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化学防護手袋の選択、使用等に係る参考資料の送付等について
平成29年1月12日事務連絡
(都道府県労働局労働基準部健康主務課長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)
化学防護手袋の選択、使用等については、平成29年1月12日付け基発0112第6号「化学防護手袋の選択、使用等について」により示されたところであるが、化学防護手袋の選択、使用等の適正化を図るための指導を行う上で参考となる資料としては、下記1のものがあるので、活用されたい。
また、化学防護手袋の選択、使用等に係る相談機関として、下記2の機関を適宜紹介されたい。(いずれも、無料で相談対応を行っている。)
記
1 化学防護手袋の選択、使用等に係る参考資料
①オルト―トルイジンに対する化学防護手袋の資料(公益社団法人 日本保安用品協会・日本防護手袋研究会)(別紙1)
②オルト―トルイジンに対して化学防護手袋を使用する上でのQ&A(日本防護手袋研究会)(別紙2)
③保護具選定のためのケミカルインデックス(十文字学園女子大学・田中茂教授の研究室のホームページ参照)
http://www.jumonji-u.ac.jp/shokuei/stanaka/top.html
2 化学防護手袋の選択、使用等に係る相談機関
①独立行政法人労働者健康安全機構(都道府県産業保健総合支援センター)
労働衛生工学(作業環境の改善、作業環境測定、保護具の選定)等に係る相談等
②中央労働災害防止協会(本部安全衛生相談窓口、各地区安全衛生サービスセンター・支所、大阪労働衛生総合センター)
安全衛生に関する相談等
③公益社団法人日本保安用品協会・日本防護手袋研究会(電話:03―5804―3125)
保護具アドバイザーの紹介等
別紙1
オルト―トルイジンに対する化学防護手袋の資料
目次
オルト―トルイジンに対して使用する化学防護手袋の選択、使用、保守管理についての資料
オルト―トルイジンに対して使用可能な化学防護手袋の例等
2016年12月
公益社団法人 日本保安用品協会
日本防護手袋研究会
オルト―トルイジンに対して使用する化学防護手袋の選択、使用、保守管理等についての資料
この資料は、オルト―トルイジンを扱う作業で使用する化学防護手袋について、使用者が適切な選択、使用、保守管理等を行うためのものです。
1.化学防護手袋とは
化学防護手袋は、有害な化学物質のばく露による皮膚障害や経皮吸収による健康障害から作業者の手、腕等を保護するために使用する手袋です。
化学防護手袋の性能等については、JIS T 8116「化学防護手袋」で規定しています。
2.種類
化学防護手袋には、ゴム製、特殊フィルム等色々な種類の材料が使用された多くの製品があります。使用されている材料によって、防護性能、作業性、機械的強度等が変わりますので、対象とする有害な化学物質を考慮して作業に適した手袋を選択する必要があります。
3.化学防護手袋に必要な性能
化学防護手袋に最も要求される性能は、有害な化学物質が手袋の内側に入らないことです。
化学物質が手袋の内側に入る過程として,次の二つがあります。
・透過:表面に付着している化学物質が、手袋の材料を分子レベルで通過して、手袋の内側に侵入すること。
・浸透:表面に付着している化学物質が、手袋のピンホール等を通って、手袋の内側に侵入すること
JIS T 8116では、有害な化学物質に対する化学防護手袋の防護性能である耐透過性と耐浸透性を規定しています。
a) 耐透過性
試験方法と耐透過性のクラスが示されています。クラスは、1~6に区分され、数字が大きいほど、耐透過性が優れており、長く使用できることを示します。またASTM F739も同一の試験であり、準拠するものとして試験結果を参照することができます。
b) 耐浸透性
品質許容水準(AQL)でクラスが1~4に区分されています。数字が小さいほどより多くの抜取数で検査しています。
4.オルト―トルイジンを取り扱うときの化学防護手袋の選択
オルト―トルイジンを取り扱う場合は、まず化学防護手袋の製造業者がオルト―トルイジンに対して有効であるとしている製品を選定する必要があります。さらに、耐透過性の各クラスの使用可能時間(平均標準破過点検出時間の下限値)を確認する必要があります。耐透過性のクラスが高いものを使用すれば、より安全です。
オルト―トルイジンと共に他の化学物質が混合されたものを取り扱う場合は、他の化学物質に対する耐透過性についても考慮する必要があります。
有害な化学物質に対する化学防護手袋の耐透過性は、製造業者・販売業者から得ることができます。また、常に最新版の耐透過性を確認する必要があります。
5.化学防護手袋を使用する上での留意事項
化学防護手袋を使用する際は、次の点に留意する必要があります。
a) 使用前に、傷、孔あき、亀裂等の外観上の問題が無いことを確認すると共に、手袋の内側に空気を吹き込んで空気が抜けないことを確認して下さい。
b) 化学防護手袋が使用可能時間に達した時は、新しい化学防護手袋に交換して下さい。
c) 化学防護手袋と共に強度の向上等の目的で手袋を二重装着した場合でも、化学防護手袋は使用可能時間の範囲で使用して下さい。
d) 手袋を脱ぐ時は、付着しているオルト―トルイジン等が、身体に付着しないよう注意して下さい。
e) 付着した化学物質は透過が進行し続けるので、一度使用した化学防護手袋は再使用しないで下さい。
f) 化学防護手袋は、常時、交換用を備えて下さい。
6 化学防護手袋を管理する上での注意事項
化学防護手袋の管理において留意する点は,次のとおりです。
a) 保管する際は、次に留意する必要があります。
① 直射日光を避けて下さい。
② 高温多湿を避け、冷暗所に保管して下さい。
③ オゾンを発生する機器(モーター類、殺菌灯等)の近くに保管しないで下さい。
b) 廃棄する際は、取り扱った化学物質のSDS、法令等に従って下さい。
c) 製造業者の取扱説明書に従って下さい。
以上
資料
オルト―トルイジンに対して使用可能な化学防護手袋の例等
1.化学防護手袋の耐透過性及び耐浸透性のクラスについて
JIS T 8116「化学防護手袋」で規定している化学防護手袋の耐透過性及び耐浸透性のクラスによる分類を表1及び表2に示します。
表1 耐透過性の分類
クラス |
平均標準破過点検出時間(分)1) |
6 |
480超え |
5 |
240超え |
4 |
120超え |
3 |
60超え |
2 |
30超え |
1 |
10超え |
注1) 標準透過速度0.1μg/cm2・minに達するまでの時間 |
表2 耐浸透性の分類
クラス |
品質許容水準(AQL) |
4 |
4.0 |
3 |
2.5 |
2 |
1.5 |
1 |
0.65 |
2.オルト―トルイジンに対する各種化学防護手袋の耐透過性及び耐浸透性
表3 オルト―トルイジン(CAS:95―53―4)に対する化学防護手袋の耐透過性及び耐浸透性
製造者等 |
製品品番 |
オルト―トルイジンに対する耐透過性1) |
オルト―トルイジンに対する耐浸透性2) |
主な材料3) |
備考 |
(株)重松製作所 |
GL―6 |
2 |
2 |
ポリウレタンゴム |
|
【30分】 |
【AQL1.5】 |
||||
GL―11 |
3 |
2 |
天然ゴム |
|
|
【60分】 |
【AQL1.5】 |
||||
GL―3000F |
6 |
2 |
フッ素ゴム |
|
|
【480分】 |
【AQL1.5】 |
||||
(株)アンセル・ヘルスケア・ジャパン |
2―100 |
6 |
1 |
特殊フィルム(LLDEP) |
|
【480分】 |
【AQL0.065】 |
||||
29―865 |
2 |
1 |
ネオプレンゴム |
|
|
【30分】 |
【AQL0.65】 |
||||
37―175 |
2 |
1 |
ニトリルゴム |
|
|
【30分】 |
【AQL0.65】 |
||||
37―185 |
3 |
1 |
ニトリルゴム |
|
|
【60分】 |
【AQL0.65】 |
||||
58―530 |
2 |
1 |
ニトリルゴム+アクリルライナー |
|
|
【30分】 |
【AQL0.65】 |
||||
15―554 |
6 |
1 |
ポリビニルアルコール |
|
|
【480分】 |
【AQL1.0】 |
||||
注1)上段は、耐透過性のクラス区分(表1参照)、下段【 】内は使用可能時間です。 2)上段は、耐浸透性のクラス区分(表2参照)、下段【 】内はAQLです。 3)主な材料の特徴は表4を参照下さい。 |
3.化学防護手袋の材料の特徴
化学防護手袋の代表的な材料の一般的な特徴を次に示します。
表4 材料の特徴
材料 |
特徴 |
ニトリルゴム |
耐油性及び耐摩耗性に優れていますが、一部化学薬品により劣化します。 |
天然ゴム |
柔軟性及び耐摩耗性に優れていますが、油等により機械的強度が弱くなる場合があります。一部の方にアレルギーが発生することがあります。 |
フッ素ゴム |
耐透過性に優れているとともに、機械的強度もあり、性能としては非常に優れたものを持っています。 |
ポリウレタンゴム |
耐油、耐溶剤性があり、耐摩耗性、耐引裂性製、耐寒性が良好です。一部溶剤に対応できない場合があります。 |
特殊フィルム |
耐透過性には非常に優れていますが、機械的強度に弱い場合があります。 |
ネオプレンゴム |
耐候性、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れ、強度と柔軟性を兼ね備えています。 |
ポリビニルアルコール |
有機溶剤に対し優れた耐性を持つが、親水性が強い為、水分により劣化します。 |
別紙2
オルト―トルイジンに対して化学防護手袋を使用する上でのQ&A
2016年12月16日
日本防護手袋研究会
この資料は、オルト―トルイジンを扱う作業で化学防護手袋を使用する上でのQ&A集です。
Q1 使用した手袋は、使用可能時間内なら翌日も使用できますか?
A1 付着した化学物質は透過が進行し続けるため、使用した時間とその後の使用しない時間も含めて使用可能時間内で交換してください。
Q2 用具等を使用し、オルト―トルイジンに接触しなければ、使用可能時間(耐透過性)を超えて使用できますか?
A2 直接オルト―トルイジンに接触しなくとも飛沫などが付着する可能性があります。化学防護手袋が使用可能時間に達したときは新しい化学防護手袋に交換してください。
Q3 オルト―トルイジンと他の溶剤(トルエン等)が混合した材料の使用可能時間はどのように判断したらよいでしょうか?
A3 オルト―トルイジンが、他の化学物質と混合されたものを取り扱う場合は、他の化学物質に対する耐透過性についても考慮する必要があります。
化学物質に対する使用可能時間(耐透過性)については、製造業者・販売業者にお問い合わせください。
Q4 乾かせば使用できますか。乾けば溶剤が揮発するので良いのではないでしょうか?
A4 手袋の内部に侵入している化学物質は、表面が乾いても残っているおそれがあります。一度使用した化学防護手袋は再使用しないで下さい。
Q5 耐浸透性のクラスと品質許容水準について教えて下さい?
A5 JIS T 8116では、化学防護手袋の耐浸透性を、水を手袋に入れてピンホールを確認する水密試験で、評価することを規定しています。
製品のロットごとの不良率(AQL)を、表1のクラスで区分しています。
数字が小さいほどより多くの抜取数で検査しています。
表1 耐浸透性の分類
クラス |
品質許容水準(AQL) |
4 |
4.0 |
3 |
2.5 |
2 |
1.5 |
1 |
0.65 |
Q6 保管する際の注意事項について教えて下さい?
A6 保管する際は、次に留意する必要があります。
① 直射日光を避けて下さい。
② 高温多湿を避け、冷暗所に保管して下さい。
③ オゾンを発生する機器(モーター類、殺菌灯等)の近くに保管しないで下さい。
Q7 オルト―トルイジンを扱う作業で使用する化学防護手袋を選定する際に製造業者・販売業者にどのような情報を伝えたらよいでしょうか?
A7 次の内容をお知らせください。
① 使われている溶液の組成(オルト―トルイジンの濃度、一緒に使用している溶媒等の化学物質名、CAS番号)
② 作業内容(手袋で溶液をどのように扱っているか)
③ 作業時間
Q8 JIS規格に適合していないものでも使用できるでしょうか?
A8 JIS T 8116に適合している化学防護手袋をご使用ください。ただし、ASTM F739に適合しているものはJIS T 8116と同等の耐透過性能を有しています。
Q9 オルト―トルイジンが付着したら色が変わる等、目視あるいは紫外光を当てればわかるような製品がありますか。あるいは手袋が破過していることを確認できる方法がありますか?
A9 現在、オルト―トルイジンが付着していることや破過していることを確認できる簡単な方法はありません。
Q10 使用前に確認しなければならないことは何ですか?
A10 使用前に、傷、孔あき、亀裂等の外観上の問題が無いことを確認すると共に、手袋の内側に空気を吹き込んで空気が抜けないことを確認して下さい。また、作業者に対して皮膚アレルギーの無いことを確認してください。
Q11 化学防護手袋を脱ぐときに注意することはありますか?
A11 手袋を脱ぐ時は、付着しているオルト―トルイジン等が、身体に付着しないよう注意して下さい。オルト―トルイジンが付着した面が内側に来るように脱いでください。
Q12 使用済みの化学防護手袋はどのように廃棄すればよいですか?
A12 廃棄する際は、取り扱った化学物質のSDS、法令等に従って下さい。