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労働基準法の一部を改正する法律(紛争の解決の援助関係)の施行について
平成一〇年一〇月一日基発第五六一号
(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)
労働基準法の一部を改正する法律(平成一〇年法律第一一二号)については、平成一〇年九月三〇日付け労働省発基第九四号により、労働事務次官により通達されたところであるが、同法のうち紛争の解決の援助(労働基準法(昭和二二年法律第四九号)第一〇五条の三関係。以下同条に基づく援助を「紛争解決援助」という。)についての内容は下記のとおりであるので、施行に遺憾なきを期されたい。
記
一 紛争解決援助の趣旨
近年、解雇や配置転換、出向等労働条件に関する紛争事案は増加傾向にあり、労使双方から簡易・迅速な紛争処理の仕組みが求められている。
このため、各都道府県労働基準局において、労使の自主的な紛争解決を促進するため、紛争の当事者の求めに応じ、紛争事案の事実関係の整理を行い、労働問題に関し専門的知識等を有する者の意見等を参考として、紛争の当事者に対し、紛争の早期解決のための助言又は指導を実施することとしたものである。
二 紛争当事者について
都道府県労働基準局長に紛争解決援助を求めることができる「紛争の当事者」とは、個々の労働者又は使用者(過去において労働者又は使用者であった者も含む。)であり、これらの者の代理人、これらの者が組織する労働組合、使用者団体等は含まないものであること。また、「紛争の当事者」たる労働者が死亡した場合において、その相続人は「紛争の当事者」には当たらないこと。
三 紛争解決援助の対象について
(一) 紛争解決援助の対象は、「労働条件についての労働者と使用者との間の紛争」であること。
「労働条件」とは、賃金、労働時間、解雇等労働者の職場における一切の待遇をいい、募集や採用は含まれないこと。また、「紛争」とは、紛争の一方の当事者の主張に対し、他方の当事者がそれに同意せず、両当事者の主張が一致していない状態をいうものであること。
(二) 以下の紛争については、紛争解決援助の対象から除外されていること。
① 労働関係調整法(昭和二一年法律第二五号)第六条に規定する労働争議に当たる紛争
② 国営企業労働関係法(昭和二三年法律第二五七号)第二六条第一項に規定する紛争
③ 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四七年法律第一一三号)第一二条第一項(平成一一年三月三一日までは、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律第一四条)に規定する紛争
(三) 以下の紛争については、その性質等にかんがみ、紛争解決援助の対象とはしないこと。
① 労働基準法等関係法令違反に係る紛争又は法令に基づき他の機関において指導等を実施することとされている事項に係る紛争
(例:労働組合法(昭和二四年法律第一七四号)第七条に規定する不当労働行為に係る紛争、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四六年法律第六八号)に規定する定年に係る紛争、育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七六号)に規定する育児休業又は介護休業に係る紛争、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第二一条第一項に規定する雇用管理上必要な配慮に係る紛争等)
② 裁判所で係争中の紛争又は裁判所における民事調停若しくは労働委員会におけるあっ旋、調停、仲裁等の手続が進行している紛争
③ 裁判所で確定判決、民事調停若しくは和解が行われた紛争又は労働委員会のあっ旋、調停、仲裁等が行われた紛争等権限のある機関から一定の判断が示された紛争
④ 既に労働基準法第一〇五条の三第一項に基づく処理を完了した紛争(助言、指導等の最終判断に大きな影響を与える事実が判明した場合を除く。)
⑤ 労働組合と使用者との間で問題として取り上げられており、両者の話合い等により自主的な解決を図ることが適切であると認められる紛争
⑥ 紛争の発生から長期間経過し、事実関係の確認が困難となっているもの。
四 労働条件紛争担当参与からの意見聴取について
労働基準法第一〇五条の三第二項に規定する「広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に関し専門的知識を有する者」(以下「労働条件紛争担当参与」という。)とは、弁護士等の法曹関係者、労働法学者等の学識経験者、人事労務管理に携わった者等であって、産業社会の実情に通じ、かつ、労働関係法令や賃金制度等の労働問題について専門的な知識を有する者であること。
労働条件紛争担当参与からの意見の聴取は、「助言又は指導をするため必要があると認めるとき」に実施することとされており、必要の都度原則として参与会を開催した上で実施すること。
五 助言又は指導について
紛争解決援助における「助言又は指導」は、紛争当事者である労使の自主的な紛争解決を促進するため、紛争当事者の一方又は双方に対し、紛争の解決案等を提示するものであるが、一定の措置の実施を強制するものではないこと。