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「ボイラーの遠隔制御基準等について」の改正について
平成28年9月30日基発0930第35号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
標記については、平成15年3月31日付け基発第0331001号「ボイラーの遠隔制御基準等について」(以下「通達」という。)により運用しているところであるが、今般、コンピューター制御等の信頼性の向上に伴い、ボイラー及び圧力容器安全規則及び労働安全衛生法及びこれに基づく命令に係る登録及び指定に関する省令の一部を改正する省令(平成28年厚生労働省令第149号。以下「改正省令」という。)及び機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針(平成28年厚生労働省告示第353号。以下「機能安全指針」という。)により、機能安全指針に適合すると所轄労働基準監督署長が認定した自動制御装置を備えたボイラーに対する点検頻度の特例が設けられ、平成29年4月1日から施行することとされた。
これに伴い、当該ボイラーに対する点検及び運転の基準を明確にするため、平成29年4月1日をもって、通達の本文、別添1及び別添2を別紙1の新旧対照表のとおり改正するとともに、別添3を別紙2のとおり新たに追加するので、改正内容を速やかに関係事業者に対して周知徹底するとともに、平成29年4月1日以降、改正後の通達に基づく指導を適切に実施されたい。
別紙2<平成15年3月31日付け基発第0331001号に追加する別添3>
別添3
認定適合自動制御装置を備えたボイラーの点検及び運転に関する基準
1 総則
(1) 目的
この基準は、ボイラー及び圧力容器安全規則(昭和47年労働省令第33号。以下「ボイラー則」という。)第25条第2項の規定により、ボイラーの運転の状態に係る異常があった場合に当該ボイラーを安全に停止させることができる機能その他の機能を有する自動制御装置であって、機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針(平成28年厚生労働省告示第353号。以下「指針」という。)に適合していると所轄労働基準監督署長が認定したもの(以下「認定適合自動制御装置」という。)を備えたボイラーについて、その運転上の安全を確保することを目的とする。
(2) 適用
ア この基準は、認定適合自動制御装置を備えたボイラー(以下別添3において「ボイラー」という。)について適用する。
イ ボイラーの点検及び運転を行う場合には、法令により定められたところによるほか、この基準によるものとすること。
(3) ボイラー取扱作業主任者の勤務場所等
ア ボイラー取扱作業主任者は、ボイラーに異常が発生したことにより当該ボイラーが自動停止した後に、蒸気等の供給先に対する措置又はボイラーの再起動等を適切に実施するため、少なくとも1時間程度でボイラー設置場所に到達できる場所で勤務すること。
イ 認定適合自動制御装置は、ボイラーの運転の状態に係る異常があった場合に、要求される信頼性の水準(要求安全度水準)で当該ボイラーを安全に停止できる機能を有していると評価されているものであることから、ボイラー取扱作業主任者により、3日に1回以上、ボイラー設置場所でボイラーの状態が正常であるかどうかを点検することが求められること。
2 認定適合自動制御装置の要求安全機能及び要求安全度水準
認定適合自動制御装置の要求安全機能の特定及び要求安全度水準の決定については、指針で定める事項のほか、次に掲げる事項に留意すること。
(1) 指針の3―1によるリスクの解析においては、次に掲げる事項に留意すること。
ア リスク解析の対象となる範囲は、ボイラー則第32条で規定するボイラー本体、燃焼装置、自動制御装置、附属装置及び附属品とすること。
イ リスク解析の対象となる故障には、別添2の2(1)で定める重故障のほか、熱源の種類に応じ、燃料又は廃熱ガス等の供給に起因する故障を含むこと。
(2) 指針の3―2による要求安全機能及び安全関連システムの特定においては次に掲げる事項に留意すること。
ア 指針の3―1のリスク解析の結果により特定された全ての危険事象を防止するために必要な要求安全機能を特定すること。
イ この際、別添2の2(1)及び(2)に定める機能等を参考とすること。
(3) 指針の3―3による要求安全度水準の決定において指針の別紙1による手法を使用する場合、次に掲げる事項に留意すること。
ア 負傷又は疾病の重篤度については、ボイラーの最高使用圧力と内容積の積の大きさ、ボイラーの破裂等の影響の及ぶ範囲にいる労働者及び一般公衆の人数を考慮すること。
イ 危険事象の回避可能性については、破裂等の発生を考慮して決定すること。
ウ 要求安全機能の作動要求確率については、容器の構造上の安全率、安全弁等の機械式の安全装置の信頼性等を考慮すること。
(4) その他、IEC61508、ISO13849又はこれと同等以上の国際規格等に定める事項に留意すること。
3 ボイラーの機能等
ボイラーは、次に掲げる機能等を有するものであること。また、ボイラー設置者は、施錠等により、ボイラーの設置場所に関係者以外が立ち入れない措置を講ずること。
(1) ボイラーの運転の状況に係る異常が発生したとき又はボイラーが自動停止したときに、表示灯の点灯等により異常の内容が識別できる表示機能を有する装置を設けること。この場合、異常が復旧するまで表示が維持されるものでなければならないこと。
(2) 認定適合自動制御装置の機能によって停止した場合、手動により当該装置がリセットされない限り再起動できないものとすること。
(3) 4に掲げる機能を有する情報端末に、次に掲げる事項を知らせる機能を有する装置を設けること。
ア ボイラーの運転の状況に係る異常が発生したこと
イ ボイラーが自動停止したこと
ウ 1時間毎にボイラーが異常なく運転していること
エ 蒸気等の利用側の安全の確保のため、自動停止後に迅速な対応が必要な場合、上記アからウの機能を多重又は並列とすること。
(4) ばい煙の排出状況を監視することができる機能を有する装置を設けること。
(5) 見やすい箇所に、認定適合自動制御装置を備えたボイラーである旨を掲示するとともに、当該ボイラーに係る適合自動制御ボイラー認定証を備え付けること。
4 情報端末の機能等
情報端末は、次に掲げる機能を有すること。
(1) ボイラーの運転の状況に係る異常が発生したこと又はボイラーが自動停止したことを振動、警報音等により周囲に確実に知らせることができること。
(2) 異常が発生した又は自動停止したボイラーの設置場所及び固有識別番号等を特定できること。
(3) 異常が発生した場合にボイラーを情報端末から強制的に停止する機能を設ける場合、当該ボイラーが停止したことを情報端末に知らせる機能をボイラーに設けること。ただし、この機能は、ボイラーの運転を遠隔制御するためのものではないこと。
(4) 1時間ごとに、ボイラーが異常なく運転されていることを知らせる通信を受信できること。また、必要に応じ、当該通信が受信できなかった場合に、振動、警報音等によりその旨を周囲に確実に知らせる機能を有すること。
(5) 認定適合自動制御装置の機能を停止することができないこと。
(6) 認定適合自動制御装置の機能によりボイラーが停止した場合に、情報端末から当該ボイラーを再起動することができないこと。
5 取扱い
(1) 運転要領等の作成
ア ボイラーの取扱い及び点検方法等を定めた運転要領等を作成し、それによって取扱い等を行うこと。
イ 運転要領等には、次に掲げる事項を含むこと。
① ボイラー設置場所での点検の間隔(最大72時間)、運転制御及び安全関連機器の整備・点検の内容
② 水管理等のボイラーの管理に関する事項
③ その他運転管理に必要な事項
(2) 起動時の措置
ア 圧力が大気圧まで低下し、かつ温度が周辺の温度まで低下したボイラーを起動する前には、必要に応じて、次に掲げる装置が正常であるかどうかを確認すること。
① 燃焼安全装置
② 自動圧力制御装置
③ 自動水位制御装置
④ 警報装置
イ 起動前には、次に掲げる系統等が正常であるかどうかを確認すること。
① ボイラー付属品
② 燃料系統
③ 通風系統
④ 給水系統
⑤ 操作用動力源
ウ 起動は、ボイラーの設置場所で行うこと。
エ 起動後、ボイラーの圧力、水位、燃焼状態等が安定するまでボイラーの設置場所で圧力、水位、燃焼状態等を監視すること。
オ 定常停止は、ボイラーの設置場所で行うこと。
(3) 点検等
ア 起動後1時間以内、その後は72時間以内ごとに、ボイラー取扱作業主任者により、ボイラー設置場所でボイラーの状態が正常であるかどうか点検すること。
イ 認定適合自動制御装置の認定を受けた者の定める方法及び頻度で認定適合自動制御装置を点検すること。
ウ 煙道煙濃度を監視するために、排煙濃度計を使用する場合は、保護ガラスの清掃を行う等により機能を維持すること。
(4) 情報端末の管理
ア ボイラー取扱作業主任者は、ボイラー運転中に常時、情報端末を携帯する又は情報端末を設置した場所に常駐すること。シフト制勤務とする場合は、交代の際に、情報端末を確実に引き継ぐこと。
イ 情報端末を携帯する者は、次に掲げる事項を実施すること。
① 情報端末の通信が無線による場合は、電波を受信可能な場所で勤務すること。
② 1時間ごとに、情報端末を確認し、ボイラーの運転状況を確認すること。ただし、情報端末が、1時間ごとのボイラーからの通信が受信できなかった場合に、振動、警報音等によりその旨を周囲に確実に知らせる機能を有する場合はこの限りでないこと。
③ 適切な頻度で情報端末の電池の充電状況を確認し、必要な充電を行うこと。