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石綿障害予防規則等の一部を改正する省令等の施行について
令和2年8月4日基発0804第2号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
石綿障害予防規則等の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第134号。以下「改正省令」という。)及び改正省令による改正後の石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)(以下「改正石綿則」という。)に基づく告示(以下「関連告示」という。)を次の表のとおり公布又は告示し、及び施行することとされたところである。
省令又は告示の名称 |
公布日又は告示日 |
施行日 |
石綿障害予防規則等の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第134号) |
令和2年7月1日 |
令和3年4月1日(一部は令和2年10月1日、令和4年4月1日又は令和5年10月1日) |
石綿障害予防規則第3条第4項の規定に基づき厚生労働大臣が定める者(令和2年厚生労働省告示第276号) |
令和2年7月27日 |
令和5年10月1日 |
石綿障害予防規則第3条第6項の規定に基づき厚生労働大臣が定める者等(令和2年厚生労働省告示第277号) |
令和2年7月27日 |
令和5年10月1日 |
石綿障害予防規則第4条の2第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める物(令和2年厚生労働省告示第278号) |
令和2年7月27日 |
令和4年4月1日 |
石綿障害予防規則第6条の2第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物(令和2年厚生労働省告示第279号) |
令和2年7月27日 |
令和2年10月1日 |
これらの改正の趣旨、内容等については下記のとおりであるので、建築物、工作物及び船舶の解体工事又は改修工事に関わる全ての関係者を含め、広く周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
なお、令和2年6月5日に公布された大気汚染防止法の一部を改正する法律(令和2年法律第39号)においても、改正省令と同様の内容の改正が行われていることから、改正省令の周知徹底等に当たっては、都道府県等の地方公共団体と十分に連携を図られたい。
記
第1 改正の趣旨
「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会」の議論を踏まえ、建築物、工作物及び船舶の解体工事及び改修工事における石綿等へのばく露による健康障害を防止するため、石綿障害予防規則等について所要の改正を行うとともに、改正石綿則に基づく告示の制定を行ったものである。
第2 改正の要点
1 改正省令関係
(1) 石綿障害予防規則の一部改正(改正省令第1条及び第2条関係)
ア 事前調査の対象、方法、記録等
① 事業者は、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業(以下「解体等の作業」という。)を行うときは、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(それぞれ解体等の作業に係る部分に限る。以下「解体等対象建築物等」という。)の全ての材料について、設計図書等の文書を確認する方法及び目視により確認する方法により石綿等の使用の有無の調査(以下「事前調査」という。)を行わなければならないこととしたこと。
② ①にかかわらず、解体等対象建築物等が一定の要件に該当する場合は、事前調査を①の方法以外の方法により行うことができることとしたこと。
③ 事業者は、建築物に係る事前調査については、②の場合を除き、適切に当該調査を実施するために必要な知識を有する者として厚生労働大臣が定めるものに行わせなければならないこととしたこと。
④ 事業者は、事前調査を行ったにもかかわらず、解体等対象建築物等について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、分析による調査(以下「分析調査」という。)を行わなければならないこととしたこと。ただし、当該解体等対象建築物等について、石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限りでないこととしたこと。
⑤ 事業者は、分析調査については、適切に分析調査を実施するために必要な知識及び技能を有する者として厚生労働大臣が定めるものに行わせなければならないこととしたこと。
⑥ 事業者は、事前調査又は分析調査(以下「事前調査等」という。)を行ったときは、当該事前調査等の結果に基づき作成した記録を3年間保存するとともに、石綿等が使用されている解体等対象建築物等の解体等の作業を行う作業場に当該記録の写しを備え付けなければならないこととしたこと。
⑦ 事業者は、一定規模以上の建築物又は工作物(工作物については、石綿等が使用されているおそれが高いものとして厚生労働大臣が定めるものに限る。)の解体工事又は改修工事を行おうとするときは、あらかじめ、電子情報処理組織を使用して、事前調査等の結果の概要等を所轄労働基準監督署長に報告しなければならないこととしたこと。
イ 吹き付けられた石綿等及び石綿含有保温材等の除去等に係る措置
① 事業者は、解体等対象建築物等に吹き付けられている石綿等(石綿等が使用されている仕上げ用塗り材(以下「石綿含有仕上げ塗材」という。)を除く。)又は石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等(以下「石綿含有保温材等」という。)の除去、封じ込め又は囲い込みの作業を行う場合に講じなければならない措置に、次の措置を追加したこと。
(ア) ろ過集じん方式の集じん・排気装置の設置場所を変更したときその他当該集じん・排気装置に変更を加えたときは、当該集じん・排気装置の排気口からの石綿等の粉じんの漏えいの有無を点検すること。
(イ) その日の作業を中断したときは、前室が負圧に保たれていることを点検すること。
② 事業者は、①の措置のうち、①の作業を行う作業場所の隔離の措置を行ったときは、石綿等に関する知識を有する者が当該吹き付けられた石綿等又は石綿含有保温材等の除去が完了したことを確認した後でなければ、当該隔離を解いてはならないこととしたこと。
ウ 石綿含有成形品の除去に係る措置
① 事業者は、成型された材料であって石綿等が使用されているもの(石綿含有保温材等を除く。以下「石綿含有成形品」という。)を除去する作業においては、技術上困難な場合を除き、切断、破砕、穿(せん)孔、研磨等(以下「切断等」という。)以外の方法により当該作業を実施しなければならないこととしたこと。
② 切断等以外の方法により石綿含有成形品を除去する作業を実施することが技術上困難な場合であって、石綿含有成形品のうち特に石綿等の粉じんが発散しやすいものとして厚生労働大臣が定めるものを切断等の方法により除去する作業を行うときは、当該作業を行う作業場所をビニルシート等で隔離する等の措置を講じなければならないこととしたこと。
エ 石綿含有仕上げ塗材の電動工具による除去に係る措置
事業者は、建築物、工作物又は船舶の壁、柱、天井等に用いられた石綿含有仕上げ塗材を電動工具を使用して除去する作業を行うときは、ウの②の措置を講じなければならないこととしたこと。
オ 発注者の責務等
解体等の作業を行う仕事の発注者は、当該仕事の請負人による事前調査等及びクの記録の作成が適切に行われるよう配慮しなければならないこととしたこと。
カ 石綿等の切断等の作業等に係る措置
事業者は、石綿等を湿潤な状態のものとすることが義務付けられている石綿等の切断等の作業等について、石綿等を湿潤な状態のものとすることが著しく困難なときは、除じん性能を有する電動工具の使用その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置を講ずるように努めなければならないこととしたこと。
キ 作業の記録
石綿等の粉じんを発散する場所において常時石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する作業又は石綿分析用試料等を製造する作業に従事する労働者等に係る作業の記録の記録項目に、当該作業(石綿等が使用されている解体等対象建築物等の解体等の作業に限る。)に係る事前調査等の結果の概要、作業の実施状況等の記録の概要等を追加したこと。
ク 作業計画による作業の記録
事業者は、石綿等が使用されている解体等対象建築物等の解体等の作業を行ったときは、当該作業に係る作業計画に従って作業を行わせたことについて、写真その他実施状況を確認できる方法により記録を作成し、3年間保存しなければならないこととしたこと。
(2) 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)の一部改正(改正省令第3条関係)
法第88条第3項の計画届の対象となる仕事に、次の仕事を追加したこと。
ア 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号の2に規定する耐火建築物又は同法第2条第9号の3に規定する準耐火建築物に吹き付けられている石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業を行う仕事
イ アの耐火建築物及び準耐火建築物以外の建築物、工作物又は船舶に吹き付けられている石綿等の除去、封じ込め又は囲い込みの作業を行う仕事
ウ 建築物、工作物又は船舶に張り付けられている石綿含有保温材等の除去、封じ込め又は囲い込みの作業(石綿等の粉じんを著しく発散するおそれのあるものに限る。)を行う仕事
(3) 施行期日(改正省令附則関係)
改正省令は、令和3年4月1日から施行することとしたこと。ただし、(1)のウにあっては令和2年10月1日、(1)のアの⑦にあっては令和4年4月1日、(1)のアの③及び⑤にあっては令和5年10月1日から施行することとしたこと。
2 関連告示関係
(1) 石綿障害予防規則第3条第4項の規定に基づき厚生労働大臣が定める者(令和2年厚生労働省告示第276号。以下「事前調査者告示」という。)の制定
ア 適切に事前調査(建築物に係るものに限る。)を実施するために必要な知識を有する者として厚生労働大臣が定めるものについて、以下に掲げる調査対象物の区分に応じ、それぞれ以下の①又は②に該当する者としたこと。
① 建築物(建築物石綿含有建材調査者講習登録規程(平成30年厚生労働省、国土交通省、環境省告示第1号。以下「登録規程」という。)に規定する一戸建ての住宅及び共同住宅の住戸の内部(以下「一戸建て住宅等」という。)を除く。)
登録規程に規定する一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者又はこれらの者と同等以上の能力を有すると認められる者
② 一戸建て住宅等
①に掲げる者又は登録規程に規定する一戸建て等石綿含有建材調査者
イ 事前調査者告示は、令和5年10月1日から施行することとしたこと。
(2) 石綿障害予防規則第3条第6項の規定に基づき厚生労働大臣が定める者等(令和2年厚生労働省告示第277号。以下「分析調査者告示」という。)の制定
ア 適切に分析調査を実施するために必要な知識及び技能を有する者として厚生労働大臣が定めるものについて、以下の①又は②に該当する者としたこと。
① 以下(ア)から(ウ)までに関する所定の学科講習及び分析の実施方法に関する所定の実技講習を受講し、修了考査に合格した者
(ア) 分析の意義及び関係法令
(イ) 鉱物及び石綿含有材料等に関する基礎知識
(ウ) 分析方法の原理と分析機器の取扱方法
② 上記と同等以上の知識及び技能を有すると認められる者
イ 分析調査者告示は、令和5年10月1日から施行することとしたこと。
(3) 石綿障害予防規則第4条の2第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める物(令和2年厚生労働省告示第278号。以下「特定工作物告示」という。)の制定
ア 石綿等が使用されているおそれが高いものとして厚生労働大臣が定める工作物(事前調査の結果等の報告対象)について規定したこと。
イ 特定工作物告示は、令和4年4月1日から施行することとしたこと。
(4) 石綿障害予防規則第6条の2第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物(令和2年厚生労働省告示第279号。以下「特定石綿含有成形品告示」という。)の制定
ア 石綿含有成形品のうち特に石綿等の粉じんが発散しやすいものとして厚生労働大臣が定めるもの(石綿含有成形品を切断等以外の方法により除去する場合の発散防止措置対象)について、石綿等を含有するけい酸カルシウム板第一種としたこと。
イ 特定石綿含有成形品告示は、令和2年10月1日から施行することとしたこと。
第3 細部事項
1 改正省令関係
(1) 改正石綿則
改正石綿則の各条文に係る趣旨、解釈等は以下のとおりであること。なお、以下においては、便宜上、改正省令の全ての規定が施行される令和5年10月1日以降の最終的な条文番号を用いて記載していることに留意すること。
ア 事前調査の対象となる作業等(第3条第1項関係)
① 「建築物」及び「工作物」の定義
「建築物」及び「工作物」の定義については、平成17年3月18日付け基発第0318003号(以下「石綿則施行通知」という。)第3の2(1)アにおいて、「「建築物又は工作物」とは、すべての建築物及び煙突、サイロ、鉄骨架構、上下水道管等の地下埋設物、化学プラント等の土地に固定されたものをいうこと。また、「建築物」には、建築物に設ける給水、排水、換気、暖房、冷房、排煙の設備等の建築設備が含まれるものであること。」としていたが、「建築物」と「工作物」の概念をより明確化するため、「建築物」及び「工作物」の定義はそれぞれ以下(ア)及び(イ)のとおりとすること。
(ア) 「建築物」とは、全ての建築物をいい、建築物に設けるガス若しくは電気の供給、給水、排水、換気、暖房、冷房、排煙又は汚水処理の設備等の建築設備を含むものであること。
(イ) 「工作物」とは、(ア)の建築物以外のものであって、土地、建築物又は工作物に設置されているもの又は設置されていたものの全てをいい、例えば、煙突、サイロ、鉄骨架構、上下水道管等の地下埋設物、化学プラント等、建築物内に設置されたボイラー、非常用発電設備、エレベーター、エスカレーター等又は製造若しくは発電等に関連する反応槽、貯蔵設備、発電設備、焼却設備等及びこれらの間を接続する配管等の設備等があること。
なお、建築物内に設置されたエレベーターについては、かご等は工作物であるが、昇降路の壁面は建築物であることに留意すること。
② 事前調査の対象となる作業
事前調査の対象となる作業について、改正省令による改正前の石綿障害予防規則(以下「旧石綿則」という。)第3条第1項においては、「建築物、工作物又は船舶の解体、破砕等の作業(石綿等の除去の作業を含む。)」及び「第10条第1項の規定による石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業」と規定し、石綿則施行通知第3の2(1)イにおいて、「解体、破砕等」の「等」には、改修が含まれるとしていた。しかし、「破砕」は解体又は改修に含まれ得る概念である等、解体、破砕及び改修の概念の区別が明確でなかったこと、旧石綿則第10条第1項に規定する封じ込め又は囲い込みの作業以外の封じ込め又は囲い込みの作業が事前調査の対象となるか明確でなかったことから、第3条第1項の規定において、事前調査の対象となる作業を「建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業」と整理し直し、「封じ込め又は囲い込み」の作業は「改修」の作業に含まれることとしたこと。
③ 事前調査の対象とならない作業
以下に掲げる作業は、石綿等の粉じんが発散しないことが明らかであることから、石綿による健康障害を防止するという石綿障害予防規則の制定目的も踏まえて、建築物、工作物又は船舶の解体等の作業には該当せず、事前調査を行う必要はないものであること。
(ア) 除去等を行う材料が、木材、金属、石、ガラス等のみで構成されているもの、畳、電球等の石綿等が含まれていないことが明らかなものであって、手作業や電動ドライバー等の電動工具により容易に取り外すことが可能又はボルト、ナット等の固定具を取り外すことで除去又は取り外しが可能である等、当該材料の除去等を行う時に周囲の材料を損傷させるおそれのない作業。
(イ) 釘を打って固定する、又は刺さっている釘を抜く等、材料に、石綿が飛散する可能性がほとんどないと考えられる極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業。なお、電動工具等を用いて、石綿等が使用されている可能性がある壁面等に穴を開ける作業は、これには該当せず、事前調査を行う必要があること。
(ウ) 既存の塗装の上に新たに塗装を塗る作業等、現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業。
(エ) 国土交通省による用途や仕様の確認、調査結果から石綿が使用されていないことが確認されたaからkまでの工作物、経済産業省による用途や仕様の確認、調査結果から石綿が使用されていないことが確認されたl及びmの工作物、農林水産省による用途や仕様の確認、調査結果から石綿が使用されていないことが確認されたf及びnの工作物並びに防衛装備庁による用途や仕様の確認、調査結果から石綿が使用されていないことが確認されたoの船舶の解体・改修の作業。
a 港湾法(昭和25年法律第218号)第2条第5項第2号に規定する外郭施設及び同項第3号に規定する係留施設
b 河川法(昭和39年法律第67号)第3条第2項に規定する河川管理施設
c 砂防法(明治30年法律第29号)第1条に規定する砂防設備
d 地すべり等防止法(昭和33年法律第30号)第2条第3項に規定する地すべり防止施設及び同法第4条第1項に規定するぼた山崩壊防止区域内において都道府県知事が施工するぼた山崩壊防止工事により整備されたぼた山崩壊防止のための施設
e 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第2条第2項に規定する急傾斜地崩壊防止施設
f 海岸法(昭和31年法律第101号)第2条第1項に規定する海岸保全施設
g 鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)第9条に規定する鉄道線路(転てつ器及び遮音壁を除く)
h 軌道法施行規則(大正12年内務省令運輸省令)第9条に規定する土工(遮音壁を除く)、土留壁(遮音壁を除く)、土留擁壁(遮音壁を除く)、橋梁(遮音壁を除く)、隧道、軌道(転てつ器を除く)及び踏切(保安設備を除く)
i 道路法(昭和27年法律第180号)第2条第1項に規定する道路のうち道路土工、舗装、橋梁(塗装部分を除く。)、トンネル(内装化粧板を除く。)、交通安全施設及び駐車場(①(イ)の工作物のうち建築物に設置されているもの、特定工作物告示に掲げる工作物を除く。)
j 航空法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)第79条に規定する滑走路、誘導路及びエプロン
k 雪崩対策事業により整備された雪崩防止施設
l ガス事業法(昭和29年法律第51号)第2条第13項に規定するガス工作物の導管のうち地下に埋設されている部分
m 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成9年通商産業省令第11号)第3条に規定する供給管のうち地下に埋設されている部分
n 漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)第3条に規定する漁港施設のうち基本施設(外郭施設、係留施設及び水域施設)
o 自衛隊の使用する船舶(防熱材接着剤、諸管フランジガスケット、電線貫通部充填・シール材及びパッキンを除く)
イ 事前調査の方法(第3条第2項及び第9項関係)
① 事前調査は、解体等対象建築物等の全ての材料(以下「調査対象材料」という。)について、設計図書等の文書を確認した上で、実際に調査対象材料が当該文書のとおりであるかどうかを確認するために、目視による確認も義務づけたものであること。
② 設計図書等の文書を確認する方法には、調査対象材料に直接印字されている製品番号を確認する方法も含まれること。
③ 解体等対象建築物等の構造上目視による確認することが困難な調査対象材料については、解体等の作業を進める過程で、目視により確認することが可能となったときに、改めて事前調査を行わなければならないこと。
④ 事前調査において、調査対象材料に石綿等が使用されていないと判断する方法は、次の(ア)又は(イ)のいずれかの方法によること。なお、設計図書にノンアスベスト材料等、石綿等が使用されていない建材であることの記載がある場合であっても、労働安全衛生法令の適用対象となる石綿等の含有率は数次にわたり変更されているため、材料の製造当時は法令適用対象外として石綿等の使用がないと判断されていたとしても、現行の法令では適用対象となる場合もあることから、設計図書の記載のみをもって石綿等が使用されていないと判断することはできないこと。
(ア) 調査対象材料について、製品を特定し、その製品のメーカーによる石綿等の使用の有無に関する証明や成分情報等と照合する方法。
(イ) 調査対象材料について、製品を特定し、その製造年月日が平成18年9月1日以降(第3条第3項第4号から第8号までに掲げるガスケット又はグランドパッキンにあっては、それぞれ当該各号に掲げる日以降)であることを確認する方法。
ウ 目視により確認する方法等以外の方法による事前調査(第3条第3項関係)
① 第1号関係
過去において既に建築物についての石綿等の使用の有無に関する調査が行われている場合や、プラントの定期検査等により石綿等の使用の有無に関する調査が行われている場合等であって、これらの調査方法が、第3条第2項第1号及び第2号に規定する方法に相当する場合は、これらの調査結果の記録を確認することで足り、改めて事前調査を行う必要はないことを規定したものであること。
② 第2号関係
船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律(平成30年法律第61号)第3条第1項に規定する有害物質一覧表は、船舶に使用されている材料について、石綿等を含む有害物質の使用の有無及び使用箇所を調査し、記録したものであること、並びにこの一覧表の内容が船舶の状態と一致するものであることを国土交通大臣が確認したものが同法第4条第1項に規定する有害物質一覧表確認証書又は同法附則第5条第2項に規定する有害物質一覧表確認証書に相当する証書であることから、これらの証書の交付を受けている船舶は、適切に事前調査が行われているものとみなすことが可能であるため、当該船舶については、有害物質一覧表を確認することで足り、改めて事前調査を行う必要はないことを規定したものであること。
③ 第3号関係
石綿等は、一部のガスケット又はグランドパッキンを除き、平成18年9月1日以降は製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用することが禁止されている(法第55条並びに労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第16条第4号及び第9号)ことから、建築物、工作物又は船舶の着工日(日本国外で製造された船舶については日本に輸入された日)が同日以降であることを設計図書等で確認することをもって事前調査を行ったものとみなすことができることとしたものであること。
④ 第4号から第8号まで関係
平成18年9月1日に石綿等の製造等が禁止された後も、一定期間当該禁止措置が猶予されていた一部のガスケット又はグランドパッキンが使用されている可能性がある工作物又は潜水艦については、そのガスケット又はグランドパッキンの設置日が、禁止措置が猶予されていた期間が終了した日以降であることを設計図書等で確認することをもって事前調査を行ったものとみなすことができることとしたものであること。
エ 事前調査を実施するために必要な知識を有する者(第3条第4項関係)事前調査が不十分なまま工事が行われる事例が認められたことから、建築物については、必要な知識を有する者として厚生労働大臣が定めるものによる事前調査の実施を義務付けたものであること。なお、本規定の要件を満たす者が十分な人数確保されるまでの期間を勘案して、本規定の施行は令和5年10月1日としているが、本規定の施行前であっても、事前調査は必要な知識を有する者に行わせることが望ましいこと。
オ 石綿等が使用されているものとみなすことができる範囲(第3条第5項関係)
事前調査において石綿等の使用の有無が明らかとならなかった場合において、吹き付けられた材料についても、石綿等が使用されているものとみなして法及びこれに基づく命令に規定する措置を講じることにより、分析調査を行うよりも費用負担が軽減される又は工期が短縮できる場合があることから石綿等が使用されているものとみなすことができる範囲に追加したものであること。なお、石綿等が使用されているとみなして措置を講じるに当たっては、例えば吹き付けられた材料であれば、クロシドライトが吹き付けられているものとみなして措置を講じる等、必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい措置を講じなければならないこと。
カ 分析調査を実施するために必要な知識及び技能を有する者(第3条第6項関係)
石綿等の分析に関する知識や技能が十分でない者によって分析が行われている事例が認められたことから、必要な知識及び技能を有する者として厚生労働大臣が定めるものによる分析調査の実施を義務付けたものであること。なお、本規定の要件を満たす者が十分な人数確保されるまでの期間を勘案して、本規定の施行日は令和5年10月1日としているが、本規定の施行前であっても、分析調査は必要な知識及び技能を有する者に行わせることが望ましいこと。
キ 事前調査等の結果の記録の作成及び保存(第3条第7項関係)
① 1つの解体等の作業について事前調査又は分析調査(以下「事前調査等」という。)が複数回行われる場合も考えられることから、事前調査等の結果の記録の保存の起算日は、解体等の作業に係る全ての事前調査を終了した日又は分析調査を終了した日のいずれか遅い日としたこと。
② 3年間の保存期間は、行政による事業者に対する指導において関係書類として活用すること、事業者が適切に石綿ばく露防止対策を講じる動機付けとすること等を目的とし、設定したものであること。
③ 第3条第3項第1号又は第2号の方法により事前調査を行ったときは、それぞれ同項第1号の相当する調査の結果の記録又は同項第2号の有害物質一覧表(以下「相当調査記録等」という。)を確認した日を調査終了日とすることとし、同条第7項各号の事前調査の結果として記録すべき事項について、相当調査記録等に記載があるものについては、当該相当調査記録等の写しを保存すれば足りること。
④ 第3条第3項第3号から第8号までに掲げる方法により事前調査を行ったときは、それぞれ当該各号の規定に基づき設計図書等の文書で確認した日を調査終了日とすること。なお、確認した方法を明確にするため、確認した文書の写しを保存しておくことが望ましい。
⑤ 第3条第7項各号の事前調査等の結果として記録すべき事項について、次の内容が含まれること。
(ア) 第2号関係
「工事の概要」は、当該工事の内容が分かる簡潔な記載で足り、工事の名称から工事の内容が分かる場合は、工事の名称と同じ記載で差し支えないこと。
(イ) 第5号関係
「建築物、工作物又は船舶の構造」には、鉄筋コンクリート造等の主要構造に関する情報、階数や延べ床面積等の規模に関する情報、建築物にあっては建築基準法に規定する耐火建築物又は準耐火建築物の該当の有無を含むこと。
(ウ) 第6号関係
「事前調査を行った部分(分析調査を行った場合は、分析のための資料を採取した場所を含む。)」については、当該部分が容易に特定できる方法で記録する必要があり、図面等に表示して記録することが望ましいこと。なお、解体作業において事前調査を行った場合には、解体の対象となる建築物、工作物又は船舶の全ての部分であることを記録すれば足りること。
(エ) 第7号関係
「事前調査の方法」については、第3条第2項又は同条第3項各号のうち、いずれの方法により事前調査を行ったかを記録すること。なお、同条第5項ただし書により石綿等が使用されているものとみなした場合は、その旨記録すること。
「分析調査の方法」については、分析調査者告示第2条第3号のイからニまでに掲げる方法のうち、いずれの方法により分析調査を行ったかを記録すること。
(オ) 第8号関係
「事前調査において石綿が使用されていないと判断した根拠」には、イ④の(ア)又は(イ)のいずれの方法により判断したのか及びその判断根拠として使用した書類等が含まれること。
分析調査の結果の記録には、分析調査によって明らかとなった石綿等の含有率が含まれること。なお、分析調査によって明らかとなった石綿等の種類も記録することが望ましいこと。
(カ) 第9号関係
「第3条第4項又は第6項の厚生労働大臣が定める者であることを証明する書類」は、登録規程第10条に規定する修了証明書の写しその他事前調査者告示各号に定める者又は分析調査者告示第1条各号に定める者であることを証明する書類をいうこと。なお、本規定の施行は令和5年10月1日であることに留意すること。
ク 作業場における掲示及び事前調査等の記録の写しの備え付け(第3条第8項関係)
① 作業場に掲示すべき事項のうち、第3条第7項第6号に規定する事項の概要は、事前調査等を行った部分がおおよそ特定できる情報を簡潔にまとめたもので差し支えないこと。具体的には、例えば、建築物全体を調査した場合は「建築物全体」といった掲示で足りることとし、建築物の一部の部屋を調査した場合は階数及び部屋名等の当該部屋を特定できる情報を掲示することで足りること。
② 作業場に掲示すべき事項のうち、第3条第7項第8号に規定する事項の概要は、様式第1号の裏面の記載内容のうち、「石綿使用の有無」の欄及び「石綿なしと判断した根拠」の欄の記載内容と同程度の内容を掲示することで足りること。
③ 事前調査等の結果の記録を作業場に備え付けることについては、作業を実施する労働者がいつでも記録を確認することができるようにする趣旨で規定したものであることから、解体等の作業が行われている間は、常に備え付けておく必要があるものであること。
ケ 作業計画を定めるべき作業(第4条関係)
第3条第1項の規定において、事前調査の対象となる作業を明確化したことに伴い、作業計画を定めるべき作業の規定方法を見直したものであること。
コ 事前調査の結果等の報告(第4条の2関係)
① 規定の趣旨
事前調査を適切に行わずに解体等の作業を行った事例、吹き付けられた石綿等があるにもかかわらず法第88条第3項に基づく届出を行わないまま作業を行った事例、必要な石綿ばく露防止のための措置を講じずに作業を行った事例等が認められたことから、事業者に対して、事前調査及び必要な石綿ばく露防止のための措置の適切な実施を促すとともに、行政が建築物及び工作物の解体工事及び改修工事を把握し、必要な指導を行うことができるようにすることを目的として、一戸建て住宅も含めた建築物の解体工事の大部分及びこれと同規模の改修工事並びに水回りの工事等の石綿等の発散のリスクが高い改修工事が対象となるよう、一定規模以上の建築物及び特定の工作物の解体工事及び改修工事について、石綿の使用の有無に関わらず、事前調査の結果等の報告を義務づけたものであること。
なお、船舶については、石綿等が使用されている可能性が高いものの特定になお時間を要することから、第4条の2の報告対象には含めていないこと。
② 報告対象工事の基準の考え方(第1項関係)
建築物については、石綿等の製造等が禁止された平成18年9月1日以降に着工したものを除き、全ての建築物に石綿等が使用されている可能性が高いため、限定を設けずに一定規模以上の全ての建築物の解体工事又は改修工事を報告の対象としたこと。
工作物については、これまでの各種調査の結果等から石綿等が使用されている可能性が高いものが特定されていることから、報告の対象とする工事は、石綿が使用されているおそれが高い工作物としたこと。
なお、建築物の改修工事及び工作物の解体・改修工事は、床面積に換算することが困難なものがあるため、工事の請負代金の額を基準としたこと。
③ 建築物の解体工事及び改修工事の定義(第1項第1号及び第2号関係)
建築物の解体工事とは、建築物の壁、柱及び床を同時に撤去する工事をいうこと。建築物の改修工事とは、建築物に現存する材料に何らかの変更を加える工事であって、建築物の解体工事以外のものをいうこと。
④ 請負代金の額の考え方(第1項及び第4項関係)
第4条の2第1項第2号及び第3号に規定する請負代金の額は、材料費も含めた工事全体の請負代金の額であること。
請負代金の額は、消費税も含む額であること。
建築物と工作物が混在するものの解体工事又は改修工事を一括で請け負っている場合は、次の(ア)又は(イ)のいずれか1つでも該当する場合には報告を行わなければならないものであること。
(ア) 建築物の解体工事に係る部分の床面積の合計が80m2以上である場合
(イ) 建築物及び工作物の両方を含めた工事全体の請負代金の額が100万円以上である場合
第4条の2第4項は、同一の事業者が工事を分割して請け負うことで報告対象とならないようにするような行為を防止するための規定であること。
⑤ 報告しなければならない事項(第2項関係)
報告事項のうち、第3条第7項第5号の建築物又は工作物の構造の概要は、鉄筋コンクリート造等の主要構造に関する情報、階数や延べ床面積等の規模に関する情報、建築物にあっては建築基準法に規定する耐火建築物又は準耐火建築物の該当の有無を簡潔に記載すること。
報告事項のうち、第3条第7項第9号の厚生労働大臣が定める者であることを証明する書類の写しの概要は、事前調査等を実施した者の氏名及び講習実施機関の名称を記載すること。
⑥ 報告主体(第5項関係)
解体工事又は改修工事は、多くの請負事業者が関わることが想定されるが、同一の工事について、複数の事業者に別々に報告を行わせることは効率的でないことから、当該工事の元請事業者に対し、下請事業者に係る内容も含めて報告することを義務づけたものであること。
⑦ 報告の方法
(ア) 報告対象となる工事が非常に多いこと、報告を行う事業者の利便性を確保する必要があること等から、厚生労働省が開発・運用する簡易な電子システムを利用して所轄労働基準監督署に報告しなければならないこととしたこと。このため、本規定の施行日は、電子システムの構築に必要な期間を勘案して、令和4年4月1日とされていることに留意すること。
(イ) 建築物と工作物が混在するものの解体工事又は改修工事を一括で請け負っている場合は、建築物及び工作物の両方を含めた工事全体についてまとめて報告を行うことで差し支えないこと。
(ウ) 労働基準監督署に報告を行った後に、解体工事又は改修工事を進める過程で新たに事前調査を行っていない材料が見つかり、当該材料について改めて事前調査等を行った場合は、当該事前調査等の結果等を追加で労働基準監督署に提出する必要があること。
(エ) 工作物の中には、数年毎等定期的に同一の部分について修理等の改修を行うものがあるが、平成18年9月1日以降に着工した工作物については、石綿等が使用されていないことが明らかであるにもかかわらず、定期的な改修の度に工事内容や着工日等について労働基準監督署に報告させることは合理的でないことから、平成18年9月1日以降に着工した工作物について、同一の部分を定期的に改修する場合は、改正省令施行後の改修工事について一度報告を行えば、同一部分の改修工事については、その後の報告は不要であること。
サ 作業の届出(第5条関係)
① 第3条第1項の規定において、事前調査の対象となる作業を明確化したことに伴い、届出を行うべき作業の規定方法を見直したものであり、届出対象を変更するものではないこと。
② 改正省令第3条の規定により、これまで本規定に基づき届出の対象となっていた作業については、法第88条第3項の規定に基づく計画届の対象に変更となるため、改正省令の施行後は作業の届出は不要となるが、計画届は届出を行うべき業種が建設業及び土石採取業に限定されており、これら以外の業種に属する事業者についても対象作業を行う場合に届出を行わせる必要があることから、本規定を削除せずに残しているものであること。
シ 吹き付けられた石綿等及び石綿含有保温材等の除去等に係る措置(第6条関係)
① 隔離等の措置の対象作業(第1項関係)
建築物又は船舶に吹き付けられた石綿等の除去の作業を行う場合には、石綿等の粉じんの発生量が多いことから、隔離等の措置を講じることを義務づけているが、工作物に吹き付けられた石綿等の除去の作業についても、同様に石綿等の粉じんの発生が想定される。また、労働者の就業場所における吹き付けられた石綿等が損傷、劣化等により石綿等の粉じんを発散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときに封じ込め又は囲い込みの作業を行う場合も、同様の措置を講じることを義務づけているが、当該場合以外の吹き付けられた石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業についても、同様に石綿等の粉じんの発生が想定されることから、これらについても本条の措置を講ずべき作業の対象としたこと。
② 同等以上の効果を有する措置(第1項ただし書関係)
第6条第1項ただし書の同等以上の効果を有する措置には、次に掲げる措置を全て満たしたグローブバッグ工法が含まれること。
(ア) グローブバッグにより、吹き付けられた石綿等又は石綿含有保温材等の除去作業を行おうとする箇所を覆い、密閉すること。
(イ) 除去作業を開始する前に、スモークテスト又はそれと同等の方法で密閉の状況を点検し、漏れがあった場合はふさぐこと。
(ウ) 吹き付けられた石綿等又は石綿含有保温材等を除去する前に、これらの材料を湿潤な状態のものとすること。
(エ) 除去作業が終了した後、密閉を解く前に、吹き付けられた石綿等又は石綿含有保温材等を除去した部分を湿潤化すること。
(オ) 除去作業が終了した後、グローブバッグを取り外すときは、あらかじめ内部の空気をHEPAフィルタを通して抜くこと。
(カ) グローブバッグから工具等を持ち出すときは、あらかじめ付着した物を除去し、又は梱包すること。
③ 集じん・排気装置の点検(第2項第6号関係)
集じん・排気装置について、設置後に足場が当たって接合部が外れた等の理由により、石綿等の粉じんが隔離の外に漏れる事例が認められたことから、集じん・排気装置に変更を加えたときは、排気口からの石綿等の粉じんの漏洩の有無を点検しなければならないこととしたこと。
石綿等の粉じんの漏洩の有無の点検は、集じん・排気装置の排気口で、粉じん相対濃度計(いわゆるデジタル粉じん計をいう。)、繊維状粒子自動測定機(いわゆるリアルタイムモニターをいう。)又はこれらと同様に空気中の粉じん濃度を迅速に計測できるものを使用すること。
④ 負圧の点検(第2項第7号関係)
作業の中断により作業者が前室から一斉に出たときに、負圧が維持されなくなり、石綿等の粉じんが隔離の外に漏れる事例が認められたことから、作業を中断したときは、前室が負圧に保たれていることを点検しなければならないこととしたこと。作業が複数日に亘って行われる場合は、最終日を除く日の作業が終了したときも、作業を中断したときに該当すること。なお、点検のタイミングは、作業を中断して作業者の前室からの退出が完了した時点で行う必要があること。
負圧の点検は、集じん・排気装置を稼働させた状態で、前室への出入口で、スモークテスター若しくは微差圧計(いわゆるマノメーターをいう。)又はこれに類する方法により行うこと。
⑤ 隔離解除前の確認(第3項関係)
隔離を解いた後に、吹き付けられた石綿等又は石綿含有保温材等の取り残しがある事例が認められたことから、石綿等に関する知識を有する者が、除去が完了したことを確認した後でなければ、隔離を解いてはならないこととしたこと。
石綿等に関する知識を有する者とは、第3条第4項に規定する厚生労働大臣が定める者(建築物に係る除去作業に限る。)又は当該除去作業に係る石綿作業主任者であること。
除去が完了したことの確認は目視によることとし、分析は必要ないこと。
ス 石綿含有成形品の除去に係る措置(第6条の2関係)
① 石綿含有成形品の定義
石綿含有成形品とは、成形された材料で石綿が使用されているものをいい、石綿含有保温材等は含まないものであること。
② 切断等の方法による除去の原則禁止(第1項関係)
一戸建て住宅等にも多く使用されている石綿を含有するスレートボードやけい酸カルシウム板第1種等の石綿含有成形品を、家屋の解体やリフォーム等を行う際に、十分に湿潤な状態のものとしないまま切断、破砕等の方法により除去し、石綿等の粉じんが飛散する事例が認められたことから、切断等以外の方法により除去することを原則としたこと。なお、切断等以外の方法とは、ボルトや釘等を撤去し、手作業で取り外すこと等をいうこと。
③ 切断等以外の方法による除去が困難な場合(第1項関係)
切断等以外の方法により石綿含有成形品の除去作業を実施することが技術上困難なときには、当該材料が下地材等と接着材で固定されており、切断等を行わずに除去することが困難な場合や、当該材料が大きく切断等を行わずに手作業で取り外すことが困難な場合等が含まれること。
④ 厚生労働大臣が定める物を切断等の方法により除去する場合の措置(第2項関係)
(ア) 第1号に規定する「隔離」は、負圧に保つことを求めるものではないこと。
(イ) 第2号に規定する「常時湿潤な状態に保つ」とは、除去作業を行う前に表面に対する散水等により湿潤な状態にするだけでは切断等に伴う石綿等の粉じんの発散抑制措置としては十分ではないことから、切断面等への散水等の措置を講じながら作業を行うことにより、湿潤な状態を保つことをいうこと。
セ 石綿含有仕上げ塗材の電動工具による除去に係る措置(第6条の3関係)
① 規定の趣旨
石綿含有仕上げ塗材は、吹付け工法により施工されているものは、吹き付けられた石綿等として、除去等の作業を行う場合は旧石綿則第6条の規定の適用対象の作業とされるが、ローラー塗り工法等の吹付け工法以外の工法で施工されたものは、同条の適用対象とはされていなかった。しかし、施工の方法によって除去等の作業を行うときの石綿等の粉じんの発散の程度に違いはないこと、特定の電動工具を用いて石綿含有仕上げ塗材を除去する場合は飛散性が高いが、吹き付けられた石綿等や石綿含有保温材等を除去する場合ほど石綿等の粉じんは発散しないことから、施工の方法によらず、電動工具を用いて石綿含有仕上げ塗材を除去するときは、ビニルシート等で隔離すること等の措置を義務づけたものであること。
② 石綿含有仕上げ塗材の定義
石綿含有仕上げ塗材とは、セメント、合成樹脂等の結合材、顔料、骨材等を主原料とし、主として建築物の内外の壁又は天井を、吹付け、ローラー塗り、こて塗り等によって立体的な造形性を持つ模様に仕上げる材料としてJIS A 6909に定められている建築用仕上塗材のうち、石綿等が使用されているものをいうこと。
③ 電動工具を使用して除去する作業の定義
第6条の3に規定する電動工具を使用して除去する作業とは、ディスクグラインダー又はディスクサンダーを用いて除去する作業をいい、高圧水洗工法、超音波ケレン工法等により除去する作業は含まれないこと。
④ 常時湿潤な状態に保つ方法
石綿含有仕上げ塗材を電動工具を使用して除去する場合に必要となる「常時湿潤な状態に保つ」措置の方法として、剥離剤を使用する方法も含まれること。
ソ 発注者の責務等(第8条第2項関係)
① 第3条第3項各号の規定により、事前調査の方法として、過去に行われた事前調査に相当する調査の結果の記録を確認する方法、有害物質一覧表を確認する方法等、発注者が所持していると考えられる情報に基づいて事前調査を行うことが可能となったことから、これらの方法による事前調査が適切に行われるよう、発注者は所持する情報を事前調査を実施する事業者に提供すること等の配慮をしなければならないこととしたこと。
② 第35条の2第1項の規定により、事業者は、作業計画に従って石綿使用建築物等解体等作業を行わせたことについて、写真等により記録を作成することが義務づけられたが、写真等の撮影を行うときは、当該石綿使用建築物等を管理する発注者の許可や協力が必要となる場合が考えられることから、写真等による記録の作成が適切に行われるよう、発注者は配慮しなければならないこととしたこと。
タ 建築物の解体等の作業等の条件(第9条関係)
解体等の作業においては、石綿等の使用の有無を調査する前に施工も含めた工事の注文がなされ、その後に工事を受注した事業者が事前調査等を行った結果石綿等の使用が明らかになった場合においても、注文者が契約金額等の変更をせず、その結果工事費用を受注金額内に収めるために工事を施工する事業者が必要な石綿ばく露防止対策を講じないといった事例が認められたことから、注文者に対して、事前調査等の結果を踏まえて作業等の方法、費用又は工期等について、法及びこれに基づく命令の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならないことを明確化したものであること。
チ 石綿等の切断等の作業等に係る措置(第13条関係)
① 湿潤な状態のものとする方法(第1項関係)
湿潤な状態のものとする方法には、散水による方法、封じ込めの作業において固化剤を吹き付ける方法のほか、除去の作業において剥離剤を使用する方法も含まれること。なお、「湿潤な状態のものとする」とは、作業前に散水等により対象となる材料を一度湿潤な状態にすることだけではなく、切断面等への散水等の措置を講じながら作業を行うことにより、湿潤な状態を保つことをいうこと。
② 石綿等を湿潤な状態のものとすることが著しく困難な場合の措置(第1項ただし書き関係)
石綿等の切断等の作業において石綿等の粉じんの発散を抑制するための方法として、石綿等を湿潤な状態のものとすること以外に、除じん性能を有する電動工具を用いる方法も一定の発散抑制効果があることが確認されていることから、石綿等を湿潤な状態のものとすることが著しく困難なときは、除じん性能を有する電動工具の使用その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置を講ずるよう努めなければならないこととしたこと。
除じん性能を有する電動工具の使用以外の石綿等の粉じんの発散を防止する措置には、作業場所を隔離することが含まれること。
③ 石綿等の切断等の作業(第1項各号関係)
第6条の2及び第6条の3の規定の対象となる作業については、同各条において除去対象の材料を常時湿潤な状態に保つことを義務づけたことから、第1号及び第2号の規定から除外したものであること。
旧石綿則第13条第1項第3号の規定は、第3条第1項の規定において、事前調査の対象となる作業を明確化したことに伴い、第13条第1項第2号に規定する石綿使用建築物等解体等作業に含まれることと整理したこと。
ツ 作業の記録(第35条関係)
① 規定の趣旨
第3条第7項の規定による事前調査等の結果の記録の保存及び第35条の2第1項の規定による作業計画に基づく作業の実施状況の写真等による記録の保存が義務づけられたが、これらの記録は作業従事者及び周辺作業従事者の石綿等によるばく露状況を把握し、健康管理に資するものであることから、これらの概要を40年間保存すべき作業記録の記録事項に追加したものであること。
② 事前調査等の結果の概要
記録事項に追加した事前調査及び分析調査の結果の概要は、様式第1号に規定する内容と同様のものを保存すれば足り、所轄労働基準監督署に報告した事前調査結果等の結果の写しを保存することで差し支えないこと。
③ 作業の実施状況の写真等による記録の概要
記録事項に追加した作業の実施状況の写真等による記録の概要は、写真等をそのまま保存する必要はなく、保護具の使用状況も含めて作業の実施状況について、文章等による簡潔な記載による記録を保存すれば足りること。
なお、第3項の周辺作業従事者に係る記録に追加する保護具等の使用状況は、当該周辺作業従事者の保護具等の使用状況であること。
テ 作業計画による作業の記録(第35条の2関係)
① 規定の趣旨
事前調査を適切に行わずに解体等の作業を行った事例、吹き付けられた石綿等があるにもかかわらず法第88条第3項に基づく届出を行わないまま作業を行った事例、必要な石綿ばく露防止のための措置を講じずに作業を行った事例等が認められた一方、解体工事や改修工事は工事終了後に改正石綿則に基づく措置が適切に実施されたかどうかを行政等が確認することは困難である。このため、工事終了後においても、改正石綿則に基づく措置が適切に実施されたかどうかを確認することができるよう、作業計画に基づく作業について、写真その他実施状況を確認できる方法により記録し、保存しなければならないこととしたこと。
なお、3年間の保存期間は、行政による事業者に対する指導において関係書類として活用すること、事業者が適切に石綿ばく露防止対策を講じる動機付けとすること等を目的とし、設定したものであること。
② 写真等により記録すべき事項(第1項関係)
写真その他実施状況を確認できる方法による記録は、改正石綿則に基づき講ずべき措置の実施状況についての記録であり、次のものが含まれること。
(ア) 事前調査等を行った部分及びその部分における石綿等の使用の有無の概要に関する掲示、関係者以外の立入禁止の表示、喫煙・飲食の禁止の表示及び次に掲げる事項の掲示の状況が確認できる写真等による記録。
i 石綿等を取り扱う作業場である旨
ii 石綿の人体に及ぼす作用
iii 石綿等の取扱い上の注意事項
iv 使用すべき保護具
(イ) 隔離の状況、集じん・排気装置の設置状況、前室・洗身室・更衣室の設置状況、集じん・排気装置の排気口からの石綿等の粉じんの漏えいの有無の点検結果、前室の負圧に関する点検結果、隔離を解く前に除去が完了したことを確認する措置の実施状況及び当該確認を行った者の資格が確認できる写真等による記録(第6条第1項各号に掲げる作業を行う場合に限る。)。
(ウ) 作業計画に示されている作業の順序に基づいて、同計画に示されている作業の方法、石綿等の粉じんの発散を防止し、又は抑制する方法及び作業を行う労働者への石綿等の粉じんのばく露を防止する方法のとおりに作業が行われたことが確認できる写真等による記録。
上記記録には、第13条の規定に基づく湿潤な状態のものとする措置(第6条の2第2項又は第6条の3に規定する作業を行うときは常時湿潤な状態に保つ措置)の実施状況及び第14条の規定に基づく呼吸用保護具等の使用状況が確認できる写真等による記録が含まれること。
なお、同様の作業を行う場合においても、作業を行う部屋や階が変わるごとに記録する必要があること。
(エ) 除去等を行った石綿等の運搬又は貯蔵を行う際の容器又は包装、当該容器等への必要な事項の表示及び保管の状況が確認できる写真等による記録。
③ 記録の方法(第1項関係)
記録に当たっては、撮影場所、撮影日時等が特定できるように記録する必要があること。また、写真その他実施状況を確認できる方法には、動画により記録する方法が含まれること。
④ 記録の作成に必要な者の隔離された作業場への立ち入り(第2項関係)
第6条第2項第1号の規定及び第6条の2第2項第1号(第6条の3の規定により準用する場合を含む。)の規定による隔離が行われている作業場には、当該作業に従事する者(直接作業を行う者だけでなく、作業の指揮を行う石綿作業主任者、第6条第3項の規定に基づき除去が完了したことを確認する者及び作業場の管理を行う者を含む。)以外を立ち入らせることはできないが、第8条第2項及び第35条の2第1項の規定により、第35条の2第1項の記録を作成する者及び当該記録の作成に対し配慮を行う石綿使用建築物等解体等作業を行う仕事の発注者の労働者を立ち入らせる必要がある場合が考えられることから、これらの者に限り、作業に従事する者ではなくても、呼吸用保護具の着用等の必要な措置を講じた上で、立ち入らせることができることとしたこと。
(2) 労働安全衛生規則の一部改正(改正省令第3条関係)
耐火建築物及び準耐火建築物に吹き付けられている石綿等の除去等の作業以外の作業であって、旧石綿則第6条第1項に規定する作業については、石綿等の粉じんが発散するおそれが高いことから、隔離及び負圧の維持等の措置を義務づけているが、当該作業において隔離等の措置が不十分な事例が認められたことから、当該作業についても、労働基準監督署長があらかじめ工事の計画を確認し、必要に応じて工事の差し止め又は計画の変更を命じるとともに、必要な勧告又は要請を行うことができるよう、旧石綿則第5条の作業の届出の対象としていたものについて、新たに法第88条第3項の届出の対象に加えたものであること。
(3) 施行期日(改正省令附則第1条関係)
改正省令は、労働者が石綿にばく露しないようにするための対策を可能な限り早期に実施する観点から、一定の周知期間を設けた上で、令和3年4月1日に施行することとしたが、附則第1条各号に掲げる規定については、以下の理由により、それぞれ各号に規定する日を施行期日としていること。
ア 第1号関係(第3の1(1)ス関係)
石綿へのばく露防止措置を強化する石綿含有成形品に係る規定については、一定の周知期間を確保しつつ、労働者の健康確保の観点から、他の規定に先んじて令和2年10月1日に施行することとしたこと。
イ 第2号関係(第3の1(1)コ関係)
事前調査の結果等の報告は、厚生労働省が開発・運用する簡易な電子システムを利用して所轄労働基準監督署に報告しなければならないこととしたことから、当該電子システムの開発期間を見込み、令和4年4月1日に施行することとしたこと。
ウ 第3号関係(第3の1(1)エ、カ、キ⑤(カ)、コ⑤(厚生労働大臣が定める者に係る部分に限る。)及びシ⑤(厚生労働大臣が定める者に係る部分に限る。)関係)
事前調査を実施するために必要な知識を有する者については、建築物の解体等の作業を行う可能性のある事業者の数等から推計すると、必要な人数の確保のために、今後30~40万人程度が建築物石綿含有建材調査者講習を受講する必要があると考えられることから、当該受講に必要な期間として3年程度を見込み、令和5年10月1日に施行することとしたこと。
分析調査を行う者についても、石綿等の分析の業務に従事している者のうち、分析調査を実施するために必要な知識及び技能を有すると認められる者は一部にとどまっていることから、必要な人数の確保のために必要な期間として3年程度を見込み、令和5年10月1日に施行することとしたこと。
(4) 経過措置(改正省令附則第2条から第6条関係)
改正省令の施行日(附則第1条各号に掲げる規定については当該各号に規定する施行日)前に開始される解体等の作業等については、改正石綿則の関係規定は適用しない(旧石綿則に規定があるものについては、当該規定を引き続き適用する)こととしたものであること。
2 関連告示関係
(1) 事前調査者告示
ア 第1号に規定する「一戸建ての住宅及び共同住宅の住戸の内部」は、一戸建ての住宅及び共同住宅(長屋を含む。以下同じ。)の住戸の専有部分を指し、共同住宅の住戸の内部以外の部分(ベランダ、廊下等共用部分)及び店舗併用住宅は含まれないこと。
イ 第1号に規定する「同等以上の能力を有すると認められる者」は、令和5年9月30日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き同協会に登録されている者であること。
(2) 分析調査者告示
ア 第1条第2号に規定する「同等以上の知識及び技能を有すると認められる者」は、次の①から④までに掲げる者であること。
① 公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業」により認定されるAランク又はBランクの認定分析技術者
② 一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修(建材定性分析エキスパートコース)」の修了者
③ 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「建材中のアスベスト定性分析技能試験(技術者対象)合格者」
④ 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「アスベスト分析法委員会認定JEMCAインストラクター」
イ 分析調査を実施する者は、第2条第3号に掲げる方法のうち、実技講習を修了した方法による分析のみを実施することができるものであること。
(3) 特定工作物告示
ア これまでの各種調査の結果等から、石綿等が使用されている可能性が高いと考えられる工作物を規定したものであること。
イ 各号に規定する工作物は、それぞれ以下のとおりであること。
(ア) 配管設備(第4号関係)
配管設備には、農業用パイプラインを含み、水道管は含まないこと。
(イ) 送電設備(第11号関係)
送電設備のケーブルは、延焼防止用の塗料やシール材に石綿等が使用されていたという報告があるため、対象に含めていること。
(ウ) トンネルの天井板(第12号関係)
トンネルには鉄道施設(鉄道事業法(昭和61年法律第92号)第8条第1項に規定する鉄道施設をいい、軌道法(大正10年法律第76号)による軌道施設を含む。)は含まないこと。
(4) 特定石綿含有成形品告示
けい酸カルシウム板第1種については、切断、破砕等を行った場合に比較的高濃度の石綿等の粉じんが飛散するが、湿潤な状態にし、隔離を行うことにより、隔離の外側への石綿等の粉じんの飛散は抑制できるとの調査結果が環境省の調査において得られていることから、特に石綿等の粉じんが発散しやすいものとして厚生労働大臣が定めるものとして、けい酸カルシウム板第1種を規定したものであること。