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通達:騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について

 

騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について

令和5年4月20日基発0420第7号

(林野庁長官あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

労働基準行政の推進につきましては、日頃より格別の御理解、御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、林業現場を含む職場における騒音障害の防止については、労働安全衛生法令及び「騒音障害防止のためのガイドライン」に基づき、その対策を図ってきたところです。

しかしながら、騒音性難聴の発生は後を絶たない状況が続いており、チェーンソー等を用いた伐採等を行うなど、林業と関連する作業場で従事歴がある労働者についても同様の状況であることから、更なる騒音障害防止対策を進める必要があります。

このため、これまでの技術の発展や知見の蓄積を踏まえ、今般、別添のとおり「騒音障害防止のためのガイドライン」を改訂しました。今後、関係事業場に対する周知を図り、騒音障害防止対策の徹底を求めることとしております。

つきましては、貴庁におかれましても、騒音障害防止対策の重要性に鑑み、地方公共団体及び林業関係団体に対して、改訂後のガイドラインについて周知いただきますとともに、騒音障害防止対策の推進に特段の御配意を賜りますようお願い申し上げます。

 

別添

騒音障害防止のためのガイドライン

1 目的

本ガイドラインは、労働安全衛生法令に基づく措置を含め、騒音障害防止対策を講ずることにより、騒音作業に従事する労働者の騒音障害を防止することを目的とする。

2 騒音作業

本ガイドラインの対象とする騒音作業は、別表第1及び別表第2に掲げる作業場における業務とする。

なお、別表第1及び別表第2に掲げる作業場以外の作業場であっても、騒音レベルが高いと思われる業務を行う場合には、本ガイドラインに基づく騒音障害防止対策と同様の対策を講ずることが望ましい。

3 事業者の責務

別表第1又は別表第2に掲げる作業場を有する事業者(以下「事業者」という。)は、当該作業場について、本ガイドラインに基づき適切な措置を講ずることにより、騒音レベルの低減化等に努めるものとする。

4 機械設備等製造業者の留意事項

機械設備等製造業者は、騒音源となる機械設備等について、設計及び製造段階からの低騒音化に努めるとともに、騒音レベルに関する情報を公表することが望ましい。

5 労働衛生管理体制

(1) 騒音障害防止対策の管理者の選任

事業者は、衛生管理者、安全衛生推進者等から騒音障害防止対策の管理者(以下「管理者」という。)を選任し、本ガイドラインで定める事項に取り組ませること。

(2) 元方事業者の責務

建設工事現場等において、元方事業者は、関係請負人が本ガイドラインで定める事項を適切に実施できるよう、指導・援助を行うこと。

6 作業環境管理

(1) 別表第1に掲げる作業場

ア 事業者は、別紙1「作業環境測定による等価騒音レベルの測定」に基づき、測定、評価、措置及び記録を行うこと。

イ 事業者は、測定を6月以内ごとに1回、定期に行うこと。ただし、施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定すること。

(2) 別表第2に掲げる作業場

ア 屋内作業場

(ア) 事業者は、別紙1「作業環境測定による等価騒音レベルの測定」に基づき、測定、評価、措置及び記録を行うこと。

(イ) 騒音源が移動する場合等においては、(ア)に代えて、別紙3「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」に基づき、測定、措置及び記録を行うことができる。

(ウ) 事業者は、測定を6月以内ごとに1回、定期に行うこと。ただし、第Ⅰ管理区分に区分されることが継続している場所又は等価騒音レベルが継続的に85dB未満である場所については、当該定期に行う測定を省略することができる。

(エ) (ウ)の規定に関わらず、施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定を行うこと。

イ 坑内の作業場

(ア) 事業者は、別紙2「定点測定による等価騒音レベルの測定」に基づき、測定、措置及び記録を行うこと。

(イ) 騒音源が移動する場合等においては、(ア)に代えて、別紙3「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」に基づき、測定、措置及び記録を行うことができる。

(ウ) 事業者は、測定を6月以内ごとに1回、定期に行うこと。ただし、等価騒音レベルが継続的に85dB未満である場所については、当該定期に行う測定を省略することができる。

(エ) (ウ)の規定に関わらず、施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定を行うこと。

ウ 屋外作業場

(ア) 事業者は、別紙2「定点測定による等価騒音レベルの測定」又は別紙3「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」に基づき、測定、措置及び記録を行うこと。

(イ) 地面の上に騒音源があって、周辺に建物や壁等がない場所については、(ア)に代えて、別紙4「等価騒音レベルの推計」に基づき、騒音レベルを推計し、その推計値を測定値とみなして、措置及び記録を行うことができる。

(ウ) 事業者は、測定を6月以内ごとに1回、定期に行うこと。ただし、等価騒音レベルが継続的に85dB未満である場所については、当該定期に行う測定を省略することができる。

(エ) (ウ)の規定に関わらず、施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合は、その都度、測定を行うこと。

7 作業管理

(1) 聴覚保護具の使用

ア 事業者は、聴覚保護具については、日本産業規格(JIS)T8161-1に規定する試験方法により測定された遮音値を目安に、必要かつ十分な遮音値のものを選定すること。

なお、危険作業等において安全確保のために周囲の音を聞く必要がある場合や会話の必要がある場合は、遮音値が必要以上に大きい聴覚保護具を選定しないよう配慮すること。

イ 事業者は、管理者に、労働者に対し聴覚保護具の正しい使用方法を指導させた上で、目視等により正しく使用されていることを確認すること。

(2) 作業時間の管理

事業者は、作業環境を改善するための措置を講じた結果、第Ⅰ管理区分とならない場合又は等価騒音レベルが85㏈未満とならない場合は、次の表を参考に、労働者が騒音作業に従事する時間の短縮を検討すること。

図

8 健康管理

(1)  騒音健康診断

ア  雇入時等健康診断

事業者は、騒音作業に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際又は当該業務への配置替えの際に、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。

①既往歴の調査

②業務歴の調査

③自覚症状及び他覚症状の有無の検査

④オージオメータによる250 ヘルツ、500 ヘルツ、1,000 ヘルツ、2,000 ヘルツ、4,000 ヘルツ、6,000 ヘルツ及び8,000 ヘルツにおける聴力の検査

⑤その他医師が必要と認める検査

イ  定期健康診断

事業者は、騒音作業に常時従事する労働者に対し、6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。ただし、第Ⅰ管理区分に区分されることが継続している場所又は等価騒音レベルが継続的に 85㏈未満である場所において業務に従事する労働者については、省略することができる。

①既往歴の調査

②業務歴の調査

③自覚症状及び他覚症状の有無の検査

④オージオメータによる1,000 ヘルツ及び 4,000 ヘルツにおける選別聴力検査(1,000 ヘルツについては 30dB、4,000 ヘルツについては 25dB 及び 30dBの音圧での検査)

事業者は、上記の定期健康診断の結果、30dB の音圧での検査で異常が認められる者その他医師が必要と認める者については、次の項目について、医師による二次検査を行うこと。なお、雇入時等健康診断又は過去の二次検査の結果、前駆期の症状が認められる者及び聴力低下が認められる者については、上記④の選別聴力検査を省略して、二次検査を行うこととして差し支えない。

①オージオメータによる250 ヘルツ、500 ヘルツ、1,000 ヘルツ、2,000 ヘルツ、4,000 ヘルツ、6,000 ヘルツ及び8,000 ヘルツにおける聴力の検査

②その他医師が必要と認める検査

(2) 騒音健康診断結果に基づく事後措置

事業者は、健康診断の結果の評価に基づき、次に掲げる措置を講ずること。

ア  前駆期の症状が認められる者及び軽度の聴力低下が認められる者に対しては、第Ⅱ管理区分に区分された場所又は等価騒音レベルが85dB 以上90dB 未満である場所においても、聴覚保護具を使用させるほか、必要な措置

イ  中等度以上の聴力低下が認められる者に対しては、聴覚保護具を使用させるほか、騒音作業に従事する時間の短縮、配置転換その他必要な措置

(3) 騒音健康診断結果の記録及び報告

事業者は、健康診断を実施したときは、その結果を記録し、5年間保存すること。

また、定期健康診断については、実施後遅滞なく、その結果を所轄労働基準監督署長に報告すること。

9  労働衛生教育

(1)  管理者に対する労働衛生教育

事業者は、管理者を選任しようとするときは、当該者に対し、次の科目について労働衛生教育を行うこと。

①騒音の人体に及ぼす影響

②適正な作業環境の確保と維持管理

③聴覚保護具の使用及び作業方法の改善

④関係法令等

(2) 騒音作業に従事する労働者に対する労働衛生教育

事業者は、騒音作業に労働者を常時従事させようとするときは、当該労働者に対し、次の科目について労働衛生教育を行うこと。ただし、第Ⅰ管理区分に区分されることが継続している場所又は等価騒音レベルが継続的に 85 ㏈未満である場所において業務に従事する労働者については、当該教育を省略することができる。

①騒音の人体に及ぼす影響

②聴覚保護具の使用

10  計画の届出

事業者は、労働安全衛生法(昭和47 年法律第57 号)第 88 条の規定に基づく計画の届出を行う場合において、当該計画が別表第1又は別表第2に掲げる作業場に係るものであるときは、届出に騒音障害防止対策の概要を示す書面又は図面を添付すること。

 

(別表第1)

(1)  鋲打ち機、はつり機、鋳物の型込機等圧縮空気により駆動される機械又は器具を取り扱う業務を行う屋内作業場

(2)  ロール機、圧延機等による金属の圧延、伸線、ひずみ取り又は板曲げの業務(液体プレスによるひずみ取り及び板曲げ並びにダイスによる線引きの業務を除く。)を行う屋内作業場

(3)  動力により駆動されるハンマーを用いる金属の鍜造又は成型の業務を行う屋内作業場

(4)  タンブラーによる金属製品の研磨又は砂落としの業務を行う屋内作業場

(5)  動力によりチェーン等を用いてドラム缶を洗浄する業務を行う屋内作業場

(6)  ドラムバーカーにより、木材を削皮する業務を行う屋内作業場

(7)  チッパーによりチップする業務を行う屋内作業場

(8)  多筒抄紙機により紙をすく業務を行う屋内作業場

 

(別表第2)

(1)  インパクトレンチ、ナットランナー、電動ドライバー等を用い、ボルト、ナット等の締め付け、取り外しの業務を行う作業場

(2)  ショットブラストにより金属の研磨の業務を行う作業場

(3)  携帯用研削盤、ベルトグラインダー、チッピングハンマー等を用いて金属の表面の研削又は研磨の業務を行う作業場

(4)  動力プレス(油圧プレス及びプレスブレーキを除く。)により、鋼板の曲げ、絞り、せん断等の業務を行う作業場

(5)  シャーにより、鋼板を連続的に切断する業務を行う作業場

(6)  動力により鋼線を切断し、くぎ、ボルト等の連続的な製造の業務を行う作業場

(7)  金属を溶融し、鋳鉄製品、合金製品等の成型の業務を行う作業場

(8)  高圧酸素ガスにより、鋼材の溶断の業務を行う作業場

(9)  鋼材、金属製品等のロール搬送等の業務を行う作業場

(10)  乾燥したガラス原料を振動フィーダーで搬送する業務を行う作業場

(11)  鋼管をスキッド上で検査する業務を行う作業場

(12)  動力巻取機により、鋼板又は線材を巻き取る業務を行う作業場

(13)  ハンマーを用いて金属の打撃又は成型の業務を行う作業場

(14)  圧縮空気を用いて溶融金属を吹き付ける業務を行う作業場

(15)  ガスバーナーにより金属表面のキズを取る業務を行う作業場

(16)  丸のこ盤を用いて金属を切断する業務を行う作業場

(17)  内燃機関の製造工場又は修理工場で、内燃機関の試運転の業務を行う作業場

(18)  動力により駆動する回転砥石を用いて、のこ歯を目立てする業務を行う作業場

(19)  衝撃式造形機を用いて砂型を造形する業務を行う作業場

(20)  バイブレーター又はランマーにより締め固めの業務を行う作業場

(21)  振動式型ばらし機を用いて砂型より鋳物を取り出す業務を行う作業場

(22)  動力によりガスケットをはく離する業務を行う作業場

(23)  瓶、ブリキ缶等の製造、充てん、冷却、ラベル表示、洗浄等の業務を行う作業場

(24)  射出成型機を用いてプラスチックの押し出し又は切断の業務を行う作業場

(25)  プラスチック原料等を動力により混合する業務を行う作業場

(26)  みそ製造工程において動力機械により大豆の選別の業務を行う作業場

(27)  ロール機を用いてゴムを練る業務を行う作業場

(28)  ゴムホースを製造する工程において、ホース内の内糸を編上機により編み上げる業務を行う作業場

(29)  織機を用いてガラス繊維等原糸を織布する業務を行う作業場

(30)  ダブルツインスター等高速回転の機械を用いて、ねん糸又は加工糸の製造の業務を行う作業場

(31)  カップ成型機により、紙カップを成型する業務を行う作業場

(32)  モノタイプ、キャスター等を用いて、活字の鋳造の業務を行う作業場

(33)  コルゲータマシンによりダンボール製造の業務を行う作業場

(34)  動力により、原紙、ダンボール紙等の連続的な折り曲げ又は切断の業務を行う作業場

(35)  高速輪転機により印刷の業務を行う作業場

(36)  高圧水により鋼管の検査の業務を行う作業場

(37)  高圧リムーバを用いてIC パッケージのバリ取りの業務を行う作業場

(38)  圧縮空気を吹き付けることにより、物の選別、取り出し、はく離、乾燥等の業務を行う作業場

(39)  乾燥設備を使用する業務を行う作業場

(40)  電気炉、ボイラー又はエアコンプレッサーの運転業務を行う作業場

(41)  ディーゼルエンジンにより発電の業務を行う作業場

(42)  多数の機械を集中して使用することにより製造、加工又は搬送の業務を行う作業場

(43)  岩石又は鉱物を動力により破砕し、又は粉砕する業務を行う作業場

(44)  振動式スクリーンを用いて、土石をふるい分ける業務を行う作業場

(45)  裁断機により石材を裁断する業務を行う作業場

(46)  車両系建設機械を用いて掘削又は積込みの業務を行う坑内の作業場

(47)  バイブレーター、さく岩機、ブレーカ等手持動力工具を取り扱う業務を行う作業場

(48)  コンクリートカッタを用いて道路舗装のアスファルト等を切断する業務を行う作業場

(49)  チェーンソー又は刈払機を用いて立木の伐採、草木の刈払い等の業務を行う作業場

(50)  丸のこ盤、帯のこ盤等木材加工用機械を用いて木材を切断する業務を行う作業場

(51)  水圧バーカー又はヘッドバーカーにより、木材を削皮する業務を行う作業場

(52)  空港の駐機場所において、航空機への指示誘導、給油、荷物の積込み等の業務を行う作業場

 

別紙1

作業環境測定による等価騒音レベルの測定

1  作業環境測定の方法

(1) 作業環境測定基準(昭和 51 年労働省告示第 46 号)第4条第1号及び第2号に定める方法による等価騒音レベルの測定(以下「A測定」という。)を行い、騒音源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所にあっては、加えて作業環境測定基準第4条第3号に定める方法による等価騒音レベルの測定(以下別紙1において「B測定」という。)を行うこと。

(2) 測定は、作業が定常的に行われている時間帯に、1測定点について 10 分間以上継続して行うこと。

2  測定結果の評価

事業者は、1による作業環境測定を行った後、単位作業場所ごとに、次の表により、結果の評価を行うこと。

  B測定
85dB未満 85dB以上90dB未満 90dB以上
A測定平均値 85dB未満 第Ⅰ管理区分 第Ⅱ管理区分 第Ⅲ管理区分
85dB以上90dB未満 第Ⅱ管理区分 第Ⅱ管理区分 第Ⅲ管理区分
90dB以上 第Ⅲ管理区分 第Ⅲ管理区分 第Ⅲ管理区分

備考

1 「A測定平均値」は、測定値を算術平均して求めること。

2 「A測定平均値」の算定には、80dB未満の測定値は含めないこと。

3 A測定のみを実施した場合は、表中のB測定の欄は85dB未満の欄を用いて評価を行うこと。

 

3  評価結果に基づく措置

事業者は、2による評価の結果に基づき、管理区分ごとに、それぞれ次の措置を講ずること。なお、手持動力工具を使用する業務については、第Ⅰ管理区分に区分されることが継続している場所である場合を除き、当該業務に従事する労働者に対し、聴覚保護具を使用させること。

(1) 第Ⅰ管理区分の場合

当該場所における作業環境の継続的維持に努めること。

(2) 第Ⅱ管理区分の場合

ア  標識によって、当該場所が第Ⅱ管理区分であることを明示する等の措置を講ずること。

イ  施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他の作業環境を改善するため必要な措置を講じ、管理区分が第Ⅰ管理区分となるよう努めること。

ウ  騒音作業に従事する労働者に対し、必要に応じ、聴覚保護具を使用させること。

(3) 第Ⅲ管理区分の場合

ア  標識によって、当該場所が第Ⅲ管理区分であることを明示する等の措置を講ずること。

イ  施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他の作業環境を改善するため必要な措置を講じ、管理区分が第Ⅰ管理区分又は第Ⅱ管理区分となるよう努めること。

なお、作業環境を改善するための措置を講じたときは、その効果を確認するため、当該場所について、当該措置を講ずる直前に行った作業環境測定と同様の方法で作業環境測定を行い、その結果の評価を行うこと。

ウ  騒音作業に従事する労働者に聴覚保護具を使用させた上で、その使用状況を管理者に確認させるとともに、聴覚保護具の使用について、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、見やすい場所に掲示すること。

4  測定結果等の記録

事業者は、作業環境測定を実施し、測定結果の評価を行ったときは、その都度、次の事項を記録して、これを3年間保存すること。

 ①測定日時

 ②測定方法

 ③測定箇所

 ④測定条件

 ⑤測定結果

 ⑥評価日時

 ⑦評価箇所

 ⑧評価結果

 ⑨測定及び評価を実施した者の氏名

 ⑩測定及び評価の結果に基づいて措置を講じたときは、当該措置の概要

 

別紙2

定点測定による等価騒音レベルの測定

1  定点測定の方法

(1) 騒音源に近接する場所において作業が行われている時間のうち、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において、作業環境測定基準第4条第3号に定める方法による等価騒音レベルの測定(以下別紙2及び4において「定点測定」という。)を行うこと。

(2) 測定は、作業が定常的に行われている時間帯に、1測定点について 10 分間以上継続して行うこと。

2 測定結果に基づく措置

事業者は、1による定点測定の結果に基づき、次の措置を講ずること。なお、手持動力工具を使用する業務については、等価騒音レベルが継続的に 85dB 未満である場合を除き、当該業務に従事する労働者に対し、聴覚保護具を使用させること。

(1) 85dB 未満の場合

当該場所における作業環境の継続的維持に努めること。

(2) 85dB 以上 90dB 未満の場合

ア  施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他の作業環境を改善するため必要な措置を講じ、等価騒音レベルが 85dB 未満となるよう努めること。

イ  騒音作業に従事する労働者に対し、必要に応じ、聴覚保護具を使用させること。

(3) 90dB 以上の場合

ア  施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他の作業環境を改善するため必要な措置を講じ、等価騒音レベルが 85dB 未満となるよう努めること。

なお、作業環境を改善するための措置を講じたときは、その効果を確認するため、当該場所について、当該措置を講ずる直前に行った定点測定と同様の方法で定点測定を行うこと。

イ  騒音作業に従事する労働者に聴覚保護具を使用させた上で、その使用状況を管理者に確認させるとともに、聴覚保護具の使用について、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、当該作業場の見やすい場所に掲示すること。

3  測定結果等の記録

事業者は、定点測定を実施したときは、その都度、次の事項を記録して、これを3年間保存すること。

 ①測定日時

 ②測定方法

 ③測定対象となる騒音作業

 ④測定箇所

 ⑤測定条件

 ⑥測定結果

 ⑦測定を実施した者の氏名

 ⑧測定結果に基づいて措置を講じたときは、当該措置の概要

 

別紙3

個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定

1  個人ばく露測定の方法

(1) 使用する機器

ア  測定に使用するばく露計は等価騒音レベルを測定できる必要があることから、JIS C1509-1 又はIEC 61252 に規定する精度を満たすものとすること。

イ  場所によっては、防爆性能を有するばく露計を選定して使用する必要があること。

(2) 測定方法

ア  同種の業務を行うグループごとに1台以上のばく露計による測定を行うこと。

イ  ばく露計のマイクロホン部分を測定対象者の頭部、首又は肩の近くに装着すること。

ウ  測定者は、測定対象者に、終日又は半日、ばく露計を装着させたままで騒音作業を行わせることにより、騒音作業に従事する時間の等価騒音レベルを測定すること。ただし、2時間ごとに反復継続する作業を行うことが明らかな場合等、一定時間の測定を行うことで作業時間全体の等価騒音レベルを算定することが可能な場合は、測定の開始から終了までの時間が1時間以上であれば、測定時間を短縮して差し支えない。

エ  測定者は、測定を開始する前に、測定対象者にばく露計が正しく装着されていることを確認すること。測定対象者は、測定中にばく露計が落下したり、マイクロホン部分が作業着等で覆われたりすることがないよう、注意すること。なお、測定をしている間、測定者の立会いは不要であること。

2  測定結果に基づく措置

事業者は、1による測定の結果に基づき、次の措置を講ずること。なお、手持動力工具を使用する業務については、等価騒音レベルが継続的に 85dB 未満である場合を除き、当該業務に従事する労働者に対し、聴覚保護具を使用させること。

(1) 85dB 未満の場合

当該場所における作業環境の継続的維持に努めること。

(2) 85dB 以上 90dB 未満の場合

ア  施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他の作業環境を改善するため必要な措置を講じ、等価騒音レベルが 85dB 未満となるよう努めること。

イ  騒音作業に従事する労働者に対し、必要に応じ、聴覚保護具を使用させること。

(3) 90dB 以上の場合

ア  施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他の作業環境を改善するため必要な措置を講じ、等価騒音レベルが 85dB 未満となるよう努めること。

なお、作業環境を改善するための措置を講じたときは、その効果を確認するため、当該場所について、当該措置を講ずる直前に行った個人ばく露測定と同様の方法で個人ばく露測定を行うこと。

イ  騒音作業に従事する労働者に聴覚保護具を使用させた上で、その使用状況を管理者に確認させるとともに、聴覚保護具の使用について、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、当該作業場の見やすい場所に掲示すること。

3  測定結果等の記録

事業者は、個人ばく露測定を実施したときは、その都度、次の事項を記録して、これを3年間保存すること。

 ①測定日時

 ②測定方法

 ③測定対象となる騒音作業及び対象者

 ④測定箇所

 ⑤測定条件

 ⑥測定結果

 ⑦測定を実施した者の氏名

 ⑧測定結果に基づいて措置を講じたときは、当該措置の概要

 

別紙4

等価騒音レベルの推計

1  推計の方法

等価騒音レベルの推計は、対象となる騒音作業ごとに、次の式により行うこと。音響パワーレベルは、機械等の騒音源が放射する音のエネルギーをレベル表示したものであり、機械等に騒音値として表示されているものを参考にすること。

なお、周囲に建物や壁等がある場合、音の反響の影響から、当該推計値と比較して、騒音レベルが高くなる可能性が大きいことから、等価騒音レベルの把握方法として推計を用いることは適切でないことに留意すること。

図

2  推計結果に基づく措置

事業者は、1による推計の結果に基づき、次の措置を講ずること。なお、手持動力工具を使用する業務については、等価騒音レベルが継続的に 85dB 未満である場合を除き、当該業務に従事する労働者に対し、聴覚保護具を使用させること。

(1) 85dB 未満の場合

当該場所における作業環境の継続的維持に努めること。

(2) 85dB 以上 90dB 未満の場合

ア  施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他の作業環境を改善するため必要な措置を講じ、等価騒音レベルが 85dB 未満となるよう努めること。

イ  騒音作業に従事する労働者に対し、必要に応じ、聴覚保護具を使用させること。

(3) 90dB 以上の場合

ア  施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他の作業環境を改善するため必要な措置を講じ、等価騒音レベルが 85dB 未満となるよう努めること。

なお、作業環境を改善するための措置を講じたときは、その効果を確認するため、当該場所について改めて推計又は定点測定若しくは個人ばく露測定を行うこと。

イ  騒音作業に従事する労働者に聴覚保護具を使用させた上で、その使用状況を管理者に確認させるとともに、聴覚保護具の使用について、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、当該作業場の見やすい場所に掲示すること。

3  推計結果等の記録

事業者は、推計を実施したときは、その都度、次の事項を記録して、これを3年間保存すること。

 ①推計日時

 ②推計方法

 ③推計対象となる騒音作業

 ④推計箇所

 ⑤推計条件

 ⑥推計結果

 ⑦推計を実施した者の氏名

 ⑧推計結果に基づいて措置を講じたときは、当該措置の概要

 

騒音障害防止のためのガイドラインの解説

本解説は、「騒音障害防止のためのガイドライン」の趣旨、運用上の留意点及び内容の説明を記したものである。

1  「2 騒音作業」について

「騒音作業」とは、別表第1及び別表第2に掲げる作業場における業務をいい、騒音を発する機械、工具等を操作する業務に限らず、当該作業場において行われるその他の業務を含むものである。

別表第1は、労働安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 32 号)第 588 条及び第 590条の規定に基づき、6月以内ごとに1回、定期に、等価騒音レベルを測定することが義務付けられている屋内作業場を掲げたものであり、別表第2は、労働安全衛生規則上の義務付けはなされていないが、等価騒音レベルが 85dB 以上になる可能性が大きい作業場を掲げたものである。

2  「5 労働衛生管理体制」について

(1) 騒音障害防止対策の管理者

騒音障害防止対策の管理者として選任できる者には、衛生管理者、安全衛生推進者のほか、ライン管理者、職長等が含まれる。

(2) 元方事業者が行う指導・援助

元方事業者が行う「指導・援助」とは、例えば、関係請負人が使用する機械・工具は低騒音なものを選定するよう促す、工事現場において関係請負人へ支給・貸与する設備等の騒音によるばく露を低減するための措置を講ずる、聴覚保護具の使用が求められる関係請負人の労働者に対してその着用を促す、関係請負人に対する教育や健康診断に関する情報提供や受講・受診機会を提供するよう配慮すること等がある。

3  「6 作業環境管理」について

(1) 用語

ア  騒音レベル

音は音圧で表すことができ、騒音レベルは、特定の時間 t における、A特性音圧の実効値の2乗を基準の音圧の2乗で除した値の常用対数の 10 倍で、次の式による(JIS Z8731:2019)。

騒音レベルは、デシベル(dB)で表す。

図

イ  等価騒音レベル

等価騒音レベルは、ある時間T(t1~t2)について、変動する騒音の騒音レベルをエネルギー的な平均値として表した量で、次の式による(JIS Z8731:2019)。

等価騒音レベルは、デシベル (dB)で表す。

図

等価騒音レベルの物理的意味は、図1に示すように、時間とともに変動する騒音(LA(t))がある場合、そのレベルを、ある時間(T=t2-t1)の範囲内でこれと等しいエネルギーをもつ定常騒音の騒音レベルで表現する(図1の斜線部)ということである。

等価騒音レベルは、一般環境や作業環境における騒音の大きさを表す代表値として広く用いられている。

図

(2) 等価騒音レベルの測定

ア  等価騒音レベルの測定については、特に測定の実施者を定めていないが、測定結果が対策の基礎となることから、適正に行う必要がある。このため、当該測定は、作業環境測定士や衛生管理者等、事業場における労働衛生管理の実務に直接携わる者に実施させるか、又は作業環境測定機関に委託して実施することが望ましい。

イ  等価騒音レベルは、積分型騒音計を用いれば直接求めることができるが、普通騒音計を用いて、実測時間全体にわたって一定時間間隔⊿t ごとに騒音レベルを測定し、その結果から次の式により求めることもできる。

図

LA、LA2 、・・・LAn :騒音レベルの測定値

n:測定値の総数

ウ  作業環境測定について、A測定は、単位作業場所の平均的な作業環境を調べるのが目的であるので、作業が定常的に行われている時間に行う必要がある。

また、時間の経過に伴う作業環境の状態の変化も同時に調べるために、測定点ごとに測定時刻をずらして行うのが望ましい。

しかし、単位作業場所によっては、平均的な作業環境状態からは予測しにくい大きい騒音にさらされる危険がある。B測定は、このような場合を想定し、音源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所にあっては、その作業が行われる時間のうち、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間に、当該作業が行われる位置における等価騒音レベルを測定するものである。

エ  等価騒音レベルの推計で用いる音響パワーレベルは、機械等に貼付されたシールや銘板、カタログ、取扱説明書、ウェブサイト等で表示されていることがある。

また、音響パワーレベルではなく、特定位置における音圧レベルが表示されている場合もある。この場合は、式 Lp=Lw-20log -8の Lp に音圧レベルを、r に特定位置までの距離を代入することにより、音響パワーレベル(Lw)の概算値を求めることができる。

オ 「騒音源が移動する場合等」とは、例えば、手持動力工具を使用する場合等が想定される。手持動力工具を使用する業務を行う作業場については、別紙3「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」に基づき、測定、措置及び記録を行うことが望ましい。

カ  屋外作業場においては、日々作業内容が変わることが考えられるが、「施設、設備、作業工程又は作業方法を変更した場合」とは、例えば、基礎工事から仮設工事に作業工程が移行する場合等、大きな工程の変更があった場合が想定される。また、関係請負人が騒音源となる機器を作業場に持ち込む度に測定を行う必要はなく、騒音源となる機器に着目し、6月以内に他の工事現場等で実施した測定結果又は推計結果がある場合は、当該結果を準用できるものとする。

キ  別表第2に掲げる作業場であって、「第Ⅰ管理区分に区分されることが継続している」及び「等価騒音レベルが継続的に85dB 未満である」とは、測定の結果、単に第Ⅰ管理区分に区分される又は等価騒音レベルが 85dB を下回るだけでなく、毎日の機械等の運転状況や様々な作業状況に照らして、継続して第Ⅰ管理区分に区分される又は等価騒音レベルが 85dB 未満である可能性が非常に高い場合に限られるものである。

(3) 結果に基づく措置

ア  施設、設備、作業工程等における騒音発生源対策及び伝ぱ経路対策並びに騒音作業に従事する労働者に対する受音者対策の代表的な方法は表1のとおりである。

なお、これらの対策を講ずるに当たっては、改善事例を参考にするとともに、労働衛生コンサルタント等の専門家を活用することが望ましい。

表1 代表的な騒音対策の方法

分類 方法 具体例
1  騒音発生源対策

発生源の低騒音化

発生原因の除去

遮音

消音

防振

制振

運転方法の改善

低騒音型機械の採用

給油、不釣合調整、部品交換等

防音カバー、ラギング等の取り付け

消音器、吸音ダクト等の取り付け

防振ゴムの取り付け

制振材の装着

自動化、配置の変更等

2  伝ぱ経路対策

距離減衰

遮蔽効果

吸音

指向性

配置の変更等

遮蔽物、防音塀等の設置

建屋内部の消音処理

音源の向きの変更

3  受音者対策

遮音

作業方法の改善

耳の保護

防音監視室の設置

作業スケジュールの調整、遠隔操作化等

耳栓、耳覆いの使用

 

イ  第Ⅱ管理区分又は第Ⅲ管理区分に区分された作業場について、「標識によって、(中略)明示する等」とは、第Ⅱ管理区分又は第Ⅲ管理区分に区分された場所とそれ以外の場所を、区画物に標識を付し、又は床上に白線、黄線等を引くことにより区画することをいう。なお、屋内作業場の入り口等に、騒音レベルの高い屋内作業場である旨を掲示すること等の措置を講ずることでも差し支えない。

また、第Ⅱ管理区分及び第Ⅲ管理区分に区分された場所が混在する場合には、これらの場所を区別することなく、ひとつの場所として明示しても差し支えない。

ウ  「手持動力工具」とは可搬型の動力工具を指し、騒音性難聴の新規労災認定者が扱っていた手持動力工具としては、バイブレーター、ブレーカー、グラインダー、チェーンソー、インパクトレンチ、チッパー、電動ドリル、丸のこ等がある。

(4) 測定結果等の記録

ア  作業環境測定(別紙1「作業環境測定による等価騒音レベルの測定」)

a  「②測定方法」とは、測定器の種類、形式等をいう。

b  「③測定箇所」の記録は、測定を行った作業場の見取図に測定箇所を記入する。

c  「④測定条件」とは、測定時の作業の内容、稼働していた機械、設備等の名称及びその位置、測定結果に最も影響を与える騒音源の名称及びその位置のほか、マイクロホンの設置高さ、窓などの開閉状態等をいう。

d  「⑤測定結果」については、A測定の測定値、その算術平均値及びB測定の測定値を記録する。

e  「⑧評価結果」については、第Ⅰ管理区分から第Ⅲ管理区分までの各区分のうち、該当する区分を記録する。

イ  定点測定(別紙2「定点測定による等価騒音レベルの測定」)

a  「②測定方法」とは、測定器の種類、形式等をいう。

b  「④測定箇所」の記録は、測定を行った作業場の見取図に測定箇所を記入する。

c  「⑤測定条件」とは、測定時の作業の内容、稼働していた機械、使用していた工具等の名称及びその位置、測定結果に最も影響を与える騒音源の名称及びその位置のほか、マイクロホンの設置高さ、坑口からの距離等をいう。

ウ  個人ばく露測定(別紙3「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」)

a  「②測定方法」とは、測定器の種類、形式等をいう。

b  「④測定箇所」の記録は、測定を行った作業場の見取図に測定箇所を記入する。

c  「⑤測定条件」とは、測定時の作業の内容、周辺の建物や壁等の状況、稼働していた機械、使用していた工具等の名称及びその位置、測定結果に最も影響を与える騒音源の名称及びその位置のほか、測定機器の取付位置等をいう。

エ  推計(別紙4「等価騒音レベルの推計」)

「⑤推計条件」とは、使用する機械等の名称及び音響パワーレベル、騒音源からの距離及びその計測方法等をいう。

4  「7 作業管理」について

(1) 聴覚保護具の使用

聴覚保護具の使用に当たっては、次の点に留意する必要がある。

ア  聴覚保護具は、騒音発生源対策、伝ぱ経路対策等による騒音レベルの低減化を十分に行うことができない場合に、二次的に使用するものであること。

イ  聴覚保護具には耳栓と耳覆い(イヤーマフ)があり、耳栓と耳覆いのどちらが適切であるかは、作業の性質や騒音の特性で決まるが、非常に強烈な騒音に対しては耳栓と耳覆いとの併用が有効であること。

ウ  耳栓を使用する場合、人によって耳の穴の形や大きさが異なるので、その人に適したものを使用すること。

エ  聴覚保護具は、装着の緩みや隙間があると十分な効果が得られないので、正しく使用すること。また、作業中、緩んだ場合には、その都度装着し直すこと。

オ  騒音作業を有する作業場では、会話によるコミュニケーションが阻害される場合が多いが、聴覚保護具の使用はさらにこれを増大させる可能性があるので、適切な意思伝達手段を考える必要があること。また、非常の際の警報には音響ではなく、赤色回転灯などを用い二次災害の防止に配慮すること。

(2) 作業時間の管理

本ガイドラインの表「等価騒音レベル(A特性音圧レベル)による許容基準」は、日本産業衛生学会の「許容濃度等の勧告(2022 年度)」の中の、VI. 騒音の許容基準にある、「表 V1-2. 騒音レベル(A 特性音圧レベル)による許容基準」に基づくものであり、この基準以下であれば、1日8時間以内のばく露が常習的に 10 年以上続いた場合にも、騒音性永久閾値移動を 1,000 ヘルツ以下の周波数で 10dB 以下、2,000 ヘルツで 15dB 以下、3,000 ヘルツ以上の周波数で 20dB 以下にとどめることが期待できるとされる。このため、85dB 以上の騒音へのばく露時間は、同表に示された時間数よりも可能な限り短くすることが求められる。

なお、「1日のばく露時間」の算出は以下によって行う。

①1 日のばく露が連続的に行われる場合には、同表の「等価騒音レベル」に対応する「1日のばく露時間」を用いること。

②1 日のばく露が断続的に行われる場合には、騒音の実効休止時間を除いた1日のばく露時間の合計を、連続ばく露の場合と等価なばく露時間とみなして、同表の「等価騒音レベル」に対応する「1日のばく露時間」を用いること。なお、実効休止時間とは騒音レベルが 80dB 未満にとどまっている時間をいう。

5  「8 健康管理」について

(1)  騒音健康診断の目的

騒音健康診断の目的は、以下の2つに大別できる。

①騒音作業に従事する労働者の聴力の程度、変化、耳鳴り等の症状及び騒音ばく露状況を調べ、個人の聴覚管理を進める資料とすること。

②集団としての騒音の影響を調べ、騒音管理を進める資料とすること。

(2) 健康管理の体系

健康管理の体系は、図2のとおりである。

図

(3) 騒音健康診断の種類

ア  雇入時等健康診断

騒音作業に常時従事する労働者を新たに雇い入れ、又は当該業務へ配置転換するとき(以下「雇入れ時等」という。)に実施する聴力検査の検査結果は、将来にわたる聴覚管理の基準として活用されることから極めて重要な意味を持つものである。このため、雇入時等健康診断においては、定期健康診断の選別聴力検査に代えて、250 ヘルツから 8,000 ヘルツまでの聴力の検査を行うこととしたものである。

したがって、雇入れ時等以前に、既に中耳炎後遺症、頭頸部外傷後遺症、メ ニエール病、耳器毒(耳に悪影響を及ぼす毒物)の使用、突発性難聴等で聴力 が低下している者、あるいは過去に騒音作業に従事してすでに騒音性難聴を示 している者、日常生活においてヘッドホン等による音楽鑑賞を行うことにより 聴力障害の兆候を示す者については、周波数ごとの正確な聴力を把握すること が特に重要となる。

イ  定期健康診断

騒音作業に従事する労働者の聴力の経時的変化を調べ、個人及び集団としての騒音の影響をいち早く知り、聴覚管理の基礎資料とするとともに、作業環境管理及び作業管理に反映させることが重要である。聴力低下のごく初期段階を把握するため、4,000 ヘルツにおける検査の音圧を、40dB から 25dB 及び 30dBに変更した。

本ガイドラインに基づく定期健康診断は6月以内ごとに1回、定期に行うことが原則であるが、労働安全衛生規則第 44 条又は第 45 条の規定に基づく定期健康診断が6月以内に行われた場合(オージオメータを使用して、1,000 ヘルツについては30dB、4,000 ヘルツについては 25dB 及び 30dB の音圧での選別聴力検査が行われた場合に限る。)には、これを本ガイドラインに基づく定期健康診断(ただし、オージオメータによる 1,000 ヘルツ及び4,000 ヘルツにおける選別聴力検査の項目に限る。)とみなして差し支えない。

ウ  離職時等健康診断

離職時又は騒音作業以外の作業への配置転換時(以下「離職時等」という。)の聴力の程度を把握するため、離職時等の前6月以内に本ガイドラインに基づく定期健康診断を行っていない場合には、同じ項目の検査を行うことが望ましい。

(4) 検査の方法

ア  既往症・業務歴の調査及び自他覚症状の有無の検査

聴力検査を実施する前に、あらかじめ騒音のばく露歴、特に現在の騒音作業の内容、騒音レベル及び作業時間について調査するとともに、耳栓、耳覆い等の聴覚保護具の使用状況も把握しておく。さらに、現在の自覚症状として、耳鳴り、難聴の有無あるいは最近の疾患などについて問視診により把握する。

イ  250 ヘルツ、500 ヘルツ、1,000 ヘルツ、2,000 ヘルツ、4,000 ヘルツ、6,000ヘルツ及び8,000 ヘルツにおける聴力の検査オージオメータによる気導純音聴力レベル測定法による。なお、250 ヘルツにおける検査は省略しても差し支えない。

ウ  1,000 ヘルツ及び4,000 ヘルツにおける選別聴力検査検査音の聴取に影響を及ぼさない静かな場所で行う。

エ  二次検査

騒音作業終了後、半日以上が経過した後に実施する。

(5) 聴力検査の担当者

ア  250 ヘルツ、500 ヘルツ、1,000 ヘルツ、2,000 ヘルツ、4,000 ヘルツ、6,000ヘルツ及び8,000 ヘルツにおける聴力の検査については、医師のほか、医師の指示のもとに、本検査に習熟した保健師、看護師、言語聴覚士等が行う。

イ  選別聴力検査については、医師のほか、医師の指示のもとに、本検査に習熟した保健師、看護師、言語聴覚士等が行うことが適当である。

(6) 健康診断結果の評価

ア  評価及び健康管理上の指導は、耳科的知識を有する産業医又は耳鼻咽喉科専門医が行う。評価を行うに当たっては、異常の有無を判断し、異常がある場合には、それが作業環境の騒音によるものか否か、障害がどの程度か、障害の進行が著明であるかどうか等を判断する。

なお、耳科学と産業医学の両方の専門的知識を有する医師として、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が騒音性難聴担当医を認定している。

イ  250 ヘルツ、500 ヘルツ、1,000 ヘルツ、2,000 ヘルツ、4,000 ヘルツ、6,000ヘルツ及び8,000 ヘルツにおける聴力の検査を行った場合には、会話音域の聴き取り能力の程度を把握するため、次の式により3分法平均聴力レベルを求めて記載しておく。

3分法平均聴力レベル=(A+B+C)×1/3

A:500 ヘルツの聴力レベル

B:1,000 ヘルツの聴力レベル

C:2,000 ヘルツの聴力レベル

(7) 健康診断結果に基づく事後措置

健康診断結果に基づく事後措置は、聴力検査の結果から表2に示す措置を講ずることを基本とするが、この際、耳科的既往歴、騒音業務歴、現在の騒音作業の内容、聴覚保護具の使用状況、自他覚症状等を参考にするとともに、さらに、生理的加齢変化、すなわち加齢性難聴の影響を考慮する必要がある。

表2 聴力レベルに基づく管理区分

聴力レベル 区分 措置
高音域 会話音域
30dB未満 30dB未満 健常者 一般的聴覚管理

30dB以上

50dB未満

要観察者

(前駆期の症状が認められる者)

第Ⅱ管理区分に区分された場所または等価騒音レベルが85dB以上90dB未満である場所においても聴覚保護具を使用させることその他必要な措置
50dB以上 40dB未満

要観察者

(軽度の聴力低下が認められる者)

40dB以上

要管理者

(中等度以上の聴力低下が認められる者)

聴覚保護具の使用、騒音作業時間の短縮、配置転換その他必要な措置

備考

1  高音域の聴力レベルは、4,000 ヘルツ及び6,000 ヘルツについての聴力レベルのうち、聴力低下がより進行している周波数の値を採用する。

2  会話音域の聴力レベルは、3分法平均聴力レベルによる。

(8) 健康診断結果の報告

健康診断の結果報告については、「指導勧奨による特殊健康診断結果報告書様式」を用いる。

本報告書の第一次健康診断欄の受診者数には本ガイドラインに基づく定期健康診断の受診者数を、有所見者数には二次検査(選別聴力検査を省略した場合を含む。)の有所見者数を記入し、第二次健康診断欄及び健康管理区分欄は空欄とする。

6  「9 労働衛生教育」について

(1) 管理者に対する労働衛生教育

ア  教育の講師は、既に選任されている管理者、労働衛生コンサルタント等、騒音についての知識並びに騒音対策の実務についての知識及び経験を有する者とする。

イ  教育は、本ガイドラインに示された科目ごとに、表3に掲げる範囲及び時間で実施する。

表3  騒音障害防止対策の管理者に対する労働衛生教育

科目 範囲 時間
1  騒音の人体に及ぼす影響

(1)影響の種類

(2)聴力障害

30 分
2  適正な作業環境の確保と維持管理

(1)騒音の測定と作業環境の評価

(2)騒音発生源対策

(3)騒音伝ぱ経路対策

(4)改善事例

80 分
3  聴覚保護具の使用及び作業方法の改善

(1)聴覚保護具の種類及び性能

(2)聴覚保護具の使用方法及び管理方法

(3)作業方法の改善

40 分
4  関係法令等 騒音作業に係る労働衛生関係法令及び本ガイドライン 30 分

(計3時間)

(2)  騒音作業に常時従事する労働者に対する労働衛生教育

ア  教育の講師は、当該作業場の管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、ライン管理者、職長等、騒音についての知識を有する者とする。

イ  科目のうち、「騒音の人体に及ぼす影響」の範囲は、影響の種類、聴力障害、「聴覚保護具の使用」の範囲は、聴覚保護具の種類及び性能、聴覚保護具の使用方法及び管理方法とする。

ウ  時間は表3の該当科目の時間を目安とするが、短縮しても差し支えない。