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休業補償特別援護金支給制度の創設について
昭和57年5月19日基発第342号
(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)
今般、別添「休業補償特別援護金支給要綱」(以下「要綱」という。)により休業補償特別援護金(以下「援護金」という。)を昭和57年4月1日から支給することとしたので、下記事項に留意のうえ、これが事務処理について遺漏なきを期されたい。
記
1 趣旨
労働者災害補償保険法による休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給することとされており、第3日目までの3日間については、使用者は、労働基準法第76条に定める休業補償を行わなければならないとされているところである。
ところで、振動障害、じん肺等の疾病にかかった労働者で、その疾病発症に至るまで事業場を転々と移動したものについては当該疾病が医学的にどの事業場の業務によって発症したか明確にできない場合があり従来から災害補償責任の有無をめぐってとかく労使紛争のもととなっており、この休業待期3日間についての休業補償のなされないことがある。
また、遅発性疾病の場合には、業務上疾病と認められた時点で既に事業場が廃止されている等の例も見られ、休業待期3日間について同様の問題が生じているところである。
このような事情から、休業待期3日間についての休業補償を受けることができない遅発性疾病り患者等に対し、援護の措置を行う必要があるので、これらの者に対し、当該休業補償に相当する額の援護金を支給することとしたものである。
2 支給対象者
援護金の支給を受けることができる者は、要綱2に掲げる者である。即ち、休業期間が4日以上である被災労働者であって、現実に休業補償を受けておらず、かつ受けられる見込みのないもののうち、次の各号のいずれかの要件を満たす者に支給するものとする。
(1) 特定疾病に対応する特定業種に従事した労働者のうち、短期間で事業場を移動した者、即ち、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47年労働省令第8号)第17条の2に規定する表の1の項から4の項までに掲げる要件に該当する者
(2) 疾病の発生が診断により確定したときに、当該疾病の原因となった業務に従事した事業場が廃止され、又はその事業主の行方が知れないため、休業待期3日間についての休業補償を請求することができない者
3 申請手続
(1) 援護金の支給を受けようとする者(以下「申請者」という。)は、要綱に定めるところにより「休業補償特別援護金支給申請書」(様式第1号。以下「申請書」という。)を申請に係る疾病の発生のおそれのある業務に従事した最終の事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄署長」という。)に第1回分の休業補償給付支給請求書と併せて提出するものとする。
(2) なお、当分の間は、第2回以降の休業補償給付の支給の請求と同時に申請することができるものとする。
(3) 援護金の支給申請は、災害発生日の翌日から起算して2年以内に行うものとする。
4 支給金額
援護金の支給額は、休業補償給付の3日分に相当する額とする。
5 支給又は不支給決定までの手続
(1) 所轄署長は、申請書を受理したときは、「休業補償特別援護金支給申請書処理簿」(様式第3号)に必要事項を記入するものとする。
(2) 休業補償を受けていないことの確認は、所轄署長から事業主に対して、文書又は口頭の照会により行うこととし、また、支払われる見込みのないことの確認は、事業主に対する照会により支払う意思があることが確認されたもの以外は、支払われる見込みがないものとして取り扱うものとする。
(3) 診断確定日において、事業場が廃止されているか、あるいは、事業主の行方が知れないものについての確認は、休業補償給付支給請求書の事業主証明に係る調査結果により判断するものとする。
(4) 給付基礎日額、その他休業補償給付支給請求書と共通する事項については、労働基準監督署の担当者が、一括して照合確認を行うものとする。
(5) 所轄署長は、援護金の支給決定又は不支給決定(以下「決定」という。)を行ったときは、「休業補償特別援護金支給決定不支給決定通知」(様式第2号)により申請者に通知するものとする。
また、援護金の決定については、処分性が認められるため、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)、行政手続法(平成5年法律第88号)の適用がある。
このため、所轄署長及びその上級庁である都道府県労働局長(以下「所轄局長」という。)は次のとおり事務を行うこととする。
イ 援護金の決定は、行政不服審査法第2条に規定する行政処分であるものとして、審査請求の対象として取り扱うこと。
ロ 援護金の決定に関する審査は、所轄局長が行うこと。なお、再審査請求は行うことができないものであること。
ハ 決定を行う際は、その相手方に対し、「休業補償特別援護金支給決定不支給決定通知」(様式第2号)をもって、行政不服審査法に基づく審査請求及び行政事件訴訟法に基づく取消訴訟の提起ができる旨の教示を行うこと。その際は、不服申立て手続の有無に関係なく、訴訟の提起が可能であることに留意すること。
ニ 援護金を不支給とする場合には、「休業補償特別援護金支給決定不支給決定通知」(様式第2号)に当該決定の理由を付記する、又は、理由を明記した別紙を添付して通知すること。
(6) 所轄署長は、援護金の支給を決定した場合は、都道府県労働局(以下「局」という。)官署支出官に対して、支払依頼書に決裁後の様式第1号の写しを添えて速やかに送付し、局官署支出官(当地払の場合は局資金前渡官吏)が支払を行うものとする。
6 返還
(1) 所轄署長は、援護金の支給を受けた者が、事業主から休業待期3日間についての休業補償を受けたことを確認した場合には、援護金を返還させるものとする。
(2) 偽りその他不正の手段により援護金の支給を受けた者があるときは、所轄署長は、その者から援護金を返還させるものとする。
(3) 所轄署長は、上記(1)及び(2)により援護金を返還させる場合には、「支給決定取消決議書」をもって援護金の支給決定の取消決議を行い、その内容を「休業補償特別援護金支給決定取消決定通知」(様式第4号)をもって援護金の支給を受けた者に通知するものとする。
また、援護金の支給決定の取消決定については、処分性が認められるため、上記5(5)の規定は、援護金の支給決定の取消決定について準用する。この場合において、「援護金の支給決定又は不支給決定(以下「決定」という。)」とあるのは「援護金の支給決定の取消決定(以下「決定」という。)」と、「「休業補償特別援護金支給決定不支給決定通知」(様式第2号)」とあるのは「「休業補償特別援護金支給決定取消決定通知」(様式第4号)」と、それぞれ読み替えるものとする。
(4) 上記により返還させることとした援護金の債権管理及び徴収事務については、債権管理事務取扱手引第3章に定める返納金債権の管理事務によることとする。
なお、上記(1)の場合には、債務者の故意又は重大な過失によらない不当利得によるものとして取り扱うものとする。
7 実施時期
援護金の支給は、昭和57年4月1日以後に診断により疾病の発生が確定したものについて実施するものとする。
8 その他
援護金は、労働保険特別会計労災勘定(項)社会復帰促進等事業費(目)労災援護給付金から支払うものとする。
休業補償特別援護金支給要綱
1 趣旨
業務上の負傷又は疾病による療養のため労働できないために賃金を受けない日の第3日目までの3日間(以下「休業待期3日間」という。)については、労働基準法(昭和22年法律第49号)第76条の規定により使用者が休業補償を行わなければならないこととされているが、短期間で事業場を転々と移動する労働者が、特定の業務に従事したことにより慢性的に進行する特定の疾病にり患した場合、当該疾病の原因となった事業場を特定できない場合が多く、このため事業主側の十分な理解が得られず、休業待期3日間についての休業補償を受けることができないことがある。
また、遅発性疾病が発生したときには、当該疾病の原因となった有害業務に従事した事業場が廃止され、又はその事業主の行方が知れないため、休業待期3日間についての休業補償を受けることができないことがある。
このような実情に鑑み、これらの者の援護を図るため、社会復帰促進等事業として休業補償特別援護金(以下「援護金」という。)を支給するものとする。
2 支給対象者
援護金は、次の各号のいずれかの要件を満たす者のうち、当該疾病について休業補償給付の支給要件を満たしている者であって、現に休業待期3日間に係る休業補償を受けておらず、かつ、受ける見込みがないものに支給するものとする。
(1) 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)別表第1の2(以下「別表」という。)第3号2、第3号3、第5号又は第7号8に掲げる疾病(以下「特定疾病」という。)にり患した者のうち、特定疾病に応じ労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47年労働省令第8号)第17条の2に定める表の第3欄に掲げる種類の事業に使用された者であって、同表の第4欄に定めるものであること。
(2) 疾病の発生が診断により確定したときに、当該疾病の原因となった業務に従事した事業場が廃止され、又はその事業主の行方が知れないため、休業待期3日間についての休業補償を請求することができないものであること。
3 支給額
援護金の支給額は、休業補償給付の3日分に相当する額とする。
4 申請の手続
(1) 援護金の支給を受けようとする者(以下「申請者」という。)は、「休業補償特別援護金支給申請書」(様式第1号)を、申請に係る疾病の発生のおそれのある業務に従事した最終の事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄署長」という。)に提出するものとする。
(2) 援護金の申請は、第1回分の休業補償給付の請求と同時に行うものとする。
(3) 援護金の支給の申請は、災害発生日の翌日から起算して2年以内に行うものとする。
5 支給又は不支給の決定の通知
所轄署長は、援護金の支給決定又は不支給決定(以下「決定」という。)を行ったときは、「休業補償特別援護金支給決定不支給決定通知」(様式第2号)により申請者に通知するものとする。
また、援護金の決定については、処分性が認められるため、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)、行政手続法(平成5年法律第88号)の適用がある。
このため、所轄署長及びその上級庁である都道府県労働局長(以下「所轄局長」という。)は次のとおり事務を行うこととする。
(1) 援護金の決定は、行政不服審査法第2条に規定する行政処分であるものとして、審査請求の対象として取り扱うこと。
(2) 援護金の決定に関する審査は、所轄局長が行うこと。なお、再審査請求は行うことができないものであること。
(3) 決定を行う際は、その相手方に対し、「休業補償特別援護金支給決定不支給決定通知」(様式第2号)をもって、行政不服審査法に基づく審査請求及び行政事件訴訟法に基づく取消訴訟の提起ができる旨の教示を行うこと。その際は、不服申立て手続の有無に関係なく、訴訟の提起が可能であることに留意すること。
(4) 援護金を不支給とする場合には、「休業補償特別援護金支給決定不支給決定通知」(様式第2号)に当該決定の理由を付記する、又は、理由を明記した別紙を添付して通知すること。
6 返還
(1) 援護金の支給を受けた者が、援護金の支給を受けた後に事業主から休業待期3日間についての休業補償を受けたときは、援護金を返還しなければならない。
(2) 偽りその他の不正の手段により援護金の支給を受けた者は、援護金を返還しなければならない。
(3) 所轄署長は、上記(1)及び(2)により援護金を返還させる場合には、「支給決定取消決議書」をもって援護金の支給決定の取消決議を行い、その内容を「休業補償特別援護金支給決定取消決定通知」(様式第4号)をもって援護金の支給を受けた者に通知するものとする。
また、援護金の支給決定の取消決定については、処分性が認められるため、上記5の規定は、援護金の支給決定の取消決定について準用する。この場合において、「援護金の支給決定又は不支給決定(以下「決定」という。)」とあるのは「援護金の支給決定の取消決定(以下「決定」という。)」と、「「休業補償特別援護金支給決定不支給決定通知」(様式第2号)」とあるのは「「休業補償特別援護金支給決定取消決定通知」(様式第4号)」と、それぞれ読み替えるものとする。
7 実施時期
この要綱は、昭和57年4月1日以後に診断により疾病の発生が確定したものについて適用する。
ただし、別表第7号8に掲げる疾病にり患した者に関しては、平成18年4月1日以後に診断により疾病の発生が確定したものについて適用する。