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労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針の改正について
令和元年7月1日基発0701第3号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(平成11年労働省告示第53号。以下「指針」という。)は、令和元年7月1日に告示された令和元年厚生労働省告示第54号により改正され、同日から適用することとされたところである。
ついては、下記事項に留意の上、労働安全衛生マネジメントシステムの普及に遺漏のないようにされたい。
記
第1 指針改正の趣旨
指針は、事業者がPDCAサイクルにより継続的に行う自主的な安全衛生活動を促進するための仕組を定めるもので、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「則」という。)第24条の2の規定に基づき厚生労働大臣が公表している。
一方、労働安全衛生マネジメントシステム(以下「システム」という。)の国際規格であるISO45001を翻訳した日本産業規格(JIS Q 45001)が平成30年9月に制定され、システムに従って行う措置の実施単位である「組織」の概念に、企業、その一部又はそれらの組合せが含まれることが示された。また、同時に制定されたJIS Q 45100には、従来の指針において取組が求められている事項を含め、安全衛生計画の作成などに当たって参考とできる安全衛生活動、健康確保の取組等の具体的項目が明示された。
このような国際的な動きや近年の安全衛生上の課題を踏まえて指針の内容を一部見直し、事業者が指針に基づくシステムに従って行う措置の実施単位について、一の事業場だけでなく、法人が同一である複数の事業場を一の単位としてより柔軟に実施できるようにすること、安全衛生計画に健康確保の取組を追加すること等、システムに従って行う措置の適切な実施を促進することを目的として、指針の改正を行ったものである。
第2 細部事項
1 指針第4条(適用)関係
システムに従って行う措置を実施する単位として、小売業や飲食業といった第三次産業などの多店舗展開型企業をはじめとする様々な業態・形態において導入されることを想定し、法人が同一である複数の事業場を併せて一の単位とすることができることとしたこと。
2 指針第7条(体制の整備)関係
法人が同一である複数の事業場を一の単位としてシステムを運用する場合、当該運用の単位全体を統括管理する者を配置することが必要であることから、当該者をシステム各級管理者として位置付けるものとしたこと。
また、システムが第三次産業を含む幅広い産業において運用されることを想定し、システム各級管理者が属する事業実施部門には、製造、建設、運送、サービス等があるとしたこと。
3 指針第8条(明文化)関係
第4条の改正により、一の事業場だけでなく、法人が同一である複数の事業場を一の単位としてシステムを運用できることとされたことから、当該システムの運用の単位を文書に明確に定めることとしたこと。
4 指針第10条(危険性又は有害性等の調査及び実施事項の決定)関係
労働安全衛生法等の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)により化学物質等による危険性又は有害性等の調査等が義務化されたことを踏まえ、第1項の「危険性又は有害性等を調査する手順」の策定及び第2項の「労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置」の決定に当たっては、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第57条の3第3項の規定に基づく「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成27年9月18日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号)に従うことを追加したこと。
5 指針第12条(安全衛生計画の作成)関係
近年、労働者の心身の健康の確保・増進の重要性が高まっていることから、安全衛生計画に含める事項として、健康の保持増進のための活動の実施に関する事項並びに健康教育の内容及び実施時期に関する事項を追加したこと。
(1) 第2項第3号の「健康の保持増進のための活動の実施に関する事項」には、事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和63年9月1日健康保持増進のための指針公示第1号)及び労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号)に基づき実施される職場体操、ストレッチ、腰痛予防体操、ウォーキング、メンタルヘルスケア等の取組があること。
(2) 第2項第4号の「健康教育」には、生活習慣病予防、感染症予防、禁煙、メンタルヘルス等に係る教育があること。
第3 その他の留意事項
1 ISO45001(JIS Q 45001)は箇条3.3において、組織(箇条3.1)の管理下で労働する又は労働に関わる活動を行う者として「働く人(Worker)」を定義し、ボランティアや経営者も含まれるとしている。この点について、指針は、則第24条の2に基づくものであることから、従前のとおり事業場における安全衛生の水準の向上を図ることを目的とし、労働者の範囲についても引き続き労働安全衛生法令に定められるものであること。
2 指針第5条、第7条、第11条及び第13条の「労働者」の範囲は、システムを運用する単位の労働者であり、「その他の関係者」の範囲は、当該システムを運用する単位の状況に応じて事業者が決定するものであること。
3 指針第9条の「安全衛生計画の実施状況、システム監査の結果等」の「等」には、特定された危険源又は有害性等の調査結果、教育の実施状況、労働災害、事故等の発生状況等のほか、システムの見直し結果が含まれること。
4 指針第12条第2項で定める安全衛生計画に含める事項については、JIS Q 45100の附属書Aが参考となること。
5 指針第12条第2項第2号の「日常的な安全衛生活動」には、日々繰り返して実施される活動として、危険予知活動(KYT)、4S活動、ヒヤリ・ハット事例の収集及びこれに係る対策の実施、安全衛生改善提案活動、健康づくり活動等があるほか、時期を定めて行う活動として、安全衛生に関する大会等の啓発行事、危険の見える化活動、安全衛生診断の受診等があること。
6 則第87条の措置(則第87条の2に基づく労働基準監督署長の認定を受けた事業場が適合すべき措置)として、指針に従って事業者が自主的活動を行う場合、当該活動については、則第87条の6による更新を受けるまでの期間中、なお従前の例によること。
また、指針第4条による適用の単位の如何によらず、則第87条の2に基づく認定は、事業場ごとに行われること。