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設計技術者、生産技術管理者に対する機械安全・機能安全に係る教育実施要領
平成26年4月15日付け基安発0415第4号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)
改正 平成31年3月25日基安発0325第1号
設計技術者、生産技術管理者に対する機械安全・機能安全に係る教育実施要領
1 目的
産業現場で使用される機械による労働災害は、全労働災害の約1/4を占めており、機械にはさまれ・巻き込まれる等による重篤な災害は後を絶たない状況にある。これら、機械災害を一層減少させるため、「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成19年7月31日付基発第0731001号)において機械の設計・製造段階、使用段階におけるリスクアセスメント及びリスク低減等を実施し、機械の安全化を図ることが示されているとともに、労働安全衛生規則第24条の13に基づく「機械譲渡者等が行う機械の危険性等の通知の促進に関する指針」(平成24年厚生労働省告示第132号)において機械の危険性等の通知を作成する場合は、機械に関する危険性等の調査の手法等について十分な知識を有する者に作成させるべきことが示されている。さらに、「機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針」(平成28年厚生労働省告示第353号)の2―3(3)において、機能安全を含む機械等の設計等を行う者に対して、必要な教育を実施することが示されている。
平成3年1月21日付基発第39号「安全衛生教育の推進について」の2の「教育の対象者」に「設計技術者」及び「生産技術管理者」が示されているが、これらの者は危険性等の調査等の実施に重要な役割を担うものである。このため、本実施要領において、これらの者に対する安全衛生教育の教育カリキュラム等を示すことにより、機械の安全化を図るために必要な知識を付与し、機械の安全化を促進することにより機械による労働災害の一層の防止を図ることを目的とする。
2 対象者
(1) 設計技術者
機械の製造者(メーカー)等に所属する機械の設計技術者。なお、製造者(メーカー)等には、機械のエンジニアリング会社(複数の機械を一つのシステムとして統合する者(以下「システムインテグレーター」という。)を含む)、機械の譲渡者(流通業者を含む)、機械の使用者(ユーザー)であって、機械の設計・改造を行う事業者が含まれること。
(2) 生産技術管理者
機械を使用する事業者(ユーザー)に所属する生産技術管理者
3 実施者
(1) 機械の製造者(メーカー)等及び使用者(ユーザー)である事業者
(2) 事業者に代わって当該教育を行う安全衛生団体、事業者団体等
4 実施方法
(1) 教育カリキュラムは別紙1の「設計技術者に対する機械安全教育カリキュラム」、別紙2の「設計技術者に対する機能安全教育カリキュラム」又は別紙3の「生産技術管理者に対する機械安全教育カリキュラム」によること。
また、安全衛生団体、事業者団体等が実施する教育については、教育カリキュラムのうち一部の科目を実施するものであっても差し支えないこと。
なお、別紙の教育カリキュラムの科目のうち、既に一部又は全部の科目の内容について、十分な研修等が行われ、十分な知識を有する者に対しては、当該科目の教育を省略して差し支えないこと。
(2) 安全衛生団体、事業者団体等が行う教育にあっては、1回の教育対象人数は概ね100人以内とすること。
(3) 講師については、別紙の教育カリキュラムの科目について十分な知識・経験を有する者を充てること。
(4) 教育の実施に当たっては、教育効果を高めるため、既存のテキストの活用、演習又は実機を用いた教育を行うことが望ましいこと。
5 記録の保管等
(1) 事業者は、当該教育を実施した結果について、その旨を記録し、保管すること。
(2) 安全衛生団体、事業者団体等が当該教育を実施した場合(別紙の教育カリキュラムの一部の科目を実施した場合を含む。)は、教育修了者に対して、その修了を証する書面を交付する等の方法により、所定の教育を受けたことを証明するとともに、教育修了者名簿を作成し、保管すること。
別紙1
設計技術者に対する機械安全教育カリキュラム
科目 |
範囲 |
時間 |
1 技術者倫理 |
(1) 労働災害、機械災害の現状と災害事例 (2) 技術者倫理、法令遵守(コンプライアンス) |
1.0 |
2 関係法令 |
(1) 法令の体系と労働安全衛生法の概要 (2) 機械の構造規格、規則の概要 (3) 機械の包括安全指針の概要 (4) 危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)等に関する指針の概要 (5) 機械に関する危険性等の通知の概要 |
3.0 |
3 機械の安全原則 |
(1) 機械安全規格の種類と概要(日本工業規格(JIS規格)、国際規格(ISO規格、IEC規格)) (2) 機械安全一般原則の内容(JIS B9700(ISO12100)) |
6.0 |
(電気・制御技術者のみ) (3) 電気安全規格(JIS B9960―1(IEC60204―1)) |
(5.0) |
|
4 機械の設計・製造段階のリスクアセスメントとリスク低減 |
(1) 機械の設計・製造段階のリスクアセスメント手順 (2) 本質的安全設計方策 (3) 安全防護及び付加保護方策 (4) 使用上の情報の作成 |
18.0 |
(電気・制御技術者のみ) (5) 制御システムの安全関連部(JIS B9705―1(ISO13849―1)) |
(5.0) |
|
5 機械に関する危険性等の通知 |
(1) 残留リスクマップ、残留リスク一覧の作成 |
2.0 |
合計 30時間(ただし、機械安全設計に係る電気・制御技術者にあっては、40時間)
(備考)
1 機械の製造者(メーカー)等の品質保証の管理者についても、上記カリキュラムの内容について、教育を受けることが望ましいこと。
2 機械の製造者(メーカー)等の経営層についても、上記カリキュラムの「1 技術者倫理」及び「2 関係法令」の内容について、教育を受けることが望ましいこと。
別紙2
設計技術者に対する機能安全教育カリキュラム
(共通科目)講義(5.5時間)
科目 |
範囲 |
時間 |
1 機械安全概論 |
・労働災害、機械災害の現状と災害事例 ・機械設備の安全状態と安全確保 |
0.5 |
2 関係法令 |
・関係法令 ・関連規格、重要用語 |
0.5 |
3 リスクアセスメントとリスク低減 |
・リスクアセスメント ・リスク低減措置 |
1.0 |
4 機能安全概論 |
・本質的安全設計方策 ・制御システムによる安全機能 ・安全関連システムと要求安全機能 ・要求安全度水準 |
1.0 |
5 安全関連システムの設計 |
・リスクアセスメントと要求安全機能 ・要求安全度水準の決定 ・ハードウエアの設計 ・ソフトウエアの設計 |
1.5 |
6 妥当性確認 |
・全安全ライフサイクルの妥当性確認 ・安全関連システムの妥当性確認 ・ソフトウエア妥当性確認 ・文書化とファイル構成 |
1.0 |
(選択科目1:プラント制御システム関係(IEC61508関係)(11.5時間)
講義(7.5時間)
科目 |
範囲 |
時間 |
1 システム設計概論 |
・プラントの仕様及び使用条件の特定 ・プラント制御系と安全関連システムの区分 |
0.5 |
2 関係法令 |
・関係法令 ・関連規格、重要用語 |
0.5 |
3 リスク分析 |
・フォルトツリー分析(FTA) ・故障モード影響分析(FMEA) ・ハザード・オペラビリティ分析(HAZOP) |
1.0 |
4 要求安全度水準の決定 |
・要求安全機能の特定 ・要求安全度水準の決定 ・使用者への情報 |
1.5 |
5 安全関連システムの設計 |
・要求安全度水準(SIL)の評価方法 ・安全関連システムの評価 |
2.0 |
6 妥当性確認 |
・妥当性確認 ・文書化とファイル構成 |
1.0 |
7 適合性証明 |
・適合宣言 ・第三者証明 ・適合自動制御装置の認定 |
1.0 |
演習(4.0時間)
科目 |
範囲 |
時間 |
演習 |
・リスク分析 ・要求安全度水準の決定 ・安全関連システムの設計 |
4.0 |
(選択科目2:統合生産システム関係(ISO13849関係)(11.5時間)
講義(7.0時間)
科目 |
範囲 |
時間 |
1 システム設計概論及びシステム構築 |
・システム設計概論 ・インテグレータの役割 ・発注仕様の確認 ・工程分析 ・作業分析(作業と作業ゾーン) |
2.0 |
2 関係法令 |
・関係法令 ・関係規格、重要用語 |
0.5 |
3 リスクアセスメントとリスク低減 |
・リスクアセスメント ・リスク低減措置 |
1.5 |
4 要求安全度水準の決定 |
・安全関連システムの要求安全機能の決定 ・要求安全機能の要求安全度水準の決定 |
1.0 |
5 安全関連システムの設計と妥当性確認 |
・安全関連システム設計手順 ・保護装置の活用 ・妥当性確認 ・文書化とファイル構成 |
1.5 |
6 使用上の情報 |
・取扱説明書への記載事項 ・マーキング |
0.5 |
演習(4.5時間)
科目 |
範囲 |
時間 |
演習 |
・事例説明 ・演習/講評 |
4.5 |
(選択科目3:ロボットシステム特化(ISO13849関係)(5.5時間)
講義(5.5時間)
科目 |
範囲 |
時間 |
1 機能安全設計概論 |
・安全機能及び安全制御 ・機能安全概論 |
1.0 |
2 関係法令及び規格 |
・関係法令 ・関係規格、重要用語 |
0.5 |
3 リスクアセスメントとリスク低減 |
・リスクアセスメント ・リスク低減措置 |
1.5 |
4 要求安全度水準の決定と安全関連システムの設計 |
・安全関連システムの要求安全度水準の決定 ・関連規格の要求事項 ・安全関連システム設計手順 |
1.0 |
5 使用上の情報 |
・取扱説明書への記載事項 ・マーキング |
0.5 |
6 妥当性確認 |
・ロボット単体及びロボットシステムの妥当性確認 ・要求安全度水準の適合性評価 ・安全関連ソフトウエアの妥当性確認 ・文書化とファイル構成 |
1.0 |
合計 17時間(選択科目1及び選択科目2)又は11時間(選択科目3)
(備考)
1 共通科目を行った後に選択科目1から3のうちいずれかを行うこと。
2 別紙1で定める教育を修了している者を対象者とすること。
3 選択科目3は、ロボットシステムに特化したものであり、ロボット以外の機械を含む生産システムを構築する場合は、選択科目2を選択すること。
別紙3
生産技術管理者に対する機械安全教育カリキュラム
科目 |
範囲 |
時間 |
1 技術者倫理 |
(1) 労働災害、機械災害の現状と災害事例 (2) 技術者倫理、法令遵守(コンプライアンス) |
1.0 |
2 関係法令 |
(1) 法令の体系と労働安全衛生法の概要 (2) 機械の構造規格、規則の概要 (3) 機械の包括安全指針の概要 (4) 危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)等に関する指針の概要 (5) 機械に関する危険性等の通知の概要 |
3.0 |
3 機械の安全原則 |
(1) 本質安全・隔離・停止の原則 (2) 機械安全規格の種類と概要(日本工業規格(JIS規格)、国際規格(ISO規格、IEC規格)) |
2.0 |
4 機械の使用段階のリスクアセスメントとリスク低減 |
(1) 機械のリスクアセスメントの手順 (2) 本質的安全設計方策のうち可能なもの (3) 安全防護及び付加保護方策 (4) 作業手順、労働者教育、個人用保護具 |
9.0 |
合計 15時間
(備考)
1 機械の使用者(ユーザー)の安全担当者についても、上記カリキュラムの教育を受けることが望ましいこと。
2 機械の使用者(ユーザー)の経営層や購買担当者についても、上記カリキュラムの「1 技術者倫理」及び「2 関係法令」の内容について、教育を受けることが望ましいこと。