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通達:粉じん作業を行う坑内作業場に係る粉じん濃度の測定及び評価の方法等の施行について

 

粉じん作業を行う坑内作業場に係る粉じん濃度の測定及び評価の方法等の施行について

令和2年7月20日基発0720第1号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

粉じん作業を行う坑内作業場に係る粉じん濃度の測定及び評価の方法等(令和2年厚生労働省告示第265号。以下「告示」という。)が、令和2年7月20日に告示され、令和3年4月1日から施行することとされたところである。その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。

 

第1 制定の趣旨及び概要等

1 制定の趣旨

今般、トンネル建設工事の作業環境を将来にわたってよりよいものとする観点から、粉じん障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第128号)により改正された粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)において、粉じん作業を行う坑内作業場(ずい道等の内部において、ずい道等の建設の作業を行うものに限る。)の切羽に近接する場所の空気中の粉じんの濃度等の測定及び評価並びにその測定結果に応じた有効な電動ファン付き呼吸用保護具の使用等が規定されたところである。

告示は、粉じん則第6条の3第2項、第6条の4第2項及び第27条第2項の規定に基づき、粉じんの濃度等の測定及び評価並びに電動ファン付き呼吸用保護具の使用について規定したものである。

2 告示の概要

(1) 粉じんの濃度等の測定及び評価関係

ア 切羽に近接する場所の空気中の粉じんの濃度等の測定に係る試料空気の採取は次のいずれかの方法によることとし、それぞれの方法に係る試料採取機器の設置位置等、試料空気の採取の時間及び測定の方法等を規定したこと。

① 定置式の試料採取機器を用いる方法

② 作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器を用いる方法

③ 車両系機械(動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できる機械をいう。以下同じ。)に装着されている試料採取機器を用いる方法

イ 粉じんの濃度の測定の結果の評価の方法及び粉じん中の遊離けい酸の含有率の測定方法を規定したこと。

(2) 呼吸用保護具の使用関係

粉じん則第27条第2項に規定する電動ファン付き呼吸用保護具は、当該電動ファン付き呼吸用保護具に係る要求防護係数を上回る指定防護係数を有するものでなければならないことを規定するとともに、要求防護係数の計算方法及び電動ファン付き呼吸用保護具の種類に応じた指定防護係数を規定したこと。

(3) 施行日

告示は、令和3年4月1日から施行すること。

 

第2 細部事項

1 第1条(粉じんの濃度等の測定及び評価)関係

(1) 第1項関係

ア 本項は、最新の技術的な知見等に基づき、切羽に近接する場所の粉じんの濃度等の測定の方法を定めたものであること。

イ 本項第1号イからハまでに定める方法のうち、2以上の方法を同時に実施しても差し支えないこと。また、定期的に行う測定ごとに異なる方法による測定を行うことも差し支えないこと。

ウ 本項第2号イの「ずい道等の両側にそれぞれ設置」する方法には、トンネル壁面に沿って設置した三脚に試料採取機器を固定する方法に加え、トンネルの壁面にアンカーを打ち、当該アンカーに試料採取機器を固定する方法及びトンネル壁面沿いの配管や支保工等に試料採取機器を固定する方法が含まれること。

エ 本項第2号イのただし書は、測定を実施する労働者の安全確保の観点から、発破、機械掘削及びずり積み等の作業中は、切羽から20メートル以内に試料採取機器を設置することを要しないこととする趣旨であること。

オ 本項第3号本文の規定により試料採取機器を装着する労働者は、「切羽に近接する場所において作業に従事する」労働者であることから、作業工程ごとに労働者が入れ替わる場合は、それぞれの作業工程において切羽に近接する場所で作業に従事する労働者を2人以上選び、それぞれに試料採取機器を装着する必要があること。

カ 本項第4号本文の規定により試料採取機器を装着する車両系機械は、「切羽に近接する場所において作業に使用されている」ものであることから、作業工程ごとに車両系建設機械が入れ替わる場合は、それぞれの作業工程において切羽に近接する場所で作業する車両系機械を2台以上選び、それぞれに試料採取機器を装着する必要があること。なお、ずり出しに使用するトラックは、切羽から坑外へ頻繁に移動することから、「切羽に近接する場所において作業に使用されている」車両系機械には該当しないこと。

キ 本項第4号本文の「適切な箇所」には、落下物による試料採取機器の損傷を防止できる箇所が含まれること。なお、切羽に近接する場所における空気中の粉じんの濃度を適切に測定する必要があることから、運転用キャビン等外部環境から隔離されている箇所は含まれないこと。

ク 本項第4号ただし書の「適切な間隔をおいた箇所」は、車両系機械に装着されている2以上の試料採取機器の間隔を可能な限り広くすることを求める趣旨であること。

ケ 本項第5号の「一連の作業」は、ずい道等建設工事の1サイクル(掘削作業、ずり積み等作業、ロックボルトの取付等の穿孔作業及びコンクリート等の吹付作業)をいう趣旨であること。発破の作業を行う場合においては、労働災害の防止及び試料採取機器の損傷を防ぐ趣旨から、発破の作業を行った時から当該発破による粉じんが適当に薄められるまでの間は労働者及び試料採取機器を安全な場所に退避させ、発破の影響がなくなり作業を再開するときに、試料採取機器を稼働させることを規定したものであること。

コ 本項第6号イ及びロの「分粒装置」(試料空気中の粉じんの分粒のため、試料採取機器に接続する装置をいう。以下同じ。)は、レスピラブル(吸入性)粉じん(分粒特性が4マイクロメートル50%カットである粉じん)を適切に分粒できることが製造者又は輸入者により明らかにされているものであること。

サ 本項第6号ロにおいて使用される測定機器(相対濃度計)は、ポンプの流量が分粒装置を適切に機能させることができるものであること。また、同号ロの「厚生労働省労働基準局長が示す数値」については、別途示すこと。

(2) 第2項関係

本項の「平均値」は、算術平均によるものであること。

2 第2条(呼吸用保護具の使用)及び別表関係

(1) 第1項関係

ア 本項は、粉じんにさらされる労働者の健康障害の防止のために十分な性能を有する電動ファン付き呼吸用保護具を切羽に近接する場所で粉じん作業に従事する労働者に使用させるため、粉じん則第27条第2項に規定する「有効な」電動ファン付き呼吸用保護具の要件を規定する趣旨であること。

イ 切羽に近接する場所における粉じん作業は、身体負荷が大きい作業が多いことから、電動ファン付き呼吸用保護具の規格(平成26年厚生労働省告示第455号)に規定する大風量形を使用するべきであること。

(2) 第2項関係

ア 本項は、測定された空気中の遊離けい酸の濃度を遊離けい酸に係るばく露の基準値(E)で除したものを要求防護係数として規定する趣旨であること。

イ 本項のEの値である0.025ミリグラム毎立方メートルは、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が勧告する結晶質シリカのばく露限界値(TLV)の値を採用したものであること。

(3) 第3項及び別表関係

ア 本項本文及び別表第1は、電動ファン付き呼吸用保護具の種類に応じて、指定防護係数の値を規定する趣旨であること。指定防護係数は、電動ファン付き呼吸用保護具の種類ごとに、実際の作業における測定又はそれと同等の測定の結果により得られた防護係数(呼吸用保護具の外側の測定対象物質の濃度を当該呼吸用保護具の内側の測定対象物質の濃度で除したもの。以下同じ。)の値の集団を統計的に処理し、当該集団の下位5%に当たる値として決定された値であること。

イ 本項ただし書及び別表第2は、別表第1に規定する指定防護係数の例外を規定する趣旨であること。具体的には、別表第2に掲げる電動ファン付き呼吸用保護具の種類のうち、特定の電動ファン付き呼吸用保護具の防護係数が、別表第2に規定する指定防護係数の値よりも高い値を有することが製造者により明らかにされているものについては、別表第2に規定する値を指定防護係数とすることを認める趣旨であること。