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通達:労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行等について

 

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行等について

令和2年4月22日基発0422第4号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第148号。以下「改正政令」という。)、特定化学物質障害予防規則及び作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第89号。以下「改正省令」という。)及び作業環境評価基準等の一部を改正する告示(令和2年厚生労働省告示第192号。以下「改正告示」という。)が、令和2年4月22日に公布及び告示され、令和3年4月1日から施行することとされたところである。その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。

 

第1 改正の趣旨及び概要等

1 改正の趣旨

労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)では、化学物質であって、製造の許可、譲渡時の情報提供等の規制対象とすべきものについて政令で定めることとされている。また、当該規制の対象となっていない化学物質についても、労働者に健康障害を生じさせるおそれのあるものについては、労働者の当該物質へのばく露の状況等の情報に基づき、必要な規制を行っている。

今般、新たに「溶接ヒューム」及び「塩基性酸化マンガン」について、労働者に神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになったことから、労働者の化学物質へのばく露防止措置や健康管理を推進するため、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)、作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号。以下「評価基準」という。)、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号。以下「測定基準」という。)等について、所要の改正を行ったものである。

2 改正政令の概要

(1) 特定化学物質の追加

特定化学物質(第2類物質)に、「溶接ヒューム」を追加するとともに、「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」の「(塩基性酸化マンガンを除く。)」を削除したこと。この結果、溶接ヒューム及び塩基性酸化マンガンに係る作業又は業務について、新たに作業主任者の選任(法第14条関係)、作業環境測定の実施(法第65条関係。塩基性酸化マンガンに係る業務に限る。)及び有害な業務に現に従事する労働者に対する健康診断の実施(法第66条第2項前段関係)が必要となること。

(2) 溶接ヒュームに係る作業環境測定の適用除外

特定化学物質(第2類物質)に適用される規制のうち、作業環境測定を行うべき作業場については、溶接ヒュームに係る作業を行う屋内作業場を除いたこと。

3 改正省令の概要

(1) 特化則(溶接ヒュームへのばく露防止)関係

ア 金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し、又はガウジングする作業その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業(以下「金属アーク溶接等作業」という。)を行う屋内作業場については、当該金属アーク溶接等作業に係る溶接ヒュームを減少させるため、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講じることを義務付けたこと。

イ 金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき、又は当該作業の方法を変更しようとするときは、あらかじめ、当該金属アーク溶接等作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う測定により、当該作業場について、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定することを義務付けたこと。

ウ イによる空気中の溶接ヒュームの濃度の測定の結果に応じて、換気装置の風量の増加その他必要な措置を講じることを義務付けたこと。

エ ウの措置を講じたときは、その効果を確認するため、イの作業場について、イの測定により、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定することを義務付けたこと。

オ 金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させることを義務付けたこと。

カ 金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において当該金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、当該作業場についてのイ及びエによる空気中の溶接ヒュームの濃度の測定の結果に応じて、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させることを義務付けたこと。

キ カの呼吸用保護具(面体を有するものに限る。)を使用させるときは、1年以内ごとに1回、定期に、カの呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認し、その結果を3年間保存することを義務付けたこと。

ク イ又はエによる測定を行ったときは、その都度、必要な事項を記録し、これを当該測定に係る金属アーク溶接等作業を行わなくなった日から起算して3年を経過する日まで保存することを義務付けたこと。

ケ 金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、当該作業を行う屋内作業場の床等を、水洗等によって容易に掃除できる構造のものとし、水洗等粉じんの飛散しない方法によって、毎日1回以上掃除することを義務付けたこと。

コ 事業者からオ又はカの呼吸用保護具の使用を命じられたときは、これを使用することを労働者に義務付けたこと。

(2) 特化則(健康診断)関係

金属アーク溶接等作業に係る業務に従事する労働者について、雇入れ又は当該業務への配置換えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断の実施を義務付けたこと。さらに、健康診断の結果、他覚症状が認められる者等で、医師が必要と認めるものについては、医師による追加の健康診断の実施を義務付けたこと。

4 改正告示の概要

(1) 評価基準関係

管理濃度に係る「物の種類」について、「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」を「マンガン及びその化合物」に改めるとともに、その管理濃度を「マンガンとして0.05mg/m3」に引き下げたこと。

(2) 特化則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能(昭和50年労働省告示第75号)関係

局所排気装置の具備すべき性能に係る「物の種類」について、「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」を「マンガン及びその化合物」に改めるとともに、その抑制濃度を「マンガンとして0.05mg/m3」に引き下げたこと。

(3) 測定基準関係

個人サンプリング法(作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う作業環境測定に係るデザイン及びサンプリング)による作業環境測定の対象となる「低管理濃度特定化学物質」に「マンガン及びその化合物」を追加したこと。また、特定化学物質の濃度の測定方法等に係る「物の種類」について、「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」を「マンガン及びその化合物」に改めるとともに、その試料採取方法について、測定基準第2条第2項の規定による要件に該当する分粒装置を用いるろ過捕集法としたこと。

5 施行日、準備行為及び経過措置

ア 改正政令、改正省令及び改正告示は、令和3年4月1日に施行することとしたこと。

イ 改正政令については、改正後の令第6条第18号に掲げる作業(改正前の令第6条第18号に掲げる作業に該当するものを除く。)については、令和4年3月31日までの間は、当該作業の作業主任者を選任することを要しないこととしたこと。

ウ 改正省令の3(1)イの適用については、事業者は、令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間、厚生労働大臣の定めるところにより、金属アーク溶接等作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う測定により、当該金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場について、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定しなければならないこととしたこと。

エ 改正省令の3(1)イの屋内作業場については、令和4年3月31日までの間は、改正省令の3(1)ウ、エ、カからクまで及びコ(3(1)カの呼吸用保護具の使用に係る部分に限る。)は、適用しないこととしたこと。

オ その他所要の経過措置を改正省令及び改正告示に設けることとしたこと。

 

第2 細部事項

1 改正政令関係

(1) 令別表第3関係

ア 塩基性酸化マンガンのばく露による有害性については、塩基性酸化マンガンを含む溶接ヒューム及び溶解フェロマンガンヒュームのばく露による神経機能障害が多数報告され、その多くには、ばく露量―作用関係が認められた。さらに、塩基性酸化マンガンに関する特殊健康診断において、一定の有所見者(2.4%)が認められた。これらを踏まえ、塩基性酸化マンガンを特定化学物質(第2類物質)に追加したこと。

イ 溶接ヒュームのばく露による有害性については、含有されるマンガンによる神経機能障害に加え、溶接ヒュームのばく露による肺がんのリスクが上昇していることが多数報告され、ばく露量―作用関係も大規模疫学研究等で確認された。このため、溶接ヒュームとマンガン及びその化合物の毒性、健康影響等は異なる可能性が高いことから、溶接ヒュームを独立した特定化学物質(第2類物質)として追加したこと。

(2) 令第21条関係

金属アーク溶接等では、溶接不良を避けるため溶接点での風速制限があり、実態調査において、仮に管理濃度(溶接ヒューム中のマンガン濃度)を0.05mg/m3とした場合、第3管理区分に相当する作業場所が6割程度を占めたこと等を踏まえると、仮に局所排気装置等の設置が可能である場合であっても、全ての事業場において、局所排気装置等を用いた作業環境改善措置のみによって溶接ヒューム中のマンガン濃度を0.05mg/m3(レスピラブル粒子。以下同じ。)まで一律に低減させることは困難と見込まれる。このため、溶接ヒューム等を製造し、又は取り扱う屋内作業場については、作業環境測定及びその結果に基づく措置の実施を義務付けないこととし、改正省令において、有効な呼吸用保護具の使用等の溶接ヒュームのばく露を防止するための措置を義務付けたこと。

2 改正省令関係

(1) 特化則第38条の21第1項関係

ア 本項の「金属アーク溶接等作業」には、作業場所が屋内又は屋外であることにかかわらず、アークを熱源とする溶接、溶断、ガウジングの全てが含まれ、燃焼ガス、レーザービーム等を熱源とする溶接、溶断、ガウジングは含まれないこと。なお、自動溶接を行う場合、「金属アーク溶接等作業」には、自動溶接機による溶接中に溶接機のトーチ等に近付く等、溶接ヒュームにばく露するおそれのある作業が含まれ、溶接機のトーチ等から離れた操作盤の作業、溶接作業に付帯する材料の搬入・搬出作業、片付け作業等は含まれないこと。

イ 本項の「全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置」の「同等以上の措置」には、プッシュプル型換気装置及び局所排気装置が含まれること。

(2) 第38条の21第2項関係

ア 本項で規定する空気中の溶接ヒューム濃度の測定は、屋内作業場における作業環境改善のための測定でもあることから、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に限定して義務付けたこと。

イ 本項の「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」には、建築中の建物内部等で当該建築工事等に付随する金属アーク溶接等作業であって、同じ場所で繰り返し行われないものを行う屋内作業場は含まれないこと。

ウ 本項の金属アーク溶接等作業の方法を「変更しようとするとき」には、溶接方法が変更された場合、及び、溶接材料、母材や溶接作業場所の変更が溶接ヒュームの濃度に大きな影響を与える場合が含まれること。

エ 本項及び本条第4項で規定する測定は、第一種作業環境測定士、作業環境測定機関等、当該測定について十分な知識及び経験を有する者により実施されるべきであること。

(3) 第38条の21第3項関係

ア 本項の「その他必要な措置」には、溶接方法、母材若しくは溶接材料等の変更による溶接ヒューム発生量の低減、集じん装置による集じん又は移動式送風機による送風の実施が含まれること。

イ 本項の規定は、本条第2項の測定結果がマンガンとして0.05mg/m3を下回る場合、又は、同一事業場における類似の金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、当該作業場に係る本条第2項の測定結果に応じて換気装置の風量の増加等の措置を十分に検討した場合であって、その結果を踏まえた必要な措置をあらかじめ実施しているときに、さらなる改善措置を求める趣旨ではないこと。

(4) 第38条の21第5項関係

本項は、作業場所が屋内又は屋外であることにかかわらず、金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときには、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させることを義務付ける趣旨であること。

(5) 第38条の21第7項関係

ア 本項に規定する呼吸用保護具の装着の定期的な確認は、面体と顔面の密着性等について確認する趣旨であることから、「呼吸用保護具(面体を有するものに限る。)」という規定は、フード形、フェイスシールド形等の面体を有しない呼吸用保護具を本項の確認の対象から除く趣旨であること。

イ 本項の規定により記録の対象となる確認の「結果」には、確認を受けた者の氏名、確認の日時及び装着の良否が含まれ、当該確認を外部に委託して行った場合は、受託者の名称等が含まれること。

(6) 第38条の21第9項関係

本項の「水洗等」の「等」には、超高性能(HEPA)フィルター付きの真空掃除機による清掃が含まれるが、当該真空掃除機を用いる際には、粉じんの再飛散に注意する必要があること。

(7) 別表第3及び別表第4関係

ア 別表第3第62号及び別表第4第51号に規定する業務に係る健康診断は、作業場所が屋内又は屋外であることにかかわらず、医師による特殊健康診断を行うことを義務付ける趣旨であること。

イ 別表第3第62号及び別表第4第51号に規定する健康診断の項目は、マンガン及びその化合物に係る健康診断の項目と基本的に同一であること。

ウ 金属アーク溶接等作業については、従来、じん肺法(昭和35年法律第30号)に基づくじん肺健康診断が義務付けられていることに留意すること。なお、同法の解釈(昭和53年4月28日付け基発第250号)では、「常時粉じん作業に従事する」とは、労働者が業務の常態として粉じん作業に従事することをいうが、必ずしも労働日の全部について粉じん作業に従事することを要件とするものではないと示されていること。当該健康診断と同様、特化則に基づく健康診断に係る対象者についても、作業頻度のみならず、個々の作業内容や取扱量等を踏まえて個別に判断する必要があること。

(8) その他

溶接ヒューム及び塩基性酸化マンガンを特定化学物質(管理第2類物質)に位置付けることに伴い、以下の作業管理等に関する規定等が適用となること。

ア 安全衛生教育(雇入れ時・作業内容変更時)(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第35条)

イ ぼろ等の処理(特化則第12条の2)

ウ 不浸透性の床(特化則第21条)

エ 関係者以外の立入禁止措置(特化則第24条)

オ 運搬貯蔵時の容器等の使用等(特化則第25条)

カ 特定化学物質作業主任者の選任(特化則第27条)

キ 休憩室の設置(特化則第37条)

ク 洗浄設備の設置(特化則第38条)

ケ 喫煙又は飲食の禁止(特化則第38条の2)

コ 有効な呼吸用保護具の備え付け等(特化則第43条及び第45条)

3 改正告示関係

(1) 評価基準関係

評価基準別表第30号のマンガン及びその化合物に係る管理濃度は、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)及び欧州委員会(EC)科学委員会の提案理由書及びそれらに引用されている文献等を踏まえ、マンガンとして0.05mg/m3としたこと。

(2) 測定基準関係

ア 測定基準第10条第5項の改正は、マンガン及びその化合物に係る作業環境測定を行う際のデザイン及びサンプリングとして、従来のものに加え、作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う作業環境測定に係るデザイン及びサンプリング(個人サンプリング法)によることができることを規定した趣旨であること。

イ 測定基準別表第1のマンガン及びその化合物の項の中欄に規定する「第2条第2項の規定による要件に該当する分粒装置」とは、レスピラブル粒子を捕集できる分粒装置付きの試料採取機器であって、すでに粉じんに係る作業環境測定で使用されているものと同様のものであること。