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通達:労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について

 

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について

令和6年4月30日基発0430第4号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和6年厚生労働省令第80号。以下「改正省令」という。)が令和6年4月30日に公布され、令和7年4月1日から施行することとされたところであるが、その改正の趣旨、内容等は下記のとおりであるので、その施行に遺漏なきを期されたい。

なお、建設業等の事業場で就業する一人親方等については、従来、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)に基づく措置の対象としていなかったが、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第82号。以下「令和4年省令」という。)により、法第22条等の規定に基づく措置の対象とされたところであり、これに加え、改正省令においては、新たに法第20条及び第21条等の規定に基づく措置の対象とするものであることから、令和4年省令と併せて、関係団体とも十分に連携の上、その周知・施行に遺漏なきを期されたい。

 

第1 改正の趣旨

令和4年省令は、令和3年5月17日に出されたいわゆる「建設アスベスト訴訟」の最高裁判決を踏まえ、法第22条を根拠とする省令の条文について改正するために制定したものであるが、この省令について検討を行った労働政策審議会安全衛生分科会において、法第22条以外の規定について労働者以外の者に対する保護措置のあり方、注文者による保護措置のあり方、個人事業者自身による事業者としての保護措置のあり方などについて、別途検討の場を設けて検討することとされた。これを受け、令和4年5月から令和5年10月まで「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」が開催され、令和5年10月27日に報告書が公表された。

同報告書において、「安衛法第25条に基づく「災害発生時等の作業場所からの退避」や安衛法第20条、第21条に基づく「立入禁止等」については、ある作業場所の管理権原に着目した措置であり、雇用関係や請負関係にかかわらず、当該場所で作業に従事する者を対象として、事業者に措置義務を課していることを踏まえれば、「有害性」と「危険性」で対応に差を設ける合理性はないため、安衛法第22条以外の条文に関しても、速やかに所要の省令改正を行うこととする」とされたことを踏まえ、改正省令においては、労働者と同じ場所で働く労働者以外の一人親方等に1

対しても、労働者と同等の保護措置を図る観点から、法第27条の規定に基づく法第20条及び第21条に係る労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)、ボイラー及び圧力容器安全規則(昭和47年労働省令第33号。以下「ボイラー則」という。)、クレーン等安全規則(昭和47年労働省令第34号。以下「クレーン則」という。)及びゴンドラ安全規則(昭和47年労働省令第35号。以下「ゴンドラ則」という。)の規定を改正するものである。

 

第2 改正の概要

1 改正の要点

機械等による危険、特定の業務における作業方法から生ずる危険及び特定の場所に係る危険を防止するため、法第20条及び第21条等の規定に基づく4省令を改正し、当該危険に係る業務又は作業を行う事業者に対して、・当該危険に係る業務又は作業を行う場所において、他の作業に従事する一人親方等の労働者以外の者に対しても労働者と同等の保護措置を講ずる義務(ただし、場所の管理権原に基づく立入禁止や退避等に係るものに限る。)を課すこととし、具体的には次の(1)及び(2)のとおりとしたこと。

なお、今回の改正により、これまで労働者に対する義務が生じていた内容に変更が生じるものではないこと。

(1) 場所に関わる危険の防止(立入禁止、退避等)に係る規定の改正

ア 特定の場所への立入禁止等の対象拡大(改正安衛則第128条第1項、第151条の7第1項、第151条の9第1項、第151条の48第2項、第151条の62第2項、第151条の70第2項、第151条の95、第151条の96、第151条の97第1項、第151条の140、第151条の142、第151条の164、第151条の166、第158条第1項、第164条第3項第3号、第171条の2第3号、第171条の6第1号、第180条第3項第2号、第187条、第194条の6第1号、第205条第2号、第224条、第245条第1号、第274条の2第2項、第288条、第312条第2号、第313条第3号、第361条、第365条第1項、第372条第1号、第386条、第389条の8第2項、第411条、第415条、第416条第1項、第420条第2項、第433条、第452条、第453条、第461条、第478条第1項、第481条、第517条の3第1号、第517条の7第1号、第517条の11第1号、第517条の15第1号、第517条の21第1号、第530条、第532条の2、第552条第2項第2号、第563条第3項第2号、第564条第1項第2号、第575条の6第2項第2号及び第575条の7第2号、改正ボイラー則第29条第1号、改正クレーン則第28条、第29条、第33条第1項第2号、第74条、第74条の2、第75条の2第1項第2号、第114条、第115条、第118条第1項第2号、第153条第1項第2号、第187条及び第191条第1項第2号並びに改正ゴンドラ則第18条関係関係)

事業者は、危険が発生するおそれがある場所には、必要がある労働者を除き、労働者が立ち入ることを禁止し、その旨を見やすい箇所に表示する義務があるところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて、必要がある者を除き、当該場所で作業に従事する者が立ち入ることを禁止し、その旨を見やすい箇所に表示しなければならないこととしたこと。

イ 特定の箇所への搭乗禁止の対象拡大(改正安衛則第116条第1項、第151条の13、第151条の50第1項、第151条の51第3項及び第4項、第151条の72第1項、第151条の73第3項及び第4項、第151条の81第1項、第151条の101、第151条の105第1項、第151条の119第1項、第151条の144第1項及び第2項、第151条の168第1項及び第2項、第162条、第194条の15、第194条の20第1項、第221条並びに第223条、第531条並びに改正クレーン則第26条、第27条第1項及び第2項第3号、第72条、第73条第1項及び第2項第3号、第112条、第113条第1項、第186条第1項並びに第207条第1項関係)

事業者は、車両系荷役運搬機械等の乗車席以外の箇所など危険な箇所に労働者を搭乗させてはならないとされているところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含め、危険な箇所に搭乗することを禁止しなければならないこととしたこと。

ウ 事故等発生時の退避の対象拡大(改正安衛則第150条の3第2号、第150条の5第2号、第274条の2第1項、第321条、第322条第2号、第389条の7、第389条の8第1項、第479条第2項及び第3項、第517条の16第2項及び第3項、第575条の12並びに第575条の13並びに改正ボイラー則第19条関係)

事業者は、特定の事故等が発生し、労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、事故等が発生した場所から労働者を退避させる義務があるところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて、当該場所で作業に従事する者を退避させなければならないこととしたこと。

エ 退避に関連する措置の対象拡大(改正安衛則第24条の6、第389条の10、第389条の11第1項、第575条の14第1項、第575条の15第1項及び第575条の16第1項関係)

事業者は、退避に関連する措置として、避難用器具などについて労働者の人数分以上の備付けや労働者に対する備付け場所及び使用方法の周知、退避等の訓練の実施などの義務があるところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて、措置を講じなければならないこととしたこと。

オ 特定の場所での火気使用の禁止の対象拡大(改正安衛則第312条第3号、第313条第4号、第318条第3項及び第321条の2第1号関係)

事業者は、特定の場所においては、労働者が喫煙など火気を使用することを禁止する義務があるところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて、当該場所で作業に従事する者が喫煙など火気を使用することを禁止しなければならないこととしたこと。

カ 悪天候時の作業禁止の対象拡大(改正安衛則第151条の106、第151条の145、第151条の170、第245条第2号、第483条及び第522条並びに改正クレーン則第33条第1項第3号、第75条の2第1項第3号、第118条第1項第3号、第153条第1項第3号及び第191条第1項第3号関係)

事業者は、悪天候のため特定の作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業に労働者を従事させてはならないとされているところ、労働者以外の者も含めて、悪天候時に当該作業を行わせてはならないこととしたこと。

キ 表示による必要事項の周知の対象拡大(改正安衛則第273条関係)

事業者は、化学設備(配管を除く。)に原材料を送給する作業による爆発又は火災を防止するため、必要な事項について労働者が見やすい位置に表示する義務があるところ、労働者以外の者も含めて、見やすい位置に表示しなければならないこととしたこと。

(2) 労働者以外の者による立入禁止等の遵守義務に係る規定の整備

ア 労働者以外の者による立入禁止の遵守義務の対象拡大(改正安衛則第128条第2項、第416条第2項関係)

労働者は、立入りが禁止された場所には立ち入ってはならないとされているところ、(1)アにより新たに立入禁止の対象とされた労働者以外の者も含め、当該場所で作業に従事する者は、立入りが禁止された場所には立ち入ってはならないこととしたこと。

イ 労働者以外の者による特定の設備使用の遵守義務の対象拡大(改正安衛則第101条第5項、第151条の45第2項、第151条の67第2項、第427条第2項、第449条第2項、第526条第2項及び第551条第2項関係)

労働者は、特定の場所では踏切橋や昇降するための設備などを使用しなければならないとされているところ、労働者以外の者も含め、当該場所で作業に従事する者は、当該設備を使用しなければならないこととしたこと。

ウ 労働者以外の者による搭乗禁止の遵守義務の対象拡大(改正安衛則第116条第2項、第151条の50第2項、第151条の51第5項及び第6項、第151条の72第2項、第151条の73第5項及び第6項、第151条の81第2項、第151条の105第2項、第151条の119第2項、第151条の144第3項、第151条の168第3項並びに第194条の20第2項並びに改正クレーン則第186条第2項及び第207条第2項関係)

労働者は、車両系荷役運搬機械等の乗車席以外の箇所など危険な箇所に搭乗してはならないとされているところ、(1)イにより新たに搭乗禁止の対象とされた労働者以外の者も含め、当該場所で作業に従事する者は、搭乗してはならないこととしたこと。

エ 労働者以外の者による火気使用禁止の遵守義務の対象拡大(改正安衛則第279条第2項、第291条第2項及び第318条第4項関係)

労働者は、特定の場所では火気を使用してはならないとされているところ、(1)オにより新たに禁止対象とされた労働者以外の者も含め、当該場所で作業に従事する者は、火気を使用してはならないこととしたこと。

2 留意事項

(1) 重層請負関係にある場合の措置義務者とその対象者

改正省令により、事業者は、機械等を使用するなど特定の業務又は作業により危険が生じる場所について、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて立入禁止等の義務が新たに課されるが、これらの義務は、当該業務又は作業を行う全ての事業者が義務を負うものであること。ただし、第3の1の(1)イ(エ)にあるとおり、当該業務又は作業を複数の事業者が共同で行っている場合等、同一場所についてこれらの義務が複数の事業者に課されるときは、立入り等の禁止の表示を事業者ごとに複数行う必要はなく、当該複数の事業者が共同で表示を行っても差し支えないこと。

(2) 改正省令における請負人の定義

改正省令に規定する請負人には、労働者を使用しない個人事業者(建設業のいわゆる「一人親方」も含む。以下同じ。)も含まれること。

(3) 業務又は作業の全部を請負人に請け負わせる場合の取扱い

改正省令により、事業者は、自らが行う特定の業務又は作業に伴う危険を防止するため、労働者以外の作業に従事する者に対して立入禁止等の措置を講ずることが新たに義務付けられることとなるが、当該業務又は作業を自らは行わず、当該業務又は作業が行われる場所の管理も含め、そのすべてを請負人に請け負わせているような場合については、当該請け負わせた業務又は作業については事業者としての立場は有さず、法第20条及び第21条等の適用対象とはならない(当該業務又は作業の注文者という立場となる)ことから、改正省令により新たに課される義務の対象とはならないこと。

(4) 措置の対象となる作業場所の範囲

改正省令により、事業者は、特定の業務又は作業を行う場所について、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて立入禁止等の措置を講ずる義務が新たに課されるが、これら立入禁止等の義務が及ぶ場所の範囲は、当該業務又は作業が行われている一定の区切られた範囲(当該業務又は作業の影響が直接的に及ぶと考えられる合理的な範囲)であること。

なお、当該範囲は、今回の改正により、これまで労働者に対する義務が生じていた範囲と、異なるものではないこと。

(5) 元方事業者の講ずべき措置

改正省令は、法第27条に基づき法第20条及び第21条等に係る事業者の講ずべき措置を定めたものであり、元方事業者に係る措置義務等は新設されていない。

しかしながら、法第29条第1項においては、関係請負人が法やそれに基づく命令(改正省令により改正された4省令を含む。)の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならないこと、同条第2項においては、違反していると認めるときは是正のために必要な指示を行わなければならないこととされており、改正省令により義務付けられた措置を関係請負人が行っていない場合には、当該指導又は指示の対象となるものであること。

おって、個人事業者は、法第29条第1項又は第2項の「関係請負人の労働者」には該当しないこと。

3 施行期日

改正省令は、令和7年4月1日から施行することとしたこと。

 

第3 細部事項

改正安衛則、改正ボイラー則、改正クレーン則及び改正ゴンドラ則の各条文に係る趣旨、解釈等は以下のとおりであること。

1 各省令に共通する事項

(1) 場所に関わる危険の防止(立入禁止、退避等)に係る規定の改正

ア 改正の趣旨

(ア) 事業者は、労働者に対して、特定の場所への立入禁止、特定の箇所への搭乗禁止、事故等発生時の退避、退避に関連する措置、特定の場所での火気使用の禁止、悪天候時の作業禁止、表示による必要事項の周知を行う義務があるところ、これらの措置は、場所の危険性の観点から危険防止を図るための措置として義務付けられているものである。このため、労働者以外の者であっても、当該場所で作業に従事する者には等しく適用されるべきものであることや、これらの措置は指揮命令に基づくものではなく、当該場所を実態として使用・管理している者の権原に基づいて行うものであることから、労働者以外の者も、これらの措置義務の対象に追加したものであること。

(イ) 立入禁止又は火気使用の禁止の方法としては、必ずしも事業者が常時監視する必要はなく、禁止する旨を見やすい箇所に表示する方法も認められるところ、改正省令により、改めて表示による禁止も含まれることを条文上明示したこと。なお、これは表示による禁止も可能であることを改めて条文上明示したに過ぎず、立入禁止の方法はバリケードの設置やロープ、柵当の設置、出入口の施錠などの方法から実態に即したものを選定すればよく、表示による禁止が最も適切である等の趣旨を表したものではないこと。

(ウ) 搭乗禁止の方法としては、必ずしも事業者が常時監視する必要はなく、禁止する旨を見やすい箇所に表示する方法や口頭で確実に伝達する方法が認められること。

(エ) 悪天候時の作業禁止の方法としては、必ずしも事業者が常時監視する必要はなく、禁止する旨を見やすい箇所に表示する方法や口頭で確実に伝達する方法が認められること。

イ 解釈等

(ア) 措置義務の対象に含まれる者の範囲

改正省令により、新たに立入禁止、退避等の措置対象に追加された特定の場所において作業に従事する者とは、作業の内容如何に関わらず、その場所で何らかの作業(危険有害な作業に限らず、現場監督、記録のための写真撮影、荷物の搬入等も含まれる。)に従事する者をいい、たとえば次に掲げる者が含まれること。

 ① 当該場所で何らかの作業に従事する他社の社長や労働者

 ② 当該場所で何らかの作業に従事する一人親方

 ③ 当該場所で何らかの作業に従事する一人親方の家族従事者

 ④ 当該場所に荷物等を搬入する者

なお、一部の規定について「作業場において作業に従事する者」と規定しているのは、「労働者」とは異なり、「作業に従事する者」は措置義務の主体である事業者と直接関係を有するとは限らないことから、立入禁止等の対象となる者を特定する必要があるためであり、対象範囲を狭め、又は限定する趣旨ではないこと。

(イ) 立入禁止又は火気使用の禁止の方法

立入禁止又は火気使用の禁止を表示で行う場合は、対象となる全ての者に確実にその旨が伝わることが重要であることから、見やすい箇所に分かりやすく表示する必要があること。

(ウ) 立入禁止、火気使用の禁止、退避等の措置に係る事業者の義務の範囲

事業者が、表示その他の方法で立入り又は火気使用を明確に禁止している場所について、作業に従事する者が当該表示等を無視して、当該場所に立ち入った場合や当該場所で火気を使用した場合において、その立入りや火気の使用についての責任を当該事業者に求めるものではないこと。

また、労働者以外の者に対して事業者が明確に退避を求めたにも関わらず、当該者が退避しなかった場合において、その退避しなかったことについての責任を事業者に求めるものではないこと。

(エ) 同一場所に措置義務がかかる事業者が複数いる場合の取扱い

危険有害業務又は作業を複数の事業者が共同で行っている場合等、同一場所について立入禁止又は火気使用の禁止を行う義務が複数の事業者にかかっているときは、立入り等の禁止の表示を事業者ごとに複数行う必要はなく、当該複数の事業者が共同で表示を行っても差し支えないこと。

(2) 保護具等の使用に係る周知について

ア 改正の趣旨

(ア) 改正省令により、事業者は、危険が発生するおそれがある場所には、必要がある者を除き、当該場所で作業に従事する者が立ち入ること等を禁止しなければならないこととされるところ、当該場所における作業の一部を請負人に請け負わせている場合には、当該請負人に必要な保護具等を使用する必要がある旨を周知させるときは、当該場所に当該請負人を立ち入らせること等ができることとしたこと。

(イ) なお、当該請負人に対して事業者が指揮命令を行うことはできないため、請負人についてはこれらの措置を講ずる必要があることを周知させなければならないこととしたこと。

(ウ) 事業者は、請負人ほか労働者以外の者に対して保護具等の使用に係る周知を行う際には、当該者が適切な保護具等を選択できるよう、労働者に使用させる保護具等の種類や性能等について情報提供することが望ましいこと。

イ 解釈等

(ア) 周知の方法

事業者は、以下のいずれかの方法により周知させなければならないこと。

なお、周知させる内容が複雑な場合等で④の口頭による周知が困難なときは、以下の①~③のいずれかの方法によること。

 ① 常時作業場所の見やすい箇所に表示又は備え付けることによる周知

 ② 書面を交付すること(請負契約時に書面で示すことも含む。)による周知

 ③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場所に当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することによる周知

 ④ 口頭による周知

(イ) 請負人等が講ずべき措置

改正省令により設けられた事業者による周知は、請負人等に指揮命令を行うことができないことから周知させることとしたものであり、請負人等についても労働者と同等の保護措置が講じられるためには、事業者から必要な措置を周知された請負人等自身が確実に当該措置を実施することが重要であること。

(ウ)周知に係る事業者の義務の範囲

改正省令により設けられた事業者による周知は、周知の内容を請負人等が理解したことの確認までを求めるものではないが、確実に必要な措置が伝わるように分かりやすく周知することが重要であること。その上で、請負人等が自らの判断で保護具を使用しない等、必要な措置を実施しなかった場合において、その実施しなかったことについての責任を当該事業者に求めるものではないこと。

(3) 労働者以外の者による立入禁止等の遵守義務に係る規定の整備

ア 改正の趣旨

改正省令により、特定の場所への立入禁止、特定の箇所への搭乗禁止及び特定の場所での火気使用の禁止の措置対象に、労働者以外の者であって作業に従事する者も追加されたことを受け、労働者以外の者にもこれらの措置を確実に遵守させる必要があることから、労働者に加えて、労働者以外の者についてもこれらの措置に係る遵守義務を設けたこと。

イ 解釈等

労働者以外の者については、立入禁止、搭乗禁止及び火気使用の禁止についての遵守義務について、罰則はないこと。

2 省令ごとの特記事項(共通事項以外)

(1) 労働安全衛生規則(改正省令第1条関係)

ア 改正安衛則第151条の48第2項、第151条の62第2項、第151条の70第2項及び第420条第2項関係

本規定は、第1項において事業者が、作業指揮者を定め、当該指揮者に労働者の立入を禁止させているところ、労働者以外の作業に従事する者と作業指揮者との間に指揮命令関係が存在しないことを踏まえ、作業指揮者の義務への追加ではなく事業者の直接の義務として労働者以外の作業に従事する者の立入を禁止することとしているが、事業者がその義務を果たすための方法として、作業指揮者に当該措置の実施を命じることにより労働者以外の作業に従事する者に対する立入禁止の措置を講ずることも認められるものであること。

イ 改正安衛則第151条の51第3項及び第4項並びに第151条の73第3項及び第4項関係

本規定は、第1項に定める事業者が講ずべき措置のうち、荷台への搭乗禁止に係る措置について労働者以外の者まで拡大する観点から、新たに規定したものであること。また、同条第3項の「不整地運搬車(又は貨物自動車)を走行させる場合」については、作業場における場合か否かを問わないものであること。

ウ 改正安衛則第151条の15及び151条の104関係

本規定は、安全支柱等の使用状況の監視対象を労働者に限定しているが、これは、労働者以外の作業に従事する者と作業指揮者との間に指揮命令関係が存在しないことを踏まえ、対象を明確化したものであること。なお、労働者以外の作業に従事する者について、作業指揮者が監視することを妨げるものではないこと。

エ 改正安衛則第291条第2項関係

本規定は、第1項に定める事業者の責務に関連して作業に従事する者の義務を定めているものであるが、当該規定においては、みだりに行う喫煙、採だん、乾燥等の行為を禁止しているものであり、事業場の定めるルール等に則り行う行為(例えば事業場のルールに則り喫煙所で喫煙すること)までも禁止する趣旨ではないこと。

オ 改正安衛則第318条第3項関係

本規定は、第1項に定める事業者が講ずべき措置のうち、火薬又は爆薬を装填するときに、その付近での火気使用の禁止に係る措置について労働者以外の作業に従事する者まで拡大する観点から、新たに規定したものであること。

 

第4 今回改正を行っていない事項

法第20条及び第21条に基づく「立入禁止等」以外の規定(特定の作業方法によらなければならないとする規定や保護具等を使用させなければならないとする規定など)については、視覚により作業者が容易に危険を把握できる場合が多い一方、視覚のみでは危険を把握できないものがあるため、今後、個人事業者等による災害実態を把握し、個々の規制について改正の必要性を精査の上、必要性が認められるものについて所要の改正を行い、個人事業者等にも当該規定の対象を拡大することとしており、改正省令では改正を行わないこととしている。

しかし、個人事業者等は労働者と同様の業務又は作業を行っていることが多く、事業者が労働者の危険を防止する観点から措置を講ずる必要がある場面においては、個人事業者に対しても危険を防止する観点から同様の措置を講ずる必要があるという理由から、法令改正を待たずに事業者が個人事業者に対して必要な措置を自主的に実施することが推奨されること。

したがって、事業者が当該業務又は作業の一部を請負人に請け負わせるときにおいて、保護具等の使用や特定の方法に基づいて業務又は作業を実施することを当該請負人に対して周知することは、個人事業者等による業務上の災害を防止する上で重要であり、具体的には、以下のような対応が考えられること。(これらは一例であって、他の規定についても同様に対応が推奨されること。)

① 安衛則第151条の5のように、事業者は車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、あらかじめ、適正な制限速度を定め、それにより作業を行わなければならない、とされている規定について、当該作業の一部を請負人に請け負わせるときは、事業者は当該請負人に対し、当該事業者が定めた適正な制限速度により作業を行う必要がある旨を周知すること。

② 安衛則第341条のように、事業者は高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、労働者に絶縁用保護具を使用させる又は活線作業用器具を使用させる措置を講じなければならない、とされている規定について、当該作業の一部を請負人に請け負わせるときは、事業者は当該請負人に対し、絶縁用保護具を着用する必要がある旨又は活線作業用器具を使用する必要がある旨を周知すること。

③ 安衛則第524条のように、事業者はスレート、木毛板等の材料でふかれた屋根の上で作業を行うときは、労働者に対して踏み抜きによる危険を防止するための措置を講じなければならない、とされている規定について、当該作業の一部を請負人に請け負わせるときは、事業者は当該請負人に対し、踏み抜きによる危険を防止するための措置を講じる必要がある旨を周知すること。

④ 安衛則第538条のように、事業者は作業のため物体が飛来することにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、労働者に保護具を使用させる等の措置を講じなければならない、とされている規定について、当該作業の一部を請負人に請け負わせるときは、事業者は当該請負人に対し、保護具を使用する必要がある旨を周知すること。