災害により虚血性心疾患にり患した者であって、障害等級第9級以上の障害補償給付若しくは複数事業労働者障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

イ 事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長は、医学的に特に必要があると認めるときは、障害等級第10級以下の障害補償給付又は複数事業労働者障害給付を受けている者についてもアフターケアを行うことができるものとする。

(2) ペースメーカ等を植え込んだ者

アフターケアは、業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害によりペースメーカ等を植え込んだ者であって、障害(補償)等給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

ア 虚血性心疾患にり患した者

原則として、症状固定後3年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

イ ペースメーカ等を植え込んだ者

原則として、1~3か月に1回程度必要に応じて行うものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げる範囲内で行うことができるものとする。

ア ペースメーカ等の定期チェック

ペースメーカ等のパルス幅、スパイク間隔、マグネットレート、刺激閾値、感度等の機能指標の計測とともに、アフターケア上必要な指導を行うため、6か月~1年に1回程度実施するものとする。

イ 薬剤の支給

① 抗狭心症薬

② 抗不整脈薬

③ 心機能改善薬

④ 循環改善薬(利尿薬を含む。)

⑤ 向精神薬

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア 虚血性心疾患にり患した者

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

③ 心電図検査(安静時及び負荷検査)

④ 胸部エックス線検査

1か月に1回程度

⑤ ホルター心電図検査

⑥ 心臓超音波検査

⑦ 心臓核医学検査

医学的に特に必要と認められる場合に限る。

イ ペースメーカ等を植え込んだ者

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

③ 心電図検査(安静時及び負荷検査)

1~6か月に1回程度

④ 胸部エックス線検査

6か月に1回程度

⑤ ホルター心電図検査

1年に1回程度

⑥ 心臓超音波検査

⑦ 心臓核医学検査

医学的に特に必要と認められる場合に限る。

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

ア 虚血性心疾患にり患した者

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

イ ペースメーカ等を植え込んだ者

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年間とする。

第11 尿路系腫瘍に係るアフターケア

1 趣旨

尿路系腫瘍にり患した者にあっては、症状固定後においても再発する可能性が非常に高いため定期的な検査が必要となることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務に起因する尿路系腫瘍にり患し、労働者災害補償保険法による療養補償給付を受けている者であって、この尿路系腫瘍が症状固定したと認められる者のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次の薬剤を支給することができるものとする。

① 再発予防のための抗がん薬

医学的に特に必要と認められる場合に限る(投与期間は症状固定後1年以内とする。)。

② 抗菌薬(抗生物質を含む。)

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 尿検査(尿培養検査を含む。)

② 尿細胞診検査

1か月に1回程度

③ 内視鏡検査

④ 超音波検査

⑤ 腎盂造影検査

⑥ CT検査

3~6か月に1回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第12 脳の器質性障害に係るアフターケア

1 趣旨

脳に器質的損傷が出現した者であって、症状固定後においても精神又は神経に障害を残す者にあっては、季節、天候、社会環境等の変化に伴って症状に動揺をおこすことがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

(1) アフターケアは、業務災害又は通勤災害により次の①~⑤に掲げる傷病に由来する脳の器質性障害が残存した者であって、障害等級第9級以上の障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

ただし、次の④に掲げる傷病については、障害等級第9級以上の複数事業労働者障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者を含むものとする。

① 外傷による脳の器質的損傷

② 一酸化炭素中毒(炭鉱災害によるものを除く。)

③ 減圧症

④ 脳血管疾患

⑤ 有機溶剤中毒等(一酸化炭素中毒(炭鉱災害によるものを含む。)を除く。)

(2) 事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長は、医学的に特に必要があると認めるときは、業務災害又は通勤災害により上記(1)に掲げる傷病に由来する脳の器質性障害が残存した者であって、障害等級第10級以下の障害補償給付又は障害給付を受けている者についてもアフターケアを行うことができるものとする。

ただし、上記(1)の④に掲げる傷病については、障害等級第10級以下の複数事業労働者障害給付を受けている者についてもアフターケアを行うことができるものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

ア 外傷による脳の器質的損傷、一酸化炭素中毒(炭鉱災害によるものを除く。)及び減圧症

原則として、症状固定後2年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

イ 脳血管疾患及び有機溶剤中毒等(一酸化炭素中毒(炭鉱災害によるものを含む。)を除く。)

原則として、症状固定後3年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて必要に次に掲げるそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア 精神療法及びカウンセリング

アフターケアとして実施する精神療法及びカウンセリングは、治療ではなく、後遺症状の増悪を防止するための保健上の措置であることから、その処置内容については、生活指導に重点を置いたものとする。

イ 四肢麻痺等が出現した者については、褥瘡処置及び尿路処置が必要となることから、次の処置及び処置に伴う必要な材料の支給を行うことができるものとする。

① 褥瘡処置

褥瘡が生じている者に対し、その症状に応じて行うものとする。ただし、療養補償給付、複数事業労働者療養給付又は療養給付の対象となる褥瘡については、アフターケアの対象とならない。したがって、症状が若干の通院又は投薬で回復する程度の褥瘡を対象とするものとする。

また、医師が必要と認めた場合には、自宅等で交換のために使用する滅菌ガーゼ及び絆創膏を支給できるものとする。

② 尿路処置(導尿、膀胱洗浄、留置カテーテル設置・交換を含む。)

医師が必要と認めた場合には、自宅等で使用するためのカテーテル、カテーテル用消毒液(洗浄剤及び潤滑剤を含む。)及び滅菌ガーゼを支給できるものとする。

ウ 薬剤の支給

① 神経系機能賦活薬

② 向精神薬

③ 筋弛緩薬

④ 自律神経薬

⑤ 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

⑥ 抗パーキンソン薬

⑦ 抗てんかん薬

外傷性てんかんのある者及び外傷性てんかん発症のおそれのある者に対して支給する。

⑧ 循環改善薬(鎮暈薬、血管拡張薬及び昇圧薬を含む。)

血液の循環の改善を必要とするものに対して必要に応じて支給する。

上記のほか、四肢麻痺等が出現した者については、褥瘡処置及び尿路処置が必要となることから、次の薬剤を支給することができるものとする。

① 抗菌薬(抗生物質、外用薬を含む。)

尿路感染者、尿路感染のおそれのある者及び褥瘡のある者を対象とする。

② 褥瘡処置用・尿路処置用外用薬

③ 排尿障害改善薬及び頻尿治療薬

④ 筋弛緩薬(鎮痙薬を含む。)

重症痙性麻痺治療薬髄腔内持続注入用埋込型ポンプに再充填する鎮痙薬を含む。

⑤ 末梢神経障害治療薬

⑥ 整腸薬、下剤及び浣腸薬

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

③ 脳波検査

④ 心理検査

1年に1回程度

⑤ 視機能検査(眼底検査等も含む。)

1年に1回程度(眼に関する病訴は、対象傷病による調節障害もあるが、業務上の事由又は通勤による疾病以外の疾病等によるものも少なくないため、これとの鑑別上必要な場合に実施する。)

⑥ 前庭平衡機能検査

1年に1回程度(めまい感又は身体平衡障害の病訴のある者に対して必要な場合に実施する。)

⑦ 頭部のエックス線検査

1年に1回程度

⑧ 頭部のCT、MRI等検査

医学的に特に必要と認められる場合に限り、1年に1回程度

上記のほか、四肢麻痺等が出現した者については、褥瘡処置及び尿路処置が必要となることから、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 尿検査(尿培養検査を含む。)

診察の都度、必要に応じて実施

② CRP検査

1年に2回程度

③ 膀胱機能検査(残尿測定検査を含む。)

残尿測定検査は、超音波によるものを含む。

④ 腎臓、膀胱及び尿道のエックス線検査

1年に1回程度

⑤ 麻痺域関節のエックス線、CT、MRI等検査

医学的に特に必要と認められる場合に限り、1年に1回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

ア 外傷による脳の器質的損傷、一酸化炭素中毒(炭鉱災害によるものを除く。)及び減圧症

交付日から起算して2年間とする。

イ 脳血管疾患及び有機溶剤中毒等(一酸化炭素中毒(炭鉱災害によるものを含む。)を除く。)

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第13 外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア

1 趣旨

外傷により末梢神経を損傷した者にあっては、症状固定後においても末梢神経の損傷に起因する激しい疼痛等の緩和を必要とすることがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害による外傷により末梢神経損傷に起因し、症状固定後も複合性局所疼痛症候群(CRPS。反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)又はカウザルギー)若しくは末梢神経障害性疼痛等の激しい疼痛が残存する者であって、障害等級第12級以上の障害補償給付又は障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

ただし、末梢神経障害性疼痛等の激しい疼痛が残存する者については、傷病名に加え、末梢神経に損傷があることを医学的に判断できる場合、例えば、診断根拠として、手術所見、電気生理学的検査や画像所見等の他覚的所見により末梢神経損傷が確認できる場合や、疼痛の原因となった傷病や療養の内容等から末梢神経が損傷されたことを医学的に判断できる場合にアフターケアを行うことができるものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、1か月に1~2回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要がある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げる範囲内で行うことができるものとする。

ア 注射

診察の結果、特に疼痛が激しく神経ブロックもやむを得ないと医師が判断した場合に限り、1か月に2回を限度として神経ブロックを行うことができるものとする。

イ 薬剤の支給

① 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

② 末梢神経障害治療薬

③ 神経障害性疼痛治療薬

④ 向精神薬

ただし、疼痛の治療や処置に効果が認められている薬剤(抗うつ薬、抗けいれん薬)に限る。

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

1か月に1回程度

③ エックス線検査

④ 骨シンチグラフィー検査

医学的に特に必要と認められる場合に限り、1年に2回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第14 熱傷に係るアフターケア

1 趣旨

熱傷の傷病者にあっては、症状固定後においても傷痕による皮膚のそう痒、湿疹、皮膚炎等の後遺症状を残すことがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害による熱傷の傷病者であって、醜状障害として障害等級第14級以上の障害補償給付又は障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要がある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げる薬剤を支給することができるものとする。

① 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む)

② 血行促進剤(外用薬を含む)

③ 抗菌薬(外用薬を含む)

④ 皮膚保湿剤

⑤ 皮膚保護剤

⑥ 抗アレルギー薬

⑦ 末梢神経障害治療薬

⑧ 神経障害性疼痛治療薬

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

1年に1回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第15 サリン中毒に係るアフターケア

1 趣旨

特に異常な状況下において、強力な殺傷作用を有するサリンに中毒した者にあっては、症状固定後においても、縮瞳、視覚障害、末梢神経障害、筋障害、中枢神経障害、心的外傷後ストレス障害等の後遺症状について増悪の予防その他の医学的措置を必要とすることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害によりサリンに中毒した者を対象とし、労働者災害補償保険法による療養補償給付又は療養給付を受けていた者であって、サリン中毒が治った者のうち、次の①~④に掲げる後遺症状によって、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

① 縮瞳、視覚障害等の眼に関連する障害

② 筋萎縮、筋力低下、感覚障害等の末梢神経障害及び筋障害

③ 記憶力の低下、脳波の異常等の中枢神経障害

④ 心的外傷後ストレス障害

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うことができるが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げるそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア 精神療法及びカウンセリングの実施

(ア) 後遺症状として心的外傷後ストレス障害があると認められる者について、専門の医師による精神療法及びカウンセリングを行うことができるものとする。

(イ) アフターケアとして実施する精神療法及びカウンセリングは、治療ではなく、後遺症状の増悪を防止するための保健上の措置であることから、その処置内容については、生活指導に重点を置いたものとすること。

イ 薬剤の支給

① 点眼薬

② 神経系機能賦活薬

③ 向精神薬

④ 自律神経薬

⑤ 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

③ 視機能検査(眼底検査も含む。)

④ 末梢神経機能検査(神経伝達速度検査)

⑤ 心電図検査

⑥ 筋電図検査

⑦ 脳波検査

⑧ 心理検査

1年に2回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第16 精神障害に係るアフターケア

1 趣旨

業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害により精神障害を発病した者にあっては、症状固定後においてもその後遺症状について増悪の予防その他の医学的措置を必要とすることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害により精神障害を発病した者を対象とし、労働者災害補償保険法による療養補償給付、複数事業労働者療養給付又は療養給付を受けていた者であって、精神障害が症状固定した者のうち、次の①~④に掲げる後遺症状によって、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

① 気分の障害(抑うつ、不安等)

② 意欲の障害(低下等)

③ 慢性化した幻覚性の障害又は慢性化した妄想性の障害

④ 記憶の障害又は知的能力の障害

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度とし、1か月に1回程度必要に応じて行うことができるが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げるそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア 精神療法及びカウンセリングの実施

(ア) 後遺症状として気分の障害又は慢性化した幻覚性の障害若しくは慢性化した妄想性の障害があると認められる者については、診察の都度、必要に応じて専門の医師による精神療法及びカウンセリングを行うことができる。

(イ) アフターケアとして実施する精神療法及びカウンセリングは、治療ではなく、後遺症状の増悪を防止するための保健上の措置であることから、その処置内容については、生活指導に重点を置いたものとする。

イ 薬剤の支給

① 向精神薬

② 神経系機能賦活薬

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 心理検査

② 脳波検査、CT、MRI検査

1年に2回程度

③ 末梢血液一般・生化学的検査

向精神薬を使用している場合に、1年に2回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第17 循環器障害に係るアフターケア

1 趣旨

心臓弁を損傷した者、心膜の病変を残す者及び人工弁又は人工血管に置換した者にあっては、症状固定後においても心機能の低下を残したり、血栓の形成により循環不全や脳梗塞等をきたすおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、次の者に対して行うものとする。

(1) 業務災害又は通勤災害により、心臓弁を損傷した者、心膜の病変の障害を残す者又は人工弁に置換した者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者

(2) 業務災害又は通勤災害により人工血管に置換した者であって、症状固定した者のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

ア 心臓弁を損傷した者及び心膜の病変を残す者

原則として、症状固定後3年を限度として、1~3か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

イ 人工弁又は人工血管に置換した者

原則として、1~3か月に1回程度必要に応じて行うものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次の薬剤を支給することができるものとする。

① 抗不整脈薬

② 心機能改善薬

③ 循環改善薬(利尿薬を含む。)

④ 向精神薬

心臓弁を損傷した者及び人工弁に置換した者に対し支給する。

⑤ 血液凝固阻止薬

人工弁又は人工血管に置換した者に対し支給する。

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

1~6か月に1回程度

③ 心電図検査(安静時及び負荷検査)

④ エックス線検査

3~6か月に1回程度

⑤ 心音図検査

人工弁に置換した者に対し、3~6か月に1回程度

⑥ 心臓超音波検査

人工弁又は人工血管に置換した者に対し、1年に1回程度

⑦ CRP検査

人工弁又は人工血管に置換した者に対し、1年に2回程度

⑧ 脈波図検査

人工血管に置換した者に対し、1年に1回程度

⑨ CT又はMRI検査

人工血管に置換した者に対し、医学的に特に必要と認められる場合に限る。

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

ア 心臓弁を損傷した者及び心膜の病変を残す者

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

イ 人工弁又は人工血管に置換した者

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年間とする。

第18 呼吸機能障害に係るアフターケア

1 趣旨

呼吸機能障害を残す者にあっては、症状固定後においても咳や痰等の後遺症状を残すため、その症状の軽減及び悪化の防止を図る必要があることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害により呼吸機能障害を残す者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。特に喫煙者に対しては、日常生活上の配慮として喫煙の禁止について指導するものとする。ただし、私病であるニコチン依存症の治療は行えないものである。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次の薬剤を支給することができるものとする。

① 去痰薬

② 鎮咳薬

③ 喘息治療薬

④ 抗菌薬(抗生物質を含む。)

⑤ 呼吸器用吸入薬及び貼付薬

⑥ 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② CRP検査

③ 喀痰細菌検査

④ スパイログラフィー検査

⑤ 胸部エックス線検査

1年に2回程度

⑥ 血液ガス分析

1年に2~4回程度

⑦ 胸部CT検査

1年に1回程度

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第19 消化器障害に係るアフターケア

1 趣旨

消化器を損傷した者で、症状固定後においても、消化吸収障害、逆流性食道炎、ダンピング症候群、腸管癒着、排便機能障害又は膵機能障害(以下「消化吸収障害等」という。)の障害を残す者にあっては、腹痛や排便機能障害等を発症するおそれがあること、また、消化器ストマ(大腸皮膚瘻、小腸皮膚瘻及び人工肛門)を造設するに至った者にあっては、反応性びらん等を発症するおそれがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、業務災害又は通勤災害により、消化吸収障害等を残す者又は消化器ストマを造設した者であって、労働者災害補償保険法による障害補償給付若しくは障害給付を受けている者又は受けると見込まれる者(症状固定した者に限る。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要な期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次に掲げるそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

ア ストマ処置

イ 外瘻の処置

軽微な外瘻が認められる者に対し、外瘻周辺の反応性びらん等の発症を予防するために実施するものとする。

ウ 自宅等で使用するための滅菌ガーゼの支給

エ 薬剤の支給

① 整腸薬、止瀉薬

② 下剤、浣腸薬

③ 抗貧血用薬

④ 消化性潰瘍用薬

逆流性食道炎が認められる場合に支給する。

⑤ 蛋白分解酵素阻害薬

⑥ 消化酵素薬

⑦ 抗菌薬(抗生物質、外用薬を含む。)

⑧ 鎮痛・消炎薬(外用薬を含む。)

(4) 検査

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 末梢血液一般・生化学的検査

② 尿検査

3か月に1回程度

③ 腹部超音波検査

④ 消化器内視鏡検査(ERCPを含む。)

⑤ 腹部エックス線検査

⑥ 腹部CT検査

医学的に特に必要と認められる場合に限る。

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。

第20 炭鉱災害による一酸化炭素中毒に係るアフターケア

1 趣旨

炭鉱災害による一酸化炭素中毒にり患した者にあっては、症状固定後においても季節、天候、社会環境等の変化に随伴して精神又は身体の後遺症に動揺をおこすことがあることにかんがみ、アフターケアを行うものとする。

2 対象者

アフターケアは、炭鉱災害による一酸化炭素中毒について労働者災害補償保険法による療養補償給付を受けていた者であって、当該一酸化炭素中毒が症状固定した者のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者に対して行うものとする。

3 措置範囲

アフターケアの予防その他の保健上の措置の範囲は、次のとおりとする。

(1) 診察

原則として、症状固定後3年を限度として、1か月に1回程度必要に応じて行うものとするが、医学的に更に継続する必要のある者については、その必要とする期間継続して行うことができるものとする。

(2) 保健指導

診察の都度、必要に応じて行うものとする。

(3) 保健のための処置

診察の都度、必要に応じて次の薬剤を支給することができるものとする。これらの薬剤の支給は、中枢神経系の障害に対して維持的な効果を与えるために行うものであるので、その投与については、それぞれ定めるところによって取り扱うものとする。

なお、これらの薬剤を必要とする者の中には、本質的には一酸化炭素中毒以外の疾病によると思われる症状が合併していることがあるので、診察にあたってはこの点に特に留意する。

また、一酸化炭素中毒以外の疾病については当該アフターケアを行う趣旨ではないので、例えば高血圧症、貧血、胃腸疾患、腰痛、神経痛、頸部せき椎症等に対する胃腸薬、造血薬、強肝薬、総合ビタミン剤等の投与は、アフターケアとしての薬剤の支給とは認められないものである。

ア 脳機能賦活薬

向精神性ビタミン剤及び代謝促進薬を主とするが、その使用量は急性期の場合と異なって少量持続の方針をとることとし、次により適宜選択して投与するものとする。

① ビタミンB1

1日 25mg~50mg

② ビタミンB12

1日 0.2mg~0.5mg

③ GABA(ガンマロン)

500mg~1,000mg

④ アスパラギン酸製剤

300mg~600mg

イ 向精神薬、筋弛緩薬(鎮痙薬を含む。)及び鎮痛薬

次の薬剤投与はできるだけ少量であることとし、①についてはめまいや嘔気のあるものに対し、②については肩こりなどの筋緊張性病訴又は神経症的病訴のあるものに対し、主として使用されるものである。

① フエノチアヂン系等

② ジアゼパム系等

③ 鎮痛薬

1日 1錠~3錠程度

ウ 血管拡張薬

肩こり、頸部こり、頭痛などの自覚症状の中には上記イの薬剤と血管拡張薬とを併用することによって症状が軽減し、労働可能となるものが少なくないので、少量の血管拡張薬(1日1錠ないし3錠程度)は投与してもよいものである。

エ その他の薬剤

パーキンソン症候群を有するものに対しては抗パーキンソン薬を、脳波異常のあるもの又は痙攣発作をおこすものに対しては抗痙攣薬を、血液の循環の改善を必要とするものに対しては少量の内服昇圧薬を必要に応じ投与するものである。

(4) 検査(健康診断)

診察の結果、必要に応じて次の検査をそれぞれの範囲内で行うことができるものとする。

① 全身状態の検査

② 自覚症状の検査

③ 精神、神経症状の一般的検査

1年に1回程度

④ 尿中の蛋白、糖及びウロビリノーゲンの検査

⑤ 赤血球沈降速度及び白血球数の検査

⑥ 視野検査

⑦ 脳波検査

⑧ 心電図検査

⑨ 胸部エックス線検査

⑩ CT、MRI検査

①~③の検査の結果、医学的に特に必要と認められる場合に限る。

4 手帳の有効期間

(1) 新規の交付

交付日から起算して3年間とする。

(2) 更新による再交付

更新前の手帳の有効期間が満了する日の翌日から起算して1年間とする。