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今後における安全衛生改善計画の運用について
平成29年3月31日基発0331第76号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第79条で定める安全衛生改善計画の運用に当たっては、事業場の施設、安全衛生教育、安全衛生管理体制等について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認められる事業場に対し、都道府県労働局長が安全衛生改善計画の作成を指示し、労働災害の減少、リスクを低減させるための措置の実施及び安全衛生管理水準の向上を図ってきたところである。
近年の傾向を見ると、労働災害防止に向けた更なる取組が求められる一方、精神障害に係る労災支給決定件数が高水準で推移するなど職場におけるメンタルヘルス対策が大きな課題となっている。
このような状況を踏まえ、今後の安全衛生改善計画の運用について、労働者の健康障害防止に問題が認められる事業場に関して、従来よりも当該計画策定の対象を拡大することとし、別添「安全衛生改善計画指導要綱」を策定したので、その効果的な推進に遺憾なきを期されたい。
(別添)
安全衛生改善計画指導要綱
1 趣旨・目的
本要綱は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第79条に基づく安全衛生改善計画(以下「改善計画」という。)の対象事業場や、改善計画に盛り込むべき事項等を定め、もって本制度の効果的な運用に資することを目的とする。
2 対象事業場の指定
次に該当するもの等であって、労働災害防止上の措置が特に必要と認められる事業場等として都道府県労働局長(以下「局長」という。)が対象の実情等を勘案して指定するものとする。
(1) 安全管理特別指導事業場
安全対策の取組に課題があると認められ、改善措置を講ずる必要がある事業場
(2) 衛生管理特別指導事業場
ア 以下の①から④のいずれかに該当する事業場のうち職業性疾病予防対策の取組に課題があると認められ、改善措置を講ずる必要がある事業場
① 粉じん、鉛、四アルキル鉛、有機溶剤、石綿、特定化学物質などに係る業務を有する事業場
② 騒音、振動、放射線、高温等に係る有害業務を有する事業場
③ ①以外のがん等重篤な健康障害を起こすおそれのある化学物質を製造し、又は取り扱っている事業場
④ 作業行動等に起因する健康障害の発生するおそれのある事業場
イ メンタルヘルス不調の防止の取組に課題があると認められ、改善措置を講ずる必要がある事業場
3 指定期間等
指定期間は、原則として、指定した年度の4月1日から翌年3月31日までの1年間とする。なお、指定事業場に対する指導の結果、改善計画に基づいて措置すべき事項が完了していない場合には、さらに1年間継続して指定を行うものとする。
4 改善計画の内容
改善計画の計画事項には、以下の①から⑤の事項を盛り込むこと。このうち、③は、都道府県労働局長から交付された安全衛生改善計画作成指示書(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)様式第19号)の記載内容を踏まえて、以下の(1)から(4)の事項を参考として、作成すること。
① 事業場の安全衛生上の課題又は改善点
② 改善計画の到達目標
③ 改善計画の到達目標を達成する上での具体的取組事項(以下「改善計画事項」という。)
④ 改善計画事項ごとの工程表(計画完了予定年月を含む。)
⑤ 改善計画の実施に当たって問題となる事項その他参考事項
なお、改善計画事項の検討及び措置の実施に当たっては、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員などの専門家を活用することが望ましいこと。
また、改善計画事項の検討及び措置の実施に当たっては、法第28条の2第1項又は第57条の3第1項及び第2項の規定に基づく、危険性又は有害性等の調査等が適切かつ有効に行われるようにすることとし、具体的には、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」又は「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に示すリスク低減措置を実施する際の優先順位を考慮すること。
(1) 施設等に関する措置の例
ア 生産、荷役、運搬、掘削用等の機械・電気設備、化学設備、炉その他の設備の新設、改修等
イ 機械設備等の安全装置、防護設備の新設、改修等
ウ 保護具、防具類、標識等の整備
エ 用具・工具等の安全化
オ 仮設機材等の安全化
カ 通路、階段、作業床等の安全化
キ 高温、低温、騒音の環境改善又は防護
ク 施設・設備、運転室等の温度、湿度、照明、換気等の環境改善
ケ 有害性の低い原材料への変更、有害物の密閉化、排気・換気、用後処理のための施設・設備の新設、改修
コ 腰部の負担を軽減するための運搬方法の改善のための機械設備、通路等の整備、荷姿の改善又は腰部負担軽減用具(機器、道具)の活用等
サ 工法の改善に伴う機械設備の整備
シ 施設・設備等の配置の改善等
ス その他改善計画事項の実施に必要な施設・設備の新設、改修等
(2) 安全衛生教育に関する措置の例
ア 作業標準の作成及び徹底のための教育訓練
イ 作業主任者、職長、新規雇入労働者、作業内容の変更を行った労働者、危険有害業務従事者に対する安全衛生教育及び特別教育等の実施
ウ 管理者、労働者に対するメンタルヘルス教育
エ 安全衛生教育に必要な視聴覚教育設備、教育用機材、教室、実習場等の整備
(3) 安全衛生管理体制に関する措置の例
ア 安全衛生管理規程の整備
イ 総括安全衛生管理者の職務の明確化、安全管理者、衛生管理者等の増員・配置換え、安全衛生担当部門、産業保健スタッフの充実を含む安全衛生管理組織の整備
ウ 安全衛生委員会で調査審議すべき事項の明確化、安全衛生活動の活性化
エ 産業医の職務内容の明確化と活性化
オ 施設・設備の点検、作業巡視等の体制整備
カ 作業環境測定の実施体制の整備
キ 労働災害の原因調査及びその再発防止対策樹立の体制整備
ク 適正配置促進のための機材の整備、検査、配置替え等の実施
ケ メンタルヘルス相談窓口の設置
コ 安全衛生に関する意識高揚等のための改善提案、ツールボックスミーティング、表彰等の実施
(4) 健康管理に関する措置の例
ア 特殊健康診断の実施、有所見者に係る医師による意見聴取及び意見に基づく就業上の措置の実施の徹底
イ 一般健康診断(深夜業従事者への健診を含む。)の実施、有所見者に係る医師による意見聴取及び意見に基づく就業上の措置の実施の徹底
ウ 長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導及びその結果に基づく就業上の措置の実施の徹底
エ ストレスチェックの実施、高ストレス者に対する面接指導の実施及び面接指導結果に基づく就業上の措置の実施の徹底、ストレスチェック結果の集団分析とそれを活用した職場環境改善の実施
オ その他の健康の保持増進のための措置(メンタルヘルス対策を含む。)の実施