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C型肝炎、エイズ及びMRSA感染症に係る労災保険における取扱いについて
平成5年10月29日付け基発第619号
改正 平成22年9月9日付け基発0909第1号
近年、医療従事者等のC型肝炎や我が国において感染者が増加している後天性免疫不全症候群(以下「エイズ」という。)、さらにはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下「MRSA」という。)感染症など、細菌、ウイルス等の病原体による感染症について社会的関心が高まっていることから、これらの感染症に係る労災請求事案を処理するため、今般、標記について下記のとおり取りまとめたので、今後の取扱いに遺漏のないよう万全を期されたい。
記
1 C型肝炎について
(1) 法令上の取扱い
ウイルス性肝炎は、昭和53年3月30日付け基発第186号「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」(以下「186号通達」という。)の記の第2の2の(6)のイの(ハ)及び(ニ)により、労働基準法施行規則(以下「労基則」という。)別表第1の2第6号1又は5に定める業務上の疾病に該当することとしているところであるが、その原因となるウイルスが確認されている「C型肝炎」についても、A型肝炎及びB型肝炎と同様186号通達に示すウイルス性肝炎として取り扱われるものである。
なお、ウイルス性肝炎は、現在、「ウイルス肝炎」と呼称されていることから、186号通達における「ウイルス性肝炎」を「ウイルス肝炎」と改める。
(2) C型肝炎に係る医学的事項
イ 感染源、感染経路
C型肝炎ウイルス(以下「HCV」という。)は、HCV感染者及びC型肝炎患者(以下「HCV保有者」という。)の血液等の体液(以下「血液等」という。)に含まれているとされているが、感染源として重要なものは血液である。
したがって、HCVの感染経路は、HCVに汚染された血液を媒介した感染(輸血、注射針等による)が主であるが、母子感染(母親から子への子宮内あるいは出産時における感染)又はHCV保有者との性的接触等による感染の可能性もあるといわれている。
ロ 潜伏期間
C型肝炎のうち、C型急性肝炎の潜伏期間は、HCV感染後おおむね2週間から16週間である場合が多いが、これは感染ウイルスの量によって左右されるといわれている。
ハ 症状等
(イ) C型急性肝炎の症状は、全身倦怠感、発熱、食欲不振、嘔吐等があるが、A型肝炎やB型急性肝炎に比べ軽症例が多く、また、黄疸の出現する頻度は低いとされている。
なお、臨床症状及び肝機能検査成績からは、A型肝炎及びB型急性肝炎と鑑別することは困難であるといわれている。
(ロ) C型急性肝炎の自然治ゆ率は約40%で、残りの約60%が慢性化に移行するといわれている。
(ハ) 一方、C型慢性肝炎は、一般に自覚症状に乏しいが、自然治ゆ率は2%に満たないといわれ、無治療のままで放置すれば徐々に進展して、10年以上にわたる長期間の経過で肝硬変、さらには肝がんに移行する場合があるとされている。
ニ 診断
C型肝炎の診断は、臨床症状、肝機能検査等に加え、血液中のHCV抗体を検出する検査により行われる。
HCV抗体が陽性となるのは、C型急性肝炎の発症後おおむね1か月から3か月であるとされているが、検査方法や症例によって差がみられるといわれている。
また、最近では、HCVの有無の確認方法として、HCV―RNA(HCV遺伝子)を検出する検査が開発されている。
(3) 労災保険上の取扱い
医療機関、試験研究機関、衛生検査所等の労働者又は医療機関等が排出する感染性廃棄物を取り扱う労働者(以下「医療従事者等」という。)が、HCVの感染源であるHCV保有者の血液等に業務上接触したことに起因してHCVに感染し、C型肝炎を発症した場合には、業務上疾病として取り扱われるとともに、医学上必要な治療は保険給付の対象となる。
なお、感染性廃棄物とは、「感染性病原体(人が感染し、又は感染するおそれのある病原体)が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物」(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令別表第1)をいう。
イ 血液等に接触した場合の取扱い
(イ) 血液等への接触の機会
医療従事者等が、HCVに汚染された血液等に業務上接触する機会としては、次のような場合が考えられ、これらは業務上の負傷として取り扱われる。
a HCVに汚染された血液等を含む注射針等(感染性廃棄物を含む。)により手指等を受傷したとき。
b 既存の負傷部位(業務外の事由によるものを含む。)、眼球等にHCVに汚染された血液等が付着したとき。
(ロ) 療養の範囲
a 前記(イ)に掲げる血液等への接触(以下、記の1において「受傷等」という。)の後、当該受傷等の部位に洗浄、消毒等の処置が行われた場合には、当該処置は、業務上の負傷に対する治療として取り扱われるものであり、当然、療養の範囲に含まれるものである。
b 受傷等の後、HCV抗体検査等の検査(受傷等の直後に行われる検査を含む。)が行われた場合には、当該検査結果が、業務上外の認定に当たっての基礎資料として必要な場合もあることから、当該検査は、業務上の負傷に対する治療上必要な検査として保険給付の対象に含めるものとして取り扱うこととするが、当該検査は、医師がその必要性を認めた場合に限られるものである。
なお、受傷等以前から既にHCVに感染していたことが判明している場合のほか、受傷等の直後に行われた検査により、当該受傷等以前からHCVに感染していたことが明らかとなった場合には、その後の検査は療養の範囲には含まれないものである。
ロ C型肝炎の発症が確認された場合の取扱い
(イ) 業務起因性の判断
a C型急性肝炎
原則として、次に掲げる要件をすべて満たすものについては、業務に起因するものと判断される。
(a) C型急性肝炎の症状を呈していること(前記(2)のハ参照)。
(b) HCVに汚染された血液等を取り扱う業務に従事し、かつ、当該血液等に接触した事実が認められること(前記イの(イ)参照)。
(c) HCVに感染したと推定される時期からC型急性肝炎の発症までの時間的間隔がC型急性肝炎の潜伏期間と一致すること(前記(2)のロ参照)。
(d) C型急性肝炎の発症以後においてHCV抗体又はHCV―RNAが陽性と診断されていること(前記(2)のニ参照)。
(e) 業務以外の原因によるものでないこと。
b C型慢性肝炎
前記aのすべての要件を満たす業務に起因するC型急性肝炎の既往の事実があると認められる場合のC型慢性肝炎については、業務に起因するものと判断される。
なお、C型急性肝炎の既往の事実が確認できないC型慢性肝炎については、受傷等の事実が認められており、当該受傷等の後においてHCV抗体が陽性化するなど、当該受傷等以前からのHCV感染が明らかに否定される場合であって、かつ、業務以外の原因によるものでない場合に限って、業務に起因するものとして取り扱う。
(ロ) 療養の範囲
前記(イ)の業務起因性が認められる場合であって、C型肝炎の発症が確認された以後の検査及び治療については、業務上疾病に対する療養の範囲に含まれるものである。
2 エイズについて
(1) 法令上の取扱い
エイズは、その原因となる病原体がウイルスであり、また、後記(2)のロに示すとおり伝染性疾患である。
したがって、業務に起因する医療従事者等のエイズについては、186号通達の記の第2の2の(6)のイの(ハ)及び(ニ)に示す「ウイルス性肝炎等」に含まれ、労基則別表第1の2第6号1又は5に定める業務上の疾病に該当するものである。
(2) エイズに係る医学的事項
イ エイズの病像等
エイズとは、ヒト免疫不全ウイルス(以下「HIV」という。)によって体の免疫機構が破壊され、日和見感染症(健康な状態では通常はり患しないが、免疫力が低下したときにしばしばり患する感染症)、悪性腫瘍、神経症状等を伴うに至った病態をいうものである。
また、HIVの感染によって引き起こされる初期症状から、これに続く無症状の状態(以下「無症候性キャリア」という。)、その後の発熱、下痢、倦怠感等の持続状態(「エイズ関連症候群」)、さらに病期が進行してエイズと診断される病態までの全経過をまとめてHIV感染症という。
ロ 感染源、感染経路
HIVは、エイズ患者及びHIV感染者(以下「HIV保有者」という。)の血液等に含まれているとされているが、感染源として重要なものは、血液、精液及び膣分泌液である。
したがって、HIVの感染経路は、HIV保有者との性的接触による感染、HIVに汚染された血液を媒介した感染(輸血、注射針等による)及び母子感染がある。
しかし、唾液感染や昆虫媒介による感染はなく、また、HIVに汚染された血液に健常な皮膚が触れただけでは感染しないとされている。
ハ 潜伏期間
HIV感染後、エイズ発症までの潜伏期間については、3年以内が約10%、5年以内が約30%、8年以内が約50%であるといわれ、15年以内に感染者のほとんどがエイズを発症すると推定されている。
ニ 症状等
(イ) 初期症状
HIVに感染しても一般的には無症状であるが、一部の感染者は、感染の2週間から8週間後に発熱、下痢、食欲不振、筋・関節痛等の感冒に似た急性症状を呈することがあるといわれている。
この急性症状は、2週間から3週間続いた後、自然に消退して無症候性キャリアになるとされている。
(ロ) エイズ関連症候群
無症候性キャリアの時期を数年経て、その後、全身性のリンパ節腫脹、1か月以上続く発熱や下痢、10%以上の体重減少、倦怠感等の症状が現れるとされており、この持続状態を「エイズ関連症候群」と呼んでいる。
なお、このエイズ関連症候群には、軽度の症状からエイズに近い病態までが含まれるものである。
(ハ) エイズ
エイズ関連症候群がさらに進行して、免疫機能が極端に低下すると、カリニ肺炎などの日和見感染症、カポジ肉腫などの悪性腫瘍、あるいはHIV脳症による神経症状などを発症するとされている。この時期が「エイズ」と呼ばれる病態で、複数の日和見感染症を併発することが多いとされている。
なお、エイズの予後は不良であり、日和見感染症に対する治療により一時的に好転しても再発を繰り返しやすく、あるいは他の日和見感染症を合併して次第に増悪し、エイズの発症から3年以内に大部分の患者が死亡するといわれている。
ホ 診断
HIV感染症の診断は、血液中のHIV抗体を検出する検査により行われるが、ゼラチン粒子凝集法(PA法)等のスクリーニング検査によりHIV抗体が陽性と判定された血液については、さらに精度の高いウエスタンブロット法等による確認検査が行われ、これが陽性であれば、HIV感染症と診断される。
なお、HIV抗体が陽性となるのは、一般にHIV感染の6週間から8週間後であるといわれている。
(3) 労災保険上の取扱い
エイズについては、現在、HIV感染が判明した段階で専門医の管理下に置かれ、定期的な検査とともに、免疫機能の状態をみてHIVの増殖を遅らせる薬剤の投与が行われることから、HIV感染をもって療養を要する状態とみるものである。
したがって、医療従事者等が、HIVの感染源であるHIV保有者の血液等に業務上接触したことに起因してHIVに感染した場合には、業務上疾病として取り扱われるとともに、医学上必要な治療は保険給付の対象となる。
イ 血液等に接触した場合の取扱い
(イ) 血液等への接触の機会
医療従事者等が、HIVに汚染された血液等に業務上接触する機会としては、次のような場合が考えられ、これらは業務上の負傷として取り扱われる。
a HIVに汚染された血液等を含む注射針等(感染性廃棄物を含む。)により手指等を受傷したとき。
b 既存の負傷部位(業務外の事由によるものを含む。)、眼球等にHIVに汚染された血液等が付着したとき。
(ロ) 療養の範囲
a 前記(イ)に掲げる血液等への接触(以下、記の2において「受傷等」という。)の後、当該受傷等の部位に洗浄、消毒等の処置が行われた場合には、当該処置は、業務上の負傷に対する治療として取り扱われるものであり、当然、療養の範囲に含まれるものである。
b 受傷等の後に行われたHIV抗体検査等の検査(受傷等の直後に行われる検査を含む。)については、前記1の(3)のイの(ロ)のbと同様に取り扱う。
c 受傷等の後HIV感染の有無が確認されるまでの間に行われた抗HIV薬の投与は、受傷等に起因して体内に侵入したHIVの増殖を抑制し、感染を防ぐ効果があることから、感染の危険に対し有効であると認められる場合には、療養の範囲として取り扱う。
ロ HIV感染が確認された場合の取扱い
(イ) 業務起因性の判断
原則として、次に掲げる要件をすべて満たすものについては、業務に起因するものと判断される。
a HIVに汚染された血液等を取り扱う業務に従事し、かつ、当該血液等に接触した事実が認められること(前記イの(イ)参照)。
b HIVに感染したと推定される時期から6週間ないし8週間を経てHIV抗体が陽性と診断されていること(前記(2)のホ参照)。
c 業務以外の原因によるものでないこと。
(ロ) 療養の範囲
前記(イ)の業務起因性が認められる場合であって、HIV抗体検査等の検査によりHIVに感染したことが明らかとなった以後に行われる検査及びHIV感染症に対する治療については、業務上疾病に対する療養の範囲に含まれるものである。
3 MRSA感染症について
(1) 法令上の取扱い
MRSA感染症は、その原因となる病原体がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌であり、また、後記(2)のロに示すとおり伝染性をもつものである。
したがって、業務に起因する医療従事者等のMRSA感染症については、186号通達の記の第2の2の(6)のイの(ハ)及び(ニ)に示す「ウイルス性肝炎等」に含むこととし、労基則別表第1の2第6号1又は5に定める業務上の疾病に該当するものとする。
また、業務上の負傷(皮膚の創傷等)部位からMRSAが侵入し、又は業務上の負傷の治療過程においてMRSAに感染することによるMRSA感染症は、労基則別表第1の2第1号に該当するものである。
さらに、労基則別表第1の2第1号から第9号に定める業務上の疾病の治療過程においてMRSAに感染することによるMRSA感染症は、当該業務上の疾病に付随する疾病としてそれぞれ取り扱われる。
なお、通勤災害による傷病の治療過程においてMRSAに感染することによるMRSA感染症は、労働者災害補償保険法施行規則第18条の4に定める通勤による負傷に起因する疾病その他通勤に起因することの明らかな疾病(以下「通勤による疾病」という。)として取り扱われる。
(2) MRSA感染症に係る医学的事項
イ MRSAの病像等
MRSAは、ペニシリン系はもとより、セフェム系抗生物質やアミノ配糖体系抗生物質にも広く耐性を持つ多剤耐性の黄色ブドウ球菌である。
黄色ブドウ球菌は、ヒトの鼻腔、咽頭、口腔、皮膚及び腸管内に常在する細菌であるが、化膿性疾患の主要な原因ともなる細菌である。
黄色ブドウ球菌による感染症の治療には1940年代以降、ペニシリンG、テトラサイクリン等が使用されたが、その都度、これらの抗生物質に耐性を持つ黄色ブドウ球菌が出現した。そのため、これらの耐性黄色ブドウ球菌に優れた抗菌力を示すメチシリン、オキサシリン等の抗生物質が開発されたが、さらに、これらの抗生物質にも耐性を持つMRSAの出現をみるに至った。
その後、第一・第二世代セフェム系抗生物質の使用を経て、第三世代セフェム系抗生物質が広く使用されることとなったが、第三世代セフェム系抗生物質は、黄色ブドウ球菌に対しては第一・第二世代セフェム系抗生物質より抗菌力が劣っていたため、MRSAの出現頻度が増大し、近年、MRSAによる感染症が多発している状況にある。
MRSAは、通常の黄色ブドウ球菌と比べて、特に毒性が強いわけではなく、健康人には無害であるとされているが、免疫不全患者や高齢患者(特に寝たきりの高齢患者)などの易感染性患者(MRSAによって重篤な感染症を惹起しやすい患者)が感染すると、重篤な症状を呈するといわれている。
ロ 感染源、感染経路
(イ) MRSAは、主に医療機関内で発生することから、感染の機会も主に医療機関内であり、その主な感染源には次のものがあるとされている。
a MRSAに感染した入院患者
(a) 不適切な抗生物質の使用により入院患者がもともと持っている黄色ブドウ球菌がMRSAに変異する場合
(b) 他の医療機関でMRSAに感染した患者が入院した場合
b 医療従事者等の健康保菌者
MRSAに感染した入院患者等に接触することにより、MRSAの保菌状態(MRSA感染による症状を呈していない状態)にある場合
(ロ) MRSAは、感染者又は健康保菌者の鼻腔、咽頭、感染病巣等からの接触・飛沫感染により、ヒトからヒトへ直接伝播する場合とMRSAに感染された医療器具、シーツ、寝具等を介して間接伝播する場合があるとされている。
ハ 症状等
MRSA感染症は、その特有な多剤耐性という以外は、通常の黄色ブドウ球菌による感染症と同様の臨床像を呈すると考えられている。
MRSA感染としては、表層感染と深部感染の二つに大別でき、それぞれの概要は次のとおりである。
(イ) 表層感染
表層感染によるMRSA感染症としては、皮膚の化膿巣、中耳炎等があるが、一般には良好な経過をたどるものが多いとされている。
しかし、易感染性患者においては、感染症状は遷延化し、時として深部感染に移行する場合がある。
(ロ) 深部感染
深部感染によるMRSA感染症としては、髄膜炎、肺炎、腹膜炎、腸炎等があるが、適切な治療が行われないと敗血症に至り、死亡する場合がある。
(3) 労災保険上の取扱い
労災保険におけるMRSA感染症の取扱いは、他の細菌による感染症と同様であるが、その感染の機会は医療機関内である場合が多いことから、労災補償の対象となるのは、業務災害又は通勤災害により療養を行っている者(以下「労災患者」という。)及び医療従事者等が考えられる。
したがって、労災患者がその療養中にMRSAに感染した場合あるいは医療従事者等がMRSAに業務上感染した場合であって、前記(2)のハに示す症状を呈するに至ったときは、当該MRSA感染症は、前記(1)の区分に従って業務上疾病又は通勤による疾病として取り扱われるとともに、医学上必要な治療(検査を含む。)は保険給付の対象となる。
イ 業務起因性の判断
(イ) 労災患者の場合
労災患者のMRSA感染症で、次に掲げる要件をすべて満たすものについては、原則として、業務に起因するもの(通勤災害により療養を行っている者のMRSA感染症にあっては、通勤に起因するもの。)と判断される。
a 当該労災患者が療養を行っている医療機関において、MRSAに感染していることが確認された入院患者等(当該労災患者を含む。)がみられること(前記(2)のロの(イ)参照)。
b 感染症状が認められる部位(当該労災患者が療養を行う原因となった傷病の部位以外の部位を含む。)からMRSAが検出されていること。
c 当該労災患者が療養を行っている医療機関以外において感染したものでないこと。
(ロ) 医療従事者等の場合
医療従事者等のMRSA感染症は、易感染性患者と異なり、一般的には深部感染は考えにくいものである。
したがって、表層感染に限り、原則として、次に掲げる要件をすべて満たすものについては、業務に起因するものと判断される。
a 当該医療従事者等の勤務する医療機関においてMRSAに感染していることが確認された入院患者等がみられること(前記(2)のロの(イ)参照)。
b 感染症状が認められる部位からMRSAが検出されていること。
c 業務以外の原因によるものでないこと。
ロ 療養の範囲
前記イの業務起因性が認められる場合のMRSA感染症について、医学上必要な治療(検査を含む。)が行われた場合には、当該治療は、業務上疾病又は通勤による疾病に対する療養の範囲に含まれるものである。
なお、労災患者については、前記イの業務起因性が認められない場合であっても、当該労災患者が療養を行う原因となった傷病の部位からMRSAが侵入し、感染症状を呈するに至ったものと医学的に認められ、かつ、当該傷病に対する治療の必要上、MRSA感染症に対する治療も併せて行わなければ治療効果が期待できないと認められる場合には、当該MRSA感染症に対する治療は、当該傷病に対する療養の範囲に含めるものとする。
4 報告等
(1) エイズについての労災保険給付の請求が行われた場合には、「補504労災保険の情報の速報」の1の(1)のロの(ニ)に該当する疾病として速やかに本省あて報告すること。
(2) C型肝炎(他のウイルス肝炎を含む。)、エイズ及びMRSA感染症に係る事案に関し、その業務起因性について疑義がある場合には、関係資料を添えて本省あて協議すること。