◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー
外科後処置の実施について
昭和56年2月6日基発第69号
(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)
最終改正 平成22年12月27日基発1227第1号
労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)第29条第1項の社会復帰促進等事業として行う外科後処置については、労働福祉事業実施要綱(昭和25年10月24日付け基発第950号。)等により実施してきたところであるが、今般、同要綱を別添のとおり定めたので、下記事項に留意のうえ、事務処理に遺漏なきを期されたい。
記
1 対象者について
(1) 労災保険法による障害補償給付又は障害給付(以下「障害(補償)給付」という。)の支給決定を受けた者とは、業務上の事由又は通勤による傷病について治ゆ認定を受け、当該障害について障害(補償)給付の支給決定を受けた者をいうものである。
しかしながら、当該障害に係る障害(補償)給付受給後、同一傷病が再発したため療養の給付を受けるようになり、療養の給付を受給している者については、過去に障害(補償)給付の支給決定を受けているものであっても、障害(補償)給付の支給決定を受けた者には該当しないものであるが、再発に係る傷病が治ゆした後、当該傷病について新たに障害(補償)給付の支給決定を受けた者については、障害(補償)給付の支給決定を受けた者に該当するものであること。
(2) 外科後処置を受けようとする者が、労働能力を回復し、又は醜状を軽減し得る見込みのある者であるか否かの判断については、必要に応じ、地方労災医員、診査表を作成した医師等の意見を聴取する等の措置を講ずること。
(3) 時効により障害(補償)給付の支給を受けることができない者又は第三者行為災害の場合において、同一の事由について損害賠償を受けたために障害(補償)給付を受けることができない者については、障害(補償)給付の支給決定を受けた者として取り扱って差し支えないこと。
2 範囲について
(1) 外科後処置は、その効果が期待できる限り、回数に制限なく承認して差し支えないこと。
(2) 理学療法とは、光線療法、放射線療法、温熱療法、水治療法、超短波又は短波療法、マッサージ療法等をいうものであること。
(3) 治ゆ後の手指の機能再建化手術については、昭和55年3月1日付け基発第97号により再発に準じて取り扱うこととしたので、外科後処置としては取り扱わないこと。
(4) 整形外科的診療、外科的診療及び理学療法以外の処置を特に必要と認めるときは、速やかに外科後処置申請書の写し、診査表の写し、その他の参考資料を本省(補償課)あて送付し、その指示を受けること。
3 実施医療機関について
外科後処置を受けるべき医療機関については、原則として外科後処置を受ける者の居住地から直近の実施医療機関とすべきであるが、当該外科後処置につき直近に適当な医療機関がない場合等考慮すべき理由がある場合には、必ずしも直近の医療機関でなくとも差し支えないこと。
4 手続について
(1) 事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄署長」という。)は、外科後処置申請書を受理したときは、当該申請書の記載事項を労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム内の情報等と照合のうえ、当該申請書を事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄局長」という。)に進達すること。
(2) 所轄局長は、外科後処置の承認を行う場合は、申請者の希望する医療機関について受療できる期日を確認したうえで、承認決定通知書を申請者に交付すること。
(3) 所轄局長は、外科後処置の承認を行ったときは、社会復帰促進等事業原票の外科後処置の欄に承認番号、承認年月日、承認決定通知書発行局名及び病院名を記入すること。また、実施医療機関からの費用の請求があったときは、初診年月日又は治ゆ年月日を記入すること。
5 制度の有効活用について
所轄局長及び所轄署長は、外科後処置の対象となると思われる者については、当該制度の内容、手続等につき周知を図ること。
6 費用について
労災診療費算定基準に定める初診時ブラッシング料は、外科後処置においては認められないものであること。
7 支出項目について
外科後処置に要する費用は、(項)社会復帰促進等事業費(目)社会復帰促進等委託費から支出すること。
8 旅費の支給の範囲について
(1) 支給する旅費の額は、旅費の支給を申請した者が現によった経路及び方法のいかんにかかわらず、当該申請者の旅行区間における最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場合に要する額とすること。
(2) 旅費の支給を申請した者が運賃の割引きを受けることができる場合における運賃の額は、割引き後の額とすること。
(3) 定期バスがある場合の車賃の額は、その実費額を支給すること。
(4) 旅費の支給について、要綱の規定により難い事情がある場合には、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第114号)及び同法の運用の方針に準じ、最も経済的と認められる経路及び方法により旅行した場合における旅費を支給して差し支えないこと。
9 旅費の支給手続等について
(1) 所轄署長は、旅費支給申請書を受理したときは、申請書記載事項を労働基準行政情報システム・労災行政情報管理システム内の情報等と照合し、所轄局長へ進達すること。
(2) 外科後処置のための入院が1か月以上にわたる場合の旅費の支給申請は、随時分割して差し支えないこと。
(3) 旅行前に旅費の支給を希望する労働者については、当該労働者の経済的事由により精算払いでは旅行することが困難であると認められる場合に限り、前払いして差し支えないこと。
この場合、旅費に関する事実証明書(別紙に準ずること。以下「事実証明書」という。)を当該労働者に交付することとし、旅費支給申請書の旅行期間経過後は、当該労働者に旅費精算申請書(旅費支給申請書の標題を旅費精算申請書と改め使用すること。)に事実証明書を添付させ、精算を行わせること。
(4) 旅費の前払いを受けた者が相当期間経過するも旅行せず、又は旅行しないことが確実となったときは、支給済の旅費を返納させること。
(5) 外科後処置を承認する場合であって、旅費の支給を要すると見込まれる場合には、当該承認決定通知書等を交付する際に旅費支給申請書を交付し、その申請手続等について指導すること。
10 支出項目について
旅費に要する費用は、(項)社会復帰促進等事業費(目)社会復帰促進等旅費から支出すること。
11 社会復帰促進等事業原票関係について
社会復帰促進等事業原票(以下「原票」という。)に新たな事項を記入するための空欄のないときは、新たに原票を作成し、これを既存の原票と一括して保管すること。
別添
外科後処置実施要綱
1 趣旨
業務災害又は通勤災害による傷病が治ゆしたものにおいては、義肢装着のための断端部の再手術、醜状の軽減のための再手術等を必要とすることがあることにかんがみ、これらの者の社会復帰の促進を図るため、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)第29条第1項の社会復帰促進等事業として外科後処置を行うものとする。
2 対象者
外科後処置は、労災保険法による障害補償給付(労働者災害補償保険法の一部を改正する法律(昭和40年法律第130号)第3条の規定による改正前の労災保険法の規定による障害補償費及び障害給付を含む。)又は障害給付(以下「障害(補償)給付」という。)の支給決定を受けた者であって、外科後処置により障害(補償)給付の原因である障害によって喪失した労働能力を回復し、又は醜状を軽減し得る見込みのあるものに対して行うものとする。
3 範囲
(1) 外科後処置の範囲は、原則として整形外科的診療、外科的診療及び理学療法とし、その処置に必要な医療の給付は、次のとおりとする。
ア 診察
イ 薬剤又は治療材料の支給
ウ 処置、手術その他の治療
エ 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
オ 筋電電動義手の装着訓練及び試用装着期間における指導等並びに能動式義手の装着訓練
(2) 事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄局長」という。)は、外科後処置を受けようとする者が労働能力を回復するため特に必要があると認めるときは、厚生労働省労働基準局長の指示を受けて、前記以外の処置による医療の給付を承認することができる。
4 実施医療機関等
(1) 外科後処置に必要な医療の給付は、労災病院、医療リハビリテーションセンター、総合せき損センター及び労働者災害補償保険法施行規則(以下「規則」という。)第11条第1項の都道府県労働局長が指定する病院又は診療所(外科後処置の任務を含む指定を受けた病院又は診療所に限る。)において行うものとする。ただし、筋電電動義手の装着訓練及び試用装着期間における指導等については、「義肢等補装具の支給について」(平成18年6月1日付け基発0601001号)の別添「義肢等補装具費支給要綱」(以下、「義肢等要綱」という。)の9の(2)で届出を行った医療機関において行うものとする。
(2) 薬剤の支給については、規則第11条第1項に定める薬局(外科後処置の任務を含む指定を受けた薬局に限る。以下「指定薬局」という。)において支給しても差し支えないものとする。
5 手続
(1) 外科後処置を受けようとする者は、外科後処置申請書(様式第1号)に診査表(様式第2号)を添付して、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して、所轄局長に申請するものとする。
(2) 所轄局長は、(1)の申請を受けた場合には、対象者等の要件を満たしているか否かを判断の上、承認・不承認の決定(以下「承認決定等」という。)を行い、その旨を「外科後処置承認決定通知書」(様式第3号(1))又は「外科後処置不承認決定通知書」(様式第3号(2))により通知するものとする。
また、承認決定等については、処分性が認められるため、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)、行政手続法(平成5年法律第88号)の適用がある。
このため、所轄局長は、次のとおり事務を行うこととする。
ア 外科後処置の承認決定等は、行政不服審査法第2条に規定する行政処分であるものとして、審査請求の対象として取り扱うこと。
イ 外科後処置の承認決定等に関する審査は、当該決定をした所轄局長の上級庁である厚生労働大臣が行うこと。
なお、再審査請求は行うことができないものであること。
ウ 承認決定等を行う際は、その相手方に対し、「外科後処置承認決定通知書」(様式第3号(1))又は「外科後処置不承認決定通知書」(様式第3号(2))をもって、行政不服審査法に基づく審査請求及び行政事件訴訟法に基づく取消訴訟の提起ができる旨の教示を行うこと。その際は、不服申立て手続の有無に関係なく、取消訴訟の提起が可能であることに留意すること。
エ 外科後処置の申請を不承認とする場合には、「外科後処置不承認決定通知書」(様式第3号(2))に当該決定の理由を付記する、又は、理由を明記した別紙を添付して通知すること。
(3) (2)の承認の決定を受けた者が、外科後処置を受けようとするときは、当該承認決定通知書を外科後処置の実施医療機関及び指定薬局に提示するものとする。
(4) 外科後処置の実施医療機関及び指定薬局は、当該承認決定通知書によって、外科後処置を受ける資格があることを確認した上で、給付するものとする。ただし、やむを得ない事由によって、当該承認決定通知書を提示することができない者であって、外科後処置を受ける資格があることが明らかな者については、この限りではない。
この場合においては、その事由がやんだのち、遅滞なく当該承認決定通知書を提示させるものとする。
(5) 外科後処置の実施医療機関及び指定薬局は、外科後処置に要した費用を請求しようとするときは、外科後処置委託費請求書(様式第4号)により、外科後処置の承認に係る都道府県労働局の労働保険特別会計の官署支出官あて請求するものとする。
なお、当該委託費請求書には、請求の内訳を明らかにするため労働災害補償保険診療費請求書の診療費内訳書又は労働者災害補償保険薬剤費請求書の内訳書を添付すること。
6 費用の算出方法
外科後処置に要する費用の額は、原則として、労災保険法の規定による療養の給付に要する診療費の算定方法の例により算定した額とする。ただし、上記3のオに要する費用の額は、義肢等要綱の13の(3)により算定した額とする。
7 旅費の支給
(1) 対象者
旅費は、外科後処置を受けるため旅行する者に支給する。
なお、筋電電動義手の装着訓練及び試用装着期間における指導等並びに能動式義手の装着訓練に係る旅費については、義肢等要綱の15による。
(2) 範囲
旅費は、上記4の(1)の実施医療機関までの最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場合の旅費により計算するものとし、その範囲は、次のとおりとする。
ア 旅費の種類は、鉄道賃、船賃、車賃、日当及び宿泊料とする。
イ 鉄道賃及び船賃については、普通旅客運賃を支給する。また、普通急行列車を運行する線路による旅行で片道50キロメートル以上のものについては急行料金を支給し、特別急行列車を運行する線路による旅行で片道100キロメートル以上のものについては特別急行料金を支給する。
ウ 車賃は、1キロメートルにつき、37円とする。
エ 日当は、外科後処置を受けるため病院に入院した期間について支給するものとし、その額は、1日につき850円とする。
オ 宿泊料は、地理的事情等により宿泊の必要が認められる場合に限り、1夜につき8,700円の範囲内におけるその実費費(飲酒、遊興費、その他これらに類する費用を除く。)とする。
(3) 手続
旅費の支給を受けようとする者は、旅費支給申請書(様式第5号(1))により、外科後処置の承認をした所轄局長に提出するものとする。
所轄局長は、当該申請を受けた場合には、対象者等の要件を満たしているか否かを判断の上、承認決定等を行い、その旨を「外科後処置旅費支給承認・不承認決定通知書」(様式第5号(2))により通知するものとする。
なお、承認決定等については、処分性が認められるため、行政事件訴訟法等の適用に関しては、5の(2)と同様に取り扱うこととする。
8 社会復帰促進等事業原票
所轄局長は、被災労働者毎に外科後処置の実施状況を明らかにするため社会復帰促進等事業原票(様式第6号)を作成するものとする。
9 施行期日
平成25年5月16日付け基発0516第2号による改正後の本要綱は、平成25年5月16日から施行し、改正後の要綱3の(1)のオのうち、片側上肢切断者に係る筋電電動義手の装着訓練及び試用装着期間における指導等並びに能動式義手の装着訓練については、施行後の申請に係るものから適用する。
10 経過措置
平成23年6月24日付け基発0624第2号により改正された本要綱の施行日前に、医療機関の所在地を管轄する都道府県労働局長と外科後処置に係る委託契約を結ぶ医療機関については、本要綱の外科後処置を実施する実施医療機関とみなすものとする。