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通達:石綿による健康被害の救済に関する法律の施行(「特別遺族給付金」の支給関係)について

 

石綿による健康被害の救済に関する法律の施行(「特別遺族給付金」の支給関係)について

平成18年3月17日基発第0317003号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

最終改正 令和4年3月31日基発0331第26号

 

石綿による健康被害の救済に関する法律(平成18年法律第4号。以下「法」という。)が平成18年2月10日に、石綿による健康被害の救済に関する法律の施行期日を定める政令(平成18年政令第36号)及び石綿による健康被害の救済に関する法律施行令(平成18年政令第37号。以下「令」という。)が同年3月10日に、厚生労働省関係石綿による健康被害の救済に関する法律施行規則(平成18年厚生労働省令第39号。以下「規則」という。)が本日公布され、これらは同月27日より施行されることとなっている。これらの施行に当たっては、下記に留意の上、事務処理に遺漏なきを期されたい。

 

1 法の趣旨等

石綿による健康被害については、石綿が長期間にわたって我が国の経済活動全般に幅広く、かつ、大量に使用されてきた結果、多数発生してきている一方で、長期にわたる潜伏期間があって因果関係の特定が難しく現状では救済が困難であるという状況があった。

この法は、このような状況の中で、これらの被害者を隙間なく迅速に救済する必要があるとの判断の下、石綿による健康被害者を隙間なく救済するための新たな法的措置を講じるために制定されたものである。

この法に基づく救済措置は、労災保険法等による救済の対象とならない者に対する救済給付の支給と死亡した労働者の遺族で労災保険法の遺族補償給付を受ける権利が時効により消滅した者に対する特別遺族給付金の創設の2つからなっている。後者については、石綿による疾患は長期の潜伏期間があり、石綿と疾患の関連性に本人も気付きにくく、専門的な知識を持った医師が少ないという事情から、本人又はその遺族が労災保険法による保険給付を請求したときは既に消滅時効にかかっているといった場合があることから、特に救済することとし、新たに特別遺族給付金を支給することとしたものである。

2 対象疾病(法第2条第1項及び規則第2条関係)

対象とする疾病は、中皮腫、気管支又は肺の悪性新生物(以下「肺がん」という。)、石綿肺、良性石綿胸水及びびまん性胸膜肥厚とする。

3 対象者(法第2条第2項及び第59条第1項関係)

死亡労働者等の遺族であって、労災保険法による遺族補償給付を受ける権利が時効により消滅したものとする。

「死亡労働者等」とは、労災保険の保険関係が成立している事業に使用される労働者又は特別加入者(労災保険法第34条第1項第1号等の規定により労災保険の保険関係が成立している事業に使用される労働者とみなされる者)であって、石綿にさらされる業務に従事することにより2の対象疾病にかかり、これにより死亡したもの(昭和22年9月1日以降に2の対象疾病にかかり、これにより平成28年3月26日までに死亡した者に限る。)をいう。

4 特別遺族年金

(1) 受給資格者等(法第59条第1項から第3項まで及び第60条並びに規則第3条関係)

ア 受給資格者の範囲

特別遺族年金を受けることができる遺族は、死亡労働者等の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当するものとする。

(ア) 死亡労働者等の死亡の当時その収入によって生計を維持していたこと。

(イ) 妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)以外の者にあっては、死亡労働者等の死亡の当時において、次の①から④までのいずれかに該当すること。

① 夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。以下同じ。)、父母又は祖父母については、55歳以上であること。

② 子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること。

③ 兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること又は55歳以上であること。

④ ①から③までの要件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)第15条で定める障害の状態にあること。

(ウ) 死亡労働者等がこの法律の施行の日(平成18年3月27日。以下「施行日」という。)の前日の5年前の日(平成13年3月26日。以下「特定日」という。)以前に死亡した者である場合にあってはその死亡の時から施行日までの間において、死亡労働者等が特定日の翌日(平成13年3月27日)から石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律(平成20年法律第77号。以下「平成20年改正法」という。)の施行の日の前日の5年前の日(平成15年11月30日)までに死亡した者である場合にあってはその死亡の時から平成20年改正法の施行の日(平成20年12月1日)までの間において、死亡労働者等が平成20年改正法の施行の日の5年前の日(平成15年12月1日)から施行日の前日(平成18年3月26日)までに死亡した者である場合にあってはその死亡の時から5年を経過した日までの間において、死亡労働者等が施行日から石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律(平成23年法律第104号。以下「平成23年改正法」という。)の施行の日の前日の5年前の日(平成18年8月29日)までに死亡した者である場合にあってはその死亡の時から平成23年改正法の施行の日(平成23年8月30日)までの間において、死亡労働者等が平成23年改正法の施行の日の5年前の日(平成18年8月30日)から施行日から10年を経過する日(平成28年3月27日。以下「10年経過日」という。)の前日(平成28年3月26日)までに死亡した者である場合にあってはその死亡の時から5年を経過した日までの間において、次の①から⑤までのいずれにも該当しないこと。

① 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたこと。

② 直系血族又は直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となったこと。

③ 離縁によって、死亡労働者等との親族関係が終了したこと。

④ 子、孫又は兄弟姉妹については、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したこと(死亡労働者等の死亡の時から引き続き(イ)④の障害の状態にあるときを除く。)。

⑤ (イ)④の障害の状態にある夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その事情がなくなったこと(夫、父母又は祖父母については、死亡労働者等の死亡の当時55歳以上であったとき、子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は死亡労働者等の死亡の当時55歳以上であったときを除く。)。

イ 順位

配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順とする。

(2) 額(法第59条第3項及び令第15条関係)

受給権者及びその者と生計同じくしている遺族(特別遺族年金の受給資格者に限る。)の数に応じて定める以下の額とする。

1人

240万円

2人

270万円

3人

300万円

4人以上

330万円

(3) 受給権の消滅(法第61条関係)

特別遺族年金を受ける権利は、死亡したとき又は(1)ア(ウ)①から⑤までのいずれかに該当したときは、消滅する。この場合において、同順位者がなくて後順位者があるときは、次順位者に特別遺族年金を支給する。

(4) 請求手続等

ア 特別遺族年金の支給請求書等(規則第6条から第8条まで関係)

(ア) 特別遺族年金の支給を受けようとする者((イ)に該当する者を除く。)は、「特別遺族年金支給請求書」(様式第1号)に、死亡診断書等の記載事項証明書、戸籍の謄本又は抄本等を添付して、労働基準監督署長に提出しなければならない。

(イ) 先順位者の死亡等に伴う転給により新たに特別遺族年金の支給を受けようとする者は、「特別遺族年金転給等請求書」(様式第2号)に、戸籍の謄本又は抄本等を添付して、労働基準監督署長に提出しなければならない。

(ウ) 特別遺族年金を受ける権利を有する者が2人以上あるときは、そのうち1人を請求及び受領の代表者に選任し、特別遺族年金代表者選任届・解任届」(様式第2号の2)により、その旨を労働基準監督署長に届け出なければならない。

イ 特別遺族年金証書の交付(規則第11条から第13条まで関係)

(ア) 労働基準監督署長は、特別遺族年金の支給の決定をするときは、「特別遺族年金証書」(規則様式第9号)を交付しなければならない。

(イ) 特別遺族年金証書を交付された受給権者は、当該年金証書を亡失した際等は、「特別遺族年金証書再交付請求書」(様式第2号の3)により、再交付を請求することができる。

(ウ) 特別遺族年金証書を交付された受給権者又はその遺族は、特別遺族年金を受ける権利が消滅した際は、遅滞なく、当該年金証書を返納しなければならない。

ウ 特別遺族年金の受給権者の定期報告等(規則第14条から第16条まで関係)

(ア) 特別遺族年金の受給権者は、毎年、「特別遺族年金の受給権者の定期報告書」(様式第3号)に、戸籍の謄本又は抄本、障害の状態に関する診断書(様式第3号の2)等の資料を添付して、提出しなければならない。

(イ) 特別遺族年金の受給権者は、次に掲げる場合には、遅滞なくそれぞれに定める様式により、労働基準監督署長に届け出なければならない。

(ウ) 特別遺族年金の受給権者が死亡した場合には、その者の遺族は、遅滞なく、「特別遺族年金受給権者死亡届」(様式第6号の2)により、その旨を労働基準監督署長に届け出なければならない。

① 氏名及び住所に変更があった場合並びに払渡を受ける金融機関等を変更しようとする場合(「特別遺族年金の受給権者の住所・氏名、特別遺族年金払渡金融機関等変更届」(様式第4号))

② 受給権が消滅した場合(「特別遺族年金受給権者失権届」(様式第5号))

③ 受給権者と生計を同じくしている特別遺族年金を受けることができる遺族の数に増減が生じた場合(「特別遺族年金額算定基礎変更届」(様式第6号))

5 特別遺族一時金

(1) 受給者等(法第59条第1項及び第2項、第62条並びに第63条関係)

ア 特別遺族一時金は、次の場合に支給するものとする。

(ア) 死亡労働者等が特定日以前に死亡した者である場合にあっては施行日において、死亡労働者等が特定日の翌日から平成20年改正法の施行の日の前日の5年前の日までに死亡した者である場合にあっては平成20年改正法の施行の日において、死亡労働者等が平成20年改正法の施行の日の5年前の日から施行日の前日までに死亡した者である場合にあってはその死亡の時から5年を経過した日において、死亡労働者等が施行日から平成23年改正法の施行の日の前日の5年前の日までに死亡した者である場合にあっては平成23年改正法の施行の日において、死亡労働者等が平成23年改正法の施行の日の5年前の日から10年経過日の前日までに死亡した者である場合にあってはその死亡の時から5年を経過した日において、特別遺族年金の受給権者がいないとき。

(イ) 特別遺族年金の受給権者がいなくなった場合において、それまでに支給された特別遺族年金の額が、1200万円((ア)の場合に支給されることとなる特別遺族一時金の額)未満のとき又は特別遺族年金の受給権者がその請求前に法第61条第1項各号に該当するに至りその権利が消滅した場合であって、他に特別遺族年金を受けることができる遺族がないとき。

イ 受給者の範囲等

(ア) 配偶者

(イ) 死亡労働者等の死亡時にその収入によって生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母

(ウ) その他の子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹

ウ 順位は、イ(ア)から(ウ)までの順とし、(イ)及び(ウ)についてはそれぞれに掲げる順とする。

(2) 額(法第59条第4項及び令第16条関係)

ア (1)ア(ア)の場合 1200万円

イ (1)ア(イ)の場合 1200万円からそれまでに支給された特別遺族年金の額を控除した額

(3) 特別遺族一時金の支給請求書等(規則第9条関係)

ア 特別遺族一時金の支給を受けようとする者は、「特別遺族一時金支給請求書」(様式第7号)に、死亡診断書等の記載事項証明書、戸籍の謄本又は抄本等を添付して、労働基準監督署長に提出しなければならない。

イ 特別遺族一時金を受ける権利を有する者が2人以上あるときは、そのうち1人を請求及び受領の代表者に選任し、その旨を労働基準監督署長に届け出なければならない。

6 請求期限(法第59条第5項関係)

特別遺族給付金の支給の請求は、施行日から16年を経過したときはすることができない。また、先順位者の死亡等に伴う転給により後順位者に支給される特別遺族年金にあっては、先順位の遺族の権利が消滅したときから16年以内に請求しなければ、受給できなくなる。

7 未支給の特別遺族給付金等(法第64条関係)

特別遺族給付金については、労災保険法の未支給の保険給付、年金の支給期間、年金の内払、年金の過誤払時の充当、年金の支給停止等及び受給資格の欠格に係る規定等を準用し、同様の取扱とする。ただし、受給権者が請求を行っていなかった場合の未支給分については準用しない。

(1) 未支給の特別遺族給付金の支給等(規則第19条関係)

未支給の特別遺族給付金を請求しようとする者は、「未支給の特別遺族給付金支給請求書」(様式第8号)に、死亡診断書等の記載事項証明書等の資料を添付して、労働基準監督署長に提出しなければならない。

(2) 過誤払による返還金債権への充当(規則第20条関係)

特別遺族年金の受給権者が死亡したためその支給を受ける権利を消滅したにもかかわらず、その後も過誤払が行われた場合において、特別遺族年金又は特別遺族一時金の受給権者が、過誤払による返還金債権に係る債務の弁済をすべき者であるとき等には、その支払金額を過誤払による返還金債権に充当することができる。

(3) 所在不明による支給停止の申請等(規則第21条及び第22条関係)

ア 特別遺族年金の受給権者又は受けることができる遺族は、所在不明者に対する特別遺族年金の支給の停止を申し出ようとするときは、「特別遺族年金支給停止申請書」(様式第9号)を労働基準監督署長に提出することによって行わなければならない。

イ 所在不明者として支給を停止されていた者が支給停止の解除を求めようとするときは、「特別遺族年金支給停止解除申請書」(様式第9号の2)と特別遺族年金証書を労働基準監督署長に提出することによって行わなければならない。

8 損害賠償との調整(法第65条及び規則第23条関係)

死亡労働者等の遺族が、特別遺族給付金の支給を受けるべきときに、同一の事由により労災保険適用事業主から損害賠償を受けた場合には、厚生労働大臣が別に定める基準により、その価格の限度で特別遺族給付金の支給をしないことができる。

また、労災保険適用事業主から損害賠償を受けた場合には、当該遺族は、「事業主責任災害損害賠償受領届」(様式第10号)を遅滞なく労働基準監督署長に提出しなければならない。

9 不正受給者からの費用徴収(法第66条関係並びに規則第24条及び第25条関係)

偽りその他不正の手段により特別遺族給付金の支給を受けた者からは、その支給に要した費用に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。この場合において、事業主が虚偽の報告等をしたことによるときは、事業主は連帯して徴収金を支払うことを求められることがある。

10 労災保険率の算定(法第69条、令第12条から14条まで並びに規則第4条及び第5条関係)

特別遺族給付金の支給に要する費用については、労働保険料から賄うこととし、特別遺族給付金の支給実績を考慮した上で労働保険料の労災保険率を定めることとなる。ただし、個別事業場ごとのメリット制の適用に当たっては、建設の事業、港湾貨物取扱事業又は港湾荷役業に従事する日雇労働者や転々労働者が中皮腫、肺がん又は石綿肺にかかった場合(港湾貨物取扱業又は港湾荷役業については中皮腫又は肺がんにかかった場合に限る。)の特別遺族給付金の給付実績については、一定の年数要件の下で除外するとともに、特別遺族年金の給付の額の算定は、一定額(1200万円)とする。

11 報告の徴収等(法第70条から第74条まで並びに規則第26条及び第27条関係)

特別遺族給付金の支給に関して必要があるときは、事業主や遺族等に対して、報告、文書の提出等を求め、また、事業場への立入検査を行うことができることとし、併せて、特別遺族給付金の受給権者が、正当な理由がなくその求めに従わない場合は、その者に対する特別遺族給付金の支給を一時差し止めることができることとする。

なお、事業場への立入検査等の際には、身分を示す証明書(規則様式第10号及び規則様式第11号)を関係人に提示しなければならない。

12 不服申立(法第78条関係)

特別遺族給付金に関する決定についての不服申立てや訴訟に対しては、労災保険法第38条から第40条までが適用される。従って、例えば、特別遺族給付金に関する決定に不服がある場合は、都道府県労働局に置かれる労働者災害補償保険審査官に審査請求を行い、その決定に対して不服がある場合は、労働保険審査会に再審査請求を行うことができる。

13 その他

(1) 給付事務等の分掌(規則第1条関係)

特別遺族給付金の支給事務は、死亡労働者等の働いていた事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長、不正受給者に対する徴収金の徴収等は、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長が行うこととする。このほか、事業主等からの報告徴収や特別遺族一時金の一時差止等については、厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長が行うことができることとする。

(2) 特別遺族給付金に関する処分の通知等(規則第10条関係)

特別遺族給付金の支給に関する処分を行ったときは、労働基準監督署長は、遅滞なく、文書でその内容を請求人等に通知し、請求人から提出された書類があるときは、遅滞なく返還しなければならない。

(3) 労災保険適用事業主の助力等(規則第17条及び第18条関係)

ア 労災保険適用事業主は、特別遺族年金を受けるべき者から必要な証明を求められたときは、速やかに証明しなければならない。

イ 労災保険適用事業主は、自らの事業に係る特別遺族給付金の支給の請求について、労働基準監督署長に意見を申し出ることができる。

14 施行期日等

平成18年3月27日より施行する。ただし、特別遺族年金支給請求書及び特別遺族一時金支給請求書の提出に関する事務ついては、同年3月20日から開始する。

様式第2号(表面)(裏面)