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通達:労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について

 

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について

令和4年5月31日基発0531第9号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

改 正 令和5年4月24日基発0424第2号

 

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号。以下「改正省令」という。)及び化学物質等の危険性又は有害性等の表示又は通知等の促進に関する指針の一部を改正する件(令和4年厚生労働省告示第190号。以下「改正告示」という。)については、令和4年5月31日に公布され、公布日から施行(一部については、令和5年4月1日又は令和6年4月1日から施行)することとされたところである。その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。

 

第1 改正の趣旨及び概要等

1 改正の趣旨

今般、国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類にのぼり、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれる。さらに、化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く。)のうち、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)等の特別則の規制の対象となっていない物質を起因とするものが約8割を占めている。これらを踏まえ、従来、特別則による規制の対象となっていない物質への対策の強化を主眼とし、国によるばく露の上限となる基準等の制定、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みの整備・拡充を前提として、事業者が、危険性・有害性の情報に基づくリスクアセスメントの結果に基づき、国の定める基準等の範囲内で、ばく露防止のために講ずべき措置を適切に実施する制度を導入することとしたところである。

これらを踏まえ、今般、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)、特化則、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)、鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号。以下「鉛則」という。)、四アルキル鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第38号。以下「四アルキル則」という。)、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)(以下特化則、有機則、鉛則及び粉じん則を「特化則等」と総称する。)、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)及び厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令(平成17年厚生労働省令第44号)並びに化学物質等の危険性又は有害性等の表示又は通知等の促進に関する指針(平成24年厚生労働省告示第133号。以下「告示」という。)について、所要の改正を行ったものである。

2 改正省令の概要

(1) 事業場における化学物質の管理体制の強化

ア 化学物質管理者の選任(安衛則第12条の5関係)

① 事業者は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条の3第1項の危険性又は有害性等の調査(主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るものを除く。以下「リスクアセスメント」という。)をしなければならない労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)第18条各号に掲げる物及び法第57条の2第1項に規定する通知対象物(以下「リスクアセスメント対象物」という。)を製造し、又は取り扱う事業場ごとに、化学物質管理者を選任し、その者に化学物質に係るリスクアセスメントの実施に関すること等の当該事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理させなければならないこと。

② 事業者は、リスクアセスメント対象物の譲渡又は提供を行う事業場(①の事業場を除く。)ごとに、化学物質管理者を選任し、その者に当該事業場におけるラベル表示及び安全データシート(以下「SDS」という。)等による通知等(以下「表示等」という。)並びに教育管理に係る技術的事項を管理させなければならないこと。

③ 化学物質管理者の選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い、リスクアセスメント対象物を製造する事業場においては、厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習を修了した者等のうちから選任しなければならないこと。

④ 事業者は、化学物質管理者を選任したときは、当該化学物質管理者に対し、必要な権限を与えるとともに、当該化学物質管理者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示すること等により関係労働者に周知させなければならないこと。

イ 保護具着用管理責任者の選任(安衛則第12条の6関係)

① 化学物質管理者を選任した事業者は、リスクアセスメントの結果に基づく措置として、労働者に保護具を使用させるときは、保護具着用管理責任者を選任し、有効な保護具の選択、保護具の保守管理その他保護具に係る業務を担当させなければならないこと。

② 保護具着用管理責任者の選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行うこととし、保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者のうちから選任しなければならないこと。

③ 事業者は、保護具着用管理責任者を選任したときは、当該保護具着用管理責任者に対し、必要な権限を与えるとともに、当該保護具着用管理責任者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示すること等により関係労働者に周知させなければならないこと。

ウ 雇入れ時等における化学物質等に係る教育の拡充(安衛則第35条関係)

労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときに行わなければならない安衛則第35条第1項の教育について、令第2条第3号に掲げる業種の事業場の労働者については、安衛則第35条第1項第1号から第4号までの事項の教育の省略が認められてきたが、改正省令により、この省略規定を削除し、同項第1号から第4号までの事項の教育を事業者に義務付けたこと。

(2) 化学物質の危険性・有害性に関する情報の伝達の強化

ア SDS等による通知方法の柔軟化(安衛則第24条の15第1項及び第3項※、第34条の2の3関係)

   ※公布日時点においては第24条の15第2項

法第57条の2第1項及び第2項の規定による通知の方法として、相手方の承諾を要件とせず、電子メールの送信や、通知事項が記載されたホームページのアドレス(二次元コードその他のこれに代わるものを含む。)を伝達し閲覧を求めること等による方法を新たに認めたこと。

イ 「人体に及ぼす作用」の定期確認及び「人体に及ぼす作用」についての記載内容の更新(安衛則第24条の15第2項及び第3項、第34条の2の5第2項及び第3項関係)

法第57条の2第1項の規定による通知事項の1つである「人体に及ぼす作用」について、直近の確認を行った日から起算して5年以内ごとに1回、記載内容の変更の要否を確認し、変更を行う必要があると認めるときは、当該確認をした日から1年以内に変更を行わなければならないこと。また、変更を行ったときは、当該通知を行った相手方に対して、適切な時期に、変更内容を通知するものとしたこと。加えて、安衛則第24条の15第2項及び第3項の規定による特定危険有害化学物質等に係る通知における「人体に及ぼす作用」についても、同様の確認及び更新を努力義務としたこと。

ウ SDS等における通知事項の追加及び成分含有量表示の適正化(安衛則第24条の15第1項、第34条の2の4、第34条の2の6関係)

法第57条の2第1項の規定により通知するSDS等における通知事項に、「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」を追加したこと。また、安衛則第24条の15第1項の規定により通知を行うことが努力義務となっている特定危険有害化学物質等に係る通知事項についても、同事項を追加したこと。

また、法第57条の2第1項の規定により通知するSDS等における通知事項のうち、「成分の含有量」について、重量パーセントを通知しなければならないこととしたこと。

エ 化学物質を事業場内において別容器等で保管する際の措置の強化(安衛則第33条の2関係)

事業者は、令第17条に規定する物(以下「製造許可物質」という。)又は令第18条に規定する物(以下「ラベル表示対象物」という。)をラベル表示のない容器に入れ、又は包装して保管するときは、当該容器又は包装への表示、文書の交付その他の方法により、当該物を取り扱う者に対し、当該物の名称及び人体に及ぼす作用を明示しなければならないこと。

(3) リスクアセスメントに基づく自律的な化学物質管理の強化アリスクアセスメントに係る記録の作成及び保存並びに労働者への周知(安衛則第34条の2の8関係)

ア 事業者は、リスクアセスメントを行ったときは、リスクアセスメント対象物の名称等の事項について、記録を作成し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行った日から起算して3年以内に次のリスクアセスメントを行ったときは、3年間)保存するとともに、当該事項を、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならないこと。

イ 化学物質による労働災害が発生した事業場等における化学物質管理の改善措置(安衛則第34条の2の10関係)

① 労働基準監督署長は、化学物質による労働災害が発生した、又はそのおそれがある事業場の事業者に対し、当該事業場において化学物質の管理が適切に行われていない疑いがあると認めるときは、当該事業場における化学物質の管理の状況について、改善すべき旨を指示することができること。

② ①の指示を受けた事業者は、遅滞なく、事業場の化学物質の管理の状況について必要な知識及び技能を有する者として厚生労働大臣が定めるもの(以下「化学物質管理専門家」という。)から、当該事業場における化学物質の管理の状況についての確認及び当該事業場が実施し得る望ましい改善措置に関する助言を受けなければならないこと。

③ ②の確認及び助言を求められた化学物質管理専門家は、事業者に対し、確認後速やかに、当該確認した内容及び当該事業場が実施し得る望ましい改善措置に関する助言を、書面により通知しなければならないこと。

④ 事業者は、③の通知を受けた後、1月以内に、当該通知の内容を踏まえた改善措置を実施するための計画を作成するとともに、当該計画作成後、速やかに、当該計画に従い改善措置を実施しなければならないこと。

⑤ 事業者は、④の計画を作成後、遅滞なく、当該計画の内容について、③の通知及び当該計画の写しを添えて、改善計画報告書(安衛則様式第4号)により所轄労働基準監督署長に報告しなければならないこと。

⑥ 事業者は、④の計画に基づき実施した改善措置の記録を作成し、当該記録について、③の通知及び当該計画とともにこれらを3年間保存しなければならないこと。

ウ リスクアセスメント対象物に係るばく露低減措置等の事業者の義務(安衛則第577条の2、第577条の3関係)

① 労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度の低減措置(安衛則第577条の2第1項関係)

事業者は、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場において、リスクアセスメントの結果等に基づき、労働者の健康障害を防止するため、代替物の使用等の必要な措置を講ずることにより、リスクアセスメント対象物に労働者がばく露される程度を最小限度にしなければならないこと。

② 労働者がばく露される程度を一定の濃度の基準以下としなければならない物質に係るばく露濃度の抑制措置(安衛則第577条の2第2項関係)

事業者は、リスクアセスメント対象物のうち、一定程度のばく露に抑えることにより、労働者に健康障害を生ずるおそれがない物として厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取り扱う業務(主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るものを除く。)を行う屋内作業場においては、当該業務に従事する労働者がこれらの物にばく露される程度を、厚生労働大臣が定める濃度の基準(以下「濃度基準値」という。)以下としなければならないこと。

③ リスクアセスメントの結果に基づき事業者が行う健康診断、健康診断の結果に基づく必要な措置の実施等(安衛則第577条の2第3項から第5項まで、第8項及び第9項関係)

事業者は、リスクアセスメント対象物による健康障害の防止のため、リスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴き、必要があると認めるときは、医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)が必要と認める項目について、医師等による健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講じなければならないこと。

また、事業者は、安衛則第577条の2第2項の業務に従事する労働者が、濃度基準値を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときは、速やかに、医師等が必要と認める項目について、医師等による健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講じなければならないこと。

事業者は、上記の健康診断(以下「リスクアセスメント対象物健康診断」という。)を行ったときは、リスクアセスメント対象物健康診断個人票(安衛則様式第24号の2)を作成し、5年間(がん原性物質(がん原性がある物として厚生労働大臣が定めるものをいう。以下同じ。)に係るものは30年間)保存しなければならないこと。

事業者は、リスクアセスメント対象物健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならないこと。

④ ばく露低減措置の内容及び労働者のばく露の状況についての労働者の意見聴取、記録作成・保存(安衛則第577条の2第10から第12項まで※関係)

※令和5年4月1日時点においては第577条の2第2項から第4項まで事業者は、安衛則第577条の2第1項、第2項及び第8項の規定により講じたばく露低減措置等について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けなければならないこと。

また、事業者は、(ⅰ)安衛則第577条の2第1項、第2項及び第8項の規定により講じた措置の状況、(ⅱ)リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者のばく露状況、(ⅲ)労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間並びにがん原性物質により著しく汚染される事態が生じたときはその概要及び事業者が講じた応急の措置の概要(リスクアセスメント対象物ががん原性物質である場合に限る。)、(ⅳ)安衛則第577条の2第10項の規定による関係労働者の意見の聴取状況について、1年を超えない期間ごとに1回、定期に、記録を作成し、当該記録を3年間((ⅱ)及び(ⅲ)について、がん原性物質に係るものは30年間)保存するとともに、(ⅰ)及び(ⅳ)の事項を労働者に周知させなければならないこと。

⑤ リスクアセスメント対象物以外の物質にばく露される程度を最小限とする努力義務(安衛則第577条の3関係)

事業者は、リスクアセスメント対象物以外の化学物質を製造し、又は取り扱う事業場において、当該化学物質に係る危険性又は有害性等の調査結果等に基づき、労働者の健康障害を防止するため、代替物の使用等の必要な措置を講ずることにより、リスクアセスメント対象物以外の化学物質にばく露される程度を最小限度にするよう努めなければならないこと。

エ 保護具の使用による皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止(安衛則第594条の2及び安衛則第594条の3※関係)

   ※令和5年4月1日時点においては第594条の2

事業者は、化学物質又は化学物質を含有する製剤(皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に浸入して、健康障害を生ずるおそれがあることが明らかなものに限る。以下「皮膚等障害化学物質等」という。)を製造し、又は取り扱う業務(法及びこれに基づく命令の規定により労働者に保護具を使用させなければならない業務及びこれらの物を密閉して製造し、又は取り扱う業務を除く。)に労働者を従事させるときは、不浸透性の保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡等適切な保護具を使用させなければならないこと。

また、事業者は、化学物質又は化学物質を含有する製剤(皮膚等障害化学物質等及び皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に浸入して、健康障害を生ずるおそれがないことが明らかなものを除く。)を製造し、又は取り扱う業務(法及びこれに基づく命令の規定により労働者に保護具を使用させなければならない業務及びこれらの物を密閉して製造し、又は取り扱う業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該労働者に保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡等適切な保護具を使用させることに努めなければならないこと。

(4) 衛生委員会の付議事項の追加(安衛則第22条関係)

衛生委員会の付議事項に、(3)ウ①及び②により講ずる措置に関すること並びに(3)ウ③の医師等による健康診断の実施に関することを追加すること。

(5) 事業場におけるがんの発生の把握の強化(安衛則第97条の2関係)

事業者は、化学物質又は化学物質を含有する製剤を製造し、又は取り扱う業務を行う事業場において、1年以内に2人以上の労働者が同種のがんに罹患したことを把握したときは、当該罹患が業務に起因するかどうかについて、遅滞なく、医師の意見を聴かなければならないこととし、当該医師が、当該がんへの罹患が業務に起因するものと疑われると判断したときは、遅滞なく、当該がんに罹患した労働者が取り扱った化学物質の名称等の事項について、所轄都道府県労働局長に報告しなければならないこと。

(6) 化学物質管理の水準が一定以上の事業場に対する個別規制の適用除外(特化則第2条の3、有機則第4条の2、鉛則第3条の2及び粉じん則第3条の2関係)

ア 特化則等の規定(健康診断及び呼吸用保護具に係る規定を除く。)は、専属の化学物質管理専門家が配置されていること等の一定の要件を満たすことを所轄都道府県労働局長が認定した事業場については、特化則等の規制対象物質を製造し、又は取り扱う業務等について、適用しないこと。

イ アの適用除外の認定を受けようとする事業者は、適用除外認定申請書(特化則様式第1号、有機則様式第1号の2、鉛則様式第1号の2、粉じん則様式第1号の2)に、当該事業場がアの要件に該当することを確認できる書面を添えて、所轄都道府県労働局長に提出しなければならないこと。

ウ 所轄都道府県労働局長は、適用除外認定申請書の提出を受けた場合において、認定をし、又はしないことを決定したときは、遅滞なく、文書でその旨を当該申請書を提出した事業者に通知すること。

エ 認定は、3年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失うこと。

オ 上記のアからウまでの規定は、エの認定の更新について準用すること。

カ 認定を受けた事業者は、当該認定に係る事業場がアの要件を満たさなくなったときは、遅滞なく、文書で、その旨を所轄都道府県労働局長に報告しなければならないこと。

キ 所轄都道府県労働局長は、認定を受けた事業者がアの要件を満たさなくなったと認めるとき等の取消要件に該当するに至ったときは、その認定を取り消すことができること。

(7) 作業環境測定結果が第三管理区分の作業場所に対する措置の強化

ア 作業環境測定の評価結果が第三管理区分に区分された場合の義務(特化則第36条の3の2第1項から第3項まで、有機則第28条の3の2第1項から第3項まで、鉛則第52条の3の2第1項から第3項まで、粉じん則第26条の3の2第1項から第3項まで関係)

特化則等に基づく作業環境測定結果の評価の結果、第三管理区分に区分された場所について、作業環境の改善を図るため、事業者に対して以下の措置の実施を義務付けたこと。

① 当該場所の作業環境の改善の可否及び改善が可能な場合の改善措置について、事業場における作業環境の管理について必要な能力を有すると認められる者(以下「作業環境管理専門家」という。)であって、当該事業場に属さない者からの意見を聴くこと。

② ①において、作業環境管理専門家が当該場所の作業環境の改善が可能と判断した場合、当該場所の作業環境を改善するために必要な措置を講じ、当該措置の効果を確認するため、当該場所における対象物質の濃度を測定し、その結果の評価を行うこと。

イ 作業環境管理専門家が改善困難と判断した場合等の義務(特化則第36条の3の2第4項、有機則第28条の3の2第4項、鉛則第52条の3の2第4項、粉じん則第26条の3の2第4項関係)

ア①で作業環境管理専門家が当該場所の作業環境の改善は困難と判断した場合及びア②の評価の結果、なお第三管理区分に区分された場合、事業者は、以下の措置を講ずること。

① 労働者の身体に装着する試料採取器等を用いて行う測定その他の方法による測定(以下「個人サンプリング測定等」という。)により対象物質の濃度測定を行い、当該測定結果に応じて、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。また、当該呼吸用保護具(面体を有するものに限る。)が適切に着用されていることを確認し、その結果を記録し、これを3年間保存すること。なお、当該場所において作業の一部を請負人に請け負わせる場合にあっては、当該請負人に対し、有効な呼吸用保護具を使用する必要がある旨を周知させること。

② 保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者のうちから、保護具着用管理責任者を選任し、呼吸用保護具に係る業務を担当させること。

③ ア①の作業環境管理専門家の意見の概要並びにア②の措置及び評価の結果を労働者に周知すること。

④ 上記①から③までの措置を講じたときは、第三管理区分措置状況届(特化則様式第1号の4、有機則様式第2号の3、鉛則様式第1号の4、粉じん則様式第5号)を所轄労働基準監督署長に提出すること。

ウ 作業環境測定の評価結果が改善するまでの間の義務(特化則第36条の3の2第5項、有機則第28条の3の2第5項、鉛則第52条の3の2第5項、粉じん則第26条の3の2第5項関係)

特化則等に基づく作業環境測定結果の評価の結果、第三管理区分に区分された場所について、第一管理区分又は第二管理区分と評価されるまでの間、上記イ①の措置に加え、以下の措置を講ずること。

6月以内ごとに1回、定期に、個人サンプリング測定等により特定化学物質等の濃度を測定し、その結果に応じて、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。

エ 記録の保存

イ①又はウの個人サンプリング測定等を行ったときは、その都度、結果及び評価の結果を記録し、3年間(ただし、粉じんについては7年間、クロム酸等については30年間)保存すること。

(8) 作業環境管理やばく露防止措置等が適切に実施されている場合における特殊健康診断の実施頻度の緩和(特化則第39条第4項、有機則第29条第6項、鉛則第53条第4項及び四アルキル則第22条第4項関係)

本規定による特殊健康診断の実施について、以下の①から③までの要件のいずれも満たす場合(四アルキル則第22条第4項の規定よる健康診断については、以下の②及び③の要件を満たす場合)には、当該特殊健康診断の対象業務に従事する労働者に対する特殊健康診断の実施頻度を6月以内ごとに1回から、1年以内ごとに1回に緩和することができること。ただし、危険有害性が特に高い製造禁止物質及び特別管理物質に係る特殊健康診断の実施については、特化則第39条第4項に規定される実施頻度の緩和の対象とはならないこと。

① 当該労働者が業務を行う場所における直近3回の作業環境測定の評価結果が第1管理区分に区分されたこと。

② 直近3回の健康診断の結果、当該労働者に新たな異常所見がないこと。

③ 直近の健康診断実施後に、軽微なものを除き作業方法の変更がないこと。

3 改正告示の概要

改正省令による2(2)アのSDS等による通知方法の柔軟化及び2(2)エのラベル表示対象物を事業場内において別容器等で保管する際の措置の強化に伴い、告示においても、同趣旨の改正を行ったこと。

4 施行日及び経過措置

(1) 施行日(改正省令附則第1条関係)

改正省令及び改正告示は、公布日から施行することとしたこと。

ただし、2(2)イ及びエ、(3)ア、ウ①、④、⑤、エ前段(努力義務)、(4)(2(3)ウ①に係るものに限る。)、(5)、(6)、(8)に係る規定及び当該規定に係る経過措置については、令和5年4月1日から、2(1)、2(2)ウ、(3)イ、ウ②、③、エ、(4)(2(3)ウ②及び③に係るものに限る。)、(7)に係る規定及び当該規定に係る経過措置については、令和6年4月1日から施行することとしたこと。

(2) 経過措置(改正省令附則第3条から第5条関係)

ア 改正省令の施行の際現にある、改正省令第4条及び第8条による改正前の様式による用紙は、当分の間、これを取り繕って使用することができることとしたこと。

イ 改正省令(改正省令第1条を除く。)の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によること。

 

第2 細部事項(公布日施行)

1 SDS等による通知方法の柔軟化関係

(1) 安衛則第24条の15第1項及び第2項※、第34条の2の3関係

  ※令和5年4月1日時点においては第24条の15第3項

化学物質の危険性・有害性に係る情報伝達がより円滑に行われるようにするため、譲渡提供を受ける相手方が容易に確認可能な方法であれば、相手方の承諾を要件とせずに通知できるよう、SDS等による通知方法を柔軟化したこと。なお、電子メールの送信により通知する場合は、送信先の電子メールアドレスを事前に確認する等により確実に相手方に通知できるよう配慮すべきであること。

(2) 告示第3条第1項、第4条第3項関係

改正省令によるSDS等による通知方法の柔軟化に伴い、告示においても、通知方法の選択に当たって相手方の承諾を要件としないこと等、同趣旨の改正を行ったこと。

 

第3 細部事項(令和5年4月1日施行)

1 SDS等における通知事項である「人体に及ぼす作用」の定期確認及び更新関係

(1) 安衛則第24条の15第2項及び第3項、第34条の2の5第2項及び第3項関係

ア SDS等における通知事項である「人体に及ぼす作用」については、当該物質の有害性情報であり、リスクアセスメントの実施に当たって最も重要な情報であることから、定期的な確認及び更新を新たに義務付けたこと。定期確認及び更新の対象となるSDS等は、現に譲渡又は提供を行っている通知対象物又は特定危険有害化学物質等に係るものに限られ、既に譲渡提供を中止したものに係るSDS等まで含む趣旨ではないこと。

イ 確認の結果、SDS等の更新を行った場合、変更後の当該事項を再通知する対象となる、過去に当該物を譲渡提供した相手方の範囲については、各事業者における譲渡提供先に関する情報の保存期間、当該物の使用期限等を踏まえて合理的な期間とすれば足りること。また、確認の結果、SDS等の更新の必要がない場合には、更新及び相手方への再通知の必要はないが、各事業者においてSDS等の改訂情報を管理する上で、更新の必要がないことを確認した日を記録しておくことが望ましいこと。

ウ SDS等を更新した場合の再通知の方法としては、各事業者で譲渡提供先に関する情報を保存している場合に当該情報を元に譲渡提供先に再通知する方法のほか、譲渡提供者のホームページにおいてSDS等を更新した旨を分かりやすく周知し、当該ホームページにおいて該当物質のSDS等を容易に閲覧できるようにする方法等があること。

エ 本規定の施行日において現に存するSDS等については、施行日から起算して5年以内(令和10年3月31日まで)に初回の確認を行う必要があること。また、確認の頻度である「5年以内ごとに1回」には、5年より短い期間で確認することも含まれること。

2 製造許可物質又はラベル表示対象物を事業場内において別容器等で保管する際の措置の強化関係

(1) 安衛則第33条の2関係

ア 製造許可物質及びラベル表示対象物を事業場内で取り扱うに当たって、他の容器に移し替えたり、小分けしたりして保管する際の容器等にも対象物の名称及び人体に及ぼす作用の明示を義務付けたこと。なお、本規定は、対象物を保管することを目的として容器に入れ、又は包装し、保管する場合に適用されるものであり、保管を行う者と保管された対象物を取り扱う者が異なる場合の危険有害性の情報伝達が主たる目的であるため、対象物の取扱い作業中に一時的に小分けした際の容器や、作業場所に運ぶために移し替えた容器にまで適用されるものではないこと。また、譲渡提供者がラベル表示を行っている物について、既にラベル表示がされた容器等で保管する場合には、改めて表示を求める趣旨ではないこと。

イ 明示の際の「その他の方法」としては、使用場所への掲示、必要事項を記載した一覧表の備え付け、磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体に記録しその内容を常時確認できる機器を設置すること等のほか、日本産業規格Z7253(GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル、作業場内の表示及び安全データシート(SDS))(以下「JISZ7253」という。)の「5.3.3作業場内の表示の代替手段」に示された方法として、作業手順書又は作業指示書によって伝達する方法等によることも可能であること。

(2) 告示第4条第3項関係

改正省令による(1)のラベル表示対象物を事業場内において別容器等で保管する際の措置の強化に伴い、告示においても、化学物質等の譲渡提供を受けた事業者が対象物を労働者に取り扱わせる場合の容器等への表示事項として「人体に及ぼす作用」を追加したこと。

3 リスクアセスメントの結果等の記録の作成及び保存並びに労働者への周知(安衛則第34条の2の8関係)

事業場における化学物質管理の実施状況について事後に検証できるようにするため、従前より規定されていたリスクアセスメントの結果等の労働者への周知に加え、リスクアセスメントの結果等の記録の作成及び保存を新たに義務付けたこと。

4 事業場におけるがんの発生の把握の強化関係

(1) 安衛則第97条の2第1項関係

ア 本規定は、化学物質のばく露に起因するがんを早期に把握した事業場におけるがんの再発防止のみならず、国内の同様の作業を行う事業場における化学物質によるがんの予防を行うことを目的として規定したものであること。

イ 本規定の「1年以内に2人以上の労働者」の労働者は、現に雇用する同一の事業場の労働者であること。

ウ 本規定の「同種のがん」については、発生部位等医学的に同じものと考えられるがんをいうこと。

エ 本規定の「同種のがんに罹患したことを把握したとき」の「把握」とは、労働者の自発的な申告や休職手続等で職務上、事業者が知り得る場合に限るものであり、本規定を根拠として、労働者本人の同意なく、本規定に関係する労働者の個人情報を収集することを求める趣旨ではないこと。なお、アの趣旨から、広くがん罹患の情報について事業者が把握できることが望ましく、衛生委員会等においてこれらの把握の方法をあらかじめ定めておくことが望ましいこと。

オ アの趣旨を踏まえ、例えば、退職者も含め10年以内に複数の者が同種のがんに罹患したことを把握した場合等、本規定の要件に該当しない場合であっても、それが化学物質を取り扱う業務に起因することが疑われると医師から意見があった場合は、本規定に準じ、都道府県労働局に報告することが望ましいこと。

カ 本規定の「医師」には、産業医のみならず、定期健康診断を委託している機関に所属する医師や労働者の主治医等も含まれること。また、これらの適当な医師がいない場合は、各都道府県の産業保健総合支援センター等に相談することも考えられること。

(2) 安衛則第97条の2第2項関係

ア 本規定の「罹患が業務に起因するものと疑われると判断」については、(1)アの趣旨から、その時点では明確な因果関係が解明されていないため確実なエビデンスがなくとも、同種の作業を行っていた場合や、別の作業であっても同一の化学物質にばく露した可能性がある場合等、化学物質に起因することが否定できないと判断されれば対象とすべきであること。

イ 本項第1号の「がんに罹患した労働者が当該事業場で従事した業務において製造し、又は取り扱った化学物質の名称」及び本項第2号の「がんに罹患した労働者が当該事業場で従事していた業務の内容及び当該業務に従事していた期間」については、(1)アの趣旨から、その時点ではがんの発症に係る明確な因果関係が解明されていないため、当該労働者が当該事業場において在職中ばく露した可能性がある全ての化学物質、業務及びその期間が対象となること。また、記録等がなく、製剤中の化学物質の名称や作業歴が不明な場合であっても、その後の都道府県労働局等が行う調査に資するよう、製剤の製品名や関係者の記憶する関連情報をできる限り記載し、報告することが望ましいこと。

5 リスクアセスメントに基づく自律的な化学物質管理の強化

(1) 安衛則第577条の2第1項及び第577条の3関係

本規定における「リスクアセスメント」とは、法第57条の3第1項の規定により行われるリスクアセスメントをいうものであり、安衛則第34条の2の7第1項に定める時期において、化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月18日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号)に従って実施すること。

ただし、事業者は、化学物質のばく露を最低限に抑制する必要があることから、同項のリスクアセスメント実施時期に該当しない場合であっても、ばく露状況に変化がないことを確認するため、過去の化学物質の測定結果に応じた適当な頻度で、測定等を実施することが望ましいこと。

(2) 安衛則第577条の2第2項※関係

  ※令和6年4月1日時点においては第577条の2第10項

本規定における「関係労働者の意見を聞くための機会を設けなければならない」については、関係労働者又はその代表が衛生委員会に参加している場合等は、安衛則第22条第11号の衛生委員会における調査審議又は安衛則第23条の2に基づき行われる意見聴取と兼ねて行っても差し支えないこと。

(3) 安衛則第577条の2第3項※関係

  ※令和6年4月1日時点においては第577条の2第11項

ア 本規定におけるがん原性物質を製造し、又は取り扱う労働者に関する記録については、晩発性の健康障害であるがんに対する対応を適切に行うため、当該労働者が離職した後であっても、当該記録を作成した時点から30年間保存する必要があること。

イ 「第1項の規定により講じた措置の状況」の記録については、法第57条の3に基づくリスクアセスメントの結果に基づいて措置を講じた場合は、安衛則第34条の2の8の記録と兼ねても差し支えないこと。また、リスクアセスメントに基づく措置を検討し、これらの措置をまとめたマニュアルや作業規程(以下「マニュアル等」という。)を別途定めた場合は、当該マニュアル等を引用しつつ、マニュアル等のとおり措置を講じた旨の記録でも差し支えないこと。

ウ 「労働者のリスクアセスメント対象物のばく露の状況」については、実際にばく露の程度を測定した結果の記録等の他、マニュアル等を作成した場合であって、その作成過程において、実際に当該マニュアル等のとおり措置を講じた場合の労働者のばく露の程度をあらかじめ作業環境測定等により確認している場合は、当該マニュアル等に従い作業を行っている限りにおいては、当該マニュアル等の作成時に確認されたばく露の程度を記録することでも差し支えないこと。

エ 「労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間並びにがん原性物質により著しく汚染される事態が生じたときはその概要及び事業者が講じた応急の措置の概要」の記録に関し、従事した作業の概要については、取り扱う化学物質の種類を記載する、又はSDS等を添付して、取り扱う化学物質の種類が分かるように記録すること。また、出張等作業で作業場所が毎回変わるものの、いくつかの決まった製剤を使い分け、同じ作業に従事しているのであれば、出張等の都度の作業記録を求めるものではなく、当該関連する作業を一つの作業とみなし、作業の概要と期間をまとめて記載することで差し支えないこと。

オ 「関係労働者の意見の聴取状況」の記録に関し、労働者に意見を聴取した都度、その内容と労働者の意見の概要を記録すること。なお、衛生委員会における調査審議と兼ねて行う場合は、これらの記録と兼ねて記録することで差し支えないこと。

6 保護具の使用による皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止(安衛則第594条の2第1項※関係)

  ※令和6年4月1日時点においては第594条の3第1項

本規定の「皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがないことが明らかなもの」とは、国が公表するGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に基づく危険有害性の分類の結果及び譲渡提供者より提供されたSDS等に記載された有害性情報のうち「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」及び「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれも「区分に該当しない」と記載され、かつ、「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」及び「呼吸器感作性又は皮膚感作性」を除くいずれにおいても、経皮による健康有害性のおそれに関する記載がないものが含まれること。

7 化学物質管理の水準が一定以上の事業場の個別規制の適用除外

(1) 特化則第2条の3第1項、有機則第4条の2第1項、鉛則第3条の2第1項及び粉じん則第3条の2第1項関係

ア 本規定は、事業者による化学物質の自律的な管理を促進するという考え方に基づき、作業環境測定の対象となる化学物質を取り扱う業務等について、化学物質管理の水準が一定以上であると所轄都道府県労働局長が認める事業場に対して、当該化学物質に適用される特化則等の特別則の規定の一部の適用を除外することを定めたものであること。適用除外の対象とならない規定は、特殊健康診断に係る規定及び保護具の使用に係る規定である。なお、作業環境測定の対象となる化学物質以外の化学物質に係る業務等については、本規定による適用除外の対象とならないこと。

また、所轄都道府県労働局長が特化則等で示す適用除外の要件のいずれかを満たさないと認めるときには、適用除外の認定は取消しの対象となること。適用除外が取り消された場合、適用除外となっていた当該化学物質に係る業務等に対する特化則等の規定が再び適用されること。

イ 特化則第2条の3第1項第1号、有機則第4条の2第1項第1号、鉛則第3条の2第1項第1号及び粉じん則第3条の2第1項第1号の化学物質管理専門家については、作業場の規模や取り扱う化学物質の種類、量に応じた必要な人数が事業場に専属の者として配置されている必要があること。

ウ 特化則第2条の3第1項第2号、有機則第4条の2第1項第2号、鉛則第3条の2第1項第2号及び粉じん則第3条の2第1項第2号については、過去3年間、申請に係る当該物質による死亡災害又は休業4日以上の労働災害を発生させていないものであること。「過去3年間」とは、申請時を起点として遡った3年間をいうこと。

エ 特化則第2条の3第1項第3号、有機則第4条の2第1項第3号、鉛則第3条の2第1項第3号及び粉じん則第3条の2第1項第3号については、申請に係る事業場において、申請に係る特化則等において作業環境測定が義務付けられている全ての化学物質等(例えば、特化則であれば、申請に係る全ての特定化学物質)について特化則等の規定に基づき作業環境測定を実施し、作業環境の測定結果に基づく評価が第一管理区分であることを過去3年間維持している必要があること。

オ 特化則第2条の3第1項第4号、有機則第4条の2第1項第4号、鉛則第3条の2第1項第4号及び粉じん則第3条の2第1項第4号第4号については、申請に係る事業場において、申請に係る特化則等において健康診断の実施が義務付けられている全ての化学物質等(例えば、特化則であれば、申請に係る全ての特定化学物質)について、過去3年間の健康診断で異常所見がある労働者が一人も発見されないことが求められること。また、粉じん則については、じん肺法(昭和35年法律第30号)の規定に基づくじん肺健康診断の結果、新たにじん肺管理区分が管理2以上に決定された労働者、又はじん肺管理区分が決定されていた者でより上位の区分に決定された労働者が一人もいないことが求められること。

なお、安衛則に基づく定期健康診断の項目だけでは、特定化学物質等による異常所見かどうかの判断が困難であるため、安衛則の定期健康診断における異常所見については、適用除外の要件とはしないこと。

カ 特化則第2条の3第1項第5号、有機則第4条の2第1項第5号、鉛則第3条の2第1項第5号及び粉じん則第3条の2第1項第5号については、客観性を担保する観点から、認定を申請する事業場に属さない化学物質管理専門家から、安衛則第34条の2の8第1項第3号及び第4号に掲げるリスクアセスメントの結果やその結果に基づき事業者が講ずる労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置の内容に対する評価を受けた結果、当該事業場における化学物質による健康障害防止措置が適切に講じられていると認められることを求めるものであること。なお、本規定の評価については、ISO(JISQ)45001の認証等の取得を求める趣旨ではないこと。

キ 特化則第2条の3第1項第6号、有機則第4条の2第1項第6号、鉛則第3条の2第1項第6号及び粉じん則第3条の2第1項第6号については、過去3年間に事業者が当該事業場について法及びこれに基づく命令に違反していないことを要件とするが、軽微な違反まで含む趣旨ではないこと。なお、法及びそれに基づく命令の違反により送検されている場合、労働基準監督機関から使用停止等命令を受けた場合、又は労働基準監督機関から違反の是正の勧告を受けたにもかかわらず期限までに是正措置を行わなかった場合は、軽微な違反には含まれないこと。

(2) 特化則第2条の3第2項、有機則第4条の2第2項、鉛則第3条の2第2項及び粉じん則第3条の2第2項関係

本規定に係る申請を行う事業者は、適用除外認定申請書に、様式ごとにそれぞれ、(1)イ、エからカまでに規定する要件に適合することを証する書面に加え、適用除外認定申請書の備考欄で定める書面を添付して所轄都道府県労働局長に提出する必要があること。

(3) 特化則第2条の3第4項及び第5項、有機則第4条の2第4項及び第5項、鉛則第3条の2第4項及び第5項並びに粉じん則第3条の2第4項及び第5項関係

ア 特化則第2条の3第4項、有機則第4条の2第4項、鉛則第3条の2第4項及び粉じん則第3条の2第4項について、適用除外の認定は、3年以内ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効果を失うものであることから、認定の更新の申請は、認定の期限前に十分な時間的な余裕をもって行う必要があること。

イ 特化則第2条の3第5項、有機則第4条の2第5項、鉛則第3条の2第5項及び粉じん則第3条の2第5項については、認定の更新に当たり、それぞれ、特化則第2条の3第1項から第3項まで、有機則第4条の2第1項から第3項まで、鉛則第3条の2第1項から第3項まで、粉じん則第3条の2第1項から第3項までの規定が準用されるものであること。

(4) 特化則第2条の3第6項、有機則第4条の2第6項、鉛則第3条の2第6項及び粉じん則第3条の2第6項関係

本規定は、所轄都道府県労働局長が遅滞なく事実を把握するため、当該認定に係る事業場がそれぞれ(1)イからカまでに掲げる事項のいずれかに該当しなくなったときは、遅滞なく報告することを事業者に求める趣旨であること。

(5) 特化則第2条の3第7項、有機則第4条の2第7項、鉛則第3条の2第7項及び粉じん則第3条の2第7項関係

本規定は、認定を受けた事業者がそれぞれ特化則第2条の3第7項、有機則第4条の2第7項、鉛則第3条の2第7項及び粉じん則第3条の2第7項に掲げる認定の取消し要件のいずれかに該当するに至ったときは、所轄都道府県労働局長は、その認定を取り消すことができることを規定したものであること。この場合、認定を取り消された事業場は、適用を除外されていた全ての特化則等の規定を速やかに遵守する必要があること。

(6) 特化則第2条の3第8項、有機則第4条の2第8項、鉛則第3条の2第8項及び粉じん則第3条の2第8項関係

特化則第2条の3第5項から第7項まで、有機則第4条の2第5項から第7項まで、鉛則第3条の2第5項から第7項まで、粉じん則第3条の2第5項から第7項までの場合における特化則第2条の3第1項第3号、有機則第4条の2第1項第3号、鉛則第3条の2第1項第3号、粉じん則第3条の2第1項第3号の規定の適用については、過去3年の期間、申請に係る当該物質に係る作業環境測定の結果に基づく評価が、第一管理区分に相当する水準を維持していることを何らかの手段で評価し、その評価結果について、当該事業場に属さない化学物質管理専門家の評価を受ける必要があること。なお、第一管理区分に相当する水準を維持していることを評価する方法には、個人ばく露測定の結果による評価、作業環境測定の結果による評価又は数理モデルによる評価が含まれること。これらの評価の方法については、別途示すところに留意する必要があること。

(7) 特化則様式第1号、有機則様式第1号の2、鉛則様式第1号の2、粉じん則様式第1号の2関係

適用除外の認定の申請は、特化則及び有機則においては、対象となる製造又は取り扱う化学物質を、鉛則においては、対象となる鉛業務を、粉じん則においては、対象となる特定粉じん作業を、それぞれ列挙する必要があること。

8 作業環境管理やばく露防止措置等が適切に実施されている場合における特殊健康診断の実施頻度の緩和(特化則第39条第4項、有機則第29条第6項、鉛則第53条第4項及び四アルキル則第22条第4項関係)

ア 本規定は、労働者の化学物質のばく露の程度が低い場合は健康障害のリスクが低いと考えられることから、作業環境測定の評価結果等について一定の要件を満たす場合に健康診断の実施頻度を緩和できることとしたものであること。

イ 本規定による健康診断の実施頻度の緩和は、事業者が労働者ごとに行う必要があること。

ウ 本規定の「健康診断の実施後に作業方法を変更(軽微なものを除く。)していないこと」とは、ばく露量に大きな影響を与えるような作業方法の変更がないことであり、例えば、リスクアセスメント対象物の使用量又は使用頻度に大きな変更がない場合等をいうこと。

エ 事業者が健康診断の実施頻度を緩和するに当たっては、労働衛生に係る知識又は経験のある医師等の専門家の助言を踏まえて判断することが望ましいこと。

オ 本規定による健康診断の実施頻度の緩和は、本規定施行後の直近の健康診断実施日以降に、本規定に規定する要件を全て満たした時点で、事業者が労働者ごとに判断して実施すること。なお、特殊健康診断の実施頻度の緩和に当たって、所轄労働基準監督署や所轄都道府県労働局に対して届出等を行う必要はないこと。

 

第4 細部事項(令和6年4月1日施行)

1 化学物質管理者の選任、管理すべき事項等

(1) 安衛則第12条の5第1項関係

ア 化学物質管理者は、ラベル・SDS等の作成の管理、リスクアセスメント実施等、化学物質の管理に関わるもので、リスクアセスメント対象物に対する対策を適切に進める上で不可欠な職務を管理する者であることから、事業場の労働者数によらず、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う全ての事業場において選任することを義務付けたこと。

なお、衛生管理者の職務は、事業場の衛生全般に関する技術的事項を管理することであり、また有機溶剤作業主任者といった作業主任者の職務は、個別の化学物質に関わる作業に従事する労働者の指揮等を行うことであり、それぞれ選任の趣旨が異なるが、化学物質管理者が、化学物質管理者の職務の遂行に影響のない範囲で、これらの他の法令等に基づく職務等と兼務することは差し支えないこと。

イ 化学物質管理者は、工場、店社等の事業場単位で選任することを義務付けたこと。したがって、例えば、建設工事現場における塗装等の作業を行う請負人の場合、一般的に、建設現場での作業は出張先での作業に位置付けられるが、そのような出張作業先の建設現場にまで化学物質管理者の選任を求める趣旨ではないこと。

ウ 化学物質管理者については、その職務を適切に遂行するために必要な権限が付与される必要があるため、事業場内の労働者から選任されるべきであること。また、同じ事業場で化学物質管理者を複数人選任し、業務を分担することも差し支えないが、その場合、業務に抜け落ちが発生しないよう、業務を分担する化学物質管理者や実務を担う者との間で十分な連携を図る必要があること。

なお、化学物質管理者の管理の下、具体的な実務の一部を化学物質管理に詳しい専門家等に請け負わせることは可能であること。

エ 本規定の「リスクアセスメント対象物」は、改正省令による改正前の安衛則第34条の2の7第1項第1号の「通知対象物」と同じものであり、例えば、原材料を混合して新たな製品を製造する場合であって、その製品がリスクアセスメント対象物に該当する場合は、当該製品は本規定のリスクアセスメント対象物に含まれること。

オ 本規定の「リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う」には、例えば、リスクアセスメント対象物を取り扱う作業工程が密閉化、自動化等されていることにより、労働者が当該物にばく露するおそれがない場合であっても、リスクアセスメント対象物を取り扱う作業が存在する以上、含まれること。ただし、一般消費者の生活の用に供される製品はリスクアセスメントの対象から除かれているため、それらの製品のみを取り扱う事業場は含まれないこと。

また、密閉された状態の製品を保管するだけで容器の開閉等を行わない場合や、火災や震災後の復旧、事故等が生じた場合の対応等、応急対策のためにのみ臨時的にリスクアセスメント対象物を取り扱うような場合は、「リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う」には含まれないこと。

カ 本規定の表示等及び教育管理に係る技術的事項を「他の事業場において行っている場合」とは、例えば、ある工場でリスクアセスメント対象物を製造し、当該工場とは別の事業場でラベル表示の作成を行う場合等のことをいい、その場合、当該工場と当該事業場それぞれで化学物質管理者の選任が必要となること。安衛則第12条の5第2項についてもこれと同様であること。

キ 本項第4号については、実際に労働災害が発生した場合の対応のみならず、労働災害が発生した場合を想定した応急措置等の訓練の内容やその計画を定めること等も含まれること。

ク 本項第7号については、必要な教育の実施における計画の策定等の管理を求めるもので、必ずしも化学物質管理者自らが教育を実施することを求めるものではなく、労働者に対して外部の教育機関等で実施している必要な教育を受けさせること等を妨げるものではないこと。また、本規定の施行の前に既に雇い入れ教育等で労働者に対する必要な教育を実施している場合には、施行後に改めて教育の実施を求める趣旨ではないこと。

(2) 安衛則第12条の5第3項関係

ア 本項第2号イの「厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習」は、厚生労働大臣が定める科目について、自ら講習を行えば足りるが、他の事業者の実施する講習を受講させることも差し支えないこと。また、「これと同等以上の能力を有すると認められる者」については、本項第2号イの厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習に係る告示と併せて、おって示すこととすること。

イ 本項第2号ロの「必要な能力を有すると認められる者」とは、安衛則第12条の5第1項各号の事項に定める業務の経験がある者が含まれること。また、適切に業務を行うために、別途示す講習等を受講することが望ましいこと。

(3) 安衛則第12条の5第4項関係

化学物質管理者の選任に当たっては、当該管理者が実施すべき業務をなし得る権限を付与する必要があり、事業場において相応するそれらの権限を有する役職に就いている者を選任すること。

(4) 安衛則第12条の5第5項関係

本規定の「事業場の見やすい箇所に掲示すること等」の「等」には、化学物質管理者に腕章を付けさせる、特別の帽子を着用させる、事業場内部のイントラネットワーク環境を通じて関係労働者に周知する方法等が含まれること。

2 保護具着用管理責任者の選任、管理すべき事項等

(1) 安衛則第12条の6第1項関係

本規定は、保護具着用管理責任者を選任した事業者について、当該責任者に本項各号に掲げる事項を管理させなければならないこととしたものであり、保護具着用管理責任者の職務内容を規定したものであること。

保護具着用管理責任者の職務は、次に掲げるとおりであること。

ア 保護具の適正な選択に関すること。

イ 労働者の保護具の適正な使用に関すること。

ウ 保護具の保守管理に関すること。

これらの職務を行うに当たっては、平成17年2月7日付け基発第0207006号「防じんマスクの選択、使用等について」、平成17年2月7月付け基発第0207007号「防毒マスクの選択、使用等について」及び平成29年1月12日付け基発0112第6号「化学防護手袋の選択、使用等について」に基づき対応する必要があることに留意すること。

(2) 安衛則第12条の6第2項関係

本項第2号中の「保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者」には、次に掲げる者が含まれること。なお、次に掲げる者に該当する場合であっても、別途示す保護具の管理に関する教育を受講することが望ましいこと。また、次に掲げる者に該当する者を選任することができない場合は、上記の保護具の管理に関する教育を受講した者を選任すること。

① 別に定める化学物質管理専門家の要件に該当する者

② 9(1)ウに定める作業環境管理専門家の要件に該当する者

③ 法第83条第1項の労働衛生コンサルタント試験に合格した者

④ 安衛則別表第4に規定する第1種衛生管理者免許又は衛生工学衛生管理者免許を受けた者

⑤ 安衛則別表第1の上欄に掲げる、令第6条第18号から第20号までの作業及び令第6条第22号の作業に応じ、同表の中欄に掲げる資格を有する者(作業主任者)

⑥ 安衛則第12条の3第1項の都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を終了した者その他安全衛生推進者等の選任に関する基準(昭和63年労働省告示第80号)の各号に示す者(安全衛生推進者に係るものに限る。)

(3) 安衛則第12条の6第3項関係

保護具着用管理責任者の選任に当たっては、その業務をなし得る権限を付与する必要があり、事業場において相応するそれらの権限を有する役職に就いている者を選任することが望ましいこと。なお、選任に当たっては、事業場ごとに選任することが求められるが、大規模な事業場の場合、保護具着用管理責任者の職務が適切に実施できるよう、複数人を選任することも差し支えないこと。また、職務の実施に支障がない範囲内で、作業主任者が保護具着用管理責任者を兼任しても差し支えないこと(9(4)に係る職務を除く。)。

(4) 安衛則第12条の6第4項関係

本規定の「事業場の見やすい箇所に掲示すること等」の「等」には、保護具着用管理責任者に腕章を付けさせる、特別の帽子を着用させる、事業場内部のイントラネットワーク環境を通じて関係労働者に周知する方法等が含まれること。

3 衛生委員会の付議事項の追加(安衛則第22条関係)

ア 本条第11号の安衛則第577条の2第1項、第2項及び第8項に係る措置並びに本条第3項及び第4項の健康診断の実施に関する事項は、既に付議事項として義務付けられている本条第2号の「法第28条の2第1項又は第57条の3第1項及び第2項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること」と相互に密接に関係することから、本条第2号と第11号の事項を併せて調査審議して差し支えないこと。

イ 衛生委員会の設置を要しない常時労働者数50人未満の事業場においても、安衛則第23条の2に基づき、本条第11号の事項について、関係労働者の意見を聴く機会を設けなければならないことに留意すること。

4 SDS等における通知事項の追加及び含有量の重量パーセント表示

(1) 安衛則第24条の15第1項、第34条の2の4関係

ア SDS等における通知事項に追加する「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」は、譲渡提供者が譲渡又は提供を行う時点で想定される内容を記載すること。

イ 譲渡提供を受けた相手方は、当該譲渡提供を受けた物を想定される用途で使用する場合には、当該用途における使用上の注意を踏まえてリスクアセスメントを実施することとなるが、想定される用途以外の用途で使用する場合には、使用上の注意に関する情報がないことを踏まえ、当該物の有害性等をより慎重に検討した上でリスクアセスメントを実施し、その結果に基づく措置を講ずる必要があること。

(2) 安衛則第34条の2の6第1項関係

本項は、SDS等における通知事項のうち「成分の含有量」について、重量パーセントによる濃度の通知を原則とする趣旨であること。なお、通知対象物であって製品の特性上含有量に幅が生じるもの等については、濃度範囲による記載も可能であること。また、重量パーセント以外の表記による含有量の表記がなされているものについては、平成12年3月24日付け基発第162号「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の施行について」の記のⅢ第8の2(2)に示したとおり、重量パーセントへの換算方法を明記していれば、重量パーセントによる表記を行ったものと見なすこと。

5 雇入れ時等の教育の拡充(安衛則第35条関係)

本規定の改正は、雇入れ時等の教育のうち本条第1項第1号から第4号までの事項の教育に係る適用業種を全業種に拡大したもので、当該事項に係る教育の内容は従前と同様であるが、新たな対象となった業種においては、各事業場の作業内容に応じて安衛則第35条第1項各号に定められる必要な教育を実施する必要があること。

6 化学物質による労働災害が発生した事業場等における化学物質管理の改善措置

(1) 安衛則第34条の2の10第1項関係

ア 本規定は、化学物質による労働災害が発生した又はそのおそれがある事業場で、管理が適切に行われていない可能性があるものとして労働基準監督署長が認めるものについて、自主的な改善を促すため、化学物質管理専門家による当該事業場における化学物質の管理の状況についての確認・助言を受け、その内容を踏まえた改善計画の作成を指示することができるようにする趣旨であること。

イ 「化学物質による労働災害発生が発生した、又はそのおそれがある事業場」とは、過去1年間程度で、①化学物質等による重篤な労働災害が発生、又は休業4日以上の労働災害が複数発生していること、②作業環境測定の結果、第三管理区分が継続しており、改善が見込まれないこと、③特殊健康診断の結果、同業種の平均と比較して有所見率の割合が相当程度高いこと、④化学物質等に係る法令違反があり、改善が見込まれないこと等の状況について、労働基準監督署長が総合的に判断して決定するものであること。

ウ 「化学物質による労働災害」には、一酸化炭素、硫化水素等による酸素欠乏症、化学物質(石綿を含む。)による急性又は慢性中毒、がん等の疾病を含むが、物質による切創等のけがは含まないこと。また、粉じん状の化学物質による中毒等は化学物質による労働災害を含むが、粉じんの物理的性質による疾病であるじん肺は含まないこと。

(2) 安衛則第34条の2の10第2項関係

ア 化学物質管理専門家に確認を受けるべき事項には、以下のものが含まれること。

① リスクアセスメントの実施状況

② リスクアセスメントの結果に基づく必要な措置の実施状況

③ 作業環境測定又は個人ばく露測定の実施状況

④ 特別則に規定するばく露防止措置の実施状況

⑤ 事業場内の化学物質の管理、容器への表示、労働者への周知の状況

⑥ 化学物質等に係る教育の実施状況

イ 化学物質管理専門家は客観的な判断を行う必要があるため、当該事業場に属さない者であることが望ましいが、同一法人の別事業場に属する者であっても差し支えないこと。

ウ 事業者が複数の化学物質管理専門家からの助言を求めることを妨げるものではないが、それぞれの専門家から異なる助言が示された場合、自らに都合良い助言のみを選択することのないよう、全ての専門家からの助言等を踏まえた上で必要な措置を実施するとともに、労働基準監督署への改善計画の報告に当たっては、全ての専門家からの助言等を添付する必要があること。

(3) 安衛則第34条の2の10第3項関係

化学物質管理専門家は、本条第2項の確認を踏まえて、事業場の状況に応じた実施可能で具体的な改善の助言を行う必要があること。

(4) 安衛則第34条の2の10第4項関係

ア 本規定の改善計画には、改善措置の趣旨、実施時期、実施事項(化学物質管理専門家が立ち会って実施するものを含む。)を記載するとともに、改善措置の実施に当たっての事業場内の体制、責任者も記載すること。

イ 本規定の改善措置を実施するための計画の作成にあたり、化学物質管理専門家の支援を受けることが望ましいこと。また、当該計画作成後、労働基準監督署長への報告を待たず、速やかに、当該計画に従い必要な措置を実施しなければならないこと。

(5) 安衛則第34条の2の10第5項関係

本規定の所轄労働基準監督署長への報告にあたっては、化学物質管理専門家の助言内容及び改善計画に加え、改善計画報告書(安衛則様式第4号等)の備考欄に定める書面を添付すること。

(6) 安衛則第34条の2の10関係第6項関係

本規定は、改善措置の実施状況を事後的に確認できるようにするため、改善計画に基づき実施した改善措置の記録を作成し、化学物質管理専門家の助言の通知及び改善計画とともに3年間保存することを義務付けた趣旨であること。

7 リスクアセスメント対象物に係る事業者の義務関係

(1) 安衛則第577条の2第2項関係

本規定の「厚生労働大臣が定める濃度の基準」については、順次、厚生労働大臣告示で定めていく予定であること。なお、濃度基準値が定められるまでの間は、日本産業衛生学会の許容濃度、米国政府労働衛生専門家会議(ACGIH)のばく露限界値(TLV-TWA)等が設定されている物質については、これらの値を参考にし、これらの物質に対する労働者のばく露を当該許容濃度等以下とすることが望ましいこと。

本規定の労働者のばく露の程度が濃度基準値以下であることを確認する方法には、次に掲げる方法が含まれること。この場合、これら確認の実施に当たっては、別途定める事項に留意する必要があること。

① 個人ばく露測定の測定値と濃度基準値を比較する方法、作業環境測定(C・D測定)の測定値と濃度基準値を比較する方法

② 作業環境測定(A・B測定)の第一評価値と第二評価値を濃度基準値と比較する方法

③ 厚生労働省が作成したCREATE-SIMPLE等の数理モデルによる推定ばく露濃度と濃度基準値と比較する等の方法

(2) 安衛則第577条の2第3項関係

ア 本規定は、リスクアセスメント対象物について、一律に健康診断の実施を求めるのではなく、リスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴き、リスクの程度に応じて健康診断の実施を事業者が判断する仕組みとしたものであること。

イ 本規定の「必要があると認めるとき」に係る判断方法及び「医師又は歯科医師が必要と認める項目」は、別途示すところに留意する必要があること。

(3) 安衛則第577条の2第4項関係

ア 本規定は、事業者によるばく露防止措置が適切に講じられなかったこと等により、結果として労働者が濃度基準値を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときに、健康障害を防止する観点から、速やかに健康診断の実施を求める趣旨であること。

イ 本規定の「リスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるとき」には、リスクアセスメント対象物が漏えいし、労働者が当該物質を大量に吸引したとき等明らかに濃度の基準を超えてばく露したと考えられるとき、リスクアセスメントの結果に基づき講じたばく露防止措置(呼吸用保護具の使用等)に不備があり、濃度の基準を超えてばく露した可能性があるとき及び事業場における定期的な濃度測定の結果、濃度の基準を超えていることが明らかになったときが含まれること。

ウ 本規定の「医師又は歯科医師が必要と認める項目」は、別途示すところに留意する必要があること。

(4) 安衛則第577条の2第5項関係

本規定の「がん原性物質」は、別途厚生労働大臣告示で定める予定であること。

8 保護具の使用による皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止(安衛則第594条の2第1項関係)

(1) 本規定は、皮膚等障害化学物質等を製造し、又は取り扱う業務において、労働者に適切な不浸透性の保護衣等を使用させなければならないことを規定する趣旨であること。

(2) 本規定の「皮膚等障害化学物質等」には、国が公表するGHS分類の結果及び譲渡提供者より提供されたSDS等に記載された有害性情報のうち「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」及び「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかで区分1に分類されているもの及び別途示すものが含まれること。

9 作業環境測定結果が第三管理区分の事業場に対する措置の強化

(1) 作業環境測定の評価結果が第三管理区分に区分された場合に講ずべき措置(特化則第36条の3の2第1項、有機則第28条の3の2第1項、鉛則第52条の3の2第1項、粉じん則第26条の3の2第1項関係)

ア 本規定は、第三管理区分となる作業場所には、局所排気装置の設置等が技術的に困難な場合があることから、作業環境を改善するための措置について高度な知見を有する専門家の視点により改善の可否、改善措置の内容について意見を求め、改善の取組等を図る趣旨であること。このため、客観的で幅広い知見に基づく専門的意見が得られるよう、作業環境管理専門家は、当該事業場に属さない者に限定していること。

イ 本規定の作業環境管理専門家の意見は、必要な措置を講ずることにより、第一管理区分又は第二管理区分とすることの可能性の有無についての意見を聴く趣旨であり、当該改善結果を保証することまで求める趣旨ではないこと。また、本規定の作業環境管理専門家の意見聴取にあたり、事業者は、作業環境管理専門家から意見聴取を行う上で必要となる業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供する必要があること。

ウ 本規定の「作業環境管理専門家」には、次に掲げる者が含まれること。

① 別に定める化学物質管理専門家の要件に該当する者

② 3年以上、労働衛生コンサルタント(試験の区分が労働衛生工学又は化学であるものに合格した者に限る。)としてその業務に従事した経験を有する者

③ 6年以上、衛生工学衛生管理者としてその業務に従事した経験を有する者

④ 衛生管理士(法第83条第1項の労働衛生コンサルタント試験(試験の区分が労働衛生工学であるものに限る。)に合格した者に限る。)に選任された者で、その後3年以上労働災害防止団体法第11条第1項の業務を行った経験を有する者

⑤ 6年以上、作業環境測定士としてその業務に従事した経験を有する者

⑥ 4年以上、作業環境測定士としてその業務に従事した経験を有する者であって、公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する研修又は講習のうち、同協会が化学物質管理専門家の業務実施に当たり、受講することが適当と定めたものを全て修了した者

⑦オキュペイショナル・ハイジニスト資格又はそれと同等の外国の資格を有する者

(2) 第三管理区分に対する必要な改善措置の実施(特化則第36条の3の2第2項、有機則第28条の3の2第2項、鉛則第52条の3の2第2項、粉じん則第26条の3の2第2項関係)

本規定の「直ちに」については、作業環境管理専門家の意見を踏まえた改善措置の実施準備に直ちに着手するという趣旨であり、措置そのものの実施を直ちに求める趣旨ではなく、準備に要する合理的な時間の範囲内で実施すれば足りるものであること。

(3) 改善措置を講じた場合の測定及びその結果の評価(特化則第36条の3の2第3項、有機則第28条の3の2第3項、鉛則第52条の3の2第3項、粉じん則第26条の3の2第3項関係)

本規定の測定及びその結果の評価は、作業環境管理専門家の意見を踏まえて講じた改善措置の効果を確認するために行うものであるから、改善措置を講ずる前に行った方法と同じ方法で行うこと。

なお、作業場所全体の作業環境を評価する場合は、作業環境測定基準及び作業環境評価基準に従って行うこと。

また、本規定の測定及びその結果の評価は、作業環境管理専門家が作業場所の作業環境を改善することが困難と判断した場合であっても、事業者が必要と認める場合は実施して差し支えないこと。

(4) 作業環境管理専門家が改善困難と判断した場合等に講ずべき措置(特化則第36条の3の2第4項、有機則第28条の3の2第4項、鉛則第52条の3の2第4項、粉じん則第26条の3の2第4項関係)

ア 本規定は、有効な呼吸用保護具の選定にあたっての対象物質の濃度の測定において、個人サンプリング測定等により行い、その結果に応じて、労働者に有効な呼吸用保護具を選定する趣旨であること。

イ 本規定の呼吸用保護具の装着の確認は、面体と顔面の密着性等について確認する趣旨であることから、フード形、フェイスシールド形等の面体を有しない呼吸用保護具を確認の対象から除く趣旨であること。

(5) 作業環境測定の評価結果が改善するまでの間に講ずべき措置(特化則第36条の3の2第5項、有機則第28条の3の2第5項、鉛則第52条の3の2第5項、粉じん則第26条の3の2第5項関係)

本規定は、作業環境管理専門家の意見に基づく改善措置等を実施してもなお、第三管理区分に区分された場所について、化学物質等へのばく露による健康障害から労働者を守るため、定期的な測定を行い、その結果に基づき労働者に有効な呼吸用保護具を使用させる等の必要な措置の実施を義務付ける趣旨であること。

(6) 所轄労働基準監督署長への報告(特化則第36条の3の3、有機則第28条の3の3、鉛則第52条の3の3、粉じん則第26条の3の3関係)

本規定は、第三管理区分となった作業場所について(4)の措置を講じた場合、その措置内容等を第三管理区分措置状況届により所轄労働基準監督署長に提出することを求める趣旨であり、この様式の提出後、当該作業場所が第二管理区分又は第一管理区分になった場合に、所轄労働基準監督署長へ改めて報告を求める趣旨ではないこと。