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通達:労働者派遣事業に対する労働保険の適用及び派遣労働者に係る労働者災害補償保険の給付に関する留意事項等について

 

労働者派遣事業に対する労働保険の適用及び派遣労働者に係る労働者災害補償保険の給付に関する留意事項等について

昭和61年6月30日発労徴第41号・基発第383号

(各都道府県労働基準局長、各都道府県知事あて労働大臣官房長、労働省労働基準局長通達)

 

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六○年法律第八八号)、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令(昭和六一年政令第九五号)及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則(昭和六一年労働省令第二○号)については、本年七月一日から施行されることとなり、労働者派遣事業が労働力需給システムの一つとして制度化され、また、その適正な運営の確保を図るための国の監督指導等について規定が設けられ、また、派遣労働者の適正な就業を確保するため、就業条件の明確化、雇用・管理体制の整備が図られるとともに、労働基準法の適用に関する特例措置等が講じられることとなった。

ついては、労働者派遣事業に対する労働保険の適用及び派遣労働者に係る労働者災害補償保険の給付について、下記により取り扱うこととしたので、留意の上事務処理に遺漏のないよう配慮されたい。

 

第一 労働者派遣の概念について

労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」ものである(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)第二条第一号)。この場合の「雇用関係」とは、労働基準法第九条の使用する関係(以下「労働契約関係」という。)と同義である。

したがって、労働者派遣における派遣元、派遣先及び派遣労働者の三者間の関係は、①派遣元と派遣労働者との間に労働契約関係があり、②派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき派遣元が派遣先に労働者を派遣し、③派遣先は、派遣元から委ねられた指揮命令権により派遣労働者を指揮命令するというものである。

なお、請負、出向、派遣店員及び労働者供給との関係等については、別添一「労働者派遣と請負、出向、派遣店員及び労働者供給との関係等」(昭和六一年六月六日付け基発三三三号の別添)によるが、出向と労働者派遣との差異は、①移籍出向の場合、出向元の事業主との間の雇用関係は終了していることから、労働者派遣とは異なる形態であることは明らかであり、②在籍出向の場合、出向元の事業主との間に雇用関係がある点では労働者派遣と同様であるが、出向先の事業主との間にも雇用関係があり、かつ、出向元の事業主と出向先の事業主との間の出向契約により、出向労働者を出向先の事業主に雇用させることを約しているものと解され、したがって、この点において派遣先事業主と派遣労働者との間に雇用関係が存在せず、事実上の指揮命令関係にとどまる労働者派遣とは異なるものである。

図

出向労働者に対する労働者災害補償保険の適用については、従前の取扱い(昭和三五年一一月二日付け基発第九三二号)どおりである。

 

第二 労働者派遣事業に対する労働保険の適用について

一 総論的事項

労働者派遣事業に対する労働保険の適用については、労働者災害補償保険・雇用保険双方とも派遣元事業主の事業が適用事業とされる。

(一) 労働者災害補償保険について

イ 労働基準法の災害補償責任の所在について

労働者派遣事業における事業主の災害補償責任については、

(イ) 派遣元事業主は、労働者の派遣先事業場を任意に選択できる立場にあり、労災事故の起きた派遣先事業主と労働者派遣契約を締結し、それに基づいて労働者を派遣したことに責任があること、

(ロ) 派遣元事業主は、派遣労働者を雇用し、自己の業務命令によって派遣先の事業場において就労させているのであるから、派遣労働者を雇用している者として、派遣先の事業場において派遣労働者の安全衛生が確保されるよう十分配慮する責任があること(この責務については、労働者派遣法第三一条に明記されている。)、

(ハ) 業務上の負傷・疾病に係る解雇制限の規定(労働基準法第一九条第一項)あるいは、補償を受ける権利の退職による不変更の規定(労働基準法第八三条第一項)は、労働契約関係の当事者である派遣元事業主に災害補償責任のあることを前提としていると考えられること、

等を考慮し、労働者派遣法においては、特例を設けず、派遣元事業主に災害補償責任を負わせることとされている。

ロ 労働者災害補償保険法の適用について

労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五○号。以下「労災保険法」という。)に関しては、同法第三条第一項は「労働者を使用する事業を適用事業とする」と規定しており、この「使用する」は労働基準法等における「使用する」と同様労働契約関係にあるという意味に解されており、また、上記イのような事情から労働基準法上の災害補償責任が派遣元事業主に課される以上、労災保険法と労働基準法との関係を考慮すれば、労災保険法の適用についても同様に取り扱い、派遣元事業主を労災保険の適用事業とすることが適当である。このため、労働者派遣法においても労災保険法の適用について定める特段の規定は設けられていない。

(二) 雇用保険について

雇用保険法(昭和四九年法律第一一六号)に関しては、同法第五条第一項は「労働者が雇用される事業を適用事業とする」と規定していることから、派遣元事業主の事業が適用事業となる。

二 各論的事項

(一) 適用単位について

労働者派遣法に基づく労働者派遣を行う事業(以下「労働者派遣事業」という。)については、労働者派遣法第二条第二号に規定する派遣労働者を含めた派遣元事業場を一の事業として取り扱う。ただし、労働者派遣事業と他の事業とを併せ行う事業については、それぞれの事業が活動組織として独立したものか否かを総合的に判断して適用単位を決定すること。

(二) 保険料率について

イ 労災保険率の適用について

(イ) 労働者派遣事業に係る労災保険率の適用は、派遣労働者の派遣先での作業実態に基づき「労災保険率適用事業細目表(昭和四七年労働省告示第一六号)」により事業の種類を決定し、労災保険率表(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則別表第一)による労災保険率を適用すること。

派遣労働者の派遣先での作業実態が数種にわたる場合には、主たる作業実態に基づき事業の種類を決定することとし、この場合の主たる作業実態は、それぞれの作業に従事する派遣労働者の数、当該派遣労働者に係る賃金総額等により判断するものとする。

なお、労働者派遣事業と他の事業を一の事業として併せて行う事業であって適用上一の事業として扱われるものについては、その主たる業態に基づき事業の種類を決定すること。

(ロ) 派遣労働者を含め適用上一の事業として扱われる派遣元事業場がメリット制の適用要件を満たしている場合には、当然、メリット制を適用すること。

また、派遣労働者の派遣先での作業実態のうち主たるものの変更に伴い、事業の種類を変更した事業であっても、事業が実質的に継続していると認められる場合には、メリット制の適用は継続されること。

ロ 雇用保険率の適用について

雇用保険率は、労働者派遣事業を専ら行う事業の場合は、一、○○○分の一四・五(昭和六一年度については一、○○○分の一四)とする。

ただし、労働者派遣事業と他の事業とを併せ行う事業であって、当該労働者派遣事業が独立した事業と認められない場合には、その主たる事業が何であるかにより決定すること。

(三) 保険料の徴収について

イ 保険料の申告・納付について

労働者派遣事業に係る保険料の納付義務は、すべて派遣元事業主が負うこととなる。したがって、派遣元事業主において保険料の申告・納付が適正に行われるよう十分な指導を行うこと。

なお、労働保険の適用事業であって、従前から業務処理請負業を行い、当該事業内容に事実上変更がなく本年七月一日以降において労働者派遣法の規定による許可を受けたことにより労働者派遣事業に移行するものについては、徴収法第一六条の規定により増加概算保険料の申告・納付手続を要するものを除き、当該保険年度末の確定精算手続のみで足りるものであること。

ロ 労働保険料算定基礎調査について

派遣元事業場に係る労働保険料算定基礎調査(以下「算調」という。)を行うに当たっては、従来から調査の対象としている帳簿書類のほか、「派遣元管理台帳」(労働者派遣法第三七条の規定に基づき派遣元事業主が作成、保存する。)、「労働者派遣事業報告書」(労働者派遣法第二三条の規定に基づき派遣元事業主が作成する。)等を調査の対象に加えることとする。

ハ 雇用保険の被保険者の範囲について

雇用保険の被保険者の範囲については、昭和六一年六月一九日付け職発第三六九号「一般労働者派遣事業に雇用される派遣労働者に対する雇用保険の取扱いについて」をもって労働省職業安定局長から各都道府県知事あて通達されたところであり、同通達を参考まで添付する。

 

第三 派遣労働者に係る労働者災害補償保険の給付について

一 業務災害及び通勤災害の認定について

(一) 業務災害の認定

派遣労働者に係る業務災害の認定に当たっては、派遣労働者が派遣元事業主との間の労働契約に基づき派遣元事業主の支配下にある場合及び派遣元事業と派遣先事業との間の労働者派遣契約に基づき派遣先事業主の支配下にある場合には、一般に業務遂行性があるものとして取り扱うこと。

なお、派遣元事業場と派遣先事業場との間の往復の行為については、それが派遣元事業主又は派遣先事業主の業務命令によるものであれば一般に業務遂行性が認められるものであること。

(二) 通勤災害の認定

派遣労働者に係る通勤災害の認定に当たっては、派遣元事業主又は派遣先事業主の指揮命令により業務を開始し、又は終了する場所が「就業の場所」となること。したがって、派遣労働者の住居と派遣元事業場又は派遣先事業場との間の往復の行為は、一般に「通勤」となること。

二 費用徴収について

(一) 労災保険法第一二条の三関係

派遣労働者が偽りその他不正の手段により保険給付を受けた場合において、労災保険法第一二条の三第二項の規定は、派遣元事業主が不当に保険給付を受けさせることを意図して、事実と異なる報告又は証明を行ったものであるときに、派遣元事業主に対して適用すること。

なお、派遣先事業主に対しては、労災保険法第一二条の三第二項の規定は適用されない。

(二) 労災保険法第二五条関係

派遣労働者の被った業務災害が派遣元事業主の故意又は重大な過失により生じたものであるときは、当該派遣事業主に対し労災保険法第二五条第一項第二号の規定による費用徴収を行うこと。

なお、派遣先事業主に対しては、労災保険法第二五条第一項第二号の規定は適用されない。

三 第三者行為災害の求償について

(一) 派遣労働者と派遣先事業場所属の労働者相互の加害行為による業務災害及び通勤災害については、加害者の事業主が、民法第七一五条の規定による使用者責任を、又は自動車損害賠償法の規定による運行供用者責任を負う場合には労災保険法第一二条の四の規定に基づく求償権の行使を差し控えること。

(二) 派遣労働者の被った業務災害が派遣先事業主の故意又は重大な過失により生じたものであるときは、保険給付の価額の三○パーセント相当額を限度として求償権を行使すること。

四 その他事務処理上の留意点について

(一) 派遣労働者については、その就労形態の特異性に鑑み、保険給付の請求に当たり特に次により取り扱うこととするので、請求人ほか関係者の指導に努めること。

イ 保険給付請求書の事業主の証明は派遣元事業主が行うが、当該証明の根拠を明らかにさせるため、死傷病報告書の写等災害の発生年月日、災害の原因及び災害の発生状況に関して派遣先事業主が作成した文書を療養(補償)給付以外の保険給付の最初の請求を行う際に添付させること。

なお、療養(補償)給付のみの請求がなされる場合にあっては、派遣先事業主に、当該請求書の記載事項のうち、事業主が証明する事項の記載内容が事実と相違ない旨、当該請求書の余白又は裏面に記載させること。

ロ 当該派遣労働者に係る労働者派遣契約の内容等を把握するため、当該派遣労働者に係る「派遣元管理台帳」の写を当該保険給付請求書に添付させること。

(二) 上記(一)において添付することとした文書が添付されないときは、別途提出するよう指導し、必要に応じ実地調査等により確認すること。

(三) なお、安全衛生関係法令の規定は原則として派遣先事業に適用され、死傷病報告は派遣先事業主から当該派遣先事業の所在地を管轄する労働基準監督署に提出されることとなり、また、災害調査等も当該労働基準監督署において実施されるので、実地調査等に際しては、まず、派遣先事業に管轄する労働基準監督署へ照会すること。

 

別添1

労働者派遣と請負、出向、派遣店員及び労働者供給との関係等

1 請負との関係

請負とは、仕事の完成を目的とする契約関係であり、請負人が請負った仕事を自己の雇用する労働者に行わせる場合についても、請負人が自らの責任において当該労働者を指揮命令するのであって、本来労働者派遣には該当しないものである。

しかしながら、請負という形式で行われている場合であっても、実質的には注文主が請負人の雇用する労働者を指揮命令している場合には、労働者派遣に該当する場合もあり、労働者派遣ではなく、請負により事業を行っていると判断されるためには、

第1に、その雇用する労働者の労働力を当該事業主(請負人)が自ら直接利用すること、すなわち、当該労働者の作業の遂行について、当該事業主(請負人)が直接指揮監督のすべてを行うとともに、

第2に、当該業務を自己の業務として相手方(注文主)から独立して処理すること、すなわち、当該業務が当該事業主(請負人)の業務として、その有する能力に基づき自己の責任の下に処理されることが必要であるが、具体的には、昭和61年労働省告示第37号により示された次の基準に基づき判断を行うこと。

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準

請負契約の形式に基づき、その雇用する労働者を業として業務に従事させる事業主であっても、次のⅠ及びⅡのいずれをも満たす場合を除き、労働者派遣事業を行う者に該当する。

Ⅰ 労働力を自ら直接利用すること。

当該労働者の労働力を当該事業主が自ら直接利用するとは次の1、2及び3のいずれをも満たす場合である。

1 業務の遂行に関する指示、管理を自ら行うこと。

業務の遂行に関する指示、管理を自ら行うとは次の①及び②のいずれをも満たす場合である。

① 当該労働者に対する業務の遂行方法に関する指示、管理を当該事業主が行うものであること。

当該要件の判断は、当該労働者に対する仕事の割り付け、順序、緩急の調整等につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。

② 当該労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示、管理を当該事業主が行うものであること。

当該要件の判断は、当該労働者の業務の遂行に関する技術的な指導、勤惰点検、出来高査定等につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。

2 労働時間の管理を自ら行うこと。

労働時間の管理を自ら行うとは次の①及び②のいずれをも満たす場合である。

① 当該労働者の出退勤、休憩時間等の管理(単なる時間の把握は除く。)及び休暇、休日等の管理は、当該事業主が行うものであること。

② 当該労働者に対する時間外・休日労働の命令は、当該事業主が行うものであること。

3 企業秩序の維持確保等のための指揮監督を自ら行うこと。

企業秩序の維持確保等のための指揮監督を自ら行うとは次の①及び②のいずれをも満たす場合である。

① 当該業務に従事する労働者に係る服務規律については、当該事業主が決定し、管理するものであること。

当該要件の判断は、当該労働者に係る事業所への入退場に関する規律、服装、職場秩序の保持、風紀維持のための規律等の決定、管理につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。

② 当該業務に従事する労働者の配置等の決定及び変更は、当該事業主が行うものであること。

当該要件の判断は、当該労働者に係る勤務場所、直接指揮命令する者等の決定及び変更につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。

Ⅱ 当該業務を自己の業務として相手方から独立して処理すること。

当該事業主が当該業務を自己の業務として相手方から独立して処理するとは次の①、②及び③のいずれも満たす場合である。

① 当該業務を処理するために必要な資金については、当該事業主がすべて自己の責任で調達し支弁するものであること。

当該要件の判断に当たり、資金についての調達、支弁の方法は特に問わない。

② 当該業務の処理について、当該事業主が民法、商法その他の法律に規定された事業主として負うべきすべての責任を負うものであること。

③ 当該業務の処理について当該事業主が次のイ又はロのいずれかに該当する場合であって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。

イ 当該事業主が自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、当該業務を処理すること。

当該要件は、機械、設備、資材等の所有関係、購入経路等の如何を問うものではないが、機械等が相手方から借り入れ又は購入されたものについては、別個の双務契約による正当なものであることが必要である。

ロ 当該事業主が行う企画又は当該事業主が有する専門的技術若しくは専門的経験に基づいて、当該業務を処理すること。

当該要件は、業務を処理する個々の労働者が有する技術、技能等に関するものでない。

(注) 上記基準のすべてに該当する場合であっても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働者派遣にあるときは、労働者派遣であることを免れることができない。

2 出向との関係

出向とは、出向元と何らかの労働関係を保ちながら、出向先との間において新たな労働契約関係に基づき相当期間継続的に勤務する形態であり、出向元との関係から在籍型出向と移籍型出向とに分類される。

(1) 在籍型出向

在籍型出向は、出向先と出向労働者との間に出向元から委ねられた指揮命令関係ではなく、労働契約関係及びこれに基づく指揮命令関係がある形態であり、労働者派遣には該当しない。

出向先と出向労働者との間に労働契約関係が存するか否かは、出向・派遣という名称によることなく出向先と労働者との間の労働関係の実態により、出向先が出向労働者に対する指揮命令権を有していることに加え、出向先が賃金の全部又は一部の支払いをすること、出向先の就業規則の適用があること、出向先が独自に出向労働者の労働条件を変更することがあること、出向先において社会・労働保険へ加入していること等総合的に勘案して判断すること。

なお、在籍型出向の出向労働者については、出向元及び出向先の双方とそれぞれ労働契約関係があるので、出向元及び出向先に対しては、それぞれ労働契約関係が存する限度で労働基準法等の適用がある。すなわち、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取決めによって定められた権限と責任に応じて出向元の使用者又は出向先の使用者が出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負うものである。この点については、昭和59年10月18日付け労働基準法研究会報告「派遣、出向等複雑な労働関係に対する労働基準法等の適用について」中「3いわゆる出向型に対する労働基準法等の適用関係」を参照のこと。

(2) 移籍型出向

移籍型出向は、出向先との間にのみ労働契約関係がある形態であり、出向元と出向労働者との労働契約関係は終了しており、労働者派遣には該当しない。

なお、移籍型出向の出向労働者については、出向先とのみ労働契約関係があるので、出向先についてのみ労働基準法等の適用がある。

3 派遣店員との関係

デパート、スーパーマーケット等におけるいわゆる派遣店員については、種々の形態があるが、派遣元(メーカー、卸売店等)との労働契約関係に基づき、派遣元の業務命令を受けて、派遣元の商品の販売促進等派遣元の業務に従事する者であって、派遣先(デパート、スーパーマーケット等)の指揮命令を受けないものの派遣は、労働者派遣に該当しないものであるが、派遣先が当該派遣店員を現実に指揮命令して、派遣先の業務に従事させる場合は労働者派遣に該当することとなる。

この場合の派遣店員が、派遣先の指揮命令を受けているか否かは、(1)請負との関係「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区別に関する基準」中「Ⅰ労働力を自ら直接利用すること」に準じて判断すること。

なお、派遣店員のうち、派遣先の指揮命令を受けない者については、派遣元についてのみ労働基準法等の適用があるが、派遣先の指揮命令を受けるものについては、労働者派遣法第3章第4節労働基準法等の適用に関する特例等の適用があり、同節に定めるところにより、派遣元及び派遣先に対して、労働基準法等の適用があることとなる。

4 労働者供給との関係

イ 労働者供給とは、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないもの」である(職業安定法第5条第6項)。

したがって、供給元と労働者との間に労働契約関係がない場合には供給先と労働者との間の労働契約関係の有無を問わず供給契約に基づいて労働者を供給先の指揮命令を受けて労働に従事させるものが労働者供給に該当するものであること。

ロ 供給元と労働者との間に労働契約関係がある場合であっても、供給先に労働者を雇用させることを約しているものは労働者派遣に該当せず、労働者供給に該当するものであること。

この場合における「供給先に労働者を雇用させることを約しているもの」の判断については、供給元、供給先間において労働者を供給先に契約書等において雇用させる旨の意思の合致が客観的に認められる場合はその旨判断するが、それ以外の場合は、次のような基準に従い判断されるものであること。

① 労働者の派遣が労働者派遣法の定める枠組みに従って行われる場合は、原則として、派遣先(供給先)に労働者を雇用させることを約して行われるものとは判断しないこと。

② 派遣元が企業としての人的物的な実体(独立性)を有しない個人又はグループであり、派遣元自体も当該派遣元の労働者とともに派遣先の組織に組み込まれてその一部と化している場合、派遣元は企業としての人的物的な実体を有するが、当該労働者の派遣の実態は、派遣先の労働者募集、賃金支払の代行となっている場合その他これに準ずるような場合については、例外的に派遣先(供給先)に労働者を雇用させることを約して行われるものと判断することがあること。

 

別添2

昭和61年6月19日職発第369号

各都道府県知事  殿

労働省職業安定局長

一般労働者派遣事業に雇用される派遣労働者に対する雇用保険の取扱いについて

雇用保険業務については、日頃より御配慮を煩わしているところであるが、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)が本年7月1日から施行されることとなったことに伴い、標記については、昭和60年8月7日付け職発第440号「雇用保険業務(適用・給付・日雇関係)の業務取扱要領について」(以下「業務取扱要領」という。)によるほか、下記によることとしたので、その円滑な実施に特段の御配意をお願いする。

なお、一般労働者派遣事業に雇用される派遣労働者のうち常時雇用される労働者及び特定労働者派遣事業に雇用される労働者については、業務取扱要領によれば足りるものであるので、念のため申し添える。

1 派遣労働者のうち雇用保険被保険者(以下「被保険者」という。)となるものの範囲

(1) 次のイ及びロのいずれにも該当する者について被保険者として取り扱うこと。

この場合、その者が他の社会保険(被用者保険に限る。)において被保険者として取り扱われている者であるかどうかも、判断の参考とすることとし、雇用保険のみについて被保険者として取り扱われることを希望するような者は被保険者として取り扱わないこと。

イ 反復継続して派遣就業(派遣就業のほか、派遣労働者として雇用されているが、現に労働者派遣をされていないことを含む。以下同じ。)する者であること。

次のいずれかに該当するような者は本要件には該当しないこと。

(イ) 所定労働日が極めて少ない者

(ロ) 所定労働時間が極めて短い者

(ハ) 期間を限って派遣就業することを希望する者

(ニ) その者の希望職種・技能等からみて期間を限った派遣就業しか見込みの立たない者

なお、一の派遣就業に係る期間(以下「派遣期間」という。)が短期間であっても、当該労働者が引き続き派遣就業することとなっているときは、一の派遣就業の終了から次回の派遣就業の開始までの間に若干の間隔が見込まれる場合であっても、継続して派遣就業する者であるとして取り扱うこと。

ロ 家計補助的な者でないこと。

(2) 短時間就労者については、(1)によるほか、業務取扱要領20368により判断すること。

2 被保険者種類

1により被保険者となるものについては、一般被保険者として取り扱うこと。

3 被保険者資格の得喪日

(1) 被保険者資格を取得する日

イ 派遣就業の開始の日

ロ ただし、従前から派遣就業していた者が就業条件の変更等により新たな派遣就業から1に該当することとなった場合には、当該新派遣就業の開始の日

(2) 被保険者資格を喪失する日

イ 最終の派遣就業の終了の日の翌日

ロ ただし、派遣就業の終了後、就業条件の変更等により以後の派遣就業によっては1に該当しないこととなった場合には、当該派遣就業の終了の日の翌日

なお、1に該当する派遣就業に復帰することを前提として、臨時的・一時的に1に該当しないこととなる場合には、被保険者資格は継続させること。

4 失業の認定について

(1) 今後、派遣事業に雇用される者が増加することが見込まれるので、受給資格の決定及び失業の認定に際しては、派遣就業の予定の有無を確認すること。

(2) 派遣就業の予定のある者については、派遣就業の開始までのごく短期間の臨時的就労のみを希望する者であると推定される場合が多いので、その労働の意思の確認には慎重を期すること。

5 再就職手当の支給について

当初における派遣就業の期間が1年以下である場合は、雇用保険法施行規則第82条第1項第1号に定める「1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる職業に就いたこと。」には該当しないので、派遣労働者に対する再就職手当の支給要件の確認に当たっては、十分留意すること。