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短時間労働者に係る労働条件の確保・改善について
平成20年2月15日基発第0215004号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
標記については、労働基準関係法令の履行確保及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第8条に基づく「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」(平成5年労働省告示第118号)の周知等によりその推進に努めてきたところであるが、今般、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第72号)による改正後の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム労働法」という。)及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成19年厚生労働省令第121号)による改正後の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則(以下「パートタイム労働法施行規則」という。)において、短時間労働者の適正な労働条件の確保に関する措置として、労働条件に関する文書の交付等の規定が整備され、それに伴い、上記指針が再整理されたところである。
また、労働基準法施行規則の一部を改正する省令(平成24年厚生労働省令第149号)による改正後の労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号。以下「施行規則」という。)において、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項を明示することが規定されたところである。
ついては、今後の労働基準行政における短時間労働者に係る労働条件の確保・改善については、下記によることとするので、引き続き、その的確な推進に遺憾なきを期されたい。
なお、平成5年12月1日付け基発第664号「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行に伴う短時間労働者対策の推進について」は、本通達をもって廃止する。
記
1 基本的な考え方
短時間労働者については、依然として、労働条件の明示、年次有給休暇の付与、就業規則の作成、最低賃金の支払等の法定労働条件の確保に問題がみられるところである。
また、短時間労働者の多くは有期労働契約により雇用されていることから、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準を定める告示(平成15年厚生労働省告示第357号。以下「雇止めに関する基準」という。)に基づく措置についても確実に履行されることが必要である。
さらに、平成20年2月1日付け地発第0201003号・基発第0201001号・職発第0201002号・雇児発第0201002号「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行を踏まえた都道府県労働局における業務の推進について」(以下「業務推進通達」という。)において指示したとおり、パートタイム労働法第6条第1項において文書の交付等による労働条件の明示が義務化されたこと等への的確な対応を図る必要がある。
これらを踏まえ、労働基準行政においては、短時間労働者に係る法定労働条件の履行確保に加え、パートタイム労働法に定める労働条件の明示等の措置の普及を図ることにより、短時間労働者に係る労働条件の確保・改善を積極的に推進するものである。
2 短時間労働者に係る労働条件の確保・改善のために実施すべき重点事項
労働基準関係法令、雇止めに関する基準、パートタイム労働法等に基づく使用者が講ずべき事項のうち、次に掲げる事項を重点として、短時間労働者に係る労働条件の確保・改善を図ることとする。
(1) 労働条件の明示
ア 労働基準法に基づく労働条件の明示の義務
労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項の規定に基づき、短時間労働者に係る労働契約の締結に際し、施行規則第5条第1項で定める労働条件に関する事項を明示しなければならないこと。
また、施行規則第5条第2項で定める賃金、労働時間及び期間の定めのある労働契約の場合は労働契約を更新する場合の基準に関する事項等については、書面の交付により明示しなければならないこと。
イ パートタイム労働法に基づく文書交付等による明示の義務
アにおいて書面の交付により明示しなければならない事項に加え、パートタイム労働法第6条第1項の規定に基づき、パートタイム労働法施行規則第2条第1項に定める次の事項については、文書の交付等により明示しなればならないこと。
(ア) 昇給の有無
(イ) 退職手当の有無
(ウ) 賞与の有無
ウ パートタイム労働法に基づく文書交付等による明示の努力義務
施行規則第5条第1項で定める労働条件に関する事項のうち、アにおいて書面の交付により明示しなければならない事項及びイの事項以外の事項についても、パートタイム労働法第6条第2項の規定に基づき、文書の交付等により明示するよう努めること。
(2) 就業規則の作成
ア 労働基準法に基づく就業規則の作成及び意見聴取の義務
短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する場合は、労働基準法第89条の規定に基づき、短時間労働者にも適用される就業規則を作成しなければならないこと。
この作成又は変更に当たっては、同法第90条の規定に基づき、労働者の過半数で組織される労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織される労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないこと。この場合、労働者の過半数の算定根拠には、短時間労働者が含まれていることが必要であること。
イ パートタイム労働法に基づく意見聴取の努力義務
短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、パートタイム労働法第7条の規定に基づき、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者の意見を聴くように努めること。
ウ ア及びイにおける過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。)の選出に当たっては、次のいずれの要件をも満たすものとすること。
(ア) 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
(イ) 就業規則の作成又は変更の際に意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であり、使用者の意向によって選出された者ではないこと。
なお、過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、不利益な取扱いをしないようにしなければならないこと。
(3) 賃金の支払
短時間労働者に対して、最低賃金法(昭和34年法律第137号)に基づく最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないこと。
また、短時間労働者に対して、所定労働時間を超えて労働させた場合には、その超えた時間に対する所定の賃金を支払わなければならず、法定労働時間を超えて労働させた場合や法定休日及び深夜に労働させた場合には、労働基準法第37条で定める割増賃金を支払わなければならないこと。
(4) 年次有給休暇の付与
短時間労働者に対して、労働基準法第39条の規定に基づき、年次有給休暇を付与しなければならないこと。
(5) 有期労働契約の締結等
短時間労働者のうち有期労働契約を締結するものについては、雇止めに関する基準に定めるところにより、次に掲げる措置を講ずること。
ア 雇止めの予告
有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものであって、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。イの(イ)において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならないこと。
イ 雇止めの理由の明示
(ア) イの場合において、短時間労働者が契約を更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならないこと。
(イ) 有期労働契約が更新されなかった場合において、短時間労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならないこと。
ウ 契約期間についての配慮
有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該短時間労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めること。
(6) 解雇の予告
短時間労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法第20条の規定に基づき、少なくとも30日前にその予告を行わなければならないこと。30日前に予告をしない場合、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないこと。
(7) 退職時の証明
短時間労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合は、労働基準法第22条の規定に基づき、遅滞なくこれを交付しなければならないこと。
(8) 健康診断の実施
短時間労働者に対し、次に掲げる労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の規定に基づく健康診断その他必要な健康診断を実施しなければならないこと。
ア 常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
イ 深夜業を含む業務等(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務をいう。以下同じ。)に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
ウ 一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
この場合において、「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(深夜業を含む業務等に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても実施することが望ましいこと。
(9) 母性保護措置等
短時間労働者である妊娠中の女性及び出産後1年を経過しない女性並びにその他の女性労働者に対し、労働基準法の規定に基づく母性保護措置等を講じなければならないこと。
3 具体的な対応
(1) 窓口相談時の対応
短時間労働者から労働条件に係る相談がなされた場合には、パンフレット等を活用し、上記2の重点事項等について十分な説明を行うとともに、労働基準関係法令違反が疑われる場合には所要の対応を行うこと。
また、パートタイム労働法第6条及び第7条に係る相談への対応については、業務推進通達記の6の(3)によること。
なお、短時間労働者から、労働契約法(平成19年法律第128号)第4条第2項及び第17条等をはじめとして、同法に係る相談がなされた場合には、平成20年2月4日付け地発第0204017号・基発第0204004号「労働契約法の周知等について」記の3の(1)のイの(エ)に基づき的確な対応を図ること。
(2) 監督指導時の対応
監督指導時において短時間労働者の就労が認められた場合には、上記2の重点事項はもとより労働基準関係法令に係る履行状況を確認し、法令違反が認められた場合には、所要の措置を講ずること。
また、パートタイム労働法第6条及び第7条に係る違反が認められた場合の対応については、業務推進通達記の6の(3)によること。
なお、必要に応じ、パンフレット等により上記2の重点事項の周知啓発に努めること。
(3) 集団指導等における対応
短時間労働者を使用する事業場については、パンフレット等を活用し、集団指導等あらゆる機会を通じて、上記2の重点事項の周知啓発に努めること。
(4) 都道府県労働局雇用均等室(以下「雇用均等室」という。)との連携
パートタイム労働法の周知や同法に関わる相談、同法第6条及び第7条に係る対応については、業務推進通達の記の2、3及び6で示したとおり、雇用均等室との連携を図ること。