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労働安全衛生規則第577条の2第3項の規定に基づきがん原性がある物として厚生労働大臣が定めるものの適用について
令和4年12月26日基発1226第4号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
改 正 令和5年4月24日基発0424第2号
労働安全衛生規則第577条の2第3項の規定に基づきがん原性がある物として厚生労働大臣が定めるもの(令和4年厚生労働省告示第371号)については、令和4年12月26日に告示され、令和5年4月1日から適用することとされたところである。
その制定の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
記
第1 制定の趣旨及び概要等について
1 制定の趣旨
今般、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号)第2条による改正後の労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第577条の2第3項において、がん原性がある物として厚生労働大臣が定めるもの(以下「がん原性物質」という。)を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者については、労働者のばく露の状況、作業の概要等の記録を30年間保存しなければならないこととされている。
本告示は、安衛則第577条の2第3項の規定に基づき、がん原性物質を定めるものである。
2 告示の概要等
(1) 概要
安衛則第577条の2第3項の規定に基づくがん原性物質は、リスクアセスメント対象物(安衛則第34条の2の7第1項第1号で定めるものをいう。以下同じ。)のうち、国が行う化学物質の有害性の分類の結果、発がん性の区分が区分1に該当する物であって、令和3年3月31日までの間において当該区分に該当すると分類されたものとする。ただし、次に掲げる物及び事業者が当該物質を臨時に取り扱う場合を除く。
ア エタノール
イ 特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)第38条の3に規定する特別管理物質
(2) 施行
令和5年4月1日から適用する。
第2 細部事項
1 国が行う化学物質の有害性の分類について
日本産業規格Z7252(GHSに基づく化学品の分類方法)の附属書Bに定める方法により国が行う化学物質の有害性の分類の結果は、独立行政法人製品評価技術基盤機構が運営する「NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)」及び「GHS総合情報提供サイト」において公表している。
また、本告示によるがん原性物質の一覧は、厚生労働省ホームページで公表する予定であること。
2 発がん性の区分について
本告示においては、ヒトに対する発がん性が知られている又はおそらく発がん性がある物質について、その情報の確からしさの観点から、発がん性区分1に該当する物質をがん原性物質としたこと。また、発がん性の区分1には、細区分の区分1A及び区分1Bを含むものであること。なお、現在、発がん性区分2に分類されている物質又は「分類できない」、「区分に該当しない」とされている物質については、将来的に区分1に分類が見直される可能性があるが、現時点でヒトに対する発がん性の根拠に乏しいことから、がん原性物質には含めない趣旨であること。
3 対象から除外する物質について
エタノールについては、国際がん研究機関において、ヒトに対して発がん性があるものと分類されており、これを踏まえ、国によるGHS分類においても発がん性区分1と分類されているが、これは、アルコール飲料として経口摂取した場合の健康有害性に基づくものであり、業務として大量のエタノールを経口摂取することは通常想定されていないこと、疫学調査から業務起因性が不明であることから、がん原性物質から除外したものであること。また、特別管理物質については、特化則第38条の4において作業記録等の30年間保存が既に義務付けられていることから、二重規制を避けるため、がん原性物質から除外したものであること。
4 当該物質を臨時に取り扱う場合について
本告示でいう「臨時に取り扱う場合」とは、当該事業場において通常の作業工程の一部又は全部として行っている業務以外の業務で、一時的必要に応じて当該物質を取り扱い、繰り返されない業務に従事する場合をいうこと。
したがって、通常の作業工程においてがん原性物質を取り扱う場合は、当該物質を取り扱う時間が短時間であっても、又は取扱いの頻度が低くても、「臨時に取り扱う場合」には該当しないこと。
5 GHS分類の年度による対象物質の限定について
本告示においてがん原性物質は、リスクアセスメント対象物のうち、国が行うGHS分類の結果、令和3年3月31日までに発がん性の区分が区分1に該当すると分類されたものに限定していること。令和3年4月1日以降に発がん性区分1に新たに分類され、又は、分類が変更された物質については、本告示を改正することにより、がん原性物質として追加等を行う趣旨であること。
第3 その他
1 がん原性物質の裾切り値について
がん原性物質は、リスクアセスメント対象物であることから、リスクアセスメント対象物のうち発がん性区分1に該当する物を安衛則別表第2に規定する濃度以上含有する製剤その他のものが対象となること。混合物、副生成物及び不純物であっても同様であること。なお、主として一般消費者の生活の用に供する製品は対象外となること。
2 がん原性物質の対象物質について
令和5年4月1日においては、約120物質ががん原性物質の対象となり、また、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)別表第9の改正によりリスクアセスメント対象物が追加されることに伴い、令和6年4月1日から約80物質ががん原性物質に追加されること。なお、本告示で定めるがん原性物質の一覧は、厚生労働省ホームページで公表する予定であること。
3 がん原性指針との関係について
労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針(健康障害を防止するための指針公示第27号。以下「がん原性指針」という。)は、対象となる物質について、ばく露低減等の健康障害防止のための適切な取扱い等を求める指針であることから、がん原性指針の適用対象物質と、本告示で定めるがん原性物質の両方に該当する物質については、本告示に基づき作業の記録等を30年間保存するとともに、がん原性指針に基づき適切な取扱い等を行う必要があること。
4 がん原性物質に該当する旨のSDS等による通知について
安衛則第34条の2の4第4号(令和6年4月1日以降は第5号)の通知事項である「適用される法令」の「法令」には、本告示が含まれること。この場合、リスクアセスメント対象物の名称が包括的な名称で規定されている物質であってそのうち一部の物質が本告示で定めるがん原性物質に該当するものを譲渡し、又は提供するに当たっては、SDS等に記載する成分の名称は、リスクアセスメント対象物の名称に関わらず、該当するがん原性物質の名称とすること。