img1 img1 img1

◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー  

通達:建築物に係る石綿の事前調査における主な留意点について

 

建築物に係る石綿の事前調査における主な留意点について

平成30年4月20日基安化発0420第1号

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

<編注>本通達の令和2年改正省令第134号(石綿障害予防規則の一部を改正する省令)による改正のそれぞれ規定の施行日(改正事項でないものについては令和2年10月28日)以降は、令和2年10月28日基発1028第1号にて廃止されました。



建築物の石綿等の使用の有無の事前調査については、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)において事業者にその実施を義務づけるとともに、当該事前調査が的確に行われるよう、関係省庁が整備した情報等の周知、石綿の調査に関する官民の資格を有する者による事前調査の実施についての指導啓発を行うほか、有識者による検討等を踏まえ、通知の発出、リーフレット、マニュアル及びテキストの作成を行うなど、累次にわたって施策を見直してきたところである。

今般、これまでに集積された知見を踏まえ、建築物に係る事前調査において石綿含有建材の使用状況を適切かつ有効に把握するための主な留意点を下記の通りまとめたので、周知啓発を図られたい。

併せて、本通達については、別添のとおり、関係事業者等団体の長宛て周知等を依頼したので了知されたい。

 

1 書面調査及び現地調査(目視、設計図書等による調査)

(1) 書面調査

書面調査は、現地調査の効率性を高めるだけでなく、調査対象建築物を理解することにより、石綿建材の把握漏れ防止につながるものであることから、これを省略すべきでないこと。

なお、設計図書や竣工図等の書面は石綿等の使用状況に関する情報を網羅しているものではなく、また、必ずしも建築物の現状を現したものとは限らないことから、書面調査の結果を以て調査を終了せず、石綿等の使用状況を網羅的に把握するため、現地調査を行うこと(2006(平成18)年9月の石綿等の製造等禁止以降に着工した建築物等を除く。)。

(2) 現地調査における石綿含有建材の使用状況の網羅的な把握

建築物の事前調査は、建築物の解体や改修作業等を行うことに伴う、石綿等による労働者の健康障害を防止するために行うためのものである。

このため、調査は、建築物のうち解体や改修作業等を行う部分について、内装や下地等の内側等、外観からでは直接確認できない部分についても網羅して行うこと。

(3) 石綿を含有する可能性のある建材及びその石綿含有の有無の判断

労働安全衛生法令における石綿等の対象含有率は、昭和50(1975)年に石綿の重量が5%を超えるもの、平成7(1995)年に1%を超えるもの、平成18(2006)年9月に0.1%を超えるものとなった。このため、石綿を含有する可能性のある建材について、平成18年9月以前に記載等された情報(裏面情報等)において単に石綿を含有しないとされていること自体を以て、石綿を含有しないものとは扱えないこと。なお、6種類すべての石綿を対象にした情報でない場合は、石綿がないとの証明とならないことはもちろんであること。

石綿を含有する可能性のある建材のうち、現場施工のものや表示(裏面情報等)のない工場生産製品は、一般的に当該材料を特定することは困難であるため、当該材料が石綿を含有しないと明らかにするには分析が必要であること。

なお、石綿を含有する可能性のある建材の種類は、「石綿(アスベスト)含有建材データベース」の「関連情報」や「目で見るアスベスト建材」に例示されているので参考にできること。

(4) 同一と考えられる材料範囲の特定

例えば同一のフロア内・部屋内であっても、建築物等に補修・増改築がなされている場合や建材等の吹付けの色が一部異なる場合等複数回の吹付けや複数業者による施工が疑われるときには、それぞれの範囲ごとに別の材料として、独立して石綿の含有の有無を判断すること。

すなわち、同種類の製品等であっても、ある材料の分析結果や裏面情報等を以て、それとは同一と考えられない範囲の材料について石綿含有の有無の判断を行わないこと(別のものに判断を転用しない)(代表性の適切な判断)。

なお、改修工事等の仕上げでは、表面を同一色に塗装等されることも多く、表面の色が同一であることのみを以て改修が行われていないとの判断は安易に行わず、例えば天井板であれば点検口から裏面確認を行う等、必要な確認を行うこと。

2 試料採取

(1) 工場生産製品を含め、同一と考えられる建材であっても、製造段階におけるバラツキ等により、石綿の含有状況に変動がある場合がある。そのため、石綿則第3条第2項の分析により石綿なしを判定しようとする場合には、非意図的に混入した石綿の有無も確認することが必要であることから、分析方法にかかわらず、同一と考えられる建材の範囲ごとに、原則として3箇所以上から試料を採取すること(変動性・均一性の適切な考慮)。

(2) 採取後における他の試料の混入を防止するため、採取箇所ごとに採取用具は洗浄する等、必要な措置を講じること。なお、目的とする材料に隣接している材料等が分析の際に混入しないよう、試料採取時や運搬時等に留意すること。

3 分析

平成26年3月31日付け基安化発0331第3号「建材中の石綿含有率の分析方法等に係る留意事項について」によること。

4 事前調査における責任分担の明確化及び情報伝達

(1) 事業者は、事前調査が適切に行われるよう、上記1から3までの一連の過程に携わる者の間における責任分担を明確にすべきであること。例えば、①同一と考えられる材料範囲の特定(代表性の適切な判断)、②同一材料範囲のうち試料採取する箇所の選定(変動性・均一性の適切な考慮)について判断を行う者を明確にした上で調査を実施すること。

(2) 特に一部解体や改修の作業について、作業の範囲に応じて調査すべき建築物の範囲が異なってくることから、事業者は、調査すべき範囲を明確にするため、施工責任者等から調査責任者等に対して作業を行う範囲が適切に伝達されるよう必要な指示・依頼等を行うこと。

(3) 事業者は、分析が適切に行われるよう、現地調査ないし試料採取の責任者等から分析者等に対して、採取した建材の種類など、分析を行うに当たって重要な情報が伝達されるよう必要な指示・依頼等を行うこと。

5 調査の記録

(1) 石綿則第3条第1項及び第2項に基づく記録については、石綿含有建材の有無と使用箇所を明確にし、その際、

ア 石綿を含有しないと判断した建材は、その判断根拠を示す

イ 作業者へ石綿含有建材の使用箇所を的確に伝える

ウ 調査の責任分担を明確にする

等について記録として残すことを目的に作成すべきであること。

具体的には、アに関して、石綿を含有しないと判断した建材については、例えばメーカーの石綿非含有証明書、試料採取箇所を示す写真等や分析機関の分析結果報告書を添付すること。

また、ウに関して、①同一と考えられる材料範囲の特定、②同一材料範囲のうち試料採取する箇所の選定について、それぞれ、判断を行った者が特定できるよう記録を作成すること。

(2) 石綿則第3条に基づく調査の記録は、石綿等による労働者の健康障害を防止するためのものであることから、第3条の調査に関して、解体等の作業を伴わなければ確認の困難であった箇所等について、記録をしておくこと。

6 作業計画

石綿則第4条の作業計画は、石綿等による労働者の健康障害を防止するためのものであることから、当該計画において、第3条の調査に関して解体等の作業を伴わなければ確認が困難であった箇所等は、解体等の作業の段階で石綿含有建材の有無を確認するよう作業計画に盛り込むこと。

7 石綿ばく露・飛散防止の措置

現地調査や試料採取など事前調査のための一連の工程は、解体・改修工事全体で見たときに、労働者の石綿ばく露を最小化することを目的に行うものである。したがって、現地調査や試料採取において労働者が石綿にばく露しないようすることが基本である。

そのため、裏面確認等は、できるだけ建材の切断等による取壊しを伴わないよう、照明やコンセントなどの電気設備の取外し等により行うよう努めること。また、試料採取を行ったり、網羅的な調査のために現地調査において切断等による取壊しが必要な場合は、石綿則に基づく呼吸用保護具の着用や湿潤化等の措置を徹底すること。

その他、試料採取したときは、採取痕から粉じんを再飛散させないよう適切な補修の手段を講じること。

8 その他

上記1から7までの具体的留意事項については、厚生労働省の「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル」や「石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル」等を参考にできること。

また、事前調査の関連では、以下のマニュアル等も参考になること。

ア 石綿(アスベスト)含有建材データベース(国土交通省、経済産業省)

http://www.asbestos-database.jp/

イ 目で見るアスベスト建材(第2版)(国土交通省)

http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/01/010425_3_.html

ウ 建築物石綿含有建材調査マニュアル(平成26年11月、国土交通省)

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000053.html

※地方公共団体職員向けに作成されたものだが、参考資料として、石綿に関連する建築規制、石綿が多用されている箇所、見落としやすい石綿建材などの事例を掲載している。

 

[別添]

○建築物に係る石綿の事前調査における主な留意点について

平成30年4月20日基安化発0420第2号

((別記関係団体の長)あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

日頃から労働行政の推進に御理解・御協力を賜り厚く御礼申し上げます。

さて、建築物の石綿等の使用の有無の事前調査については、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)において、建築物の解体・改修等作業を行う労働者を雇用する事業者にその実施を義務づける等の措置を講じているところです。

今般、これまでに集積された知見を踏まえ、建築物に係る事前調査において石綿含有建材の使用状況を適切かつ有効に把握するための主な留意点をとりまとめ、別添の通り都道府県労働局あて指示いたしました。

つきましては、貴団体におかれましても、この趣旨を御理解いただき、この内容等の周知に御協力を賜りますよう御願い申し上げます。

あわせて、事前調査を行う者に対する教育等に当たっては、下記にご留意いただきますよう、お願い申し上げます。

1 建築物に二つと同じ建築物はなく、事前調査を行う者は、過去の経験や建築の知識から類推して調査範囲を絞り込むようなことをせず、建築物や石綿含有建材は多様であるという認識の下、調査に臨むべきであること。

2 一方で、建築の知識無しに調査を的確に行うことは容易でなく、事前調査を行う者は、様々な事例の情報入手に努めるなど、自らの能力向上に不断に取り組むべきであること。

3 事業者は、事前調査を行う者が関係団体の実施する講習を受講する機会を確保する等、その者の知識・能力等の向上を促進すること。

別記

1 安全衛生団体等

独立行政法人 労働者健康安全機構

公益社団法人 日本作業環境測定協会

公益社団法人 日本保安用品協会

公益社団法人 産業安全技術協会

公益社団法人 全国労働衛生団体連合会

一般社団法人 日本労働安全衛生コンサルタント会

公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会

2 労働災害防止団体

中央労働災害防止協会

建設業労働災害防止協会

3 建設業関連団体

一般社団法人 日本建設業連合会

一般社団法人 全国建設業協会

公益社団法人 全国解体工事業団体連合会

一般社団法人 建設産業専門団体連合会

一般社団法人 全国中小建築工事業団体連合会

一般社団法人 住宅生産団体連合会

建設廃棄物協同組合

一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会

建設労務安全研究会

一般社団法人 マンション計画修繕施工協会

一般社団法人 日本住宅リフォーム産業協会

一般社団法人 リノベーション住宅推進協議会

一般社団法人 ベターライフリフォーム協会

一般社団法人 日本塗装工業会

一般社団法人 リフォームパートナー協議会

一般社団法人 全建総連リフォーム協会

一般社団法人 住生活リフォーム推進協会

一般社団法人 JBN・全国工務店協会

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合

日本建築仕上材工業会

一般社団法人 日本左官業組合連合会

一般社団法人 日本鳶工業連合会

日本建築仕上学会

日本室内装飾事業協同組合連合会

一般社団法人 日本塗料工業会

日本窯業外装材協会

一般社団法人日本エレベータ協会

全日本電気工事業工業組合連合会

一般社団法人 日本保温保冷工業会

一般社団法人 日本電設工業協会

一般社団法人 日本空調衛生工事業協会

4 石綿関係等

一般社団法人 日本アスベスト調査診断協会

一般社団法人 JATI協会

一般社団法人 日本繊維状物質研究協会

全国アスベスト適正処理協議会

一般社団法人 建築物石綿含有建材調査者協会

一般財団法人 日本環境衛生センター

一般社団法人 日本環境測定分析協会

5 建築関係等

一般財団法人 日本建築センター

一般財団法人 建材試験センター

一般財団法人 建設業振興基金

公益社団法人 日本建築家協会

公益社団法人 日本建築士会連合会

一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会

一般社団法人 全日本建築士会

公益財団法人 建築技術教育普及センター

特定非営利活動法人 建築技術支援協会

一般財団法人 全国建設研修センター

6 その他

一般社団法人 不動産協会

公益社団法人 全日本不動産協会

一般社団法人 日本ビルヂング協会連合会

公益社団法人 全国産業資源循環連合会

公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター

公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団