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通達:介護休業制度等普及促進対策の推進について

 

介護休業制度等普及促進対策の推進について

平成4年7月13日婦発第166号

(各都道府県婦人少年室長あて労働省婦人局長通達)

 

高齢化、核家族化等を背景として、家族の介護は労働者にとって職業生活を継続していく上での大きな問題となってきている。

このため、介護施設の増加拡充、介護サービスの充実等と相まって、介護すべき家族を持つ労働者が雇用を継続しつつ介護を行うことを可能にする介護休業制度等介護に関する企業内福祉制度の整備が、労働者とりわけ女子労働者の福祉の増進の観点から強く求められているところである。

労働省婦人局においては、平成2年度より介護休業制度等の普及促進のために、シンポジウムを開催するなど社会的気運の醸成を図ってきたところであるが、介護休業制度の普及率は、従業員三〇人以上の事業所で一三・七%(平成三年二月現在)となっており、制度を導入している事業所は徐々に増加してはいるもののまだ不十分な段階にある。

そこで、今後更に介護に関する企業内福祉制度の整備を促進するためには、その具体的なあり方を示すことが重要と考え、今般、「介護休業制度等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を策定した。

このガイドラインは、平成三年七月より学識経験者等の参集を求めて開催してきた「介護に関する企業内福祉制度についてのガイドライン検討会議」の報告等を踏まえて作成したものである。

ついては、下記のとおり、ガイドラインに基づく労使等の関係者に対する啓発指導を行うなど介護休業制度等普及促進対策の一層の推進に努められたい。

なお、平成二年六月二一日付け婦発第一四二号「介護休業制度普及促進対策の推進について」は廃止する。

 

1 趣旨

高齢化の急速な進展等を背景に、介護の問題が社会的にも大きくクローズアップされてきているが、とりわけ自ら家族の介護を行う労働者については、その職業生活と介護とをいかに両立させるかが極めて深刻な問題である。家族の介護のために職業生活を中断せざるを得ない状況にある労働者に対し、就業を中断することなく継続してその能力を発揮することにより、充実した職業生活を送ることができるような就業環境の整備を図ることは、労働者の福祉の増進に不可欠な要素である。また、企業にとっても、従業員の確保や定着、モラールの向上、企業のイメージアップ等によってその事業活動にもプラスの効果をもたらすものである。そしてこれらのことは、ひいては我が国経済社会の発展にもつながるものと考えられる。

そのため、企業が最低限導入すべき介護に関する企業内福祉制度のあり方をガイドラインとして示し、これに基づいた制度導入に向けての啓発指導をはじめとする介護休業制度等普及促進対策の一層の推進を図ることとしたものである。

2 普及促進を図るべき事項

(1) ガイドラインに沿った介護休業制度、勤務時間の短縮等の措置

介護を要する家族をかかえた労働者の雇用の継続を図るために、最低限必要な措置として企業が導入していくべき介護休業制度及び勤務時間の短縮等の措置に関し、別添のとおりガイドラインとしてとりまとめた。

ガイドラインは、介護休業制度等の現在の普及状況も踏まえ、中小企業を含め、企業がその雇用管理においてどこまで対応すべきか、また、対応することができるかという視点から、まず最低限確保されるべき内容を示している。

したがって、企業に対しては、最低限このガイドラインに沿った内容の制度が早期に導入されるよう具体的な指導を行うこと。

なお、この場合、労働協約又は就業規則により制度化されるよう指導を行うこと。

(2) その他考慮すべき介護に関する企業内福祉制度

ガイドラインで示した事項以外にも個々の企業でその事業の状況や家族の介護を行う労働者の実態に応じ配慮することが望ましい事項がある。企業がその雇用管理の中で必要に応じ以下に示す事項について措置を講ずることが望ましいことから、導入に向けての取組を促進するため室において適宜周知啓発を行うこと。

イ 再雇用制度

企業が労働者を募集又は採用するに当たって、家族の介護のために自社あるいは同一グループ内の企業を退職した労働者であって、再雇用の希望を申出ていた者については、他の応募者に優先して採用するよう配慮するなど、特別の配慮を行うこと。

ロ 融資制度等

入院費用や介護用品の購入等介護を行う労働者の臨時的な経済支出を援助するための融資制度等を設けること。

ハ ホームヘルプ援助制度等

ホームヘルパーのあっせんや労働者が外部から家事や介護のサービスを購入した場合その費用の一部などを補助する制度等

ニ 相談・研修等

病院や介護施設等に関する情報、介護のノウハウや外部サービスに関する情報など、介護を行う者が必要とする情報の提供や相談に応じることができるようにすること。

さらには、企業内教育の一環として介護に関する研修、講習等を行うこと。

3 啓発指導

(1) 広報啓発活動について

イ 広報啓発活動

九月一五日の敬老の日を中心に、集中的な啓発活動を行う等効果的な介護休業制度等の啓発活動を行うこと。実施に当たっては、都道府県労政・労働福祉主管課等関係行政機関、報道機関、労使団体等との連携を図り、地域の実情に応じた実効のあるものとなるよう努めること。

また、年間を通じ、室主催の会議や関係機関・団体の会合、各ヒアリング調査等あらゆる機会をとらえてガイドライン等の周知を図ること。

ロ 仕事と介護に関するシンポジウムの開催

仕事と介護の両立に関する問題について社会的関心を喚起し、ガイドラインに沿った各制度の導入の気運の醸成を図るため、仕事と介護に関するシンポジウムを適宜開催すること。

(2) 事業主等に対する指導等について

事業主に対して、ガイドライン等についての周知を図り、制度導入に向けての取組を促進するため、介護休業制度等普及使用者会議を適宜開催するほか、企業における介護休業制度等の実態把握に努めること。

なお、介護休業等に関するガイドラインモデル事業を(財)女性職業財団に委託して実施することとしているので、実施対象地域の室においては連携を図られたい。

イ 介護休業制度等普及使用者会議の開催

(イ) 対象等

管内の実情により、対象企業を選定し、当該企業の人事労務関係の部課長等責任者の出席を要請すること。

なお実施に当たっては、室の業務の状況や広報効果等を考慮し、育児休業等に関する法律の集団説明会や各種セミナー等と併せて実施することとしても差し支えないこと。

(ロ) 会議の内容

本会議の内容については、ガイドラインの概要のほか好事例を活用した具体的導入方法についての説明など、実情に応じて適宜工夫し、ガイドライン等に沿った各制度の円滑な導入を援助するような運営に努めること。

ロ 介護休業制度等介護に関する企業内福祉制度実態把握について

介護休業制度を実施している企業に対し適宜ヒアリングを行うほか、各種調査や会議等の機会をとらえて介護休業制度等介護に関する企業内福祉制度の実態を把握するとともに、本対策推進の参考となると思われるものについては本省に送付すること。

(3) 報告について

介護休業制度等普及使用者会議の実施状況等介護休業制度普及促進業務については、業務統計報告付表により報告すること。

なお、介護休業制度等普及使用者会議を他の会議と併せて実施した場合は、特記事項にその旨記入すること。

 

(参考)

「介護休業制度等に関するガイドライン」の策定

平成四年七月一三日

(労働省発表)

労働省婦人局では、介護休業制度等の企業における整備をより一層促進するため、「介護休業制度等に関するガイドライン」を策定した。

このガイドラインは、高齢化、核家族化等を背景として、労働者にとって家族の介護と職業生活をいかに両立させるかが大きな問題となってきており、介護施設、介護サービスの充実等と相まって、介護すべき家族を持つ労働者が雇用を継続しつつ介護を行うことを可能にする介護休業制度等介護に関する企業内福祉制度の整備が強く求められていることから策定したものである。内容は、介護を要する家族をかかえた労働者の職業生活と家庭生活との両立を図るために最低限必要な措置として、企業において実施されるべき企業内福祉制度のあり方を示している。

策定に当たっては、平成三年七月より学識経験者等の参集を求めて開催してきた「介護に関する企業内福祉制度についてのガイドライン検討会議」の報告(平成四年五月)等を踏まえて行った。

労働省においては、平成二年度よりシンポジウムの開催等により介護休業制度等の普及促進対策を推進してきたところであるが、介護休業制度の普及率は、従業員三〇人以上の事業所で一三・七%(平成三年二月現在)となっており、制度を導入している事業所は徐々に増加してはいるもののまだ不十分な段階にある。今後、この「ガイドライン」に基づいて労使等の関係者に対する啓発指導を行うなど介護休業制度等普及促進対策の強力な推進を図ることとしており、その旨婦人局長より各都道府県婦人少年室長あて本日通達を行った。

介護休業制度等に関するガイドライン

第一 趣旨

このガイドラインは、家族の介護に従事する労働者の職業生活と介護との両立を図るため、企業において実施されるべき企業内福祉制度のあり方を示したものである。企業は、介護休業制度及び勤務時間の短縮等の措置について以下に示す内容を企業内福祉制度として最低限導入していくことが要請される。もとより、それぞれの企業において、ガイドラインの内容を上回る、より労働者にとって選択の幅が広い制度を導入することは望ましい。

第二 介護の定義

このガイドラインにおいて「介護」とは、家庭での医療・療養上の世話や身の回りの世話、入院中の身の回りの世話やリハビリ介助、通院介助等のいわば直接的介護のほか、入・退院のための手続、付添等の手配、入院の付添及び情緒的な支え、退院後の介助者探し等在宅介護を行うに当たっての受け入れ体制の整備等も含めて幅広くとらえるものである。

第三 介護休業制度

介護を必要とする家族を有する労働者の申出により、その労働者が介護のため一定期間休業することを認める介護休業制度は、労働者の家族に介護を必要とする者が発生した場合、緊急避難的に休業をとることを可能にし、労働者の不本意な退職を防ぐために是非とも必要な制度である。

(1) 対象となる労働者の要件

イ 介護休業を取得できる労働者は男女労働者とすること。

ロ 介護休業を取得できる労働者について、一定期間の勤続を要件とすることや日々雇用される者をはじめとする期間雇用者、継続就業の意思のない者、六五歳を超える者などを除外するなど、目的に照らしてある程度の制限を設けることはやむを得ないこと。

ハ 介護休業を取得できる労働者と要介護者との関係で、他に介護する人がいないことを条件とすることは、制度を合理的に運営し得るような具体的かつ有効な認定の方法が見出し難いことから適当でないこと。

ニ 同居や扶養の条件をつけることは、特定の者にのみ介護の負担を押しつけることになる可能性があり、適当でないこと。

(2) 対象となる要介護者の範囲

対象となる要介護者の範囲には、最低限、配偶者、本人の父母、子供、配偶者の父母を含めるべきであり、これらの者が、身体上又は精神上の障害のあることにより日常生活を営むのに支障があるような状態になった場合に休業をとることができる制度とすべきであること。

(3) 期間・回数

イ 介護を必要とする家族をかかえた労働者にとっては、その家族の症状等がある程度安定するまでの間の休業の緊急性、必要性が高いこと、また、(1)において介護休業を取得できる労働者と要介護者との関係には条件を付さないとしていること等をかんがみると、休業に期間を設定する場合には少なくとも3か月とすることが必要であること。

ロ 回数に制限を設ける場合は、要介護者一人につき一回は確保すること。

(4) 取得の形態

一定期間の連続した休業の制度をまず最低限確保すべきであること。

(5) 賃金、配置その他の労働条件

休業期間中の賃金の取扱い、休業後の昇給、賞与の取扱い、退職金の算定における休業期間の取扱い、休業後の配置等の労働条件については、労使が十分話し合った上決定し、その上で就業規則に定めるなど労働者に周知させるための措置を講ずること。その際、個々の取扱いが介護休業制度を取得させることとした趣旨を失わせるような不利益なものであってはならないこと。

第四 勤務時間の短縮等の措置

勤務時間の短縮等の措置は、労働者の多様なニーズに対応してその雇用の継続を図っていくためにも介護休業制度と並び労働者が選択できる措置として導入を図っていくべきである。

(1) 措置の実施方法

勤務時間の短縮等の措置としては次のような形態のものが適当であること。

イ 通常の所定労働時間より短い所定労働時間で勤務時間帯を一種又は数種特定し、労働者が希望したときに適用する制度。

ロ 一定の時間単位で労働者が個々に勤務しない時間を請求することを認める制度。

ハ フレックスタイム制度や就業時刻の繰上げ又は繰下げにより勤務時間帯を変更することを認める制度。

イ又はロの場合に実施すべき所定労働時間の短縮の幅は、実質的に介護に必要な時間が確保できるよう労使の実情に応じて決定されるべきであること。

(2) 措置の内容等

対象となる労働者の要件、対象となる要介護者の範囲、回数については、介護休業制度と同水準の内容が最低限確保されるべきであること。

また、期間については、勤務時間の短縮等の措置は介護休業制度と並ぶ選択肢として設けるものであるので、措置を受けられる期間は3か月を上回ることが必要であること。

賃金その他の労働条件についても、労使が十分話し合った上決定し、その上で就業規則に定めるなど労働者に周知させるための措置を講ずるよう努めること。その際、個々の取扱いが勤務時間の短縮等の措置を受けさせることとした趣旨を失わせるような不利益なものであってはならないこと。