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育児休業制度の労働基準法上の取扱いについて
平成三年一二月二〇日基発第七一二号
(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長)
育児休業等に関する法律(平成三年法律第七六号。以下「育児休業法」という。)の施行に伴い同法に基づき導入される育児休業制度に係る労働基準法(以下「法」という。)上の取扱いについては下記のとおりであるので、了知されるとともに、その周知に遺憾なきを期されたい。
記
1 育児休業法の施行事務
育児休業法については、婦人局、都道府県婦人少年室が施行を行うものであり、労働基準監督機関においては、育児休業制度に係る労働基準関係法令の施行事務を取り扱うものであること。したがって、育児休業法についての相談等は都道府県婦人少年室が行うものであること。
2 平均賃金
法第一二条に規定する平均賃金の算定期間中に、育児休業法第二条第一項に規定する育児休業以外の育児休業の期間がある場合においては、昭和二四年労働省告示第五号第二条の規定に基づき、平均賃金の算定において、その日数及びその期間中の賃金は、基礎となる期間及び賃金の総額から控除するものとすること。
なお、昭和四八年二月二八日付け基発第九二号は廃止する。
3 子の死亡等による育児休業終了後の労務の提供の開始時期
子の死亡等により育児休業が終了した労働者の労務の提供の開始時期については、あらかじめ定めることが事業主の努力義務とされているところであり、取り決めるに当たっては、事業主と労働者との合意によることが望まれるが、労働者との合意による取決め等がない日に労働者を休業させる場合には、法第二六条に基づく休業手当の支払いが必要となる場合があるものと解されること。
また、このような取決め等がない場合の労務の提供の開始時期については、あくまで労使間の話し合いにより解決を図るべきものであること。
4 育児休業期間中の賃金等
育児休業法上育児休業期間中の賃金支払いは義務付けられておらず、労使の任意の話し合いに委ねられていること。
また、社会保険料の被保険者負担分については、育児休業期間中についても労働者が負担すべきものとされているが、事業主が被保険者負担分を肩代わりする場合には、当該負担分は法第一一条の賃金として取り扱われること(昭和六三年三月一四日付け基発第一五〇号)。したがって、育児休業が終了した後一定年限労働しなければ当該賃金額分を労働者に支払わせるとの取扱いは、法第一六条に抵触するものと解されること。
事業主が育児休業期間中に社会保険料の被保険者負担分を立替え、復職後に賃金から控除する制度については、著しい高金利が付される等により当該貸付が労働することを条件としていると認められる場合を除いて、一般的には法第一七条に抵触しないと解されるが、法第二四条第一項ただし書後段により労使協定が必要であること。また、一定年限労働すれば、当該債務を免除する旨の取扱いも労働基準関係法上の問題を生じさせないこと。
5 解雇
育児休業法第七条は、労働者が休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由とする解雇を制限したものであり、育児休業期間中の解雇を一般的に制限したものではなく、育児休業期間中の労働者を解雇しようとする場合には法第二〇条に規定する手続が必要であること。
6 年次有給休暇
年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものであるから、育児休業申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はないこと。また、育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協力に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じるものであること。
7 就業規則
(1) 休暇
法第八九条第一項第一号において就業規則の記載事項として「休暇」があげられており、この「休暇」の中には、従来から、育児休暇も含まれるものと解してきたところであること。育児休業法による育児休業も、この育児休暇に含まれるものであり、育児休業の対象となる労働者の範囲等の付与要件、育児休業取得に必要な手続、休業期間については、就業規則に記載する必要があること。
なお、育児休業法においては、育児休業の対象者、申出手続、育児休業期間等が具体的に定められているので、育児休業法の定めるところにより育児休業を与える旨の定めがあれば記載義務は満たしていると解されること。
(2) その他の絶対的必要記載事項
法第八九条第一項第一号から第三号までに定められている事項は、いかなる場合でも必ず記載しなければならない絶対的記載事項であり、育児休業中の労働者、育児休業後の労働者、育児休業をしないで就労する労働者のいずれについても、これらの事項が就業規則上明確になっていることが必要であるが、これらの事項が育児休業期間等であると否とを問わず同様である場合には、殊更別記する必要はないこと。具体的には、例えば、育児休業期間中に賃金が支払われないのであればその旨、育児休業期間中に通常の就労時と異なる賃金が支払われるのであればその決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期について記載しなければならないこと。また、例えば、一歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものについての時差出勤の制度については、その始業及び終業の時刻について記載しなければならないこと。
(3) 相対的必要記載事項
育児休業期間中の通信教育制度等の教育訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項、育児休業後の臨時の賃金等について定めをする場合においては、これに関する事項、その他育児休業中の労働者、育児休業をしないで就労する労働者等について法第八九条第一項第三号の二から第一〇号までに定められている事項について定めをする場合には、それらに関する事項を記載しなければならないこと。ただし、当該定めが育児休業期間等であると否とを問わず同様である場合には、殊更別記する必要はないこと。
(4) 育児休業に関する規則
育児休業に関する事項については、就業規則の本則において大綱、要旨を規定するとともに、具体的な委任規定を設け育児休業に関する規則を例えば育児休業規程として一括して定めることは差し支えないものであり(昭和二三年一〇月三〇日付け基発第一五七五号、昭和六三年三月一四日付け基発第一五〇号)、また、育児休業に関する必要記載事項と必要記載事項以外の事項の双方が一括して定められ労働者に周知されることが望ましいとの観点から、事業主が講ずべき措置に関する指針(平成三年一〇月一五日付け労働省告示第七三号。別添。)1(2)においても、その旨定められているものであること。
参考・別添(省略)