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通達:今後の産業別最低賃金制度の運営について

 

今後の産業別最低賃金制度の運営について

昭和61年3月31日基発第188号

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)

 

今後の産業別最低賃金制度の運営については、本年2月14日に、労働大臣あて提出された中央最低賃金審議会の答申「現行産業別最低賃金の廃止及び新産業別最低賃金への転換等について」(以下「答申」という。)によりその具体的な方向が示されたところである。答申は、昭和56年7月29日の中央最低賃金審議会の答申「最低賃金額の決定の前提となる基本的事項に関する考え方について」に示された新しい産業別最低賃金の基本的な方向に沿って、速やかに現行の産業別最低賃金の整理及び新しい産業別最低賃金への転換を図ること等を内容としており、我が国の最低賃金制度の発展のためにも、その着実な実施が望まれているものである。

ついては、答申の地方最低賃金審議会に対する伝達方等について、既に昭和61年2月24日付け基賃発第20号により指示しているところであるが、今般、答申の趣旨を踏まえた今後の産業別最低賃金制度の運営の取扱いについて、下記のとおりとすることとしたので、その実施に遺憾無きを期されたい。また、その実施に当たっては、新しい産業別最低賃金は関係労使の自主性を尊重して設定されるものであるという答申の基本的考え方に鑑み、広く答申の趣旨を徹底する等により、労使をはじめとする関係者の理解と協力の下に制度の円滑な運営が図られるよう努められたい。

なお、本通達の施行に伴い、「今後の最低賃金行政の推進について」(昭和57年3月31日付け基発第217号)の第1及び第2は廃止する。

 

第1 現行産業別最低賃金の廃止及び新産業別最低賃金への転換等について

1 基本的な考え方

昭和56年7月29日の中央最低賃金審議会の答申においては、現行の産業別最低賃金(以下「現行産業別最低賃金」という。)は、最低賃金の適用の効率的拡大を図るという役割を果たしてきたが、地域のすべての労働者に適用される地域別最低賃金が定着し、低賃金労働者の労働条件の向上に実効をもつようになってきた現在においては、現行産業別最低賃金のこうした経過措置的な役割・機能の見直しを行うことが必要であるとの見地から、今後の産業別最低賃金については、最低賃金法(以下「法」という。)第11条の規定に基づくもののほか、法第16条の4の規定の手続による関係労使の申出を経て最低賃金審議会が地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を必要と認めたものについて、新しい産業別最低賃金として設定するとの考え方が示された。

答申においても、この考え方は堅持されているところであり、現行産業別最低賃金については、速やかに整理するものとするが、現在の賃金秩序に急激な変化を与えることを避けるとともに、業種によっては上記の新しい産業別最低賃金(以下「新産業別最低賃金」という。)への転換の準備期間を考慮する必要があることから、その整理に当たっては次のような方針によって行うこととする。

(1) 現行産業別最低賃金について、地域別最低賃金の対象とすることが適当と認められる年齢、業務及び業種に関し、当該産業別最低賃金は適用除外とする措置を計画的、段階的に行いつつ、昭和63年度までの間は、金額の改定を行うとともに、新産業別最低賃金へ転換することが適当なものについては、当該転換のために必要な準備又は調整を進めるものとする。

(2) 上記(1)に示した措置が行われ、かつ、地域別最低賃金よりも高い最低賃金を設定することについて合理的な理由があると認められるものの新産業別最低賃金への転換については、関係者は積極的に努力するものとする。

なお、昭和57年1月14日の中央最低賃金審議会の答申「新しい産業別最低賃金の運用方針について」(以下「新産業別最低賃金の運用方針」という。)は、経過措置として必要な見直しを行い、これに合致する場合は、ここでいう「合理的な理由」があるものとして取り扱うものとする。

(3) 昭和64年度においては、現行産業別最低賃金から新産業別最低賃金へ転換するものについて所要の手続を終了することとし、同年度以後は現行産業別最低賃金の改正諮問を行わないものとする。

2 現行産業別最低賃金についての適用除外の措置

(1) 年齢に関する適用除外の措置

イ 昭和60年7月26日の中央最低賃金審議会の建議によって要請されていた18歳未満及び65歳以上の者についての適用除外(当該適用除外の対象者を地域別最低賃金の適用とすることをいう。以下同じ。)の措置が実施されていない現行産業別最低賃金については、当該現行産業別最低賃金に係る昭和61年度以後の改正諮問は、当該適用除外の措置を実施するという地方最低賃金審議会における方針の決定を待って、行うものとする。

この場合の「方針の決定」は、当該年度中に当該適用除外の措置を実施することについて、決議、申合せ、議事録確認等その形式の如何は問わないが、産業別最低賃金の改正審議を拘束するようなものとして行うものとする。

ロ 上記イの「方針の決定」が行われない場合には、改正諮問が行われず当該産業別最低賃金の金額は据え置かれることになるが、この結果、改正諮問が行われず当該産業別最低賃金の金額水準が当該地域別最低賃金の金額水準を下回った場合には、当該現行産業別最低賃金の廃止諮問を行うものとする。

(2) 業務に関する適用除外の措置

イ 昭和61年度において、地域別最低賃金の対象とすることが適当な業務に主として従事する者について、現行産業別最低賃金は適用除外とする措置を実施する。この場合、地域別最低賃金の対象とすることが適当な業務等に従事する者として、次の(イ)及び(ロ)に掲げる基準(以下「一般的基準」という。)に該当する者について、当該適用除外の措置を実施するものとする。

(イ) 次に掲げる業務に主として従事する者

a 清掃の業務

b 片付けの業務

(ロ) 雇入れ後一定期間未満の者であって技能習得中のもの

ロ 上記イの一般的基準に係る用語の意義は次のとおりである。

(イ) 「主として従事する者」とは、専ら清掃、片付けの業務に従事する労働者のほか、他の業務にも従事する労働者を含むが、月間の清掃、片付けの業務に従事する時間が当該労働者の月間総実労働時間の半分以上を占めているものをいうこと。

(ロ) 「一定期間」の長さについては、地方最低賃金審議会において業種ごとに決定するものとするが、その決定に当たっては、現行産業別最低賃金における同種の適当除外の措置の実施例を参考にしつつ、原則として3か月から2年までの範囲内で決定するものとすること。

なお、必要により、一つの産業別最低賃金において、業種ごとの実態に応じて異なる「一定期間」の長さを決定することも差し支えないこと。

(ハ) 「技能習得中のもの」とは、企業において実施される技能養成の対象となっている者をいうが、この場合の「技能養成」とは、職業能力開発促進法に基づく職業訓練に限定されるものではないが、次の要件に該当するものであること。

① 当該業務に従事した経験がない者では直ちに通常の業務の遂行が期待できない業務について認められること。したがって、離転職者を含め、ある程度当該業務に従事した経験のある者を対象とするものは含まれないこと。

② 職場の内外において集合的に実施されるもののほか、OJT(業務遂行の過程内において仕事を通じて行われる教育訓練)も含まれること。

③ 習得させるべき技能の内容及び技能養成の実施期間が明確であり、かつ計画性をもって実施されるものであること。

④ 技能養成を実施する担当者又は責任者が定められていること。

ハ 各産業に特有の軽易業務に従事する者についても、地方最低賃金審議会において地域の実情に応じて検討を進め、速やかに適用除外とする措置を実施するものとする。この場合、「各産業に特有の軽易業務」については、現行産業別最低賃金において、既に軽易業務に関する適用除外等の措置が実施されている例を参考として決定するものとする。

ニ 上記イの一般的基準に係る業務に関する適用除外の措置が実施されていない現行産業別最低賃金に関する昭和62年度以後の改正諮問は、当該適用除外の措置を実施するという地方最低賃金審議会における方針の決定を待って、行うものとする。また、上記(1)のイの後段及びロは、この場合においても同様である。

なお、上記ハの各産業に特有の軽易業務に関する適用除外の措置の実施の有無の如何は、現行産業別最低賃金の昭和62年度以後の改正諮問の取扱いに関係しないものである。

(3) 業種に関する適用除外の措置

イ 昭和62年度において、現行産業別最低賃金の適用される業種(原則として日本標準産業分類の小分類を単位とする。以下同じ。)のうち、各都道府県労働基準局が実施する小規模企業の賃金実態調査の結果に基づき、当該業種の労働者の賃金分布が当該都道府県の労働者の平均的な賃金分布に比べて低位にあると認められる業種(以下「適用除外対象業種」という。)について、現行産業別最低賃金は適用除外とする措置を実施するものとする。

上記の「各都道府県労働基準局が実施する小規模企業の賃金実態調査」とは、毎年実施している「最低賃金に関する基礎調査」を当てるものとするが、その実施に当たっての留意事項は別途指示する。

ロ 上記イの「適用除外対象業種」は、調査の結果における賃金に関する特性値のうち、第1・十分位数について、全調査産業計の数値を100として当該業種の数値を指数化したときに、当該業種の指数が100を明らかに下回る業種であって、第1・十分位数以外の賃金に関する特性値(原則として中分位数、第1・四分位数を用いる)についても同様な傾向があると認められるものを選定するものとする。

この場合、当該業種について、第1・十分位数を指数化したものが100未満となるものであって、上記の賃金に関する特性値も概ね100未満となるものを「同様の傾向がある」ものとして適用除外対象業種とするが、その判断に当たっては、必要に応じて賃金階級別累積度数分布図を作成する等により全体的な賃金分布の特性を把握したうえで行うものとする。

ハ 現行産業別最低賃金に関する昭和63年度における改正諮問は、上記イの業種に関する適用除外について検討中のものについても行うものとする。

3 新産業別最低賃金への転換に向けての措置

(1) 新産業別最低賃金への転換のための準備又は調整

年齢、業務及び業種に関する適用除外の措置を実施した現行産業別最低賃金について、新産業別最低賃金への転換が図られるためには、法第16条の4の規定の手続による関係労使の申出が行われるとともに、新産業別最低賃金の運用方針に合致する必要がある。

このため、昭和63年度までの間において、上記2の適用除外の措置のほか、下記第2のⅡの新産業別最低賃金の運用方針等に照らし、新産業別最低賃金への転換を図るため、更に業種に関する適用除外、適用対象業種の範囲(くくり方)等に工夫が必要であるものについて、所要の設定様式の変更の検討等当該転換のために必要な準備又は調整を行っておくものとする。

(2) 新産業別最低賃金の設定についての妥当性の検討

業種に関する適用除外の措置は、客観的な基準によって一律に実施されることから、類似の業種の大部分が適用除外されるにもかかわらず例外的に残される業種や、当該地域における主要産業であるが、適用除外対象業種に該当することが予想される業種等が生じる可能性がある。このため、これらの業種等については地方最低賃金審議会において、地域の実情や当該都道府県における今後の最低賃金の在り方等を勘案しつつ、新産業別最低賃金として設定することの是非等も併せて検討するものとする。

この場合、「例外的に残される業種」とは、類似の業務内容を持った業種の大部分が適用除外対象業種に該当するにもかかわらず、たまたま当該業種のみが残されているが、当該業種のみについては新産業別最低賃金を設定する必要性が認め難いもの等が考えられる。また、「当該地域における主要産業であるもの」か否かの判断に当たっては、例えば、当該地域における生産額ないし販売額等の面からみて大きなウェイトを持つことや、当該産業における賃金その他の労働条件が当該地域におけるその他の産業における労働条件にも大きな影響を及ぼしていること等の事情を考慮するものとする。

4 新産業別最低賃金への転換及び現行産業別最低賃金の廃止に向けての措置

(1) 新産業別最低賃金への転換

上記2及び3の措置を実施した現行産業別最低賃金については、法第16条の4の規定の手続による関係労使の申出があり、かつ下記第2のⅡの新産業別最低賃金の運用方針に合致する場合には、地域別最低賃金とは別に産業別最低賃金を設定することについて合理的理由があるものとして、新産業別最低賃金への転換が図られるよう関係者は積極的に審議し、昭和64年度中に当該転換が実施されるよう努力するものとする。

この場合の「関係者」には、関係労使はもとより公益代表委員のほか行政当局が含まれるものであり、上記により合理的理由があるとされる場合には、これらの関係者全体が、新産業別最低賃金への転換の方向を示した答申の趣旨を尊重したうえで、新産業別最低賃金への転換に向けて積極的に努力することが要請されるものである。

また、「昭和64年度中に当該転換が実施される」とは、新産業別最低賃金への転換のための所要の手続として、原則として新産業別最低賃金の設定の必要性についての決定が行われることをいうものである。

(2) 現行産業別最低賃金の廃止に向けての措置

上記(1)により新産業別最低賃金への転換が実施されない現行産業別最低賃金については、昭和64年度以後の改正諮問を行わないものとする。

転換が実施されない現行産業別最低賃金の金額は、昭和64年度以降は、据え置かれることになるが、この結果、当該産業別最低賃金の金額水準が当該都道府県の地域別最低賃金の金額水準を下回った場合には、当該産業別最低賃金の廃止諮問を行うものとする。

5 検討体制の整備

地方最低賃金審議会においては、上記2及び3の措置を円滑に実施するため、小委員会等の意見調整の場を設置する等必要な体制整備を図るものとする。

この場合、「小委員会等の意見調整の場」とは、運営小委員会、特別小委員会等の名称の如何を問わず、関係者の意見調整を行って実質的に地方最低賃金審議会としての方針決定ができるようなものであれば足り、産業ごとに設置された専門部会等の審議の場の活用によることとしても差し支えない。また、「意見調整」を行うべき事項としては、当該都道府県における今後の産業別最低賃金の在り方についての合意形成のほか、適用除外の措置の実施方針、更には新産業別最低賃金の運用方針に適合させるために必要な準備又は調整等が考えられるものである。

なお、上記の意見調整を行うべき事項については、早い段階から検討に着手することが望ましいものであり、昭和61年度から所要の検討体制が整備されるよう努力するものとする。

 

第2 新産業別最低賃金の運用について

Ⅰ 趣旨

1 新産業別最低賃金の設定

今後の産業別最低賃金は、上記第1により現行産業別最低賃金から新産業別最低賃金へ転換する場合を含め、関係労使が労働条件の向上又は事業の公正競争の確保の観点から地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を必要と認めるものに限定して設定すべきものとの昭和56年7月29日の中央最低賃金審議会の答申による考え方に則り、法第11条の規定に基づくもののほか、次のいずれか基準を満たす小くくりの産業であって、法第16条の4の規定に基づき、関係労使の申出があったものに設定するものとする。

(1) 同種の基幹的労働者の相当数について最低賃金に関する労働協約が適用されている産業

(2) 事業の公正競争を確保する観点から、同種の基幹的労働者について最低賃金を設定する必要の認められる産業

2 新産業別最低賃金の運用方針の見直し

昭和57年1月14日の中央最低賃金審議会の答申による新産業別最低賃金の運用方針は、次のとおりその一部改正等を行うものとする。(下記イ以外の新産業別最低賃金の運用の方針の内容については、昭和57年1月14日の中央最低賃金審議会の答申どおりとする。)

(1) 新産業別最低賃金の改正又は廃止に関する申出の場合の要件の一部を緩和するとともに、同種の基幹的労働者の相当数について最低賃金に関する労働協約が適用されている場合の申出等について、当該労働協約の適用対象労働者を基幹的労働者として取り扱えるようにすること。

(2) 新産業別最低賃金への転換等の場合について、次のような経過措置を設けること。

イ 新産業別最低賃金の決定に関する申出等の要件について次のとおりとすること。

(イ) 同種の基幹的労働者の相当数について最低賃金に関する労働協約が適用されている場合の要件について、当該労働協約の適用を受ける同種の基幹的労働者の「2分の1以上」をその「概ね3分の1以上」とすること。

(ロ) 事業の公正競争を確保する観点から、同種の基幹的労働者について最低賃金を設定することが必要であるとして、当該最低賃金の適用を受けるべき労働者又は使用者の概ね3分の1以上のものの合意による申出があったものは、事業の公正競争を確保する観点からの必要性を理由とする場合の要件に該当するものとすること。

ロ 「小くくり産業」の範囲及び「基幹的労働者」の意義についての特例を定めること。

Ⅱ 新産業別最低賃金の運用方針

1 新産業別最低賃金の決定等に関する申出の要件、手続等について

新産業別最低賃金の決定等に関する要件、手続等については、以下に示すところによるものとする。

なお、現行産業別最低賃金から、新産業別最低賃金への転換等の場合について、経過措置として下記4のとおりの特例が設けられているが、これらの特例に係るものを除き当該決定等に関する要件、手続等は、ここに定めるところによるものである。

(1) 新産業別最低賃金の決定等に関する申出の要件等

イ 新産業別最低賃金の決定に関する申出の要件は次のとおりとする。

(イ) 一定の地域内の事業所で使用される同種の基幹的労働者の2分の1以上のものが賃金の最低額に関する定めを含む1の労働協約の適用を受ける場合又は賃金の最低額について実質的に内容を同じくする定めを含む2以上の労働協約のいずれかの適用を受ける場合において、当該労働協約の当事者である労働組合又は使用者(使用者の団体を含む。)の全部の合意により行われる申出であること。

(ロ) 事業の公正競争を確保する観点から同種の基幹的労働者について最低賃金を設定することが必要であることを理由とする申出であって、当該最低賃金の適用を受けるべき労働者又は使用者の全部又は一部を代表する者により行われるものであること。

ロ 新産業別最低賃金の改正又は廃止に関する申出の要件は次のとおりとする。

(イ) 一定の地域内の事業所で使用される同種の基幹的労働者の概ね3分の1以上のものが賃金の最低額に関する定めを含む1の労働協約の適用を受けている場合又は賃金の最低額について実質的に内容を同じくする定めを含む2以上の労働協約のいずれかの適用を受けている場合において、当該労働協約の当事者である労働組合又は使用者(使用者の団体を含む。)の全部の合意により行われる申出であること。

(ロ) 事業の公正競争を確保する観点から同種の基幹的労働者について最低賃金を改正することが必要であること又は当該最低賃金を設定することが必要でなくなったことを理由とする申出(同種の基幹的労働者について最低賃金を改正又は廃止することが必要であることを理由とする申出であって、当該最低賃金の適用を受ける労働者又は使用者の概ね3分の1以上のものの合意により行われるものを含む。)であって、当該最低賃金の適用を受けている労働者又は使用者の全部又は一部を代表する者により行われるものであること。

ハ 上記イの(イ)及びロの(イ)の同種の基幹的労働者の相当数に最低賃金に関する労働協約が適用されている場合の申出に関し、用語の意義は次のとおりとする。

(イ) 「一定の地域」については、社会経済的にみて一つのまとまりのある地域をいうものと解すべきものであること。ただし、都道府県より小さい地域単位で当該申出があった場合には、関係労使団体の組織状況等を考慮しつつ慎重に対処すること。

(ロ) 「2分の1以上のもの」又は「3分の1以上のもの」については、当該申出に係る労働協約の適用対象労働者数を事業所統計調査の最新の結果に基づく当該最低賃金の適用を受けるべき労働者数で除したものによって判断すること。

(ハ) 「賃金の最低額」とは、いわゆる最低賃金額についての定めをしたものをいい、初任給や特定の年齢ポイントの最低保障額を定めたもの等は直ちにこれに該当するものではないこと。ただし、当該労働協約において約定された賃金を下回る労働者が当該労働協約の適用労働者の中に実質的にいないことが明確であるものは、これに該当するものとすること。

なお、その表示単位については、日額及び時間額での定めがないものであっても差し支えないが、地方最低賃金審議会における実際の審議を考慮して、できる限り日額及び時間額での賃金の最低額について一定の合意を予め得ておくことが望ましいこと。

(ニ) 「賃金の最低額に関する定めを含む労働協約」とは、賃金の最低額に関してのみ定める労働協約、又は他の条項とともに賃金の最低額に関する定めを含む労働協約のいずれであってもよいこと。また、「労働協約」は、労働組合法第14条に規定する要件を充たしたものでなければならず、その要件を備えない労使協定(例えば労働組合ではなく労働者の代表者との間で締結した協定)はここでいう労働協約には該当しないこと。

(ホ) 「賃金の最低額について実質的に内容を同じくする定め」とは、1の地域において同種の基幹的労働者に係る賃金の最低額についての定めがある労働協約が事業所ごとに締結されており、その最低額の内容が同一であるものをいうこと。また、賃金の最低額を異にする2以上の労働協約がある場合は、これらの賃金の最低額のうち最も低い金額をもって共通の最低額とみなすものとすること。

(ヘ) 「使用者」とは、事業主(法人の場合は、当該法人)をいい、事業主のために行為するものをいうものではないこと。

ニ 上記イ及びロの申出を行うことができる者は、原則として新産業別最低賃金の決定等を行おうとする産業に従事する労働者又はその使用者をそれぞれ代表する者であり、例えば、これらの労働者又は使用者の相当数を構成員とする労働組合又は使用者団体等がこれらに含まれるものであること。

(2) 新産業別最低賃金の決定等に関する申出の手続

イ 申出書の提出

上記(1)のイ及びロの新産業別最低賃金の決定等に関する申出(以下「申出」という。)については、下記ロの書類を添えて、次に掲げる事項を記載した申出書(以下「申出書」という。)を2部(労働大臣あてのものは、3部)提出することによって行うものとする。この場合、当該事案が1の都道府県内の区域のみに係るものである場合は当該都道府県労働基準局長に対し、当該事案が2以上の都道府県の区域に係るものである場合は労働大臣に対して、申請書を提出することによって申出を行うものとするが、労働大臣に対する申出は、関係都道府県労働基準局長を経由して行うことができるものとする。

(イ) 申出を行う者が代表する基幹的労働者又は使用者の範囲

(ロ) 新産業別最低賃金の決定に関する申出にあっては、当該新産業別最低賃金の適用を受けるべき基幹的労働者又は使用者の範囲

(ハ) 新産業別最低賃金の改正又は廃止の決定に関する申出にあっては、当該新産業別最低賃金の件名

(ニ) 上記(ロ)及び(ハ)のほか、申出の内容

(ホ) 申出の理由(上記(1)のイの(ロ)又はロの(ロ)の事業の公正競争を確保する観点から同種の基幹的労働者について設定される新産業別最低賃金に係る申出の場合にあっては、事業の公正競争を確保する観点から新産業別最低賃金を設定することが必要である理由を記載するものとする。)

ロ 添付書類

(イ) 申出書には、申出を行う者が上記イの(イ)に掲げる範囲の基幹的労働者又は使用者を代表する者であることを明らかにすることができる書類を添付するものとする。

この書類とは、具体的には、当該申出に係る最低賃金の適用を受け又は受けるべき基幹的労働者又は使用者について、その全部又は一部が結成している団体(規約上当該申出を行うことができるもの)の代表者の記名押印のある書面をいうが、このような団体を結成していない場合にあっては当該申出を行う者を代表者に委任する旨の書面等をいうものである。

(ロ) 上記(1)のイの(イ)又はロ(イ)の同種の基幹的労働者の相当数について最低賃金に関する労働協約が適用されている場合の申出にあっては、上記(イ)の書類のほか、次に掲げる書類を添付するものとする。

a 当該労働協約の写

b 申出について当事者である労働組合又は使用者(使用者の団体を含む。)の全部の合意があったことを証する書類

c 当該一定の地域内の事業場で使用される同種の基幹的労働者の概数及びこのうち当該労働協約の適用を受ける基幹的労働者の概数を記載した書類

d 当該労働協約に定める賃金の最低額が月額のみで表示されているものについては、当該労働協約の適用を受ける基幹的労働者に係る月間の所定労働時間数及び所定労働日数等の状況についての参考書類

(ハ) 上記(1)のロの(ロ)の事業の公正競争を確保する観点からの新産業別最低賃金の改正又は廃止の必要性を理由とする申出であって当該最低賃金の適用を受ける労働者又は使用者の概ね3分の1以上のものの合意によって行われるものの場合には、上記(イ)の書類のほか、別途指示するところにより、当該合意を確認するために必要な書類を添付するものとする。

ハ 申出書の受理

都道府県労働基準局長は、申出書が提出されたときには、特に次の点に留意して、これを審査したうえで受理するものとする。

(イ) 上記イに掲げる記載事項及びロの添付書類等について申出を行った者に確認し、不備が認められるときには、返戻し、補正のうえ再提出するよう指導すること。

(ロ) 申出を行った者から申出の背景等の事後の処理に参考となる事項について聴取すること。

(ハ) 申出書の受理に当たっては、受付印を押捺したうえ、1部は申出を行った者に返戻すること。

2 申出に係る新産業別最低賃金の決定等の必要性に関する決定

(1) 新産業別最低賃金の決定等の必要性についての諮問等

イ 都道府県労働基準局長は、上記1の(2)のハにより、申出書を受理した場合には、原則として当該新産業別最低賃金の決定等の必要性の有無について地方最低賃金審議会に諮問を行うものとする。ただし、必要な調査を行ったうえで、上記1の(1)のイ又はロの要件のうち、新産業別最低賃金の決定等のために必要な形式的要件に該当しないと認められるものについては、この限りでない。

なお、当該新産業別最低賃金の決定等についての諮問を行わない場合には、当該申出があった旨を地方最低賃金審議会に報告するとともに、当該申出を行った者に対して諮問を行わない旨及びその理由を説明するものとする。

ロ 上記イにより新産業別最低賃金の決定等の必要性の有無について諮問を行った場合、その後の審議会の運営に当たっては、特に次の点に留意するものとする。

(イ) 関係労使の意向や当該産業の実態等が十分反映されるよう関係労使の意見を必ず聴取すること。また、必要に応じ審議会に各側委員から構成される小委員会等を設けるなど効率的な審議に努めること。

(ロ) 当該産業における生産工程、労働者構成、賃金の実態等について的確に把握し、審議のための資料の整備及び審議会への提供等に努めること。

(ハ) 昭和57年1月14日の中央最低賃金審議会の答申の了解事項の1の趣旨に則り、新産業別最低賃金の決定等の必要性について諮問された場合には、最低賃金審議会は全会一致の議決に至るよう努力することが必要とされていること。

(2) 新産業別最低賃金の決定等の必要性

イ 上記(1)により諮問された新産業別最低賃金については、上記1の(1)のイ又はロの要件に該当するか否かを審議し、当該新産業別最低賃金の決定等の必要性を判断するものとする。

この場合、上記1の(1)のイの(ロ)又はロの(ロ)の申出により、事業の公正競争を確保する観点から設定される新産業別最低賃金は、同種の基幹的労働者について、関連する諸条件を勘案の上、企業間、地域間又は組織労働者と未組織労働者の間等に産業別最低賃金の設定を必要とする程度の賃金格差が存在する場合に設定するものとする。(新産業別最低賃金への転換等の場合については、更に下記4の(1)のロ及びハの経過措置に留意するものとする。)

ロ 上記イにより新産業最低賃金の決定等の必要性を判断する場合には、次の点に留意するものとする。

(イ) 新産業別最低賃金の適用対象となる産業の範囲は、原則として日本標準産業分類の小分類又は必要に応じ細分類によるものとすること。ただし、同種の基幹的労働者をそれぞれ含む2以上の産業を併せて1の産業別最低賃金を設定することができるものとすること。(新産業別最低賃金への転換等の場合については、下記4の(2)の経過措置に留意すること。)

(ロ) 新産業別最低賃金の適用対象となる「基幹的労働者」は、一般的には当該産業に特有の又は主要な業務に従事する労働者であるが、具体的には当該産業の生産工程、労働態様などに即して個別に考えられるものであり、次に掲げる方法により規定するものとすること。(新産業別最低賃金への転機の場合については、下記4の(3)の経過措置に留意すること。)

a 基幹的労働者の職種、業務を規定する方法

b 基幹的労働者とみなされない労働者の職種、業務を規定する方法

また、同種の基幹的労働者の担当数について最低賃金に関する労働協約が適用されている場合においては、当該労働協約の適用対象とされている労働者を当該新産業別最低賃金の適用対象とする基幹的労働者として取り扱うことができるものとすること。

なお、常用労働者、臨時・日雇労働者、パートタイム労働者等の雇用形態により区分して規定するものではないこと。

(ハ) 最低賃金の設定の目的に鑑み、相当数の労働者に当該最低賃金の適用が見込まれるものであること。

(ニ) 新産業別最低賃金の適用対象となる地域は、上記1の(1)のハの(イ)に掲げる「一定の地域」であること。

3 新産業別最低賃金の決定等

(1) 新産業別最低賃金の決定等についての諮問等

最低賃金審議会が新産業別最低賃金の決定等が必要である旨の意見を提出した場合には、都道府県労働基準局長は、法第16条第1項の規定に基づき最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を尊重して当該新産業別最低賃金の決定等を行うものとする。

(2) 専門部会

新産業別最低賃金の決定等について調査審議を行う専門部会は、労働者を代表する委員及び使用者を代表する委員の各3名のうち原則として少なくとも各2名は当該決定等を行おうとする産業に直接関係する労働者及び使用者をそれぞれ代表するものをもって充てなければならないものとする。

この場合、当該産業に「直接関係する労働者及び使用者をそれぞれ代表するもの」とは、当該地域において当該産業に属する事業を行う事業場の労働者及び使用者、並びにこれらの労働者及び使用者の相当数を構成員とする労働組合及び使用者団体等の役職員であって、当該関係者の意向を代表し得るものの中からそれぞれ選任されたものをいう。

4 現行産業別最低賃金の転換等に係る経過措置

新産業別最低賃金への転換等により現行産業別最低賃金の適用対象業種について新産業別最低賃金の決定に関する申出があった場合には、経過措置として新産業別最低賃金の運用方針の一部について次のような取扱いをするものとする。

(1) 新産業別最低賃金の決定に関する申出等の要件について経過措置

イ 同種の基幹的労働者の概ね3分の1以上のものが賃金の最低額に関する労働協約の適用を受け、かつ、当該労働協約による賃金の最低額が当該産業に現に適用されている産業別最低賃金額より高いときには、上記1の(1)のイの(イ)の同種の基幹的労働者の相当数について最低賃金に関する労働協約が適用されている場合に該当するものとして取り扱う。

ロ 上記1の(1)のイの(ロ)の要件において、事業の公正競争を確保する観点から同種の基幹的労働者について最低賃金を設定する必要性が認められるか否かの判断に当たっては、企業間、地域間又は組織労働者と未組織労働者の間等の賃金格差が存在することのほか、更に経過措置として、次のような事情からみて、当該産業別最低賃金の廃止により各種の賃金格差の拡大等が予想されるものであるかどうか等も参考とするものとする。

(イ) 当該産業別最低賃金と当該都道府県における地域別最低賃金との金額水準の差が大きいこと。

(ロ) その他各種の賃金格差の拡大を生じる恐れがあること。(例えば、中小零細企業が占める割合が高く、かつ大企業との生産性格差が大きいこと、企業間の、あるいは業界全体として国内的又は国際的な競争が激しいこと等の事情があること。)

ハ 事業の公正競争を確保する観点から同種の基幹的労働者について最低賃金を設定することが必要であるとして、当該最低賃金の適用を受けるべき労働者又は使用者の概ね3分の1以上のものの合意による申出があったものについては、事業の公正競争を確保する観点から最低賃金を設定する必要性が認められる場合にあたるとの認識の下に、関係者は上記の合意を尊重しつつ地方最低賃金審議会において審議するものとする。

この場合の「合意」があったと認められるケースは、原則として別表の左欄に掲げるものをいい、その「合意」を行った労働者又は使用者の範囲は、同表の左欄に掲げるケースに応じ、それぞれ同表の右欄に掲げるところによるものとする。

なお、新産業別最低賃金の趣旨に照らし、できる限り労使双方の実質的な合意が形成されるような方法がとられることが望ましいものである。

また、「当該最低賃金の適用を受けるべき労働者又は使用者の概ね3分の1以上」とは、上記の「合意」を行ったと認められる労働者又は使用者の数(合意があったと認められるケースが2以上である場合には、それぞれの労働者又は使用者の数を合算したもの)を事業所統計調査の最新の結果に基づく当該最低賃金の適用を受けるべき労働者又は使用者の数で除したものが概ね3分の1以上となるものをいう。

ニ 上記ハにより申出を行う場合には、別途指示するところにより、上記1の(2)のロの(イ)の添付すべき書類のほか、別表に掲げる合意があったと認められるケースに応じ、当該合意を確認するために必要な書類を添付するものとする。

(2) 新産業別最低賃金の適用対象業種の範囲に関する経過措置

新産業別最低賃金の適用対象業種の範囲は、上記2の(2)のロにより、日本標準産業分類の小分類又は細分類によって決定することを原則とするが、現在、中分類以上の単位で設定されているものについては、適用除外の実施状況、関係労使団体の組織状況、基幹的な業務の共通性等を勘案しつつ、最低賃金審議会において、適用対象業種の合理的な範囲(くくり方)を決定するものとする。

(3) 「基幹的労働者」の意義に関する経過措置

イ 「基幹的労働者」の意義は、上記2の(2)のロの(ロ)により、職種、業務を規定する方法によることを原則とするが、地域別最低賃金の対象とすることが適当と認められる年齢、業務等を適用除外とする措置が適切に行われているものについては、基幹的労働者を対象とした産業別最低賃金として取り扱うこととして差し支えないものとする。

この場合、「適用除外とする措置が適切に行われている」ものとは、年齢に関しては18歳未満の者及び65歳以上の者、並びに業務に関しては少なくとも一般的基準に該当する者(清掃又は片付けの業務に主として従事する者及び雇入れ後一定期間未満の者であって技能習得中のもの)を適用除外とする措置が実施されているものとする。

ロ 新産業別最低賃金は、相当数の労働者に適用が見込まれるものでなければならないとされているが、その「相当数の労働者」の範囲については、最低賃金審議会において、原則として1,000人程度を基準として、地域の実情に応じ決定するものとする。

(4) 経過措置の適用

新産業別最低賃金の運用方針の経過措置は、上記第1の4の(1)により昭和64年度までに転換のための所要の手続が終了するものについて適用する。

また、現行産業別最低賃金の適用対象業種に限っては、昭和64年度前に法第16条の4の規定により新産業別最低賃金の決定に関する申出があった場合においても、転換の場合と同様の取扱いとして新産業別最低賃金の運用方針の経過措置を適用するものであるが、現行産業別最低賃金の適用対象業種以外の業種については、当該経過措置を含まない新産業別最低賃金の運用方針を適用するものである。