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通達:改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について

 

改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について

平成18年10月11日雇児発第1011002号

(各都道府県労働局長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)

最終改正 平成28年8月2日雇児発0802第1号

 

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律(平成18年法律第82号。以下「平成18年改正法」という。)」については、平成18年6月21日付け基発第0620002号、雇児発第0621001号により、貴職あて通達したところであるが、平成18年10月11日、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令(平成18年厚生労働省令第183号)」、「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号。以下第2において「指針」という。)」及び「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき事項についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)」が公布又は告示され、平成19年4月1日から施行又は適用されているところである。

また、本日、「雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(平成28年厚生労働省令第137号)」、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき事項についての指針の一部を改正する件(平成28年厚生労働省告示第314号)」及び「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)」(以下「改正省令等」という。)が公布又は告示され、平成29年1月1日から施行又は適用することとされた。

平成18年改正法による改正後の「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)」(以下「法」という。)、改正省令等による改正後の「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第2号)」(以下「則」という。)「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号)」(第2において「指針」という。)及び「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき事項についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)」(第3の1において「指針」という。)及び「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)」(第3の2において「指針」という。)の趣旨、内容及び取扱いは下記のとおりであるので、その円滑な実施を図るよう配慮されたい。

 

第1 総則(法第1章)

法第1章は、法の目的、基本的理念、男女雇用機会均等対策基本方針等、法第2章及び第3章に規定する具体的措置に共通する基本的考え方を明らかにしたものであること。

1 目的(法第1条)

(1) 法第1条は、法の目的が、第一に雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図ること、第二に女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康を図る等の措置を推進することにあることを明らかにしたものであること。

(2) 「法の下の平等を保障する日本国憲法の理念」とは、国民の国に対する権利として「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定した日本国憲法第14条の考え方をいい、同規定自体は私人間に直接適用されるものではないものの、その理念は一般的な平等原則として法の基礎となる考え方であること。

(3) 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」には、企業の制度や方針における労働者に対する性別を理由とする差別を禁止することにより、制度上の均等を確保することのみならず、法第2章第3節に定める援助により実質的な均等の実現を図ることも含まれるものであること。

(4) 「妊娠中及び出産後の健康の確保を図る」措置とは、具体的には、保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間の確保(法第12条)及び当該保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするための措置(法第13条)をいうものであること。

(5) 「健康の確保を図る等」の「等」は、職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(法第11条)を指すものであること。

2 基本的理念(法第2条)

(1) 法第2条第1項は、法の基本的理念が、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあっては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることにあることを明らかにしたものであること。

(2) 「労働者」とは、雇用されて働く者をいい、求職者を含むものであること。

(3) 第2項は、事業主並びに国及び地方公共団体に対して、(1)の基本的理念に従って、労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならないことを明らかにしたものであること。

本項に関する事業主の具体的義務の内容としては、法第2章に規定されているが、事業主は、それ以外の事項についても(1)の基本的理念に従い、労働者の職業生活の充実のために努力することが求められるものであること。

(4) 「事業主」とは、事業の経営の主体をいい、個人企業にあってはその企業主が、会社その他の法人組織の場合にはその法人そのものが事業主であること。また、事業主以外の従業者が自らの裁量で行った行為についても、事業主から委任された権限の範囲内で行ったものであれば事業主のために行った行為と考えられるので、事業主はその行為につき法に基づく責任を有するものであること。

3 啓発活動(法第3条)

(1) 法第3条は、国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等についての関心と理解を広く国民の間に深めるとともに、特に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うべきことを明らかにしたものであること。

(2) 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等」の「等」は、法第2章のほか、法第3章の紛争の解決も含まれること。

(3) 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因」とは、主として、社会に根ざす固定的な男女の役割分担意識及びこの意識を背景にした職場環境や風土をいうものであり、「必要な啓発活動」は事業主、男女労働者その他広く国民を対象とするものであること。

4 男女雇用機会均等対策基本方針(法第4条)

(1) 法第4条は、厚生労働大臣が雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となるべき方針を定めることとし、これに定める事項、定めるに当たっての考慮事項、定める手続等について規定したものであること。

(2) 第3項の「就業の実態等」の「等」には、例えば、企業の雇用管理の実態、男性及び女性の就業に対する社会一般の意識が含まれるものであること。

 

第2 性別を理由とする差別の禁止等(法第2章第1節)

法第2章第1節は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るために、労働者に対する性別を理由とする差別の禁止、性別以外の事由を要件とする措置、婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等を規定したものであること。

法第5条から第7条まで及び第9条の規定の趣旨は、性別にかかわらず、労働者が雇用の分野における均等な機会を得、その意欲と能力に応じて均等な待遇を受けられるようにすること、すなわち、企業の制度や方針において、労働者が性別を理由として差別を受けること、性別以外の事由を理由とするものであっても実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置を合理的な理由のない場合に講ずること、妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益な取扱いをすること等をなくしていくことにあること。

1 性別を理由とする差別の禁止(法第5条及び第6条)

(1) 総論

イ 近年における差別事案の動向等にかんがみ、男性労働者に対する差別を禁止して、男女双方に対する差別を禁止することとしたとともに、差別禁止の対象となる事項に労働者の降格、職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨並びに労働契約の更新を追加し、配置に業務の配分及び権限の付与が含まれることについて明確化を行ったものであること。

ロ 法第5条の「その性別にかかわりなく均等な機会を与え」るとは、男性、女性といった性別にかかわらず、等しい機会を与えることをいい、男性又は女性一般に対する社会通念や平均的な就業実態等を理由に男女異なる取扱いをすることはこれに該当しないものであること。

なお、合理的な理由があれば男女異なる取扱いをすることも認められるものであり、指針第2の14(2)はこれに当たる場合であること。

ハ 指針第2の1の「企業の雇用管理の実態に即して行う」とは、例えば、職務内容が同じでも転居を伴う転勤の有無によって取扱いを区別して配置等を行っているような場合には、当該労働者間において客観的・合理的な違いが存在していると判断され、当該労働者の雇用管理区分は異なるものとみなすことなどが考えられること。

ニ 指針第2の2(2)から第2の13(2)までにおいて「一の雇用管理区分において」とあるとおり、性別を理由とする差別であるか否かについては、一の雇用管理区分内の労働者について判断するものであること。例えば、「総合職」の採用では男女で均等な取扱いをしているが、「一般職」の採用では男女異なる扱いをしている場合は、他の雇用管理区分において男女で均等な機会を与えていたとしても、ある特定の雇用管理区分において均等な機会を与えていないこととなるため、第5条違反となるものであること。

ホ 法第6条における「性別を理由として」とは、例えば、労働者が男性であること又は女性であることのみを理由として、あるいは社会通念として又は当該事業場において、男性労働者と女性労働者の間に一般的又は平均的に、能力、勤続年数、主たる生計の維持者である者の割合等に格差があることを理由とすることの意であり、個々の労働者の意欲、能力等を理由とすることはこれに該当しないものであること。

へ 法第6条における「差別的取扱い」とは、合理的な理由なく、社会通念上許容される限度を超えて、一方に対し他方と異なる取扱いをすることをいうものであること。

(2) 募集及び採用(法第5条)

イ 「募集」には、職業安定法(昭和22年法律第141号)第4条第5項に規定する募集のほかに、公共職業安定所又は同条第7項に規定する職業紹介事業者への求人の申込みが含まれるものであること。

ロ 指針第2の2(2)イ②の「職種の名称」とは、男性を表すものとしては、例えば、ウェイター、営業マン、カメラマン、ベルボーイ、潜水夫等「マン」、「ボーイ」、「夫」等男性を表す語が職種の名称の一部に含まれているものがこれに当たるものであり、女性を表すものとしては、ウェイトレス、セールスレディ等「レディ」、「ガール」、「婦」等女性を表す語が職種の名称の一部に含まれているものがこれに当たるものであること。

「対象を男女のいずれかのみとしないことが明らかである場合」とは、例えば、「カメラマン(男女)募集」とする等男性を表す職種の名称に括弧書きで「男女」と付け加える方法や、「ウェイター・ウェイトレス募集」のように男性を表す職種の名称と女性を表す職種の名称を並立させる方法が考えられること。

「『男性歓迎』、『女性向きの職種』等の表示」の「等」には、「男性優先」、「主として男性」、「女性歓迎」、「貴女を歓迎」等が含まれるものであること。

ハ 指針第2の2(2)ロの「自宅から通勤すること等」の「等」には、「容姿端麗」、「語学堪能」等が含まれるものであること。

ニ 指針第2の2(2)ハ④の「結婚の予定の有無」、「子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無」については、男女双方に質問した場合には、法には違反しないものであるが、もとより、応募者の適正・能力を基準とした公正な採用選考を実施するという観点からは、募集・採用に当たってこのような質問をすること自体望ましくないものであること。

ホ 指針第2の2(2)ホの「募集又は採用に係る情報」とは、求人の内容の説明のほか、労働者を募集又は採用する目的で提供される会社の概要等に関する資料等が含まれること。

なお、ホは男性又は女性が資料の送付や説明会への出席を希望した場合に、事業主がその希望のすべてに対応することを求める趣旨ではなく、先着順に、又は一定の専攻分野を対象として資料を送付する等一定の基準により一定の範囲の者を対象として資料送付又は説明会の開催を行うことは含まれないこと。

①については、内容が異なる複数の資料を提供する場合には、それぞれの資料について、資料を送付する対象を男女いずれかのみとしないこと等が求められるものであること。

②については、複数の説明会を開催するときは、個々の説明会についてその対象を男女いずれかのみとしないことが求められるものであって、男女別の会社説明会の開催は②に該当するものであること。

(3) 配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)(法第6条第1号)

イ 「配置」には、採用に引き続いて行う場合と配置転換によりある職務へと変える場合のいずれも含まれるものであること。

ロ いわゆる出向も配置に含まれるものであること。

ハ 派遣元事業主が派遣先からの男性又は女性と指定をした労働者派遣の要請に応じることは、紹介予定派遣に係る女性派遣労働者の特定等に係る措置に関する特例について定めた「派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号)」第2の18(4)②において行って差し支えないこととされている場合を除き、法第6条違反となるものであり、派遣先のかかる要請は、本条の趣旨に照らして好ましくないものであること。

(4) 昇進(法第6条第1号)

「昇進」には、いわゆる定期昇給やベース・アップは含まれないこと。

(5) 降格(法第6条第1号)

同格の役職間の異動であれば異動先の役職の権限等が異動前の役職の権限等よりも少ないものであったとしても、「降格」には含まれないものであること。

(6) 教育訓練(法第6条第1号)

イ 「教育訓練」には、業務の遂行に関連する知識、技術、技能を付与するもののみならず、社会人としての心構えや一般教養等の付与を目的とするものも含まれるものであること。

ロ 「教育訓練」には、事業主が自ら行うもののほか、外部の教育訓練機関等に委託して実施するものも含まれるものであること。

ハ 業務の遂行の過程内において行う教育訓練については、明確な訓練目標が立てられ、担当する者が定められている等計画性を有するものが該当するものであり、単に見よう見まねの訓練や個々の業務指示は含まれないものであること。

ニ 指針第2の6(2)イ③の「接遇訓練」とは、接客等のために必要な基本的な作法、マナー等を身につけるための教育訓練をいうものであること。

ホ 指針第2の6(2)ロ①の「将来従事する可能性のある職務に必要な知識を身につけるための教育訓練」とは、例えば、管理職に就くために必要とされる能力、知識を付与する教育訓練が考えられるものであること。

(7) 福利厚生(法第6条第2号)

イ 法第6条第2号及び則第1条は、福利厚生の措置のうち、住宅資金の貸付け等供与の条件が明確でかつ経済的価値の高いものについて、事業主は、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならないこととしたものであること。

ロ 事業主が行う種々の給付や利益の供与のうち「賃金」と認められるものについては、そもそも本号の「福利厚生の措置」には当たらないものであること。すなわち、扶養手当、家族手当、配偶者手当等はもとより、適格退職年金、自社年金等のいわゆる企業年金や中小企業退職金共済制度による退職金も、支給条件が明確にされていれば賃金と解されるので、いずれも本条にいう福利厚生の措置には当たらないものであること。

ハ 福利厚生の措置を共済会等事業主とは別の主体が行う場合であっても、事業主による資金の負担の割合、運営の方法等の実態を考慮し、実質的には事業主が行うものとみることができる場合には本条の対象となるものであること。

ニ 「住宅資金」には、住宅の建設又は購入のための資金のほか、住宅の用に供する宅地又はこれに係る借地権の取得のための資金、住宅の改良のための資金を含むものであること。

ホ 則第1条第1号の「労働者の福祉の増進のため」とは、広い概念であり、本号は、転勤、物資購入、子弟の入学、冠婚葬祭、災害、傷病等労働者の生活全般にわたって経済的支出を伴う事象に対し行われる資金の貸付け一般を含むものであること。

へ 則第1条第2号の「定期的に」とは、給付の行われる時期及びその間隔があらかじめ定められていることをいうものであること。

「金銭」には、通貨のほか、金券、施設利用券等これに準ずるものも含むものとして同様に取り扱うこととし、また、「給付」には、直接支給する場合のほか労働者に代わって保険会社等に支払う場合等も含まれるものであること。

本号には、具体的には、私的保険制度の補助、奨学金の支給、自己啓発セミナーの受講料の補助等が含まれるものであること。

労働災害が発生した場合に労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に基づく保険給付に上積みして給付を行ういわゆる企業内上積補償制度は、損失補償的性格のものであることから、本号には含まれないものであること。

ト 則第1条第3号の「資産形成」には、預貯金の預入、金銭の信託、有価証券の購入その他貯蓄をすること及び持家・土地の取得又は家屋の改良等が含まれるものであること。

本号には、具体的には、勤労者財産形成促進法(昭和46年法律第92号)に基づく勤労者財産形成貯蓄に対する奨励金の支給、住宅ローンの利子補給、社内預金に対する利子、持株援助制度における奨励金の支給等が含まれるものであること。

なお、本号は、一時金であるか定期金であるかを問わないものであること。

チ 則第1条第4号の「住宅」とは、居住の用に供する家屋又は家屋の一部をいうものであること。

独身者に対する住宅の貸与が男性のみに限られるものとされている場合には差別解消のための措置が必要であり、具体的には、男子寮や世帯用住宅に女性独身者を入居させるようにすること、女子寮の建設又は住宅の借上げにより、女性独身者にも住宅を貸与することができるようにすること等が考えられるものであること。独身者に対する住宅の貸与が女性のみに限られている場合についても同様であること。

住宅手当の支給は、則第1条第4号の住宅の貸与の措置には当たらないものであり、住宅の貸与の代替措置として認められるものではないこと。

住宅の貸与に関し、例えば、女性について男性と異なる年齢、勤続年数等の入居条件を設定することは、「性別」を理由とした差別的取扱いに該当するものであること。

労働基準法(昭和22年法律第49号)上の「事業附属寄宿舎」とは、本来事業運営の必要性から設置されているものであるが、寝室が個室になっていること、入居費が低廉であること等の状況にあり、福利厚生施設の性格を有するものであれば、本号に該当するものであること。

(8) 定年(法第6条第4号)

定年についての差別的取扱いとは、差別的な定年制度をとっていること又は当該制度に基づき労働者を退職させることをいうものであること。

(9) 解雇(法第6条第4号)

形式的には勧奨退職であっても、事業主の有形無形の圧力により、労働者がやむを得ず応ずることとなり、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合は、「解雇」に含まれるものであること。

また、形式的には雇用期間を定めた契約であっても、それが反復更新され、実質においては期間の定めのない雇用契約と認められる場合には、その期間の満了を理由として雇止めをすることは「解雇」に当たるものであること。

2 性別以外の事由を要件とする措置(法第7条)

(1) 法第7条は、諸外国で広く性差別に含むとされている間接差別について規定したものであること。

(2) 間接差別は、直接差別となる性別要件を別とすれば、およそどのような要件でも俎上に載り得る広がりのある概念であるが、我が国においては、現時点では、どのようなものを間接差別として違法とすべきかについて十分な社会的合意が形成されているとはいえない状況にあることをかんがみると、本法に間接差別を規定し、これを違法とし、指導等の対象にするに当たっては、対象となる範囲を明確にする必要がある。このため、本条では、対象となる性以外の事由を要件とする措置を厚生労働省令で定めることとしたものであること。

したがって、則第2条に定める措置は、あくまでも本法の間接差別の対象とすべきものを定めたものであって、これら以外の措置が一般法理としての間接差別法理の対象にならないとしたものではなく、司法判断において、民法等の適用に当たり間接差別法理に照らして違法と判断されることはあり得るものであること。

(3) 則第2条に定める措置の実施について「合理的な理由」があるか否かについては、当該措置の要件が適用される労働者の範囲を特定した上で判断するものであること。

(4) 則第2条に定める措置は、間接差別についての判例の動向、都道府県労働局への相談等の状況、関係審議会における審議の状況等を踏まえ、機動的に対象事項の追加、見直しを図るものであること。

(5) 「特に必要である場合」とは、当該措置を講じなければ業務遂行上、又は企業の雇用管理上不都合が生じる場合であり、単にあった方が望ましいという程度のものではなく、客観的にみて真に必要である場合をいうものであること。

(6) 指針第3の2(2)ロの「通常の作業において筋力を要さない場合」とは、日常の業務遂行において筋力を要しない場合をいい、突発的な事故の発生等予期せざる事態が生じた場合に筋力を要する場合は、通常の作業において筋力を要するとは認められないものであること。

(7) 指針第3の3(2)イの「計画等」とは、必ずしも書面になっている必要はなく、取締役会での決定や、企業の代表が定めた方針等も含むが、ある程度の具体性があることが必要であり、不確実な将来の予測などは含まれないものであること。

ハの「組織運営上」とは、処遇のためのポストの確保をする必要性がある場合や、不正行為の防止のために異動を行う必要性がある場合などが含まれるものであること。

3 女性労働者に係る措置に関する特例(法第8条)

(1) 法第8条は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置、すなわち、過去の女性労働者に対する取扱い等が原因で雇用の場において男性労働者との間に事実上の格差が生じている状況を改善する目的で行う女性のみを対象にした措置や女性を有利に取り扱う措置については、法違反とならないことを定めたものであること。

なお、男性労働者については、一般にこのような状況にはないことから、男性労働者に係る特例は設けられていないものであること。

(2) 「支障となっている事情」とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざすこれまでの企業における制度や慣行が原因となって、雇用の場において男女労働者の間に事実上の格差が生じていることをいうものであること。この格差は最終的には男女労働者数の差となって表れるものであることから、事情の存否については、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない状況にあるか否かにより判断することが適当であること。

(3) 「女性労働者に関して行う措置」とは、女性のみを対象とした措置又は男性と比較して女性を有利に取り扱う措置をいうものであること。

(4) 「妨げるものではない」とは、法に違反することとはならない旨を明らかにしたものであり、事業主に対して支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関する措置を講ずることを義務付けるものではないこと。

(5) 本条により特例とされる女性労働者に係る措置は、過去の女性労働者に対する取扱い等により女性労働者に現実に男性労働者との格差が生じている状況を改善するために暫定的、一時的に講ずることが許容されるものであり、指針第2の14の(1)イからヘまでの「相当程度少ない」状態にある限りにおいて、認められるものであること。

(6) 指針第2の14の(1)は募集・採用、配置、昇進、教育訓練、職種の変更及び雇用形態の変更に関して本条により違法でないとされる措置を具体的に明らかにしたものであること。イからヘまでにおいて「相当程度少ない」とは、我が国における全労働者に占める女性労働者の割合を考慮して、4割を下回っていることをいうものであること。4割を下回っているか否かについては、募集・採用は雇用管理区分又は役職ごとに、配置は一の雇用管理区分における職務ごとに、昇進は一の雇用管理区分における役職ごとに、教育訓練は一の雇用管理区分における職務又は役職ごとに、職種の変更は一の雇用管理区分における職種ごとに、雇用形態の変更は一の雇用管理区分における雇用形態ごとに、判断するものであること。

(7) 指針第2の14(1)イにおける「その他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること」とは、具体的には、例示されている「募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること」、「採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用すること」のほか、募集又は採用の対象を女性のみとすること、募集又は採用に当たって男性と比較して女性に有利な条件を付すこと等男性と比較して女性に有利な取扱いをすること一般が含まれるものであること。ロ、ハ、ホ及びヘにおいて同じであること。

(8) 指針第2の14(1)ニの「職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練」とは、現在従事している業務の遂行のために必要な能力を付与する教育訓練ではなく、将来就く可能性のある職務又は役職に必要な能力を付与する教育訓練であり、例えば、女性管理職が少ない場合において、管理職に就くために必要とされる能力を付与する教育訓練をいうものであること。

(9) 指針第2の14(1)ニの「その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること」には、例えば、女性労働者に対する教育訓練の期間を男性労働者よりも長くすること等が含まれること。

4 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等(法第9条)

(1) 第1項の「出産」とは、妊娠4箇月以上(1箇月は28日として計算する。したがって、4箇月以上というのは85日以上のことである。)の分娩をいい、生産のみならず死産をも含むものであること。

(2) 第3項は、妊娠、出産は女性特有の問題であり、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るためには、妊娠、出産に関連して女性労働者が解雇その他不利益な取扱いを受けないようにすることが必要であることから、事業主がその雇用する女性労働者に対し、則第2条の2に掲げる事由を理由として解雇その他不利益な取扱いを行うことを禁止するものであること。

なお、本項は、「その雇用する女性労働者」を対象としているものであるので、求職者は対象に含まないものであること。

(3) 第3項の適用に当たっては、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)」第47条の2の規定により、派遣先は、派遣労働者を雇用する事業主とみなされるものであること。

(4) 第3項は、産前産後の休業をしたことを理由として時期を問わず解雇してはならないことを定めたものであり、労働基準法第19条とは、目的、時期、罰則の有無を異にしているが、重なり合う部分については両規定が適用されるものであること。

(5) 指針第4の3(1)柱書きの「法第九条第三項の「理由として」とは、妊娠・出産等と、解雇その他の不利益な取扱いの間に因果関係があることをいう。」につき、妊娠・出産等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと解されるものであること。ただし、

①円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、

②その業務上の必要性の内容や程度が、法第九条第三項の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在すると認められるとき

又は

①契機とした事由又は当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、

②当該事由及び当該取扱いにより受ける有利な影響の内容や程度が当該取扱いにより受ける不利な影響の内容や程度を上回り、当該取扱いについて事業主から労働者に対して適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば当該取扱いについて同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき

についてはこの限りでないこと。

なお、「契機として」については、基本的に当該事由が発生している期間と時間的に近接して当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること。例えば、育児時間を請求・取得した労働者に対する不利益取扱いの判断に際し、定期的に人事考課・昇給等が行われている場合においては、請求後から育児時間の取得満了後の直近の人事考課・昇給等の機会までの間に、指針第4の3(2)リの不利益な評価が行われた場合は、「契機として」行われたものと判断すること。

(6) 指針第4の3(1)なお書きの「妊産婦」とは、労働基準法第64条の3第1項に規定する妊産婦を指すものであること。

(7) 指針第4の3(2)のイからルまでに掲げる行為は、法第9条第3項により禁止される「解雇その他不利益な取扱い」の例示であること。したがって、ここに掲げていない行為について個別具体的な事情を勘案すれば不利益取扱いに該当するケースもあり得るものであり、例えば、長期間の昇給停止や昇進停止、期間を定めて雇用される者について更新後の労働契約の期間を短縮することなどは、不利益な取扱いに該当するものと考えられること。

イ 指針第4の3(2)ロの「契約の更新をしないこと」が不利益な取扱いとして禁止されるのは、妊娠・出産等を理由とする場合に限られるものであることから、契約の更新回数が決まっていて妊娠・出産等がなかったとしても契約は更新されなかった場合、経営の合理化のためにすべての有期契約労働者の契約を更新しない場合等はこれに該当しないものであること。

契約の不更新が不利益な取扱いに該当することになる場合には、休業等により契約期間のすべてにわたり労働者が労務の提供ができない場合であっても、契約を更新しなければならないものであること。

ロ 指針第4の3(2)ホの「降格」とは、指針第2の5(1)と同義であり、同列の職階ではあるが異動前の職務と比較すると権限が少ない職務への異動は、「降格」には当たらないものであること。

(8) 指針第4の3(3)は、不利益取扱いに該当するか否かについての勘案事項を示したものであること。

イ 指針第4の3(3)ロの「等」には、例えば、事業主が、労働者の上司等に嫌がらせ的な言動をさせるようし向ける場合が含まれるものであること。

ロ 指針第4の3(3)ハのなお書きについては、あくまで客観的にみて他に転換すべき軽易な業務がない場合に限られるものであり、事業主が転換すべき軽易な業務を探すことなく、安易に自宅待機を命じる場合等を含むものではないことに留意すること。

ハ 指針第4の3(3)ヘの「通常の人事異動のルール」とは、当該事業所における人事異動に関する内規等の人事異動の基本方針などをいうが、必ずしも書面によるものである必要はなく、当該事業所で行われてきた人事異動慣行も含まれるものであること。「相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせること」とは、配置転換の対象となる労働者が負うことになる経済的又は精神的な不利益が通常甘受すべき程度を著しく越えるものであることの意であること。

③の「原職相当職」の範囲は、個々の企業又は事業所における組織の状況、業務配分、その他の雇用管理の状況によって様々であるが、一般的に、(イ)休業後の職制上の地位が休業前より下回っていないこと、(ロ)休業前と休業後とで職務内容が異なっていないこと及び(ハ)休業前と休業後とで勤務する事業所が同一であることのいずれにも該当する場合には、「原職相当職」と評価されるものであること。

ニ 指針第4の3(3)ト①の「派遣契約に定められた役務の提供ができる」と認められない場合とは、単に、妊娠、出産等により従来よりも労働能率が低下したというだけではなく、それが、派遣契約に定められた役務の提供ができない程度に至ることが必要であること。また、派遣元事業主が、代替要員を追加して派遣する等により、当該派遣労働者の労働能率の低下や休業を補うことができる場合についても、「派遣契約に定められた役務の提供ができる」と認められるものであること。②においても同様であること。

(9) 指針第4の3(1)ハからチまでに係る休業等については、労働基準法及び法がその権利又は利益を保障した趣旨を実質的に失わせるような取扱いを行うことは、公序良俗に違反し、無効であると判断された判例があることに留意すること。

(10) 法第9条第4項は、妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇についての民事的効力を定めたものであること。すなわち、妊娠中及び出産後1年以内に行われた解雇を、裁判で争うまでもなく無効にするとともに、解雇が妊娠、出産等を理由とするものではないことについての証明責任を事業主に負わせる効果があるものであること。

このような解雇がなされた場合には、事業主が当該解雇が妊娠・出産等を理由とする解雇ではないことを証明しない限り無効となり、労働契約が存続することとなるものであること。

5 指針(法第10条)

(1) 法第10条は、法第5条から第7条まで及び第9条第1項から第3項までに定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、厚生労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。

(2) 指針は、法により性別を理由とする労働者に対する差別が禁止されることとなった直接差別(募集、採用、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨、定年及び解雇)、間接差別、婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い(婚姻・妊娠・出産を退職理由として予定する定め、婚姻したことを理由とする解雇、妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益な取扱い)各分野について、禁止される措置として具体的に明らかにする必要があると認められるものについて定めたものであること。指針に定めた例はあくまでも例示であり、限定列挙ではなく、これら以外の措置についても違法となる場合があること。

また、指針においては、法第5条から第7条までに関し、男女双方の例を挙げているものと男性又は女性の一方のみの例を挙げているものがあるが、これは、例示という性格にかんがみ、現実に男性及び女性の双方への差別が起こる可能性が高いものについては男女双方の例を、現実には一方の性に対する差別が起こる可能性が低いものについては男性又は女性の一方のみの例を掲げたものであること。したがって、男性又は女性のみの例示であるからといって、他方の性に対する差別を行ってよいというものではないこと。

(3) 指針第2の2(2)から13(2)までの「排除」とは、機会を与えないことをいうものであること。

(4) 指針第2の3(2)の「一定の職務」とは、特定の部門や特定の地域の職務に限られるものではなく、労働者を配置しようとする職務一般をいうものであること。これは、指針第2の6(2)において同様であること。

(5) 指針第2の1の「その他の労働者についての区分」としては、例えば、勤務地の違いによる区分が考えられるものであること。

(6) 指針第2の14(2)は、男女異なる取扱いをすることに合理的な理由があると認められることから、法違反とはならないものについて、明らかにしたものであること。

イ 指針第2の14(2)イ①には、俳優、歌手、モデル等が含まれるものであること。

①には守衛、警備員であればすべて該当するというものではなく、単なる受付、出入者のチェックのみを行う等防犯を本来の目的とする職務でないものは含まれないものであること、また、一般的に単なる集金人等は含まれないが、専ら高額の現金を現金輸送車等により輸送する業務に従事する職務は含まれるものであること。

②の「宗教上(中略)必要性があると認められる職務」とは、例えば、一定の宗派における神父、巫女等が考えられること。また、「風紀上(中略)必要性があると認められる職務」とは、例えば、女子更衣室の係員が考えられること。

①、②及び③はいずれも拡大解釈されるべきではなく、単に社会通念上男性又は女性のいずれか一方の性が就くべきであると考えられている職務は含まれないものであること。

ロ 指針第2の14(2)ロの「通常の業務を遂行するために」には、日常の業務遂行の外、将来確実な人事異動等に対応する場合は含まれるが、突発的な事故の発生等予期せざる事態、不確実な将来の人事異動の可能性等に備える場合等は含まれないものであること。

労働基準法について「均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合」とは、男女の均等な取扱いが困難であることが、真に労働基準法の規定を遵守するためであることを要するものであり、企業が就業規則、労働協約等において女性労働者について労働基準法を上回る労働条件を設定したことによりこれを遵守するために男女の均等な取扱いをすることが困難である場合は含まれないものであること。

ハ 指針第2の14(2)ハの「風俗、風習等の相違により男女のいずれかが能力を発揮し難い海外での勤務」とは、海外のうち治安、男性又は女性の就業に対する考え方の相違等の事情により男性又は女性が就業してもその能力の発揮が期待できない地域での勤務をいい、海外勤務すべてがこれに該当するものではないこと。

「特別の事情」には、例えば、勤務地が通勤不可能な山間僻地にあり、事業主が提供する宿泊施設以外に宿泊することができず、かつ、その施設を男女共に利用することができない場合など、極めて特別な事情をいい、拡大して解釈されるべきではなく、例示にある海外勤務と同様な事情にあることを理由とした国内での勤務は含まれないものであること。また、これらの場合も、ロと同様、突発的な事故の発生等予期せざる事態、不確実な将来の人事異動の可能性等に備える場合等は含まれないものであること。

 

第3 事業主の講ずべき措置(法第2章第2節)

本章は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための前提条件を整備する観点から、労働者の就業に関して講ずべき措置を規定したものであって、第2章第1節及び第3節の規定と相まって労働者の職業生活の充実を図ることを目的としているものであること。

1 職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(法第11条)

(1) 職場におけるセクシュアルハラスメントは、労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけ、能力の有効な発揮を妨げるとともに、企業にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題であり、社会的に許されない行為であることは言うまでもない。特に、職場におけるセクシュアルハラスメントは、いったん発生すると、被害者に加え行為者も退職に至る場合がある等双方にとって取り返しのつかない損失を被ることが多く、被害者にとって、事後に裁判に訴えることは、躊躇せざるを得ない面があることを考えると、未然の防止対策が重要である。

また、近年、女性労働者に対するセクシュアルハラスメントに加え、男性労働者に対するセクシュアルハラスメントの事案も見られるようになってきたところである。

こうしたことから、法第11条第1項は、職場におけるセクシュアルハラスメントの対象を男女労働者とするとともに、その防止のため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務付けることとしたものであること。

また、第2項は、これらの措置の内容を具体化するために、厚生労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。

(2) 指針は、事業主が防止のため適切な雇用管理上の措置を講ずることができるようにするため、防止の対象とするべき職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び事業主が雇用管理上措置すべき事項を定めたものであること。

イ 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容

指針2「職場におけるセクシュアルハラスメントの内容」においては、事業主が、雇用管理上防止すべき対象としての職場におけるセクシュアルハラスメントの内容を明らかにするために、その概念の内容を示すとともに、典型例を挙げたものであること。

また、実際上、職場におけるセクシュアルハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があることに留意すること。

なお、法及び指針は、あくまで職場におけるセクシュアルハラスメントが発生しないよう防止することを目的とするものであり、個々のケースが厳密に職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否かを問題とするものではないので、この点に注意すること。

① 職場

指針2(2)は「職場」の内容と例示を示したものであること。

「職場」には、業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外の場所であっても、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅(保険外交員等)の他、取材先(記者)、出張先及び業務で使用する車中等も含まれるものであること。

なお、勤務時間外の「宴会」等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当するが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意か等を考慮して個別に行うものであること。

② 性的な言動

指針2(4)は「性的な言動」の内容と例示を示したものであること。「性的な言動」に該当するためには、その言動が性的性質を有することが必要であること。

したがって、例えば、女性労働者のみに「お茶くみ」等を行わせること自体は性的な言動には該当しないが、固定的な性別役割分担意識に係る問題、あるいは配置に係る女性差別の問題としてとらえることが適当であること。

「性的な言動」には、(イ)「性的な発言」として、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を意図的に流布することのほか、性的冗談、からかい、食事・デート等への執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すこと等が、(ロ)「性的な行動」として、性的な関係の強要、必要なく身体に触ること、わいせつな図画(ヌードポスター等)を配布、掲示することのほか、強制わいせつ行為、強姦等が含まれるものであること。

なお、事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者及び学校における生徒等もセクシュアルハラスメントの行為者になり得るものであり、また、女性労働者が女性労働者に対して行う場合や、男性労働者が男性労働者に対して行う場合についても含まれること。また、被害を受けた者(以下「被害者」という。)の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、法及び指針の対象となること。「性的指向」とは、人の恋愛・性愛がいずれの性別を対象とするかを表すものであり、「性自認」とは、性別に関する自己意識をいうものであること。

③ 対価型セクシュアルハラスメント

指針2(5)は対価型セクシュアルハラスメントの内容とその典型例を示したものであること。

「対応により」とは、例えば、労働者の拒否や抵抗等の対応が、解雇、降格、減給等の不利益を受けることと因果関係があることを意味するものであること。

「解雇、降格、減給等」とは労働条件上不利益を受けることの例示であり、「等」には、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換等が含まれるものであること。

なお、指針に掲げる対価型セクシュアルハラスメントの典型的な例は限定列挙ではないこと。

④ 環境型セクシュアルハラスメント

指針2(6)は環境型セクシュアルハラスメントの内容とその典型例を示したものであること。

「労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」とは、就業環境が害されることの内容であり、単に性的言動のみでは就業環境が害されたことにはならず、一定の客観的要件が必要であること。

具体的には個別の判断となるが、一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得るものであること。

また、継続性又は繰り返しが要件となるものであっても、明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態の場合又は心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合には、就業環境が害されていると解し得るものであること。

なお、指針に掲げる環境型セクシュアルハラスメントの典型的な例は限定列挙ではないこと。

⑤ 「性的な言動」及び「就業環境が害される」の判断基準

「労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環境を害される」の判断に当たっては、労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である。具体的には、セクシュアルハラスメントが、男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当であること。

ただし、労働者が明確に意に反することを示しているにも関わらず、さらに行われる性的言動は職場におけるセクシュアルハラスメントと解され得るものであること。

ロ 雇用管理上講ずべき事項

指針3は、事業主が雇用管理上構ずべき措置として10項目挙げており、これらについては、企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならないものであること。

また、措置の方法については、企業の規模や職場の状況に応じ、適切と考える措置を事業主が選択できるよう具体例を示してあるものであり、限定列挙ではないこと。

① 「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」

指針3(1)は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針として職場におけるセクシュアルハラスメントを許さないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことを明らかにしたものであること。

「その発生の原因や背景」とは、例えば、企業の雇用管理の問題として労働者の活用や能力発揮を考えていない雇用管理の在り方や労働者の意識の問題として同僚である労働者を職場における対等なパートナーとして見ず、性的な関心の対象として見る意識の在り方が挙げられるものであること。さらに、両者は相互に関連して職場におけるセクシュアルハラスメントを起こす職場環境を形成すると考えられること。また、「その発生の原因や背景」には、性別役割分担意識に基づく言動も考えられることを明らかにしたものであり、事業主に対して留意すべき事項を示したものであること。

イ①並びにロ①及び②の「その他の職場における服務規律等を定めた文書」として、従業員心得や必携、行動マニュアル等、就業規則の本則ではないが就業規則の一部を成すものが考えられるが、これらにおいて懲戒規定を定める場合には、就業規則の本則にその旨の委任規定を定めておくことが労働基準法上必要となるものであること。

イ③の「研修、講習等」を実施する場合には、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられること。

② 「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」

指針3(2)は、職場におけるセクシュアルハラスメントの未然防止及び再発防止の観点から相談(苦情を含む。以下同じ。)への対応のための窓口を明確にするとともに、相談の対応に当たっては、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制を整備しなければならないことを明らかにしたものであること。

指針3(2)イの「窓口をあらかじめ定める」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであること。この際、労働者が利用しやすい体制を整備しておくこと、労働者に対して周知されていることが必要であり、例えば、労働者に対して窓口の部署又は担当者を周知していることなどが考えられること。

指針3(2)ロの「その内容や状況に応じ適切に対応する」とは、具体的には、相談者や行為者に対して、一律に何らかの対応をするのではなく、労働者が受けている性的言動等の性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、上司、同僚等を通じ、行為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すもの等事案に即した対応を行うことを意味するものであること。

なお、対応に当たっては、公正な立場に立って、真摯に対応すべきことは言うまでもないこと。

指針3(2)ロの「広く相談に対応し」とは、職場におけるセクシュアルハラスメントを未然に防止する観点から、相談の対象として、職場におけるセクシュアルハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合やセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることを意味するものであること。例えば、指針3(2)ロで掲げる、放置すれば相談者が業務に専念できないなど就業環境を害するおそれがある場合又は男性若しくは女性に対する差別意識など性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクシュアルハラスメントが生じるおそれがある場合のほか、勤務時間後の宴会等においてセクシュアルハラスメントが生じた場合等も幅広く相談の対象とすることが必要であること。

指針3(2)ロ②の「留意点」には、相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること等(いわゆる「二次セクシュアルハラスメント」)を防止するために必要な事項も含まれるものであること。

指針3(2)ハについては、近年、様々なハラスメントが複合的に生じているとの指摘もあり、労働者にとっては一つの窓口で相談できる方が利便性が高く、また解決にもつながりやすいと考えられることから、相談について一元的に受け付けることのできる体制を整備することが望ましいことを示したものであること。

③ 「職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」

指針3(3)は、職場におけるセクシュアルハラスメントが発生した場合は、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、当該事案に適正に対処しなければならないことを明らかにしたものであること。

指針3(3)ロの「被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと」には、職場におけるセクシュアルハラスメントを受けた労働者の継続就業が困難にならないよう環境を整備することや、労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントにより休業を余儀なくされた場合等であって当該労働者が希望するときには、本人の状態に応じ、原職又は原職相当職への復帰ができるよう積極的な支援を行うことなども含まれること。

指針3(3)ロ①の「事業場内産業保健スタッフ等」とは、事業場内産業保健スタッフ及び事業場内の心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等をいうものであること。

ハ 併せて講ずべき措置

指針3(4)は、事業主が(1)から(3)までの措置を講ずるに際して併せて講ずべき措置を明らかにしたものであること。

指針3(4)イは、労働者の個人情報については、「個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)」及び「雇用管理に関する個人情報保護に関するガイドライン(平成24年厚生労働省告示第357号)」に基づき、適切に取り扱うことが必要であるが、職場におけるセクシュアルハラスメントの事案に係る個人情報は、特に個人のプライバシーを保護する必要がある事項であることから、事業主は、その保護のために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に周知することにより、労働者が安心して相談できるようにしたものであること。

指針3(4)ロは、実質的な相談ができるようにし、また、事実関係の確認をすることができるようにするためには、相談者や事実関係の確認に協力した者が不利益な取扱いを受けないことが必要であることから、これらを理由とする不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、さらにその旨を労働者に周知・啓発することとしたものであること。

また、上記については、事業主の方針の周知・啓発の際や相談窓口の設置にあわせて、周知することが望ましいものであること。

2 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(法第11条の2)

(1) 事業主による妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いについては、法第9条第3項により禁止されているところであるが、近年、事業主による不利益取扱いのみならず、上司又は同僚による妊娠、出産等に関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されること(以下「職場における妊娠、出産等に関するハラスメント」という。)も見られるようになってきところである。

こうしたことから、法第11条の2第1項は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを防止するため、その雇用する女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務付けることとしたものであること。

また、第2項は、これらの措置の内容を具体化するために、厚生労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。

(2) 指針は、事業主が防止のため適切な雇用管理上の措置を講ずることができるようにするため、防止の対象とするべき職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容及び事業主が雇用管理上措置すべき事項を定めたものであること。

イ 職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容

指針2 「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容」においては、事業主が、雇用管理上防止すべき対象としての職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容を明らかにするために、その概念の内容を示すとともに、典型例を挙げたものであること。

また、実際上、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があることに留意すること。

なお、法及び指針は、あくまで職場における妊娠、出産等に関するハラスメントが発生しないよう防止することを目的とするものであり、個々のケースが厳密に職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに該当するか否かを問題とするものではないので、この点に注意すること。

① 職場

指針2(2)は「職場」の内容と例示を示したものであること。「職場」には、業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外の場所であっても、出張先、業務で使用する車中及び取引先との打ち合わせ場所等も含まれるものであること。

なお、勤務時間外の「懇親の場」等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当するが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意か等を考慮して個別に行うものであること。

② 制度等の利用への嫌がらせ型

指針2(4)は制度等の利用への嫌がらせ型の内容を示したものであること。なお、指針に掲げる制度等の利用への嫌がらせ型の典型的な例は限定列挙ではないこと。

制度等の利用への嫌がらせ型については、女性労働者が指針2(4)イに規定する制度等の利用の請求等をしようとしたこと、制度等の利用の請求等をしたこと又は制度等の利用をしたことと、行為との間に因果関係あるものを指すこと。

「解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの」とは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。なお、解雇その他不利益な取扱いを示唆するものについては、上司でなければ該当しないと考えられるが、一回の言動でも該当すると考えられること。

「制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの」とは、単に言動があるのみでは該当せず、客観的にみて、一般的な女性労働者であれば、制度等の利用をあきらめざるを得ない状況になるような言動を指すものであること。これは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。また、上司の言動については、一回でも該当すると考えられる一方、同僚の言動については、繰り返し又は継続的なもの(意に反することを言動を行う者に明示しているにもかかわらず、さらに行われる言動を含む。)が該当すると考えられること。

なお、労働者が制度等の利用の請求等をしたところ、上司が個人的に請求等を取り下げるよう言う場合については、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに該当し、指針に基づく対応が求められる。一方、単に上司が個人的に請求等を取り下げるよう言うのではなく、事業主として請求等を取り下げさせる(制度等の利用を認めない)場合については、そもそも制度等の利用ができる旨を規定した各法(例えば産前休業の取得であれば労働基準法第65条第1項)に違反することとなること。

「制度等の利用をしたことにより嫌がらせ等をするもの」とは、単に言動があるのみでは該当せず、客観的にみて、一般的な女性労働者であれば、「能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなもの」を指すものであること。これは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。また、上司と同僚のいずれの場合であっても繰り返し又は継続的なもの(意に反することを言動を行う者に明示しているにもかかわらず、さらに行われる言動を含む。)が該当すると考えられること。

③ 状態への嫌がらせ型

指針2(5)は状態への嫌がらせ型の内容を示したものであること。なお、指針に掲げる状態への嫌がらせ型の典型的な例は限定列挙ではないこと。

状態への嫌がらせ型については、指針2(5)イに規定する事由と行為との間に因果関係があるものを指すこと。

「解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの」とは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。なお、解雇その他不利益な取扱いを示唆するものについては、上司でなければ該当しないと考えられるが、一回の言動でも該当すると考えられること。

「妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの」とは、単に言動があるのみでは該当せず、客観的にみて、一般的な女性労働者であれば、「能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなもの」を指すものであること。これは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。また、上司と同僚のいずれの場合であっても繰り返し又は継続的なもの(意に反することを言動を行う者に明示しているにもかかわらず、さらに行われる言動を含む。)が該当すると考えられること。

ロ 雇用管理上講ずべき事項

指針3は、事業主が雇用管理上構ずべき措置として13項目挙げていること。

また、措置の方法については、企業の規模や職場の状況に応じ、適切と考える措置を事業主が選択できるよう具体例を示してあるものであり、限定列挙ではないこと。

① 「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」

指針3(1)は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針として職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを許さないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことを明らかにしたものであること。

「その発生の原因や背景」とは、例えば、妊娠、出産等に関する制度等の利用に不寛容な職場風土が挙げられるものであり、具体的には、妊娠、出産等に関する否定的な言動(他の女性労働者の妊娠、出産等の否定につながる言動(当該女性労働者に直接行わない言動も含む。)をいい、単なる自らの意思の表明を除く。以下同じ。)も考えられること、また、妊娠、出産等に関する制度等の利用ができることを職場において十分に周知できていないことが考えられることを明らかにしたものであり、事業主に対して留意すべき事項を示したものであること。

イ①並びにロ①及び②の「その他の職場における服務規律等を定めた文書」として、従業員心得や必携、行動マニュアル等、就業規則の本則ではないが就業規則の一部を成すものが考えられるが、これらにおいて懲戒規定を定める場合には、就業規則の本則にその旨の委任規定を定めておくことが労働基準法上必要となるものであること。

イ③の「研修、講習等」を実施する場合には、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられること。

② 「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」

指針3(2)は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの未然防止及び再発防止の観点から相談(苦情を含む。以下同じ。)への対応のための窓口を明確にするとともに、相談の対応に当たっては、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制を整備しなければならないことを明らかにしたものであること。

指針3(2)イの「窓口をあらかじめ定める」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであること。この際、労働者が利用しやすい体制を整備しておくこと、労働者に対して周知されていることが必要であり、例えば、労働者に対して窓口の部署又は担当者を周知していることなどが考えられること。

指針3(2)ロの「その内容や状況に応じ適切に対応する」とは、具体的には、相談者や行為者に対して、一律に何らかの対応をするのではなく、労働者が受けている言動等の性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、上司、同僚等を通じ、行為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すもの等事案に即した対応を行うことを意味するものであること。

なお、対応に当たっては、公正な立場に立って、真摯に対応すべきことは言うまでもないこと。

指針3(2)ロの「広く相談に対応し」とは、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを未然に防止する観点から、相談の対象として、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合や妊娠、出産等に関するハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることを意味するものであること。例えば、指針3(2)ロで掲げる、放置すれば相談者が業務に専念できないなど就業環境を害するおそれがある場合又は妊娠、出産等に関する否定的な言動が原因や背景となって妊娠、出産等に関するハラスメントが生じるおそれがある場合のほか、休憩時間等において妊娠、出産等に関するハラスメントが生じた場合、妊娠、出産等に関するハラスメントが取引先等から行われる場合等も幅広く相談の対象とすることが必要であること。

指針3(2)ロ②の「留意点」には、相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること等を防止するために必要な事項も含まれるものであること。

指針3(2)ハについては、近年、様々なハラスメントが複合的に生じているとの指摘もあり、労働者にとっては一つの窓口で相談できる方が利便性が高く、また解決にもつながりやすいと考えられることから、相談について一元的に受け付けることのできる体制を整備することが望ましいことを示したものであること。

③ 「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」

指針3(3)は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントが発生した場合は、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、当該事案に適正に対処しなければならないことを明らかにしたものであること。

指針3(3)ロの「被害を受けた労働者に対する配慮のための措置を適正に行うこと」には、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを受けた女性労働者の継続就業が困難にならないよう環境を整備することや、女性労働者が職場における妊娠、出産等に関するハラスメントにより休業を余儀なくされた場合等であって当該女性労働者が希望するときには、本人の状態に応じ、原職又は原職相当職への復帰ができるよう積極的な支援を行うことなども含まれること。

指針3(3)ロ①の「事業場内産業保健スタッフ等」とは、事業場内産業保健スタッフ及び事業場内の心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等をいうものであること。

④ 「妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消する為の措置」

指針3(4)イは、妊娠等した労働者の業務の分担等を行う他の労働者の業務負担が過大となり、妊娠、出産等に関する否定的な言動が行われる場合があるため、それらを解消する為の措置について定めたものであること。なお、「業務体制の整備など」には、代替要員の確保などについても含まれるものであること。

指針3(4)ロは、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景には、制度等の利用ができることを妊娠等した労働者自身が認識できていない場合があることや、妊娠中は体調の変化が起きやすく通常通りの業務遂行が難しくなることもあり、周囲の労働者とのコミュニケーションがより一層重要となることについて妊娠等した労働者自身が意識を持っていない場合があることから、周知・啓発等について望ましい旨定めたものであること。

ハ 併せて講ずべき措置

指針3(5)は、事業主が(1)から(4)までの措置を講ずるに際して併せて講ずべき措置を明らかにしたものであること。

指針3(5)イは、労働者の個人情報については、「個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)」及び「雇用管理に関する個人情報保護に関するガイドライン(平成24年厚生労働省告示第357号)」に基づき、適切に取り扱うことが必要であるが、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの事案に係る個人情報は、特に個人のプライバシーを保護する必要がある事項であることから、事業主は、その保護のために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に周知することにより、労働者が安心して相談できるようにしたものであること。

指針3(4)ロは、実質的な相談ができるようにし、また、事実関係の確認をすることができるようにするためには、相談者や事実関係の確認に協力した者が不利益な取扱いを受けないことが必要であることから、これらを理由とする不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、さらにその旨を労働者に周知・啓発することとしたものであること。

また、上記については、事業主の方針の周知・啓発の際や相談窓口の設置にあわせて、周知することが望ましいものであること。

3 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(法第12条及び第13条)

法第12条及び第13条、則第2条の3並びに「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため事業主が講ずべき措置に関する指針(平成9年労働省告示第105号)」の趣旨及びその解釈については、引き続き「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の一部施行(第二次施行分)について(平成9年11月4日付け基発第695号、女発第36号)」によるものとすること。

4 深夜業に従事する女性労働者に対する措置(則第13条)

(1) 平成11年4月1日以降女性労働者に対する深夜業の規制が解消されたが、女性が充実した職業生活を送るためには、深夜業に従事する女性労働者の通勤及び業務の遂行の際における防犯面からの安全の確保が必要である。しかしながら、従来女性の深夜業は原則として法律上禁止されていたため、事業主において深夜業に従事する女性労働者の安全の確保に関する取組が十分になされない懸念も存在する。このため、則第13条は、法第2条第2項に規定された事業主の責務の一部を具体化するものとして、事業主は、当分の間、女性労働者を深夜業に従事させる場合には、通勤及び業務の遂行の際における当該女性労働者の安全の確保に必要な措置を講ずるように努めるべきことを明らかにしたものであること。

(2) 「当分の間」とは、深夜業に従事する女性労働者に関して通勤及び業務の際における安全の確保に必要な措置が十分に講じられるようになるまでの間をいうものであり、具体的な年限を限ったものではないこと。

(3) 「通勤」とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいうものであること。

(4) 「業務の遂行」とは、労働者が実際にその業務に就いている状態をいうものであること。

(5) 「安全の確保に必要な措置」の内容は、具体的には、「深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針(平成10年労働省告示第21号)」2(1)に明らかにされているものであること。この指針の解釈については、「深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針について(平成10年6月11日付け女発第170号)」によられたいこと。

 

第4 事業主に対する国の援助(法第2章第3節)

1 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を確保するためには、企業の制度や方針において、労働者に対する性別を理由とする差別の禁止に関する規定を遵守することに加えて、固定的な男女の役割分担意識に根ざす制度や慣行に基づき企業において、男女労働者の間に事実上生じている格差に着目し、このような格差の解消を目指して事業主が積極的かつ自主的に雇用管理の改善に取り組むことが望ましい。このため、法第14条は、このような取組を行う事業主に対し、国が相談その他の援助を行うことができる旨を規定し、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の観点から、労働者の能力発揮を促進するための総合的な雇用管理の改善の取組を促すこととしたものであること。

2 本条柱書き及び第2号の「支障となっている事情」の意義は、第2の3(2)と同じであること。

3 「その他の援助」としては、助言、情報提供等が考えられるものであること。

4 第1号の「雇用に関する状況の分析」とは、企業において女性労働者(男性労働者)が男性労働者(女性労働者)と比べてどのような現状にあるかを客観的に把握し、その状況にアンバランスがある場合にはその原因を分析し、問題点を発見することをいうものであること。

5 第2号の「必要となる措置に関する計画の作成」とは、第1号の分析結果を踏まえて、男女労働者の間に事実上生じている格差を改善するための措置についての計画を作成することをいうものであること。計画の作成に当たっては、現実に即した具体的な目標及び目標を達成するための具体的取組を実施する目安となる期間を設定し、目標に沿って、発見された問題の解決に効果的な具体的措置を検討・策定することが望ましいものであること。

6 第3号の「計画で定める措置の実施」とは、第2号の計画で定めた具体的措置を実際に実施することをいうものであること。

すなわち、本号に基づき事業主が実際に実施する措置には、女性のみを対象とした措置又は男性と比較して女性を有利に取り扱う措置と、男女双方を対象とした措置の両方が含まれるものであるが、前者については、法第8条により法に違反しないこととされた措置に限られるものであること。すなわち、法第5条及び第6条に規定する措置であって男性のみを対象とした措置又は女性と比較して男性を有利に取り扱う措置は許容されていないこと。

7 第4号の「必要な体制の整備」とは、第1号から第3号までの一連の取組等を行うために必要な体制を整備していくことをいうものであること。

8 第5号の「実施状況の開示」とは、第1号から第4号までの事業主の措置の実施状況を開示することをいう。

 

第5 紛争の解決の援助(法第3章第1節)

1 苦情の自主的解決(法第15条)

(1) 企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使間で自主的に解決することが望ましいことから、事業主は、法第6条、第7条、第9条、第12条及び第13条第1項に定める事項(労働者の募集及び採用に係るものを除く。)に関し、労働者から苦情の申出を受けたときは、労使により構成される苦情処理機関に苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るよう努めなければならないこととしたものであること。

(2) 本条は、苦情処理機関に苦情の処理をゆだねることが最も適切な苦情の解決方法の一つであることから、これを例示したものであること。

(3) 「苦情の処理をゆだねる等」の「等」には、事業場の人事担当者による相談等労働者の苦情を解決するために有効であると考えられる措置が含まれるものであること。

(4) 苦情処理機関においては、労働者に対する差別に関する苦情のみを取り扱うのではなく、その他の事案についても、必要に応じ、関係部署との連携を保ちつつ、適切に対処することが望ましいものであること。

(5) 法では、労働者と事業主との間の個別紛争の解決を図るため、本条のほか、法第17条第1項において都道府県労働局長による紛争解決の援助を定め、また、法第18条第1項においては紛争調整委員会(以下「委員会」という。)による調停を定めているが、これらはそれぞれ紛争の解決のための独立した手段であり、本条による自主的解決の努力は、都道府県労働局長の紛争解決の援助や委員会による調停の開始の要件とされているものではないこと。しかしながら、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決することが望ましいことにかんがみ、まず本条に基づき企業内において自主的解決の努力を行うことが望まれるものであること。

2 紛争の解決の促進に関する特例(法第16条)

(1) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の一定の措置についての労働者と事業主との間の紛争については、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)」第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、法第17条から第27条までの規定によるものとしたものであること。

(2) 「紛争」とは、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の一定の措置に関して労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいうものであること。

3 紛争の解決の援助(法第17条)

(1) 紛争の解決の援助(法第17条第1項)

法第5条から第7条まで、第9条、第11条第1項、第11条の2第1項、第12条及び第13条第1項に定める事項に係る事業主の一定の措置についての労働者と事業主との間の個別具体的な私法上の紛争の迅速かつ円満な解決を図るため、都道府県労働局長は、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとしたものであること。

イ 「紛争の当事者」とは、現に紛争の状態にある労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなりえないものであること。

ロ 「助言、指導又は勧告」は、紛争の解決を図るため、当該紛争の当事者に対して具体的な解決策を提示し、これを自発的に受け入れることを促す手段として定められたものであり、紛争の当事者にこれに従うことを強制するものではないこと。

(2) 紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第17条第2項)

イ 法第17条第1項の紛争の解決の援助により、紛争の当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

ロ 「理由として」とは、労働者が紛争の解決の援助を求めたことが、事業主が当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。

ハ 「不利益な取扱い」とは、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の更新拒否等がこれに当たるものであること。

なお、配置転換等が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務と新勤務とを総合的に比較考慮の上、判断すべきものであること。

 

第6 調停(法第3章第2節)

1 調停の委任(法第18条)

(1) 紛争の委任(法第18条第1項)

イ 紛争当事者(以下「関係当事者」という。)間の個別具体的な私法上の紛争について、当事者間の自主的な解決、都道府県労働局長による紛争解決の援助に加え、公正、中立な第三者機関の調停による解決を図るため、法第16条の紛争のうち募集及び採用に関する紛争を除いたものについて、関係当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせるものとすることとしたものであること。

ロ 「関係当事者」とは、現に紛争の状態にある労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなり得ないものであること。

ハ 「調停」とは、紛争の当事者の間に第三者が関与し、当事者の互譲によって紛争の現実的な解決を図ることを基本とするものであり、行為が法律に抵触するか否か等を判定するものではなく、むしろ行為の結果生じた損害の回復等について現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより当該紛争を解決しようとするものであること。

ニ 次の要件に該当する事案については、「当該紛争の解決のために必要があると認め」られないものとして、原則として、調停に付すことは適当であるとは認められないものであること。

① 申請が、当該紛争に係る事業主の措置が行われた日(継続する措置の場合にあってはその終了した日)から1年を経過した紛争に係るものであるとき

② 申請に係る紛争が既に司法的救済又は他の行政的救済に係属しているときや集団的な労使紛争にからんだものであるとき

ホ 都道府県労働局長が「紛争の解決のために必要がある」か否かを判断するに当たっては、ニに該当しない場合は、法第15条による自主的解決の努力の状況も考慮の上、原則として調停を行う必要があると判断されるものであること。

(2) 調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第18条第2項)

法第18条第1項の調停により、関係当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、労働者が調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義は、それぞれ第5の3(2)ロ及びハと同じであること。

2 調停(法第19条から第23条まで)

(1) 法第19条第1項では、調停は、3人の調停委員が行うこととされているが、簡易迅速な手続の実施の観点から、則第10条第1項では、調停手続の一部を特定の調停委員に行わせることができることとしたものであること。

則第10条第1項の「調停の手続の一部」とは、現地調査や、提出された文書等の分析・調査、関係当事者等からの事情聴取等が該当するものであること。

なお、調停案の作成及び受諾の勧告は引き続き調停委員の全員一致をもって行うものであること。

(2) 法第20条第1項の関係当事者の「出頭」及び第2項の職場において性的な言動を行ったとされる者(以下「行為者」という。)の「出頭」は強制的な権限に基づくものではなく、相手の同意によるものであること。これらの出頭については、必ず関係当事者(法人である場合には、委員会が指定する者)又は行為者により行われることが必要であること。

(3) 法第20条第2項は、職場におけるセクシュアルハラスメント又は職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に係る事業主の雇用管理上の措置義務についての紛争に係る調停においては、職場におけるセクシュアルハラスメント又は職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に係る事実関係の確認に関わる事項が紛争の対象となる場合もあることから、関係当事者に加え、行為者の出頭を求めることができることとしたものであること。

なお、調停は、本来、事業主と労働者の二者の紛争の解決を主眼とするため、行為者の出頭を求めるに当たっては、事業主と労働者の二者だけでは紛争を解決するために必要な事実関係の確認が行えない場合に、委員会が調停のために必要があると認め、かつ、関係当事者が同意をした場合において出頭を求めるものであること。

(4) 則第8条第1項の「補佐人」は、関係当事者が事情の陳述を行うことを補佐することができるものであること。補佐人の陳述は、関係当事者が直ちに異議を述べ又は訂正しない限り、関係当事者本人の陳述とみなされるものであること。

なお、補佐人は、意見の陳述はできないものであること。

(5) 則第8条第3項の代理人は、意見の陳述のみを行うことができるものであること。

なお、行為者については、本人の意見を聴くことが出頭の制度を創設した趣旨であることから、代理は認めないものであること。

(6) 法第21条の「主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」とは、主要な労働者団体が指名する関係労働者を代表する者又は主要な事業主団体が指名する関係事業主を代表する者の意であること。

(7) 則第11条の関係労使を代表する者の指名は、事案ごとに行うものであること。指名を求めるに際しては、管轄区域内のすべての主要な労働者団体及び事業主団体から指名を求めなければならないものではなく、調停のため必要と認められる範囲で、主要な労働者団体又は事業主団体のうちの一部の団体の指名を求めることで足りるものであること。

(8) 法第22条の「受諾を勧告する」とは、両関係当事者に調停案の内容を示し、その受諾を勧めるものであり、その受諾を義務付けるものではないこと。

則第12条第3項の「書面」は、関係当事者が調停案を受諾した事実を委員会に対して示すものであって、それのみをもって関係当事者間において民事的効力をもつものではないこと。

(9) 法第23条の「調停による解決の見込みがないと認めるとき」とは、調停により紛争を解決することが期待し難いと認められる場合や調停により紛争を解決することが適当でないと認められる場合がこれに当たるものであり、具体的には、調停開始後長期の時間的経過をみている場合、当事者の一方が調停に非協力的で再三にわたる要請にもかかわらず出頭しない場合のほか、調停が当該紛争の解決のためでなく労使紛争を有利に導くために利用される場合等が原則としてこれに含まれるものであること。

3 時効の中断(法第24条)

法第24条は、法第23条により調停が打ち切られた場合に、当該調停の申請をした者が打ち切りの通知を受けた日から30日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申請の時に遡り、時効の中断が生じることを定めるものであること。

「調停の申請の時」とは、申請書が現実に都道府県労働局長に提出された日であって、申請書に記載された申請年月日ではないこと。

また、調停の過程において申請人が調停を求める時効の内容を変更又は追加した場合にあっては、当該変更又は追加した時が「申請の時」に該当するものと解されること。

「通知を受けた日から30日以内」とは、民法の原則に従い、文書の到達した日は期間の計算に当たり参入されないため、書面による調停打ち切りの通知が到達した日の翌日から起算して30日以内であること。

「調停の目的となった請求」とは、当該調停手続において調停の対象とされた具体的な請求(地位確認、損害賠償請求等)を指すこと。本条が適用されるためには、これらと訴えに係る請求とが同一性のあるものでなければならないこと。

4 訴訟手続の中止(法第25条)

法第25条は、当事者が調停による紛争解決が適当であると考えた場合であって、調停の対象となる紛争のうち民事上の紛争であるものについて訴訟が係属しているとき、当事者が和解交渉に専念する環境を確保することができるよう、受訴裁判所は、訴訟手続を中止することができることとする規定を設けたものであること。

5 資料提供の要求等(法第26条)

法第26条の「関係行政庁」とは、例えば、国の機関の地方支分部局や都道府県等の地方自治体が考えられるものであること。

「その他必要な協力」とは、情報の提供や便宜の供与等をいうものであること。

 

第7 雑則(法第4章)

1 調査等(法第28条)

厚生労働大臣は、男性労働者及び女性労働者それぞれの職業生活に関し必要な調査研究を実施し、その成果を通じて雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等を図るための施策の一層の推進を図ることとしたものであること。

また、厚生労働大臣は、この法律の施行に関し、関係行政機関の長に対し、資料の提供その他必要な協力を求め、さらに、都道府県知事から必要な調査報告を求めることができる旨明らかにしたものであること。

2 報告の徴収並びに助言、指導及び勧告(法第29条)

(1) 法の目的を達成するための行政機関固有の権限として、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができることとしたものであること。

(2) 本条の厚生労働大臣の権限は、労働者からの申立て、第三者からの情報、職権等その端緒を問わず、必要に応じて行使し得るものであること。

(3) 第1項の「この法律の施行に関し必要があると認めるとき」とは、法によって具体的に事業主の責務とされた事項について、当該責務が十分に遂行されていないと考えられる場合において、当該責務の遂行を促すことが法の目的に照らし必要であると認められるとき等をいうものであること。

(4) 則第14条の「厚生労働大臣が全国的に重要であると認めた事案」とは、

イ 広範囲な都道府県にまたがり、その事案の処理に当たって各方面との調整が必要であると考えられる事案

ロ 当該事案の性質上社会的に広汎な影響力を持つと考えられる事案

ハ 都道府県労働局長が勧告を行ったにもかかわらず是正されない事案

等をいうものであり、厚生労働大臣が自ら又は都道府県労働局長の上申を受けてその都度判断するものであること。

「事業場」とは、当該事案に係る事業場であって、本社たる事業場に限られるものではないものであること。

3 公表(法第30条)

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を確固たるものとし、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進するためには、労働者に対する差別等を禁止し、事業主に一定の措置を義務付けるとともに、法違反の速やかな是正を求める行政指導の効果を高め、法の実効性を確保することが必要である。

このような観点から、厚生労働大臣は、法第5条から第7条まで、第9条第1項から第3項まで、第11条第1項、第11条の2第1項、第12条及び第13条第1項の規定に違反している事業主に対し自ら勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしたものであること。

4 船員に関する特例(法第31条)

船員及び船員になろうとする者に係る労働関係については、国土交通省が所管する別の体系となっているため、法中「厚生労働大臣」とあるのを「国土交通大臣」と読み替える等所要の整備を行ったものであること。

5 適用除外(法第32条)

(1) 法第2章第1節及び第3節、第3章、第29条並びに第30条の規定は、国家公務員及び地方公務員に関しては適用しないこととしたものであること。

「国家公務員及び地方公務員」とは、一般職又は特別職、常勤又は非常勤の別にかかわりなく、これに該当するものであること。また、国家公務員の身分が与えられている特定独立行政法人の職員、地方公務員の身分が与えられている特定地方独立行政法人もこれに含まれているものであること。

(2) 法第2章第2節の規定は、一般職の国家公務員(特定独立行政法人等に勤務する者を除く。)、裁判所職員、国会職員及び防衛庁職員に関しては適用しないこととしたものであること。

なお、地方公務員については、適用することとなること。

 

第8 罰則(法第5章)

第29条第1項の助言、指導及び勧告を適切に行うためには、その前提として、同項の報告の徴収を適切に行う必要がある。このため、法第33条は法第29条第1項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者に対して、20万円以下の過料に処することとしたものであること。

なお、過料については、非訟事件手続法(明治31年法律第14号)第4編の過料事件の規定により、管轄の地方裁判所において過料の裁判の手続を行うものとなること。都道府県労働局長は、法第29条違反があった場合には、管轄の地方裁判所に対し、当該事業主について、法第29条第1項に違反することから、法第33条に基づき過料に処すべき旨の通知を行うこととなること。

 

第9 その他

平成18年改正法附則第3条は、平成18年改正法の施行の際に現に委員会に係属している平成18年改正法第1条の規定による改正前の法第14条第1項に基づく調停の請求については、平成18年改正法の施行の時に、調停の申請がされたものとみなすものであること。

 

第10 適用時期及び関係通達の改廃

1 この通達は、平成19年4月1日から適用すること。

2 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について(平成10年6月11日付け女発第168号)」は廃止すること。

3 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の一部施行(第二次施行分)について(平成9年11月4日付け基発第695号、女発第36号)」中「第22条」を「第12条」に、「第23条」を「第13条」に、「第14条」を「第2条の3」に改めること。