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通達:法令名

 

石綿含有建築用仕上塗材の除去等作業における大気汚染防止法令上の取扱い等について

平成29年5月31日基安化発0531第1号

(都道府県労働局労働基準部健康主務課長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

<編注>本通達の令和2年改正省令第134号(石綿障害予防規則の一部を改正する省令)による改正のそれぞれ規定の施行日(改正事項でないものについては令和2年10月28日)以降は、令和2年10月28日基発1028第1号にて廃止されました。



石綿をその重量0.1%を超えて含有する建築用仕上塗材(その下地調整塗材を含む。以下「石綿含有建築用仕上塗材」という。)に関する大気汚染防止法令上の取扱いについて、今般、別添の通り、環境省水・大気環境局大気環境課長から都道府県等大気環境主管部局長あて通知(以下「環境省通知」という。)がなされたので了知されたい。

なお、指導に当たっては、下記に留意されたい。

 

1 石綿含有建築用仕上塗材について、建築物等に吹付け工法により施工されたものは、使用目的その他の条件を問わず、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)の「吹き付けられた石綿等」に該当するが、石綿含有建築用仕上塗材の除去等を行う際には、「吹き付けられた石綿等」か否かにかかわらず、石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアルにも留意しつつ、除去時等の石綿発散の程度等に応じた適切なばく露防止対策を講じるよう指導を行うこと。

2 環境省通知の別紙の4.では、環境汚染防止の観点から、「剥離剤を使用する工法では、ジクロロメタン等の有害性の高い化学物質を使用しないよう、剥離剤の選択にも十分留意する必要がある。」とされている。剥離剤については、中毒による労働災害も散見されるところであり、化学物質の代替に当たっては、中毒をはじめとした労働災害を防止するため、危険有害性が不明な化学物質を危険有害性が低いものとして扱うことは避け、危険有害性が相対的に低いことが明らかな化学物質を選択するとともに、いずれの化学物質を使用する場合も、危険及び健康障害を防止するため、リスクに応じて必要な対策を講じるよう指導を行うこと。

3 吹付け工法により施工された石綿含有建築用仕上塗材の除去等に当たって労働安全衛生法第88条第3項(昭和47年法律第57号)又は石綿則第5条に基づく届出(以下単に「届出」という。)が必要であるが、剥離剤が除去等しようとする塗材に対して有効か否かを確認するために行う小規模な試験施工については、基本的に、届出の対象とならないこと。なお、そうした小規模な試験施工も石綿の取扱い作業に該当するのはもちろんであること。

なお、剥離剤の有効性を確認する前に届出が行われた場合においては、届出後に剥離剤が有効でないと判明したときに、届け出た内容から工法を変更する必要が生じることがあるが、その際、変更後の内容について再度届出が必要であること。

 

○石綿含有仕上塗材の除去等作業における石綿飛散防止対策について

平成29年5月30日環水大大発第1705301号

(各都道府県・各大気汚染防止法政令市大気環境主管部局長あて環境省水・大気環境局大気環境課長通知)

大気環境行政の推進については、日頃より御尽力いただいているところである。

さて、建築物等の内外装仕上げに用いられる建築用仕上塗材(以下「仕上塗材」という。)には、石綿を含有するものがあり、これらの石綿含有仕上塗材は建築物等への使用時には石綿の飛散の可能性は小さい。一方、建築物等の解体・改造・補修工事において石綿含有仕上塗材を除去・補修(以下「除去等」という。)する際には、破断せずに除去等を行うことが困難であるため、除去等の工法によっては、石綿が飛散する可能性が指摘されている。このため、除去等の工法に応じた適切な飛散防止措置を講ずる必要がある。

ついては、下記事項に留意の上、除去等の工法に応じた適切な石綿飛散防止措置が講じられるよう、事業者等への周知及び指導を図られたい。

なお、本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言であることを申し添える。

1 石綿含有仕上塗材について、吹付け工法により施工されたことが明らかな場合には、大気汚染防止法施行令第3条の3第1号の「吹付け石綿」に該当するものとして取扱う。このため、これら石綿含有仕上塗材に係る建築物等の解体・改造・補修に際しては、特定粉じん排出等作業の実施の届出、作業基準の遵守等が必要となる。

また、吹付け工法により施工されたかどうかが明らかでない場合も、石綿含有仕上塗材を「吹付け石綿」とみなして、特定粉じん排出等作業の実施の届出及び作業基準の遵守が行われることが望ましい。特に、鉄骨造・鉄筋コンクリート造等の規模の大きい建築物等で、除去作業を行う場合には、周辺環境への石綿飛散のおそれが比較的高いと考えられることから、届出及び作業基準の遵守について適切に指導されたい。

なお、吹付け以外の工法(ローラー塗り等)で施工されたことが明らかな場合は、特定粉じん排出等作業の実施の届出は不要であるが、適切な飛散防止措置が講じられることが望ましい。

2 「吹付け石綿」とされた石綿含有仕上塗材の除去等に際しては、大気汚染防止法施行規則別表第七第一の項下欄イ~チの事項を遵守し除去等を行うか、同項下欄柱書の「同等以上の効果を有する措置」を講じる必要がある。「同等以上の効果を有する措置」については、別紙を参考にされたい。

なお、厚生労働省の「『建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針』に基づく石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.10版]」(平成29年3月)においては、「吹付け工法により施工された仕上塗材は、石綿則第6条に示す「吹き付けられた石綿」に該当するため、計画届又は作業届が必要となる。一方、それ以外の工法(ローラー塗等)により施工した仕上塗材は、届出の義務はない。しかし、いずれにしても、除去時のばく露防止対策については、施工時の工法に関わらず適切に対応することが求められる」とされているところである。

このため、石綿含有仕上塗材の除去等に係る事業者等の指導に当たっては、労働基準監督署と十分連携を図ることとされたい。

(問い合わせ先)

環境省水・大気環境局大気環境課

担当 廣田・五十嵐

TEL:03―3581―3351(内線6533)

E―mail:kanri-kankyo@env.go.jp

 

別紙

大気汚染防止法施行規則別表第7第一の項下欄柱書に基づく石綿含有仕上塗材の除去等に係る同等以上の効果を有する措置について

1.仕上塗材の特徴

仕上塗材は、建築物の内外装仕上に用いられており、そのルーツは、セメント、砂、着色顔料などを混合して砂壁状に吹付けるセメントリシン又は防水リシンと称される塗材(薄塗材C)である。その後、合成樹脂系のリシン(薄塗材E)や、吹付けタイルと称される凹凸模様の塗材(複層塗材)などが開発されてきた。

仕上塗材は、数十ミクロン程度の厚さの塗料とは異なり、数ミリ単位の仕上げ厚さを形成する塗装材料または左官材料である。吹付け、こて塗り、ローラー塗りなどの施工方法によって、立体的な造形性を持つ模様に仕上げられることから、塗膜のひび割れや施工時のダレを防止するために、主材の中にクリソタイル(白石綿)が少量添加材として使用されていた時期がある。

2.石綿含有仕上塗材の除去等における粉じん飛散防止の考え方

仕上塗材の主材中に含まれる石綿繊維は合成樹脂やセメントなどの結合材によって固められており、仕上塗材自体は塗膜が健全な状態では石綿が発散するおそれがあるものではない。しかし、仕上塗材の除去等に当たっては、これを破断せずに除去することが困難であるため、除去等の方法によっては含有する石綿が飛散するおそれがある。

一方で、石綿含有仕上塗材の除去等は、石綿の飛散レベルが著しく高い吹付け石綿や石綿含有吹付けロックウールの除去等と比較すると、建材自体の発じん性、石綿の含有量、処理工法などが異なる。したがって、石綿を飛散させない適切な工法、養生などの措置を選択することにより、必ずしも吹付け石綿などの除去工事と同様の集じん・排気装置などの設備による負圧隔離等の措置を要さず当該措置と同等以上に石綿の飛散を防止できる可能性がある。

以上のことから、国立研究開発法人建築研究所及び日本建築仕上材工業会では、共同で飛散実験等を行い、平成28年4月28日に「建築物の改修・解体時における石綿含有建築用仕上塗材からの石綿粉じん飛散防止処理技術指針」(以下、「処理技術指針」という。)を作成し、石綿含有仕上塗材の除去に関する提案を行っている。

3.厚生労働省「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル〔2.10版〕」における取扱いについて

厚生労働省では、平成29年3月に「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル〔2.10版〕」を作成し、吹付け工法により施工された仕上塗材について、「石綿則第6条に示す「吹き付けられた石綿」に該当するため、計画届又は作業届が必要となる。一方、それ以外の工法(ローラー塗等)により施工した仕上塗材は、届出の義務はない。しかし、いずれにしても、除去時のばく露防止対策については、施工時の工法に関わらず適切に対応することが求められる。」とした上で、石綿則第6条の「同等以上の効果を有する措置」として、処理技術指針の以下の内容を参考にすることができるとしている。

(1) 技術指針では石綿含有建築用仕上塗材を除去する工事を表XI―2のように分類している。

Ⅰ:「吹付けられた石綿」として隔離措置を講じて除去する工事

Ⅱ:石綿則第6条のただし書きにより、粉じん飛散防止に関し隔離措置と同等の措置と判断できる工法による除去工事

Ⅲ:改修工事での工事で、石綿を含有しない上塗りに洗浄などの工事。石綿を含有する主材を破砕等しないため、石綿関連作業には該当しない工事

(2) 「Ⅰ」の隔離措置を講じて除去する場合には、本マニュアルに示す方法に準拠して行うことが必要となる。ただし、仕上塗材は外壁仕上げとして使用されることが多いため、外部での隔離措置となり、風の影響等に十分に配慮する必要がある。

(3) 建築用仕上塗材の改修工事や除去工事では、仕上塗材の種類、仕上塗材層の劣化程度、仕上塗材層の処理の程度、仕上塗材層の除去効率、粉じんの発生程度、作業場の隔離養生の要否、廃水処理の要否、施工費等の諸条件を考慮して、①~⑮の処理工法中から適切なものが選定される。これらの処理工法の中で、「Ⅱ」の石綿則第6条ただし書きにより粉じん飛散防止に関し隔離措置と同等の措置と判断できる工法は、下線を施した③、⑤、⑦、⑨、⑩、⑪、⑫、⑬、⑮である。また、隔離措置と同等の措置と判断できる新しい処理工法が今後開発される可能性もある。

① 水洗い工法

② 手工具ケレン工法

③ 集じん装置併用手工具ケレン工法

④ 高圧水洗工法(15MPa以下、30~50MPa程度)

⑤ 集じん装置付き高圧水洗工法(15MPa以下、30~50MPa程度)

⑥ 超高圧水洗工法(100MPa以上)

⑦ 集じん装置付き超高圧水洗工法(100MPa以上)

⑧ 超音波ケレン工法

⑨ 超音波ケレン工法(HEPAフィルター付き掃除機併用)

⑩ 剥離剤併用手工具ケレン工法

⑪ 剥離剤併用高圧水洗工法(30~50MPa程度)

⑫ 剥離剤併用超高圧水洗工法(100MPa以上)

⑬ 剥離剤併用超音波ケレン工法

⑭ ディスクグラインダーケレン工法

⑮ 集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法

4.大気汚染防止法上の運用及び留意事項について

上述のとおり、厚生労働省の「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル〔2.10版〕」において、石綿則第6条ただし書きにより粉じん飛散防止に関し隔離措置と同等の措置と判断しうる目安として、以下の工法が挙げられている。

・集じん装置併用手工具ケレン工法

・集じん装置付き高圧水洗工法(15MPa以下、30~50MPa程度)

・集じん装置付き超高圧水洗工法(100MPa以上)

・超音波ケレン工法(HEPAフィルター付き掃除機併用)

・剥離剤併用手工具ケレン工法

・剥離剤併用高圧水洗工法(30~50MPa程度)

・剥離剤併用超高圧水洗工法(100MPa以上)

・剥離剤併用超音波ケレン工法

・集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法

これらの工法については、大気汚染防止法上の運用においても、施行規則別表第7第一の項下欄柱書の「同等以上の効果を有する措置」と判断しうる目安とすることができる。また、隔離措置と同等以上の効果を有する措置と判断できる新しい処理工法が今後開発される可能性もある。

これらの工法を「同等以上の効果を有する措置」として、適切に実施し、粉じん飛散を防止するためには、装置の使用方法、剥離剤の適用の可否等に精通していることが必要となる。また、施工区画を明確に定め、水滴飛沫などによる汚れを防止するためにプラスチックシート等による養生を行うことが必要である。

集じん装置付きの工法では、入隅部等(窓、柱型、軒先部分など)の除去ができないため、補助的に他の工法を併用する場合があるが、その場合には、全体又は部分的な隔離養生の必要性も含め、飛散防止対策を十分に検討しなければならない。また、集じん装置の排気での石綿除去を十分に検討する必要がある。

剥離剤を使用する工法では、ジクロロメタン等の有害性の高い化学物質を使用しないよう、剥離剤の選択にも十分留意する必要がある。

水を使って除去する工事の場合には、未処理の廃水が流出・地下浸透しないようすべて回収しなければならない。現在、石綿に関する排水基準はないが、回収した廃水は、凝集沈殿後に上澄み水をろ過処理する等により、適切に処理した上で放流する必要がある。

なお、工法の種類や施工方法から判断して「同等以上の効果を有する措置」とは認められない場合には、大気汚染防止法施行規則別表第7第一の項下欄イ~チの事項を遵守して隔離措置を講じた上で行うことが必要となる。ただし、仕上塗材は外壁仕上げとして使用されることが多く、その場合、建築物外部での隔離措置を講ずることとなるため、風の影響等に十分に配慮する必要がある。