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通達:3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策の徹底について

 

3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策の徹底について

平成30年10月19日基安労発1019第1号・基安化発1019第1号

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長・化学物質対策課長通知)

 

標記については、平成28年9月21日付け基安発0921第2号「3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策について」(以下「部長通知」という。)及び平成28年9月29日付け基安労発0929第1号、基安化発0929第1号「3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタンの製造・取扱事業場に対する調査等の具体的方法について」(以下「課長通知」という。)により、関係事業場に対する指導等について指示したところである。

課長通知に基づく調査の結果、同通知に記載の化成品等の製造事業場以外の事業場で、膀胱がんの病歴のある労働者等が多数いるMOCAの製造・取扱事業場は確認されていないが、複数の事業場で、MOCA取扱作業従事歴のある労働者等に膀胱がん有病歴者がいることが確認された。これらの事業場の中には、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)の規定に基づき義務付けられている作業環境測定や特殊健康診断を実施していない等の法令違反が認められた事業場もあった。

また、MOCAに係る作業環境測定について、より正確な濃度の見積もりが可能となる方法が確認された。

これらを踏まえ、MOCAの製造・取扱事業場に対し、部長通知により当分の間実施を要請していた事項を含め、改めて、下記のとおり健康障害の防止対策の徹底を求めるとともに、当面の作業環境測定の方法について周知することとしたので、各都道府県労働局においては、管内の関係事業者団体、MOCA取扱事業者に対する周知を徹底するとともに、必要に応じて指導を行うこと。

なお、本省において、別添のとおり関係団体に対して再周知の依頼を行っているので、了知されたい。

また、課長通知1(3)ウに基づき、MOCAの製造・取扱事業場において、膀胱がん有病歴者(退職者を含む。)がいることを新たに把握した場合は、把握後速やかに、本省担当官宛に調査結果を報告すること。

おって、現在もMOCAの製造・取扱いを行っている事業場(現在取扱事業場)は下記1から4まで、また、現在はMOCAの製造・取扱いはなく過去にMOCAの製造・取扱いを行っていた事業場(過去取扱事業場)は下記2及び3が関係事項であること。

 

1 特化則に基づくばく露防止措置等の徹底(現在取扱事業場)

MOCAの製造・取扱いを現在行っている事業場においては、特化則に基づくばく露防止措置を徹底すること。

その際、設備的な対策のみならず、関係労働者の作業方法や保護具の着用・管理等についても必要な対策を講じること。また、経気道ばく露に限らず、保護手袋の着用や休憩室への入室の際の付着物の除去など、経皮ばく露や経口ばく露の防止措置も講じること。

2 特化則に基づく健康管理の徹底等(現在取扱事業場、過去取扱事業場)

現にMOCAを取り扱っている労働者及び過去に取り扱ったことのある労働者であって現在も雇用しているものに対して、平成29年4月から施行された改正後の特化則に基づく特殊健康診断(膀胱がん等の尿路系の障害(腫瘍等)を予防・早期発見するための項目が追加されたもの)の実施を徹底すること。

なお、MOCAを取り扱ったことのある労働者であって既に退職しているものについては、今後、専門家の意見を聴取し、必要な措置を講じる予定としているが、それまでの間、特化則に基づく特殊健康診断と同様の内容の検査の受検を勧奨すること。

3 特化則に基づく記録の保存期間の延長(現在取扱事業場、過去取扱事業場)

膀胱がん有病歴者の中には、MOCAへのばく露から膀胱がんの発症まで30年以上経過していると考えられる者も確認されていることから、MOCAを現在又は過去に製造し、若しくは取り扱ったことのある事業場においては、特化則に基づくMOCAに関する作業の記録、作業環境測定の評価の記録、特殊健康診断の結果の記録について、法令上の保存期間(30年間)を経過後も、引き続き、保存すること。

4 当面の作業環境測定方法(現在取扱事業場)

MOCAの製造・取扱事業場に実施が義務付けられている作業環境測定について、より正確に濃度を見積もることが可能となる方法が確認されたことから、本省においては、MOCAの測定法の見直しのための検討を進めている。ついては、当分の間、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に基づく従来のろ過捕集方法に加え、別途示す米国労働安全衛生庁(OSHA)が示す方法を参考とした測定も併用することが望ましいこと。

 

[別添]

○3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策の徹底について

平成30年10月19日基安労発1019第2号・基安化発1019第2号

((別紙各団体の長)あて厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長・化学物質対策課長通知)

平成28年に、化成品等の製造事業場で、複数の労働者等に膀胱がんの病歴又は所見があることが明らかになり、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の協力も得て作業実態や発生原因について調査を行ったところ、これらの労働者等のうち多くは3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を取り扱う作業に従事していたことが判明したことから、平成28年9月21日付け基安発0921第1号「3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策について」又は平成28年10月7日付け基安発1007第2号「3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策について」により、貴団体に対し、MOCAによる健康障害を防止するため、法令等の改めての徹底及び緊急の措置の実施を要請したところです。

今般、要請から約2年が経過していること、別添参考資料のとおり、上記事業場以外の事業場においても、MOCAを取り扱ったことのある労働者等に膀胱がん有病歴者がいることが把握されていること、MOCAは特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)の対象物質ですが、これらの事業場の中には、特化則の規定に基づき義務付けられている作業環境測定や特殊健康診断を実施していない等の法令違反が認められた事業場もあったこと、MOCAに係る作業環境測定について、より正確な濃度の見積もりが可能となる方法が確認されたことから、改めて下記のとおり健康障害の防止対策の徹底を要請したいと思いますので、貴会関係事業場に対して改めて周知いただきますようお願いいたします。

なお、現在もMOCAの製造・取扱いを行っている事業場(現在取扱事業場)は下記1から4まで、現在の製造・取扱いはなく過去にMOCAの製造・取扱いを行っていた事業場(過去取扱事業場)は下記2及び3について、実施をお願いするものです。

1 特化則に基づくばく露防止措置等の徹底(現在取扱事業場)

MOCAの製造・取扱いを現在行っている事業場においては、特化則に基づくばく露防止措置を徹底すること。

その際、設備的な対策のみならず、関係労働者の作業方法や保護具の着用・管理等についても必要な対策を講じること。また、経気道ばく露に限らず、保護手袋の着用や休憩室への入室の際の付着物の除去状況など、経皮ばく露や経口ばく露の防止措置も講じること。

2 特化則に基づく健康管理の徹底等(現在取扱事業場、過去取扱事業場)

現にMOCAを取り扱っている労働者及び過去に取り扱ったことのある労働者であって現在も雇用しているものに対して、平成29年4月から施行された改正後の特化則に基づく特殊健康診断(膀胱がん等の尿路系の障害(腫瘍等)を予防・早期発見するための項目が追加されたもの)の実施を徹底すること。

なお、MOCAを取り扱ったことのある労働者であって既に退職しているものについては、今後、専門家の意見を聴取し、必要な措置を講じる予定としているが、それまでの間、特化則に基づく特殊健康診断と同様の内容の検査の受検を勧奨すること。

3 特化則に基づく記録の保存期間の延長(現在取扱事業場、過去取扱事業場)

膀胱がん有病歴者の中には、MOCAへのばく露から膀胱がんの発症まで30年以上経過していると考えられる者も確認されたことから、MOCAを現在又は過去に製造し、若しくは取り扱ったことのある事業場においては、特化則に基づくMOCAに関する作業の記録、作業環境測定の評価の記録、特殊健康診断の結果の記録について、法令上の保存期間(30年間)を経過後も、引き続き、保存すること。

4 当面の作業環境測定方法(現在取扱事業場)

MOCAの製造・取扱事業場に実施が義務付けられている作業環境測定について、より正確に濃度を見積もることが可能となる方法が確認されたことから、厚生労働省においては、MOCAの測定法の見直しのための検討を進めている。ついては、当分の間、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に基づく従来のろ過捕集方法に加え、別途示す米国労働安全衛生庁(OSHA)が示す方法を参考とした測定も併用することが望ましいこと。

(参考資料)

MOCAの取扱事業場に関する膀胱がん発症者の調査結果

平成28年9月から、労働基準監督署がMOCAの取扱事業場(過去に取り扱っていた事業場を含む。)に対して聞き取りを行い、MOCAを取り扱ったことがあり、かつ、膀胱がんの病歴のある労働者(退職者を含む。)の人数について調査を実施した。

その結果、これまでに把握されたMOCA取扱経験のある膀胱がん有病歴者の人数は以下のとおり。

なお、労働基準監督署では、調査対象となっているMOCAの取扱事業場について、状況に応じて立入検査を行い、MOCAの健康障害防止対策について必要な指導等を行っている。

1 調査実施事業場数 538事業場

2 膀胱がん有病歴者が把握された事業場及び人数

事業場名

(仮称)

膀胱がん有病歴者

膀胱がん発症時の在職状況

合計

在職中

退職後

A事業場

(平成28年9月に発表した事業場)

2名

7名

9名

B事業場


2名

2名

C事業場


1名

1名

D事業場

1名


1名

E事業場

1名


1名

F事業場

1名

1名

2名

G事業場


1名

1名

合計

5名

12名

17名

注1:本調査は、法令に基づくものではなく、事業者に報告義務があるものではないため、可能な範囲で把握した結果をまとめたもの。

注2:膀胱がん有病歴者が把握された7事業場の業種は、全て製造業。

3 膀胱がん有病歴者17名の膀胱がん診断時又は発症時の年齢

40~49歳 1名

50~59歳 4名

60~69歳 10名

70~79歳 1名

80歳~ 1名

※膀胱がん有病歴者17名は全員男性

[別紙]

送付先団体:

一般社団法人日本化学工業協会 会長

化成品工業協会 会長

日本ウレタン建材工業会 会長

ウレタン原料工業会 会長

全国防水工事業協会 会長

建設業労働災害防止協会 会長

 

[参考1]

○3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)の測定方法について

平成30年10月19日基安化発1019第3号

(公益社団法人日本作業環境測定協会会長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

日頃から安全衛生行政の推進に格段の御理解、御協力を賜り厚くお礼申し上げます。

平成28年に、化成品等の製造事業場で、複数の労働者等に膀胱がんの病歴又は所見があることが明らかになり、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の協力も得て作業実態や発生原因について調査を行ったところ、これらの労働者等のうち多くは3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を取り扱う作業に従事していたことが判明したところです。

今般、上記事業場以外の事業場においても、MOCAを取り扱ったことのある労働者等に膀胱がん有病歴者がいることが把握されたことと併せ、MOCAに係る作業環境測定について、より正確な濃度の見積もりが可能となる方法が確認されたことから、厚生労働省において関係事業者団体等に対して、別添のとおり要請を行っているところです。このため、貴協会におかれましては下記に示す当面の作業環境測定の方法について、傘下の会員に周知いただきますようお願いします。

なお、各登録作業環境測定機関に対しても同旨の要請を実施していることを申し添えます。

また、厚生労働省において作業環境測定方法の見直しについて検討を進めております。

MOCAの製造・取扱事業場に実施が義務付けられている作業環境測定について、より正確に濃度を見積もることが可能となる方法が確認されたことから、当分の間、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に基づく従来のろ過捕集方法に加え、別途示す米国労働安全衛生庁(OSHA)が示す方法を参考とした測定も併用することが望ましいこと。

 

[参考2]

○3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)の測定方法について

平成30年10月19日基安化発1019第4号

(登録作業環境測定機関(3号登録(特定化学物質(金属を除く))機関)あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

日頃から安全衛生行政の推進に格段の御理解、御協力を賜り厚くお礼申し上げます。

平成28年に、化成品等の製造事業場で、複数の労働者等に膀胱がんの病歴又は所見があることが明らかになり、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の協力も得て作業実態や発生原因について調査を行ったところ、これらの労働者等のうち多くは3,3'―ジクロロ―4,4'―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を取り扱う作業に従事していたことが判明したところです。

今般、上記事業場以外の事業場においても、MOCAを取り扱ったことのある労働者等に膀胱がん有病歴者がいることが把握されたことと併せ、MOCAに係る作業環境測定について、より正確な濃度の見積もりが可能となる方法が確認されたことから、厚生労働省において関係事業者団体等に対して、別添のとおり要請を行っているところです。このため、貴機関におかれましては下記に示す当面の作業環境測定の方法について、事業者より要請があった場合、御対応いただきますようお願いします。

なお、厚生労働省において作業環境測定方法の見直しについて検討を進めております。

MOCAの製造・取扱事業場に実施が義務付けられている作業環境測定について、より正確に濃度を見積もることが可能となる方法が確認されたことから、当分の間、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に基づく従来のろ過捕集方法に加え、別途示す米国労働安全衛生庁(OSHA)が示す方法を参考とした測定も併用することが望ましいこと。