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「シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン」の策定について
平成29年3月21日基発0321第4号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
シールドトンネル工事に係る安全対策については、切羽における異常出水やセグメントの崩壊による労働災害の発生が懸念されることから、平成24年8月6日付け基安安発第1号「シールドトンネル施工に当たっての留意事項について」に基づき実施してきたところである。
厚生労働省においては、シールドトンネル工事に係る安全対策について、近年の災害事例を踏まえ、より充実した安全対策を講じるべく検討してきたが、今般、その結果を踏まえ、「シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン」を別紙のとおり策定したので、関係事業者にその普及・定着を図り、シールドトンネル工事における労働災害防止対策の一層の推進を図られたい。
なお、関係団体に対し、本ガイドラインに基づく措置の適切な実施のため、会員に対して周知啓発に努めるよう別添1により要請するとともに、シールドトンネル工事の主たる発注者等に対し別添2により、関係省庁あて別添3により、本ガイドラインに基づく措置が適切に実施されるよう要請しているので、了知されたい。
本通達をもって、平成24年8月6日付け基安安発第2号は廃止する。
(別紙)
シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン
第1 目的
本ガイドラインは、切羽における異常出水やセグメントの崩壊等による労働災害の発生が懸念されるシールドトンネル工事において、近年の災害事例を踏まえ、より充実した安全対策を策定するものであり、これによりシールドトンネル工事における一層の労働災害防止を図ることを目的とする。
第2 適用範囲
本ガイドラインは、シールドトンネル工事について適用する。
第3 発注者による取組
1. 発注者は、契約書、仕様書等において、専門工事業者の意見を踏まえたリスクアセスメントを設計者及び元請施工業者に行わせ、その結果を設計図書又は施工計画に反映させるように規定し、これを行わせること。
2. 上記1.のリスクアセスメントの実施は、工事計画の作成段階のほか、当初の工事計画にはない新たな作業方法・機械設備を採用する場合や労働災害が発生するおそれが予見できた場合等に行うこと。
3. 発注者にシールドトンネルの専門家がいないなど、関係者の中にシールドトンネル建設工事の安全について十分な知見がある者がいない場合、受注者が示した設計・施工方法について、中立性のあるシールドトンネルの専門家等による安全性の確認を受けることが望ましいこと。
第4 設計者・施工者による取組
1. 適確なリスクアセスメントを踏まえた設計及び施工計画
(1) シールドトンネルを掘進する地山の地形、地層及び地質の状態が十分明らかでない場合には、掘進箇所のボーリング調査等の実施を検討し、災害につながる要因の把握に努めるなど、リスクアセスメントを適確に実施すること。
(2) ボーリング調査等の結果に基づきシールド工法の計画(施工計画を含む。)を定め、また、施工状況に応じて施工計画等を見直すこと。このとき、必要に応じ設計変更について発注者と協議すること。
2. シールドマシン
(1) シールドマシンのテールシール(シールドマシン本体の最後部に設けられるシールドマシンとセグメントとの間の止水部材)は、高圧の地下水、土砂、裏込め材等がシールドマシン内に流入することを防止するため、十分な止水性が確保できる構造、段数及び材質とすること。
(2) 地盤が良好ではない状況下で、組立時に自立性が低い構造のセグメントを採用する場合は、組立直後のセグメントリングの変形を抑制する装置等の設置について検討すること。
(3) スクリューコンベアからの噴発防止対策を講ずること。
(4) シールドトンネル内の電気設備のうち安全上重要なものについては、漏水等の可能性を考慮した設計とすること。
3. セグメントの設計等
(1) セグメントは、シールドマシンの掘進、ジャッキ操作、セグメントの組み立て、裏込め注入材の注入等に伴って作用する施工時荷重に対して、安定性及び各部材の安全性を有するものとすること。また、地盤が良好でない場合には、脆性的な破壊を生じない設計とすること。
(2) セグメントの形状・寸法の決定に当たっては、構造計算のほか、類似工事のセグメントの厚さと外径の比率、セグメント幅と厚さの比等の実績を勘案し、慎重に検討すること。
(3) セグメントの分割は、組立時にジャッキを抜いた場合のシールドマシンの姿勢に与える影響を考慮し適切なものとすること。
(4) セグメント、セグメント継手及びリング継手は、地盤が良好ではない場合に水や土砂の流入によって土圧バランスが崩れる等不測の事態が発生した場合にあっても、リング構造が容易に崩れないものとすること。
(5) 鉄筋コンクリート製セグメントのセグメント継手の構造又はリング継手の構造としてインサートボルトタイプを採用する場合は、ボルトボックス及びボルトインサートが容易に抜けることのないよう、かぶり及び配筋が適切になされるよう注意すること。
(6) Kセグメント(セグメントリングを完結するため最後に挿入するセグメント)については、条件によっては摩擦力が低下することがあることを考慮して、滑動又は抜け出しの可能性を検討し、堅固な継手の採用、抜け出し防止装置の設置等の必要な対策を講じること。
(7) あらかじめ十分な数のテーパーセグメント(曲線施工のためのセグメントリングを構成するセグメント)を用意し、必要な時に迅速に対応できるよう管理すること。
(8) 止水シール材(セグメントリング間及びセグメント間の側壁に沿って貼付するゴム等)は適切な材料及び形状を選定し、組立時に破損又は剥離しないよう留意すること。
4. テールシール用グリース
テールシール用グリース(テールブラシの中とテールシール間の隙間に充填する粘性の高いシーリング材)の選定に当たっては、使用する裏込め材との接触による固化等の変性、非定常時の溶接による火災等について十分考慮すること。
5. 線形管理
(1) 発進する前の測量を適確に行うとともに、発進後もできるだけ早期に掘進方向を確認するため、測量を行うこと。また、測量は定期的に行うとともに、変動が想定されるため一定時間経過後改めて測定すること。
(2) 掘進管理システムを導入し、リアルタイムでシールドマシンの姿勢、方向等に係るデータを計測すること。また、適切な頻度で較正すること。
(3) (2)の計測結果とともに、測量、テールクリアランス(シールドマシンの外殻であるスキンプレートの内側とセグメント外面との間の隙間)測定等により得られた結果を突合し、トンネルの線形管理に適確に反映させること。この場合、得られたデータを図化するなどにより相互の関連性が容易に判断できるようにすることが望ましいこと。
(4) 線形管理データは、工事終了後、必要に応じ発注者に提供すること。
6. 掘進管理
(1) シールドマシンによる掘進は、適正な切羽圧力を保持しながら、マシンの姿勢、方向、排土量等を総合的に管理しながら行うこと。
(2) セグメントの組立て誤差を最小にし、セグメントリングが可能な限り真円に近づくよう組立てること。
(3) 掘進線が設計計画線から外れる鉛直方向及び水平方向の偏差について上限値を含めた管理基準値を設定し、掘進中は常時モニタリングを行うこと。
(4) 掘進線が設計計画線から外れ、許容される偏差の上限値を超過した場合は、直ちに掘進計画を見直すこと。シールドマシンを設計計画線に戻す場合には、緩やかな曲線によりこれを行うとともに、テーパーセグメントを使用する等によりセグメントに無理な力を与えないようにすること。
(5) 蛇行修正においては、組み立てられたセグメントに過大な負荷がかからないように、オーバーカット(カッターヘッドに内蔵された伸縮ビットによる余掘り)等を適切に行い、必要がある場合はテーパーセグメントを使用すること。
(6) 掘進中のジャッキは、できるだけ多くの本数を使用することとし、セグメント組立時に引き抜くジャッキの本数は最小限にとどめること。
(7) 掘進中は、中央管理室又はシールドマシンにおいて専任管理者が常駐し、掘進管理を行うこと。また、元請事務所においても掘進管理データを確認できるようにすることが望ましいこと。
(8) テールシールの止水性を保持するため、テールシール用グリースの補充を適切に行うこと。また、注入は、注入量、注入圧及び注入時期に留意して行い、その記録を残すこと。
(9) テールクリアランスを適切に保持すること。
(10) 裏込め材の注入は、セグメントがテール部を出た後、できるだけ早期に実施すること。また、注入圧力、注入量、地表面の変状等のモニタリングを行い、適切に管理すること。
(11) 掘進管理データは、工事終了後、必要に応じ発注者に提供すること。
(12) ビデオ撮影を行う場合は、映像を一定期間保存すること。
7. セグメントの組立
(1) セグメントは割れ、欠け等が生じないように取り扱うこと。
(2) ジャッキの押し出し、引き抜きの手順は、セグメントの安定性の維持に留意して定めること。特にKセグメントの挿入時のジャッキ操作について十分に留意すること。
(3) セグメントに締結力のない継手を採用する場合には、漏水等の原因となるセグメント継手やリング継手の目開きや目違いが生じないよう、セグメントリングの形状の保持のため必要な措置を講ずること。
8. 掘進状況に応じた施工計画の見直し
(1) 施工中は掘進線の偏差、漏水、地盤からの有害・可燃性ガスの流入、施工したセグメントの状態等を継続的にモニタリングを行うこと。
(2) セグメントのひび割れ、継手の損傷、漏水、掘進線の蛇行等の非定常事象が断続的に発生する場合は、施工計画を見直し、必要な措置を講ずること。
9. 避難、救護の訓練
(1) 落盤、出水、ガス爆発、火災、有害ガスの流入等の発生を想定し、掘進開始後、坑口から切羽までの距離が100メートルに達する以前のなるべく早期かつ適切な時期に1回、その後6月以内の適切な期間ごとに1回、避難及び消火の訓練を実施すること。
(2) 落盤、出水等による労働災害の発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、人命確保を最優先として速やかに労働者を安全な場所まで退避させること。
(3) 労働者の救護に必要な機械等を備え付け、救護に関する技術的事項を管理する者を選任し、救護についての訓練等を行うこと。
(別添1)
○「シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン」の策定について
平成29年3月21日基発0321第5号
(建設業労働災害防止協会会長・建設労務安全研究会理事長・一般社団法人建設産業専門団体連合会長・一般社団法人全国建設業協会会長・一般社団法人全国中小建設業協会会長・一般社団法人日本建設業連合会会長・一般社団法人日本トンネル技術協会会長・一般社団法人日本トンネル専門工事業協会会長・日本シールドセグメント技術協会会長・シールド工法技術協会会長・一般社団法人日本建設機械施工協会会長・一般社団法人日本建設機械工業会会長あて厚生労働省労働基準局長通知)
シールドトンネル工事に係る安全対策については、切羽における異常出水やセグメントの崩壊による労働災害の発生が懸念されることから、平成24年8月6日付け基安安発第1号「シールドトンネル施工に当たっての留意事項について」に基づき実施してきたところです。
厚生労働省においては、シールドトンネル工事に係る安全対策について、近年の災害事例を踏まえより充実した安全対策を講じるべく検討してきたが、今般、その結果を踏まえ、「シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン」を別紙のとおりとりまとめたので、傘下会員に対して周知啓発いただきますようお願いいたします。
(別添2)
○「シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン」の策定について
平成29年3月21日基発0321第6号
(別記の団体の長あて厚生労働省労働基準局長通知)
シールドトンネル工事に係る安全対策については、切羽における異常出水やセグメントの崩壊による労働災害の発生が懸念されることから、平成24年8月6日付け基安安発第1号「シールドトンネル施工に当たっての留意事項について」に基づき実施してきたところです。
厚生労働省においては、シールドトンネル工事に係る安全対策について、近年の災害事例を踏まえより充実した安全対策を講じるべく検討してきたが、今般、その結果を踏まえ、「シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン」を別紙のとおりとりまとめたので、貴法人担当部署又は傘下会員に対して周知啓発いただきますようお願いいたします。
(別記)
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
独立行政法人水資源機構
地方共同法人日本下水道事業団
公益社団法人日本水道協会
公益社団法人日本下水道協会
一般社団法人日本化学工業会
石油連盟
一般社団法人日本地下鉄協会
一般社団法人日本民営鉄道協会
一般社団法人電力土木技術協会
電気事業連合会
東日本高速道路株式会社
中日本高速道路株式会社
西日本高速道路株式会社
北海道旅客鉄道株式会社
東日本旅客鉄道株式会社
東海旅客鉄道株式会社
西日本旅客鉄道株式会社
四国旅客鉄道株式会社
九州旅客鉄道株式会社
首都高速道路株式会社
阪神高速道路株式会社
(別添3)
○「シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン」の策定について
平成29年3月21日基発0321第7号
(国土交通省大臣官房技術審議官・農林水産省農村振興局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
シールドトンネル工事に係る安全対策については、切羽における異常出水やセグメントの崩壊による労働災害の発生が懸念されることから、平成24年8月6日付け基安安発第2号「シールドトンネル施工に当たっての留意事項について」に基づき実施してきたところです。
厚生労働省においては、シールドトンネル工事に係る安全対策について、近年の災害事例を踏まえより充実した安全対策を講じるべく検討してきたが、今般、その結果を踏まえ、「シールドトンネル工事に係る安全対策ガイドライン」を別紙のとおりとりまとめたので、貴省発注の工事において本ガイドラインに基づく肌落ち災害防止対策が徹底されるよう、特段のご配慮をお願いいたします。