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通達:化学プラントの爆発火災災害防止のための変更管理の徹底等について

 

化学プラントの爆発火災災害防止のための変更管理の徹底等について

平成25年4月26日基発0426第2号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

近年、我が国を代表する化学プラントにおいて重大な爆発火災災害が相次いでおり、関係労働者や消防隊員が死亡する等多くの方が被災していることは誠に遺憾である。厚生労働省においては、災害調査を行うとともに再発防止に係る指導等を行っているところであるが、災害の発生状況をみると、これらの災害はいずれも非定常作業において発生しており、異常反応の発生に際し適切な反応制御ができなかったものである。その背景として、異常事態をも想定してのリスクアセスメント及びその結果に基づくリスク低減措置が適切に実施されていないことが懸念されるほか、団塊の世代の引退や経営環境の悪化などにより知識や技術力が適切に伝承されていないことや、情報伝達の不備、専門人材の不足等によるいわゆる現場力の低下も懸念されるところである。

ついては、化学プラントにおける爆発火災等の重大な災害を防止するため、化学設備に関する労働安全衛生関係法令の遵守はもとより、下記の事項について、貴局管内の関係団体に要請する等により、特殊化学設備を設置する事業場に対する周知に努めるとともに、当該設備に関する計画の届出に対する審査及び労働安全衛生規則第4条第3号の指定について遺漏なきを期されたい。

なお、一般社団法人日本化学工業協会会長、石油連盟会長及び石油化学工業協会会長に対し、別添のとおり要請を行っているので了知されたい。

 

1 化学プラントの変更時等のリスクアセスメントの実施

化学プラントの変更時等のリスクアセスメントを確実に実施すること。その実施に当たっては、平成18年3月30日付け指針公示第2号「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(以下「リスクアセスメント指針」という。)、平成18年3月30日付け基発第0330004号「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」及び「化学プラントにかかるセーフティ・アセスメントに関する指針」(平成12年3月21日付け基発第149号別添)(以下「セーフティ・アセスメント指針」という。)に基づくとともに、特に以下の事項に留意の上、リスク低減措置を徹底すること。

(1) リスクアセスメントを実施すべき化学プラントの変更時等とは、リスクアセスメント指針の記の5の(1)のアからオに掲げるときであること。なお、保守点検に伴う補修、ソフトウェアの変更、組織体制や人員体制の変更によって、リスクに変化が生ずることがあり得るので留意すること。

また、リスクアセスメントの実施に当たっては、当該変更のあった設備のみを対象とするのではなく、当該変更のあった設備と関連する設備を含めて対象とすること。

(2) 化学プラントの設計・設置段階において実施されたリスクアセスメント及びその結果に基づく措置について、当該リスクアセスメントの前提とした反応等に係る条件や、その結果に基づき講じたリスク低減措置の適用範囲を確認すること。確認すべき情報としては、化学物質の反応特性や設備の耐久性等の特性に関する情報、想定する異常反応やその結果生ずる緊急事態のシナリオ、当該シナリオのうち工学的対策が対応する範囲、異常反応の発生や緊急時の対応を定めたマニュアル等がある。なお、過去の運転実績のみに基づき反応等に係る条件を想定して措置することは、リスクアセスメントとして適切ではないこと。

また、確認の結果、現時点での化学プラントがこれらの前提条件や適用範囲から外れている場合、又はリスクアセスメントを実施していると認められない場合には、当該化学プラントに係るリスクアセスメントを実施し、その結果に基づくリスク低減措置を講ずること。

(3) リスクアセスメントの実施に当たっては、「化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」(平成20年2月28日付け基発第0228001号別添)も踏まえ、非定常作業時も想定したものとすること。

非定常作業には、保守点検作業のほか、異常反応の反応制御や事故の発生等の緊急時の対応が含まれる。化学プラントの運転の状況等について通常時からのずれが生じた場合を仮定し、そのずれによって生じうる異常反応や事故、そのずれが発生する経路や原因となる要素を系統的に解析する等を通じて、的確にリスクを洗い出すこと。検討に当たっては、誤認や誤操作による事象のほか、リスク低減措置が機能しない場合として、例えば、生産能力の向上により安全装置の対応できる量以上の原料や中間体を取り扱う場合、センサの設置方法等や設定値が適切でない場合、安全装置を作業員が意図的に又は判断ミスにより無効にしてしまう場合等についても想定すること。また、異常反応の想定に当たっては、反応が完結していない化学物質は反応が進行することから、反応槽のみを対象とするのではなく、貯蔵槽等についても異常反応の可能性があることに留意すること。

また、リスクの洗い出しに際しては、過去の異常反応の発生事案について、事故にまでは至らなかった事案も含めて活用すること。

(4) 化学プラントを通常運転する事業者又は部門と、当該化学プラントを設計、建設し、又は保守点検を実施する事業者又は部門とが異なる場合、設計、建設段階において実施したリスクアセスメントの結果や、保守点検における補修の内容等、リスクアセスメントの実施に必要な情報を確実に伝達することのできる体制を確立すること。

2 実施体制の整備等による現場力の維持・向上

上記1のリスクアセスメント及びその結果に基づく措置を適切に実施するため、セーフティ・アセスメント指針の3の(5)のロに基づき、特に以下の事項に留意の上、人員の適正配置、教育訓練、非定常作業における対応マニュアルの策定及び関係者への周知徹底を実施することにより、現場力の維持・向上を図ること。

(1) セーフティ・アセスメント指針の3の(5)のロの(イ)の適正な人員配置については、休日及び深夜であっても、異常反応の反応制御への対応も含め、適切な状況把握及び対応の決定・指示といった緊急時に必要な措置が十分とれるものとすること。

(2) セーフティ・アセスメント指針の3の(5)のロの(ロ)の教育訓練は、リスクアセスメントを実施する者に対する知識、技能の向上を含むものとすること。また、教育訓練の内容は、リスクアセスメント等の結果を踏まえたものとし、残留リスクその他のリスクアセスメント等の結果を周知するとともに、異常反応の反応制御など緊急時の対応を含むものとすること。

(3) セーフティ・アセスメント指針の3の(5)のロの(ハ)の非定常作業における対応マニュアルは、上記1の(3)に掲げる異常反応の反応制御を含め、緊急時の対応を含むものとするとともに、誤認や誤操作等の可能性を考慮したリスクアセスメントに基づくものとすること。また、通常化学プラントを運転する事業者又は部門と異なる事業者又は部門が保守点検を行うなど、関係する事業者又は部門が複数に渡る場合には、これらの事業者又は部門との連携を含むマニュアルとすること。