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通達:高気圧作業による疾病(潜函病、潜水病等)の認定について

 

高気圧作業による疾病(潜函病、潜水病等)の認定について

昭和36年5月8日基発第415号

(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)

 

標記について、潜函、潜水その他高気圧作業に従事する労働者が、当該作業により、下記に掲げる潜函病、又は潜水病にかかった場合には労働基準法施行規則別表第1の2第2号6に、聴器及び副鼻腔の障害並びに歯牙疾患、過膨脹による肺破裂、潜水墜落病等にかかった場合には、同別表第2号13にそれぞれ該当する疾病として取り扱われたい。

なお、これら疾患のうちには、業務との関係及び診療取扱い等に関し、更に検討を要する点があるので、個々の事案について業務上外の認定その他補償取扱いに関し疑義のある場合には、具体的に資料を添えて本省へ禀伺されたい。

 

1 潜函病、潜水病について

(1) 潜函 潜水その他高気圧作業に従事している労働者(以下単に高気圧作業者という)が、概ね1.0kg/cm2(ゲージ圧)又は水深10m以上の高気圧下における作業により、減圧中又は減圧後において、次の各号のいずれかの症状を呈し、医学上療養が必要であると認められる場合

イ 関節痛又は筋肉痛等いわゆるベンド(運動器障害)

ロ 知覚障害、運動障害、膀胱直腸障害、メニエール氏症侯群、失語症又は症侯性精神病等(中枢神経系の障害)

ハ 胸骨下疼痛、呼吸困難、又は失神等いわゆるチヨーク又はショック症状(呼吸循環系の障害)

(2) ただし、本症と診断するに当っては類似の症状を呈する他の原因に基づく疾病と鑑別するため、次の諸点に留意すること。

イ 上記の各症状以外に大理石様斑点、掻痒感又は皮下若しくは粘膜の出血等の随伴症状が認められる場合が多いこと。

ロ 初発症状の発現は、減圧中又は減圧後主として2時間(おそくも8時間)以内に発生するものであること。

ハ 類似の症状を呈する他の原因による関節痛(例えば、リウマチ様関節炎、変形性関節症)、せき髄性麻ひ(例えば前せき髄動脈症侯群)等との鑑別に留意すること。

ニ 潜函病又は潜水病の判定については、再圧治療タンク等において適正な加圧を行った場合通常その症状は軽快するものであるから他の疾病との鑑別診断上の参考とすること。

2 聴器及び副鼻腔の障害について

高気圧作業者が、概ね0.3kg/cm2(ゲージ圧)又は水深3m以上の高気圧下における作業により主として加圧時において聴器、副鼻腔等に疼痛を生じ、かつ、減圧後において次のいずれかの症状を呈し医学上療養が必要であると認められる場合

(1) 耳閉塞感、耳痛、聴力障害、耳鳴り、眩暈、又は悪心等が訴えられ、更に他覚的には鼓膜の高度の陥凹、若しくは穿孔又は耳出血等が認められるもの(聴器の障害)

(2) 前頭部痛が訴えられ、更に他覚的には鼻腔粘膜の腫大充血又は漿液性分泌物が認められるもの(副鼻腔の障害)

ただし、かかる疾病については、基礎疾病(例えば、慢性耳管狭窄、急性上気道感染等)又は既存疾病(例えば、慢性中耳炎、慢性副鼻腔炎等)がある場合が多いので、当該作業による加圧又は減圧が原因となって異常に早期に発症又は急激に増悪したことが専門医の各種検査により医学的に認められる必要があること。

なお、この場合には、当該急性症状消退後における基礎疾病又は既存疾病に対する根本的治療は補償の対象とならないこと。

3 歯牙疾患について

高気圧作業者が、概ね0.3kg/cm2(ゲージ圧)又は水深3m以上の高気圧下における作業により、加圧又は減圧時において歯牙又は歯周組織に疼痛を生じ、かつ、減圧後において歯髄炎、歯周組織炎又は歯肉(齦)炎等の急性症状が残存したものであって、医学上療養が必要であると認められる場合。

ただし、これらの疾患は通常処置歯又は既存疾病のある場合にこれが発症又は増悪することが多いので、当該作業による加圧又は減圧が原因となって急激に発症又は増悪したことが専門医の各種検査により医学的に認められる必要があること。なお、この場合には、急性症状消退後における既存疾病に対する根本的治療は補償の対象とならないこと。

4 過膨脹による肺破裂について

高気圧作業者が、概ね0.3kg/cm2(ゲージ圧)又は水淡3m以上の高圧より急速な減圧又は浮上中及びその直後に発生した肺破裂とこれに伴う空気栓塞症又は気胸の場合

5 潜水墜落病等(いわゆるスクイーズ)について

潜水作業中に、体表に不平均に圧が加わったことにより発生した高度の頭部、顔面部のうっ血、浮腫、皮下粘膜の出血又は眼球突出若しくは呼吸困難等の症状を呈した場合。