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労災就労保育援護制度の新設等について
昭和54年4月4日基発第160号
(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)
最終改正 令和2年8月21日基発0821第1号
労災就学援護費の支給については、昭和45年10月27日付け基発第774号によって取り扱われてきたところであるが、今般標記の件に関し、別紙のとおり、労災就学援護費支給要綱及び昭和45年10月27日付け基発第774号通達本文の一部を改正し、昭和54年4月1日から適用することとしたので了知されるとともに、その取扱いについては、下記の点に留意し、遺漏なきを期されたい。
また、労災就労保育援護費の支給に関連して、別途通達するとおり、労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令(昭和54年労働省令第12号)及び労働大臣が定める事務に関する告示の一部を改正する告示(昭和54年労働省告示第30号)が施行され、また、近く労働保険特別会計法施行令(昭和47年政令第28号)の一部改正が行われる予定であるので、申し添える。
記
1 改正の趣旨
今次の要綱の改正は、労災就労保育援護制度の新設及び労災就学援護制度の改善を内容とするものであるが、労災就労保育援護制度は、保育に係る費用の一部を援護することにより保育を必要とする児童を抱える労災年金受給権者又はその家族の就労を促進し、被災労働者及びその遺家族等の援護を図ることを目的とするものである。
2 改正の内容
(1) 労災就労保育援護制度の新設
1 支給対象
(1) 労災就労保育援護費(以下「就労保育援護費」という。)の支給を受ける者は、労災就学等援護費支給要綱(以下「要綱」という。)3の(2)に掲げる者である。すなわち、次に掲げるとおり、一定の要件を満たす年金たる保険給付の受給権者が、就労保育援護費の支給を受ける者となる。
イ 遺族補償年金、複数事業労働者遺族年金又は遺族年金を受ける権利を有する者(以下「遺族(補償)等年金受給権者」という。)のうち、次に掲げる要件を満たすもの
(イ) 保育を必要とする未就学の児童(以下「要保育児」という。)であること。
(ロ) 当該受給権者と生計を同じくしている者の就労のため保育所、幼稚園に預けられているものであること
(ハ) 保育に係る費用の援護の必要があると認められるものであること
ロ 遺族(補償)等年金受給権者のうち、次に掲げる要件を満たすもの
(イ) 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた要保育児たる当該労働者の子(当該労働者の死亡の当時胎児であった子を含む。)と生計を同じくしている者であること
(ロ) 就労のため当該要保育児を保育所、幼稚園等に預けているものであること
(ハ) 保育に係る費用の援護の必要があると認められるものであること
ハ 障害補償年金、複数事業労働者障害年金又は障害年金を受ける権利を有する者(障害等級第1級から第3級までの等級に該当する身体障害がある者に限る。以下「障害(補償)等年金受給権者」という。)のうち、次に掲げる要件を満たすもの
(イ) 要保育児であること
(ロ) 当該受給権者と生計を同じくしている者の就労のため保育所、幼稚園等に預けられているものであること
(ハ) 保育に係る費用の援護の必要があると認められるものであること
ニ 障害(補償)等年金受給権者のうち、次に掲げる要件を満たすもの
(イ) 要保育児たる当該受給権者の子と生計を同じくしている者であること
(ロ) 生計を同じくしている者又は当該受給権者の就労のため当該要保育児が保育所、幼稚園等に預けられているものであること
(ハ) 保育に係る費用の援護の必要があると認められるものであること
ホ 傷病補償年金、複数事業労働者傷病年金又は傷病年金を受ける権利を有する者(せき髄損傷者等傷病の程度が特に重篤であると認められる者に限る。)のうち、次に掲げる要件を満たすもの
(イ) 要保育児たる当該受給権者の子と生計を同じくしている者であること
(ロ) 生計を同じくしている者の就労のため当該要保育児が保育所、幼稚園等に預けられているものであること
(ハ) 保育に係る費用の援護の必要があると認められるものであること
(2) 就労保育援護費の支給を受けることができる者は、労災就学援護費の場合と同様その者の受ける年金たる保険給付に係る給付基礎日額が16,000円以下(スライドによって、年金額が引き上げられた者については、給付基礎日額にそのスライド率を乗じて得た額が16,000円以下)の者である。
(3) (2)に該当する者であっても、「保育に係る費用の援護の必要があると認められるもの」であることが必要である。ここで、「保育に係る費用の援護の必要があると認められる」とは、労災就学援護費における「学資の支弁が困難」の場合と同様、障害者、遺族又は長期傷病者が主として労働者災害補償保険の年金たる保険給付及び厚生年金保険等の給付で生活せざるを得ないような場合をいう。したがって、例えば、労働者の死亡等に伴う損害賠償金等の所得がおおむね6,000万円をこえるような場合には、原則として保育に係る費用の援護の必要があるとは認められない。
(4) 就労保育援護費は、保育を必要とする未就学の児童(要保育児)と生計を同じくしている者(年金受給権者を含む。)の就労のためその要保育児が保育所、幼稚園等に預けられている場合に限って支給するものである。
イ 「要保育児」とは、次の者をいう。
(イ) 毎年当該年度に属する4月1日において6歳未満の児童
(ロ) 毎年当該年度に属する4月1日において6歳以上18歳未満の未就学の児童であって、保育を必要とするもの
ロ 「就労」とは、常態として就労する場合をいう。ここにいう就労には雇用労働者として働く場合のほか、自営業、内職等を営む場合も含まれる。常態として雇用労働者として働くものとして認めるには、就労日数が1ヶ月間においておおむね14日以上(パートタイマーの場合には1ヶ月間の労働時間がおおむね42時間以上)であることが必要である。
ハ 就労する者は、要保育児と生計を同じくしている者でなければならない。したがって、通常、同居の親族がこれに該当する。
「生計を同じくしている」かどうかの判断は、労働者災害補償保険法別表第1の遺族補償年金の項の「生計を同じくしている」の判断の基準による。
ニ 「保育所、幼稚園等」には、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条に規定する保育所、学校教育法第22条に規定する幼稚園のほか、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園、私設の託児施設等(例えば、無認可保育所、会社の託児施設、知人・隣人・親戚等が預かるもの等)が含まれる。
ホ 就労保育援護費の支給対象となるためには、その託児が「就労のため」のものであるといえなければならない。託児と就労との間に因果関係があることが必要である。すなわち、就労と託児とが相互に無関係に行われているような場合には、支給対象とはならない。なお、ここに述べた因果関係は、社会通念上託児が就労を円滑容易にしているという事実が認められれば足りるものであること。
なお、就労には、労働者の被災を契機に新たに働く場合と被災前から継続して働く場合とがあるので念のため。
(5) 就労保育援護費は、年金たる保険給付の支給事由が発生した時には要保育児がなかったが、その後の出生等によって支給要件を満たせば支給するものである。
2 支給額
就労保育援護費の支給額は、要保育児1人につき月額12,000円である。児童福祉手当等の社会保障給付を受ける場合であっても減額しない。
3 支給期間
(1) 就労保育援護費の支給は、年金たる保険給付と同じく月単位で行い、日割り計算等は行わない。
(2) 就労保育援護費の支給期間は、就労保育援護費を支給すべき事由が生じた月から支給すべき事由の消滅した月までであるが、もちろん、障害補償年金、遺族補償年金若しくは傷病補償年金、複数事業労働者障害年金、複数事業労働者遺族年金若しくは複数事業労働者傷病年金又は障害年金、遺族年金若しくは傷病年金の支給事由があることを基礎としているので、これらの年金たる保険給付が支給されない次の場合は就労保育援護費も支給されない。
イ 上記の年金たる保険給付を支給すべき事由が発生した月
ロ 上記の年金たる保険給付を支給すべき事由が消滅した月の翌月以降の月
ハ 労働者災害補償保険法第16条の5第1項の規定(同法第20条の6第3項及び第22条の4第3項において準用する場合を含む。)により遺族補償年金、複数事業労働者遺族年金又は遺族年金の受給権者の所在が不明になったことにより遺族補償年金、複数事業労働者遺族年金又は遺族年金の支給を停止された期間
ニ 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律(昭和40年改正法)附則第43条第3項の規定(労働者災害補償保険法の一部を改正する法律(昭和48年法律第85号)附則第5条第2項及び雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)附則第7条第2項において準用する場合を含む。)による若年停止の期間
(3) 就労保育援護費を支給すべき事由が生じた月とは、要綱3の(2)イ~ホに掲げる者に該当するに至つた日の属する月(その者が受けるべき年金たる保険給付に係る労働者災害補償保険法第8条の3第1項に規定する年金給付基礎日額が、同日において16,000円を超えており、同日後16,000円以下となつた場合にあつては、当該16,000円以下となった日の属する月)とする。
4 欠格事由等
(1) 要綱6の(2)による準用規定における欠格事由は、法第16条の4に規定する遺族補償年金、複数事業労働者遺族年金又は遺族年金の受給権の消滅と同様の考え方により保育に係る費用の援護の必要がなくなったものとして類型的に定められたものである。
(2) 要綱6の(2)による準用規定における「特に労災就労保育援護費を支給することが適当でないと認むべき事情」とは、次の場合をいう。
イ 病気等により長期間にわたり保育所、幼稚園等に預けられていないこと
ロ 保育に係る費用の援護の必要がなくなったこと(1の(3)参照)
5 手続
(1) 就労保育援護費の支給は、要綱7の(2)に掲げる書類を添えて提出された「労災就学等援護費支給(変更)申請書」(様式第1号)により、所轄署長が支給決定して行う。なお、要綱7の(2)のヘ(要綱8の(2)において準用する場合を含む。)の「その他労働省労働基準局長が必要と認めるもの」は、要綱3の(2)のハに掲げる障害(補償)等年金受給権本人が就労する場合の就労証明書面とする。
(2) 要保育児の増加又は減少とは、同一の受給権者に係る要保育児の数に変動を生じた場合をいう。
なお、遺族(補償)等年金受給権者が転給によって変わったときは、新たな受給権者から「労災就学等援護費支給(変更)申請書」(様式第1号)を提出させるものとする。
6 支払
(1) 就労保育援護費の支払は、年金たる保険給付の支払とあわせて、これと全く同様に支払う。ただし、原則として支払期月以外の支払は行わない。
(2) 就労保育援護費の支払期日は年金たる保険給付の支払期日と一致させ、各支払期月に支払われる就労保育援護費は、労災就学援護費の場合に合致させて支払期月の前々月までの3ヶ月分とした。
(3) 所轄署長が定期報告を必要でないと認める場合とは、その年の4月に入園その他の事情があって、「労災就学等援護費支給対象者の定期報告書」(様式第3号)を提出すべき時期の直前に「労災就学援護費支給(変更)申請書」(様式第1号)が提出された場合等をいう。
(4) 未支給の労災就労保育援護費とは、次のものをいう。
イ 就労保育援護費の支給を受ける者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき就労保育援護費でまだその者に支給しなかったもの
ロ 就労保育援護費の支給を受ける者が年金たる保険給付の受給権を失った場合(死亡による失権を除き、遺族補償年金、複数事業労働者遺族年金又は遺族年金については転給者がいない場合に限る。)において、ある支払期月で年金たる保険給付の支払は終わったが就労保育援護費のみの支払が次の支払期月まで残ったときの当該就労保育養護費の未払分。例えば、障害補償年金の受給権者が4月に失権したとき、障害補償年金は5月に2月分、3月分及び4月分が支払われるが、就労保育援護費は5月には1月分、2月分及び3月分しか支払われず、4月分は8月に支払われることとなる。その8月に支払われる4月分の就労保育援護費をいう。
7 経過措置
就労保育援護制度は、原則として支給の申請が行われた日から支給事由が消滅した月までの間支給されるが、制度発足の当初であることを考慮して、昭和54年4月において支給要件を満たすものについては同年5月31日までに支給の申請をすれば4月分から支給することとしたものである。
(2) 就労保育援護制度の新設に伴う事務の所轄について
労働者災害補償保険法施行規則及び労働大臣が定める事務を指定する告示(昭和45年労働省告示第60号)の一部改正を行い、就労保育援護費の支給に関する事務の所轄については、労災就学援護費の場合と同様とすることとしたので留意されたい。
(3) 労災就学援護制度の一部改正その他
1 傷病補償年金又は傷病年金の受給権者に係る労災就学援護費の支給対象の要件の一である「療養開始後3年を経過している」ことを廃止したこと。なお、昭和45年10月27日付基発第774号の該当部分については、これにより改めたものとすること。
2 1の通達において労災就学援護費の支給対象の要件である「学資の支弁が困難であると認められるもの」の例示として挙げられている労働者の死亡等に伴う損害賠償金等の所得が1,000万円をこえるような場合の1,000万円を6,000万円と改めたこと。
3 従来の労災就学援護費支給要綱に労災就労保育援護費の支給に関する規定を設けたことに伴い、同要綱について所要の字句整理及び支給申請等の様式の改正を行ったこと。