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通達:建築物の解体等作業及び石綿等が吹き付けられた建築物等の業務における石綿による労働者の健康障害防止対策の徹底について

 

建築物の解体等作業及び石綿等が吹き付けられた建築物等の業務における石綿による労働者の健康障害防止対策の徹底について

平成26年2月7日基安発0207第2号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)

 

石綿による労働者の健康障害防止対策については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づく石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)等により、様々な措置が義務付けられているが、石綿等が使用されている建築物の老朽化による解体等の工事は、今後も増加することが予想され、現在の技術的知見等も踏まえ、一層の石綿ばく露防止対策等の充実が求められている。厚生労働省労働基準局長参集の「建築物の解体等における石綿ばく露防止対策等技術的検討のための専門家会議(座長:神山宣彦 東洋大学大学院 客員教授)」において、建築物の解体等における石綿ばく露防止対策の充実等について検討を重ね、今般、報告書がまとめられたところである。

今後、本報告書を踏まえ、関係法令の整備について検討を行い、必要な対策の見直しを行うこととしているが、本報告書において取り組むべき対策の方向性として提言のあった事項については、石綿による労働者の健康障害防止に資するものであることから、法令の整備等を待つことなく取り組みを進めるよう、団体事業者団体に対し、団体会員に対する周知徹底を要請したところである。

ついては、貴局管轄の関係団体等宛てに同じく要請するとともに、貴局の開催する集団指導や個別指導等の機会を捉え、関係事業者に対して、同内容に係る技術的指導をお願いする。

 

建築物の解体等における石綿ばく露防止対策等技術的検討のための専門家会議報告書(概要)

本検討会による検討の結果、石綿ばく露防止対策等について、以下に示すとおり、その措置の充実を図ることが適当とされた。

1 石綿等の除去作業時の措置の充実

(1) 集じん・排気装置の点検等を次により実施すること。

ア 作業開始直後、速やかに集じん・排気装置の排気口から粉じんが漏洩していないことを点検すること。その後定期的に点検することが望ましいこと。

イ 集じん・排気装置の設置前又は設置直後に当該装置が正常に稼働し、粉じんを漏れなく捕集していることを点検することが望ましいこと。

ウ 集じん・排気装置の排気口から粉じんが漏洩していないことの確認は、デジタル粉じん計等を使用して行うこと。

(2) 前室での措置を次により実施すること。

ア 吹付けられた石綿等の除去等に係る措置にあたり、前室における洗身設備及び更衣設備の併設及び負圧状態の点検を行うこと。

イ 前室が負圧に保たれていることの確認は、目視、スモークテスター又は微差圧計(いわゆるマノメーターをいう。)を使用して行うこと。

ウ 隔離空間への出入りの際に十分な洗浄がなされず持ち出す可能性もあることから、作業計画において洗身時間の確保を規定し、十分な洗身を徹底すること。

(3) 作業場所の隔離が適切になされ隙間等による漏れがないかどうか、作業開始前に隔離内すべての箇所について目視又はスモークテスターでの確認を行うこと。

(4) 隔離等の措置を解除する前に石綿等の取り残しがないか確認するとともに粉じん濃度の測定により隔離空間内の粉じん処理状況の確認を行うこと。

(5) 前室の負圧状況、集じん・排気装置の排気口からの漏洩確認等の結果、異常が確認された場合は、速やかに補修等必要な措置を行うこと。

(6) これら措置に関しては、大気汚染防止法を所管する環境省と十分に調整の上、施工業者に同目的で複数の異なる措置をさせることがないよう配慮すること。

2 石綿等が使用されている建築物内での石綿の管理等の充実

労働者が就業する建築物等の天井等における石綿を含有する保温材、耐火被覆材等が損傷等している場合にも、当該建材の除去、封じ込め又は囲い込みを行わせること。併せて、当該保温材等の封じ込め又は囲い込み作業について、作業届、隔離措置等の現行規制の対象とすること。

3 石綿等が吹き付けられた建築物等の業務等に係る措置

ア 建築物又は船舶の壁、柱、天井等の吹付けられた石綿等、又は石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等の損傷、劣化状況についての定期的な点検を行うことが望ましいこと。

イ 事業者は、臨時に就業させる建築物又は船舶の壁、柱、天井等の吹付けられた石綿等、又は石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等の損傷、劣化状況について、当該建築物等の所有者から確認することとし、石綿の飛散状況が不明な場合は、石綿が飛散しているとみなし、当該労働者に呼吸用保護具及び保護衣又は作業衣を着用させること。

ウ 建築物又は船舶の所有者は、臨時に当該建築物又は船舶に就業させる業務を発注する場合は、当該業務を行う建築物又は船舶の壁、柱、天井等の石綿の使用状況及び損傷、劣化等の状況を受注者に通知するよう努めること。

 

[参考1]

○「建築物の解体等における石綿ばく露防止対策等技術的検討のための専門家会議」に基づく石綿による労働者の健康障害防止対策の徹底について

平成26年2月7日基安発0207第1号

(別記関係事業者団体の長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)

労働安全衛生行政の推進につきましては、平素より御理解、御協力を賜り厚く御礼申し上げます。

さて、石綿による労働者の健康障害防止対策については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づく石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)等により対策の推進を図っていますが、石綿等が使用されている建築物の老朽化により、その解体等の工事は、今後も増加することが予想され、現在の技術的知見等も踏まえ、一層の石綿ばく露防止対策等の充実が求められています。厚生労働省においては、「建築物の解体等における石綿ばく露防止対策等技術的検討のための専門家会議(座長:神山宣彦 東洋大学大学院 客員教授)」を設置し、建築物の解体等における石綿ばく露防止対策の充実等について検討を重ね、今般、報告書がまとめられたところです。

今後、本報告書を踏まえ、関係法令の整備について検討を行い、必要な対策の見直しを行うこととしていますが、本報告書において取り組むべき対策の方向性として提言のあった事項については、石綿による労働者の健康障害防止に資するものであることから、法令の整備等を待つことなく取組を進めていただきますよう、貴団体会員に対し周知徹底をよろしくお願いします。

別記

中央労働災害防止協会

建設業労働災害防止協会

独立行政法人 労働者健康福祉機構

公益社団法人 日本作業環境測定協会

一般社団法人 日本環境測定分析協会

公益社団法人 日本保安用品協会

公益社団法人 産業安全技術協会

公益社団法人 全国労働衛生団体連合会

一般社団法人 日本労働安全衛生コンサルタント会

全国社会保険労務士会連合会

公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会

日本アスベスト調査診断協会

一般社団法人 日本建設業連合会

一般社団法人 全国建設業協会

公益社団法人 全国解体工事業団体連合会

一般社団法人 建設産業専門団体連合会

一般社団法人 JATI協会

公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会

一般社団法人 日本ビルヂング協会連合会

公益社団法人 全国産業廃棄物連合会

全国アスベスト適正処理協議会

建設廃棄物共同組合

一般社団法人 住宅生産団体連合会

一般社団法人 不動産協会

公益社団法人 全日本不動産協会

一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会

公益社団法人 日本建築家協会

一般社団法人 全日本建築士会

一般財団法人 日本船舶技術研究協会

一般社団法人 日本造船工業会

一般社団法人 日本中小型造船工業会

一般社団法人 日本造船協力事業者団体連合会

一般社団法人 日本舶用工業会

一般社団法人 日本舶用機関整備協会

一般社団法人 日本船舶電装協会

日本内航海運組合総連合会

一般社団法人 日本旅客船協会

一般社団法人 大日本水産会

一般社団法人 海洋水産システム協会

 

[参考2]

建築物の解体等における石綿ばく露防止対策等技術的検討のための専門家会議報告書

平成26年2月

目次

第1部 はじめに

第2部 石綿等の使用状況及びばく露防止に係る規制の現状について

第3部 各検討事項及び検討結果

第1部 はじめに

1 経緯

石綿は、その粉じんを吸入することにより、肺がん、中皮腫等の重篤な健康障害を引き起こすおそれがあることから、労働安全衛生法施行令の改正により、平成18年9月に、石綿含有製品の製造等が全面的に禁止されたところである。一方、これまで輸入されてきた石綿の大半は、建材として建築物に使用され、現在においても石綿等が使用されている建築物は相当数存在している。今後、このような建築物の解体等の作業が増加することが予想されることから、かかる作業に伴って発生する石綿粉じんへのばく露防止対策を徹底することが重要である。

建築物の解体等の作業における石綿ばく露防止対策等については、平成17年に施行された石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)等に基づく措置の徹底を図っているところである。

また、東日本大震災の被災地における石綿の気中濃度のモニタリング結果では、解体工事中に石綿が漏えいする事案があったことから、平成24年5月に「建築物等の解体等の作業での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」(以下「技術指針」という)を公示し、石綿則に基づく事前調査及び隔離の措置に係る留意事項について規定したところである。

しかしながら、石綿等が使用されている建築物の老朽化による解体等の工事は、今後も増加することが予想され、現在の技術的知見等も踏まえ、一層の石綿ばく露防止対策等の充実が求められているところである。

このため、建築物の解体等における石綿ばく露防止対策等技術的検討のための専門家会議(座長:神山 宣彦 東洋大学大学院 客員教授)を4回にわたり開催し、建築物の解体等におけるばく露防止対策に関する技術的な検討を行い、その結果を取りまとめた。

2 「建築物の解体等における石綿ばく露防止対策等技術的検討のための専門家会議参集者名簿

(五十音別:敬称略)

出野政雄 公益社団法人全国解体工事業団体連合会 専務理事・事務局長

○神山宣彦 東洋大学大学院 客員教授

小島政章 一般社団法人日本建設業連合会

島田啓三 建設廃棄物協同組合 理事長

内藤恵 慶應義塾大学法学部教授

名古屋俊士 早稲田大学理工学術院創造理工学部教授

森永謙二 独立行政法人環境再生保全機構石綿健康被害救済部 顧問医師

○:座長

※ 参集者の所属、役職は、第1回会議開催時のもの

3 会議開催状況

第1回 平成25年8月23日(金)

・ 石綿ばく露防止対策等について

・ 今後の進め方について

第2回 平成25年9月5日(木)

・ 関係機関等ヒアリング

・ 石綿ばく露防止対策等について

第3回 平成25年10月7日(月)

・ 報告書案について

第4回 平成25年11月18日(月)

・ 報告書案について

第2部 石綿等の使用状況及びばく露防止に係る規制の現状について

石綿とは、天然に産出する繊維状けい酸塩鉱物の一部の俗称で、国際労働機関(ILO)が1986年に採択したいわゆる石綿条約においては、石綿を「蛇紋石族造岩鉱物に属す繊維状けい酸塩鉱物であるクリソタイル及び角閃石族造岩鉱物に属す繊維状けい酸塩鉱物であるアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クロシドライト、トレモライト、あるいはこれらを一つ以上含む混合物をいう」と定義しており、現在、我が国も同条約を批准の上、同様のものを規制の対象としている。

石綿及び石綿含有製品については、我が国では明治20年代から輸入が始まり、第2次世界大戦で輸入が一時中断した後、1950年以後、年々輸入量が増加していった。1974年に輸入量が35万2千トンに達しピークを迎えた後、増減を繰り返しながら徐々に減少し、国際労働機関における石綿条約の採択(1986年)や政府の石綿使用抑制政策等により、1990年以降は、その輸入量は急速に減少し、2000年には10万トンを切り、2006年以降は輸入されていない。これら過去に輸入した石綿の大部分は建築物に使用されていると考えられる。

石綿粉じんへのばく露防止対策等については、過去は、特定化学物質等障害予防規則等において、現在は平成17年に施行された石綿則において様々な措置が規定されている。また、石綿則については、制定以来これまでに数次の改正を行い、充実を図ってきた。

また、東日本大震災の被災地における石綿の気中濃度のモニタリング結果では、解体工事中に石綿が漏えいする事案があったことから、平成24年5月に技術指針を公示し、石綿則に基づく事前調査及び隔離の措置に係る留意事項について規定したところである。

第3部 各検討事項及び検討結果

本会議による検討の結果、石綿ばく露防止対策等について、以下に示すとおり、その措置の充実を図ることが適当である。

1 石綿等の除去作業時の措置の充実

[現状と課題]

○ 東日本大震災の被災地において実施された石綿の気中濃度のモニタリング結果では、平成23年度の結果は、のべ100カ所(うち建築物の解体現場69現場)のうち、気中石綿濃度が10f/Lを超えた現場数は6現場(うち建築物の解体現場6現場)であった。平成24年度の結果は、のべ100カ所(うち建築物の解体現場50現場)のうち、気中石綿濃度が10f/Lを超えた現場数は4現場(うち建築物の解体現場4現場)であった。

○ 隔離措置を行った場所からの主な漏えい箇所は、前室又は集じん・排気装置の排気口からの漏えいである。前室については、隔離内部の負圧管理が適切ではないことや、前室からの人の出入りの際に石綿を外部に持ち出すこと(作業管理が不適切)が原因と考えられる。また、集じん・排気装置については、フィルターの装着が不適切な場合等が考えられる。そのほか、隔離が適切に行われておらず、壁等の隙間より漏えいした事例もある。

[検討結果及び取り組むべき対策の方向]

○ 解体等の作業において既に講じている石綿ばく露防止対策の有効性を確認するために、また、漏えい等に応じ速やかに適切な石綿ばく露防止対策を講じるためにも、主な漏えい箇所である前室及び集じん・排気装置の管理が重要である。

○ ろ過集じん方式の集じん・排気装置の排気口の粉じん濃度を測定し、当該集じん・排気装置が粉じんを捕集していることを点検する必要がある。なお、この捕集の点検は、作業開始直後に必ず行うこととし、その後、集じん・排気装置の設置場所を変えた時等に行うほか、定期的に行うことが望ましい。また、集じん・排気装置が正常に稼働している場合は、あらゆる粉じんを捕集しているはずであることから、測定する粉じんは、必ずしも石綿の絶対数を測定する必要はなく、デジタル粉じん計等の総粉じん濃度の測定で十分である。

○ また、ろ過集じん方式の集じん・排気装置の設置の際、又は設置前に、当該装置が正常に作動すること及び適切に粉じんが捕集されていることを確認することが望ましい。なお、粉じんの捕集の確認は、当該集じん・排気装置を稼働し、周辺の一般大気中の粉じん(又は任意に発生させた粉じん)を捕集させ、上述と同様、デジタル粉じん計等を用いて排気口において粉じん濃度を測定することで確認できる。

○ 前室について、洗身設備及び更衣設備を併設させ、人の出入りにおける石綿の持ち出しを防止するとともに、前室において確実に負圧が担保され、粉じんの持ち出しを起こさせないよう、集じん・排気装置の使用時に、負圧が維持されていることを目視、マノメーターやスモークテスターで確認する必要がある。また、人の出入りの際に十分な洗浄がなされず持ち出す可能性もあることから、技術指針に定める洗身設備での十分な洗身(30秒以上の洗身)の徹底を図るとともに、石綿則第4条の作業計画の策定において、十分な洗身を行える時間の確保がなされるよう指導する必要がある。

○ 隔離内部はマニュアル等により負圧管理(-2Pa~-5Pa程度)を徹底させる必要がある。

○ その他、作業開始前にスモークテスターで隔離の隙間及び隔離対象そのものに対する気流の流れがないことを確認し、作業場所の隔離が適切に行われていることを確認することが望ましい。また、層間塞ぎや耐火区画部等の建築物の構造上の隙間等は、事前調査において見落としがちであり、かつ、見落としがあると隔離の破れの原因となることから、見落としがちな構造物の具体的な例について、マニュアル等で周知し、事前調査の徹底及び隔離の破れの防止を図ることが望ましい。

○ 隔離を解除する際、粉じんが適正に処理されていないと石綿が周辺に飛散するおそれがあることから、目視により石綿等の取り残しがないかどうか確認するとともに、石綿則第6条に規定された粉じん処理が確実になされているかどうか、隔離内部の粉じん等濃度を測定することにより確認することが適当である。

○ なお、前室の負圧確認、集じん・排気装置の排気口からの漏洩確認や隔離養生の破れ等の確認した結果、異常が認められた場合は、速やかに集じん・排気装置等の補修や作業手順の見直しその他必要な措置を実施する必要がある。

○ 本専門家会議において上述の措置が適当との結論であるが、これら措置に関しては、大気汚染防止法を所管する環境省と十分に調整の上、施工業者に同目的で複数の異なる措置をさせることがないよう配慮する必要がある。

2 現在使用中の石綿等が使用されている建築物内での石綿等の管理等の充実

[現状と課題]

○ 石綿則第10条において、事業者は、その労働者を就業させる建築物又は船舶の壁、柱、天井等に吹き付けられた石綿等(いわゆるレベル1)が、損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、当該石綿等の除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければならないとされている。

○ 国土交通省が実施した平成23年度建築基準整備促進事業「保温材、断熱材、スレート等のアスベスト含有建材の劣化等に伴う飛散性に関する調査」において、煙突内の石綿含有断熱材(いわゆるレベル2)が著しく劣化している場合に、煙突内部のみならず、隣接する機械室でも、比較的低い濃度の石綿(9f/L)の飛散が確認されたとの報告がなされている。

○ 平成24年9月13日基安化発0913第1号より、煙突内部に使用される石綿含有断熱材について当該石綿含有断熱材が著しく劣化している等により、煙突内部のみならず周辺作業場での石綿の飛散のおそれが懸念される場合には、煙突内の石綿含有断熱材の除去等石綿則第10条に準じた措置を講ずるよう指導がなされている。

[検討結果及び取り組むべき対策の方向]

○ 現に労働現場で建築物に使用されている保温材、耐火被覆材等から石綿等が飛散していた事例は少ないものの、建築物の劣化等に伴い今後それらの事例は増えると見込まれる。実際に保温材等からの石綿の飛散があった場合は、除去、封じ込め又は囲い込みの措置を行う必要があり、予防的観点から、吹付けられた石綿等のみならず、石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等が損傷等して労働者の石綿ばく露のおそれがある場合にも、当該保温材、耐火被覆材等の除去、封じ込め又は囲い込み等の措置を行わせる必要がある。併せて、石綿が飛散している保温材、耐火被覆材等の封じ込め又は囲い込み等の措置も、石綿のばく露のおそれがあるため、作業届や隔離措置等、現行規定の保温材の除去作業時と同等の措置を行わせる必要がある。

3 現在使用中の石綿等が使用されている建築物内での作業に係る措置の充実

[現状と課題]

○ 石綿則第10条において、事業者は、その労働者を就業させる建築物又は船舶の壁、柱、天井等に吹き付けられた石綿等が損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、除去、封じ込め又は囲い込みを実施する必要があるほか、臨時に当該おそれのある場所に就業させる場合は、呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣を使用させなければならないとされている。

○ しかしながら、臨時に当該おそれのある場所に就業させる場合には、事前に当該場所の石綿等の使用状況を把握する必要があるが、事業者がそれらの情報を入手することが困難な場合がある。

○ 事業者は臨時に就業させる建築物又は船舶の石綿等の使用状況を事前に把握する必要があるが、石綿等の使用状況は、当該建築物又は船舶等の所有者が把握している場合が多い。

[検討結果及び取り組むべき対策の方向]

○ 石綿則第10条等の措置が適切に行われるよう、事業者に、その労働者を就業させる建築物又は船舶の壁、柱、天井等に吹き付けられた石綿等や前述の保温材、耐火被覆材等の損傷、劣化等の状況を定期的に確認させることが望ましい。なお、事業者が目視で確認することが困難な場合は、石綿の気中濃度を定期的に測定することが望ましい。

○ 建築物又は船舶を所有等する者からの発注を受けて、臨時に当該建築物又は船舶にその労働者を就業させる事業者は、石綿則第10条第2項に基づき、当該建築物の石綿等の使用状況等に応じて、呼吸用保護具等を着用させる必要があるが、当該事業者が、発注者に事前に石綿等の使用状況を確認するよう指導するとともに、発注者に問い合わせても、石綿等の使用状況が不明な場合は、予防的観点から労働者に呼吸用保護具及び保護衣又は作業衣を着用させることが適当である。

○ 併せて、これら事業者の情報収集が円滑に行われるよう、行政としても発注者に対して、前述の呼吸用保護具等の着用を行う必要があるかどうかの判断の一助として、業務の発注に合わせて石綿等の使用状況を事業者に通知するよう協力を依頼することが適当である。