img1 img1 img1

◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー  

通達:特定化学物質障害予防規則における第2類物質「溶接ヒューム」に係る関係省令等の解釈等について

 

特定化学物質障害予防規則における第2類物質「溶接ヒューム」に係る関係省令等の解釈等について

令和3年1月15日基安化発0115第1号

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

 

令和2年4月22日に公布された特定化学物質障害予防規則及び作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第89号)による改正後の特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「新特化則」という。)等の内容等については、「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行について」(令和2年4月22日付け基発0422第4号)及び「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等の施行について」(令和2年7月31日付け基発0731第1号)により通知したところであるが、その施行に伴う解釈等は、下記のとおりであるので、了知の上、これらの取扱いについて遺漏なきを期されたい。

 

1 新特化則第38条の21第2項関係

(1) 「溶接ヒューム」にマンガンが含まれていない場合の適用

(問)溶接材料等にマンガンを含まないアーク溶接で発生するヒュームについても、溶接ヒュームの濃度測定を行わなければならないのか。

(答)溶接ヒュームのばく露による有害性については、含有されるマンガンによる神経機能障害に加え、溶接ヒューム自体のばく露による肺がんのリスクが上昇していることが報告され、溶接ヒュームとマンガン及びその化合物の毒性、健康影響等は異なる可能性が高いことから、第2類物質について、改正安衛令において、「マンガン」とは別に「溶接ヒューム」を規定したこと。

溶接材料及び母材の成分の中に、不純物による混入を含め、マンガンが全く含まれていないことを証明することは困難であり、マンガンが含まれていないとされている溶接材料及び母材から生じた溶接ヒューム中にマンガンが測定されることはありえること。また、溶接ヒュームの濃度は、溶接方法や諸条件によって大きく異なるため、実際に測定してみなければ、溶接ヒューム中のマンガンの濃度を把握することは困難であること。このようなことから、溶接ヒュームの濃度測定を行う必要があること。

なお、新特化則の規制対象となる第2類物質は、マンガンの含有の有無にかかわらず「溶接ヒューム」としていること。

(2) 「継続」の定義

(問)金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、当該作業の頻度が少なければ、溶接ヒュームの濃度測定は不要か。

(答)新特化則第38条の21第2項の規定に基づく溶接ヒュームの濃度測定は、当該濃度測定の結果を踏まえた作業環境の改善を図るために実施するものであること。このため、同じ場所で繰り返し行われない金属アーク溶接等作業については、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善に活かすことが難しいことから、新特化則における義務としていないこと。

一方、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場については、その頻度が少ない場合であっても、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善に活かすことができることから、溶接ヒュームの濃度測定を実施する必要があること。

2 新特化則第38条の21第5項関係

有効な呼吸用保護具の選択

(問)新特化則第38条の21第5項における有効な呼吸用保護具の性能はどのようなものか。

(答)「防じんマスクの選択、使用等について」(平成17年2月7日付け基発第0207006号。以下「マスク選択通達」という。)に基づき選択するものであること。

3 新特化則第38条の21第6項関係

(1) 有効な呼吸用保護具の選択

(問)新特化則第38条の21第6項における有効な呼吸用保護具について、溶接ヒュームの濃度がマンガンに係るばく露の基準値である0.05mg/m3以下の場合の性能はどのようなものか。

(答)新特化則第38条の21第6項の厚生労働大臣の定める有効な呼吸用保護具は、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等(令和2年厚生労働省告示第286号)において、要求防護係数を上回る指定防護係数のものを選択しなければならないこととしていること。

溶接ヒュームの濃度測定の結果、マンガンの含有濃度が0.05mg/m3以下の場合、要求防護係数は1以下となるが、その場合も要求防護係数を上回る指定防護係数を有する呼吸用保護具を選択する必要があること。

ただし、金属アーク溶接作業にあっては、別途粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)第27条第1項の規定に基づく有効な呼吸用保護具を使用させなければならないこと。

(2) 新特化則と粉じん則の関係

(問)新特化則第36条の21第6項に基づく有効な呼吸用保護具と粉じん則に基づく防じんマスクは、どちらを選択すべきか。

(答)新特化則においては、神経機能障害を発症させるマンガンを含んだ溶接ヒュームのばく露を防止するために有効な呼吸用保護具を使用させるものであり、上記(1)のとおり、要求防護係数を上回る指定防護係数を有するものを使用させなければならない。

一方、粉じん則においては、じん肺を発症させる粉じんのばく露を防止するために呼吸用保護具を使用させるものであり、マスク選択通達に基づき、性能がRS2、RS3、DS2、DS3、RL2、RL3、DL2又はDL3の防じんマスクを使用させなければならない。

このように、それぞれ求められる目的や性能が異なるものであるが、いずれかのうち防護性能の高い方の呼吸用保護具を使用させること。

たとえば、新特化則に基づく有効な呼吸用保護具の性能がDS1又はDL1で、マスク選択通達に基づく防じんマスクの性能がRS2、RS3、DS2、DS3、RL2、RL3、DL2又はDL3であった場合、より性能の高い後者を選択し、使用させること。

4 その他

特定化学物質障害予防規則第21条(不浸透性の床)関係

(問)建設現場における鉄格子(すのこ状のもの)の足場板については、不浸透性の材料で造られた床に該当するか。

(答)特定化学物質障害予防規則第21条では、管理第2類物質については発じんの防止又はその漏えい物の処理の見地から、当該物質を製造し、又は取り扱う作業場の床を不浸透性のものとしなければならないことを求めている。このため、不浸透性の床とする範囲については、当該影響を及ぼすおそれのある区画された作業場をいうものであること。

建設現場における鉄格子(すのこ状のもの)の足場板については、不浸透性の材料で造られた床に該当しないが、この特定化学物質障害予防規則第21条の規定の趣旨を踏まえれば、溶接ヒュームの影響を及ぼす区画が建設現場の屋外作業場であり、繰り返し行われない金属アーク溶接等作業であって、かつ、溶接ヒュームが堆積するおそれのない場合であれば、特定化学物質障害予防規則第21条の規定の趣旨である発じんの防止や漏えい物(堆積粉じん)の処理作業を行う必要のないものであることから、不浸透性の床でなくても差し支えないこと。

なお、作業場内の床面等に堆積した粉じん等の中で溶接ヒュームの含有量が1パーセント以下の場合は、当該作業場の床を不浸透性の材料とする必要はないことに留意すること。